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胃がんとは?原因・治療法・予防法を分かりやすく解説

胃がんは、消化器系の臓器である胃に発生する悪性腫瘍で、特に日本では多くの人が罹患するがんの一つです。

胃がんは初期症状が乏しく、進行するまで気付かれないことも少なくありませんが、早期発見が治療成功のカギとなります。

この記事では、胃がんの基礎的な知識、症状、診断、治療法、そして予防策についてわかりやすく解説していきます。

【参考文献】
※1 がん情報センター.最新がん統計

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

胃について

胃は、私たちが食べた食べ物をドロドロにして、栄養を吸収できる状態まで消化する働きがあります。
胃で消化されたものが、次に小腸や大腸へ運ばれ、それぞれの場所で栄養が吸収されます。

胃の構造

胃は袋のような形をした臓器で、食べ物が入ると大きくなり形を変えます。
位置は、みぞおちの裏あたりで、入口を噴門、上部分を胃底部、中心部分を胃体部、出口を幽門といい、そこから先は十二指腸へとつながっています。
胃がんは
胃体部もしくは幽門部にある幽門洞(幽門前庭部)とよばれる部分で見つかることが多いといわれています。※2

胃がんとは

【参考文献】
※2 ONCOLGY.治療ガイド 胃の働きと構造

主な働き

胃の主な働きは食べ物の消化ですが、他にも食べ物に含まれる細菌を胃液で殺菌、有害なものを嘔吐して吐き出すなどの役目もあります。

胃液は1日に1.5~2.0リットルも分泌され、日々大量に分泌しながら食物の消化を行っています。
胃液の主な成分は、粘液・塩酸・ペプシノーゲンで構成されており、胃全体の粘膜層にはこの3つを分泌する細胞が密集しています。

口で咀嚼された食べ物が、食道を通って胃へ入ると胃全体が動き出します。
この動きを蠕動運動といいます。
このとき胃から未消化の食べ物が出ていかないように、出口である幽門がきちんと閉じられ、胃底部から胃液を分泌しながら食べ物を消化していきます。

食べ物がドロドロの状態まで消化できると幽門が開き、少しずつ十二指腸へと運ばれていきます。お肉や揚げ物などの油が多いものは、消化に時間がかかります。
そのため、こってりしたものを食べ続けると、胃もたれが起きやすくなります。

胃がんとは

胃がんとは
(参照:https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/medical/cancer/01.html

胃がんは、胃の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍で、日本では特に多くの人々に発症することからがんのなかでは比較的身近な病気です。国内では毎年約13万人が新たに胃がんと診断されており、その罹患率は高齢化社会の進展にともない上昇しています。特に50代以降の男性に多く、女性よりも男性のほうが罹患リスクが高いことが知られています。

胃がんは、初期段階では自覚症状がほとんどないため、進行してから発見されるケースも少なくありません。発見が遅れると治療が難しくなることから、早期発見・早期治療が非常に重要です。

胃がんの患者数と生存率・死亡率・罹患率

胃がんの生存率
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c01#h-title

胃がんは、その進行状況の応じて4分類のステージに分けられており、数字が高くなるほど進行度もあがります。4つあるステージのうち「どの段階で治療を始めたか」によってその実測生存率は大きく異なります。

早ければ早いほど生存率は高くなり、ステージ1では5年生存率は80%以上。少しでも異変を感じたときに早めに検査を受けるのはもちろん、地域や勤め先などでおこなわれている検診をしっかりと受ける意識も重要です。

胃がんの死亡数
胃がんの死亡数
(参照:https://www.osaka-ganjun.jp/health/cancer/gastric.html

胃がんは、日本では国民病の一つとも言われ、男女ともに高い死亡率を占めています。一般的に胃がんは50代以降の男性から徐々に罹患率が上がって行きます。これには、「ヘリコバクターピロリ菌」の感染が影響していると考えられています。

胃がんの分類

胃がんの病状や進行度を把握し、より効果的な治療戦略を練るには、胃がんの分類を明確に判断し病状の評価をすることが大切です。悪性腫瘍にはがんの発生場所やタイプにより、さまざまな分類がなされますが、ここでは胃がんの分類わけについて解説します。

胃がんの病理組織型分類

胃がんの病理組織型分類
(参照:https://www.cancer-infonavi.jp/igan/treatment/01/

胃がんは基本的に、粘液や消化液を胃の中に分泌する粘膜の中の「腺上皮(せんじょうひ)」という部分から発生するため、「腺がん」に分類されています。

そのなかでも胃がんの腺がんには、大きく分けて「分化型」と「未分化型」の2種類があります。

この分類は、顕微鏡で見たときの細胞の形や並び方が元々の胃腸の細胞の形と同じ形を残しているか、そうでないかで分けられています。未分化型胃がんは、がん細胞が固まりを作らずにバラバラと広がっていく、スキルス性胃がんに代表される組織です。

胃がんの肉眼的分類

胃がんの肉眼的分類
(参考:https://www.gi-cancer.net/gi/gi-pedia/vol06/page02.html

胃がんは内視鏡で胃の粘膜を見たときや、手術で摘出した組織の見た目の印象でも分類がされています。

胃がんの肉眼的分類は、胃がんが粘膜のどのぐらいの深さに浸潤しているかではなく、表面から見たときの形状をもとに分類する方法で「隆起型」「表面型」「陥凹型」に分類されます。

そのなかでも表面型は「表面隆樹型」「表面平坦型」「表面陥凹型」に分類されます。

さらに進行胃がんの分類では、「腫瘤型(1型)」「潰瘍限局型」「潰瘍浸潤型」「びまん浸潤型」の4種類に分けられています。

そのなかでもびまん浸潤型は、別の呼称として「スキルス胃がん」と呼ばれることもあります。

スキルス胃がんについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>スキルス胃がんとは?原因・特徴・治療法から予後までを解説

胃がんの(がんの深さ)での分類

胃がんの(がんの深さ)での分類
(参照:https://www.kango-roo.com/learning/6220/

がんの進行の程度を示す指標の一つに「がんの深さ(腫瘍:Tumor)」があり、胃がんが内側の粘膜からどの程度まで浸潤しているかを示す「深達度の分類」というものがあります。

胃は体の内側から「粘膜」、その下に「筋層」、一番外側が「漿膜」という膜に覆われています。その中のどこまでにがんが浸潤しているかを指し示す指標が、がんの深達度の分類です。

がんの深さについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?

胃がんの症状

胃がんの症状
胃がんに罹患した際には、そのときの病状の進行状況により異なる症状を呈します。ここでは、胃がんの初期症状と進行したときの症状にわけて解説します。

初期症状

胃がんは発見が早ければ早いほど完治率が上がっています。実際に胃がんになったときの症状を知っておいて、早期発見に努めたいですね。

しかしながら、初期の頃にはほとんど自覚症状はありません。

ごくまれにお腹が張る感じがあったり、胸焼けやゲップ、つかえ感などが生じることもありますが、胃がん特有の症状ではなく胃潰瘍やちょっとしたストレス、体調不良などでも生じやすい症状のため、見過ごされてしまうこともあります。

胃がんの初期症状について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?

進行途中から末期の症状

胃がんの症状が進行してくると、胃の粘膜から出血が起こり始めるため、自覚症状も徐々に生じ始めます。

胃の粘膜から出血が起こることで分かりやすく生じる症状が「黒色便(タール便)」です。

その名のとおり便の色が黒ずんでくるのですが、これは胃の粘膜から出血した血液が混ざった便が排泄されるからです。

消化器症状としては、初期にはなかった症状が出現したり、胸焼けやゲップ、つかえ感など腹部の不快感が長期化し、市販薬などの対処でも改善しないようになってきます。

また、さらに病状が進行し、末期に差しかかると出血が進むことにより貧血症状やふらつき、めまい、動悸、息切れなどが出現することもあります。

胃がんの病態が進行すると胃の部分粘膜の働きが失われたり、消化機能がうまく働かなくなることにより、嘔気、嘔吐、食欲低下にともない体重減少が出現する場合もあります。

進行途中から末期の胃がんの症状について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がん2-3期ステージの症状・治療法を解説
>>【胃がんステージ4】症状・治療法は?余命についても解説

胃がんの原因・かかりやすい人

「これがあれば必ず胃がんになる」というはっきりとした原因は、現在のところ分かっていません。しかし生活環境や家族性による因子など、胃がんにかかりやすい人というのはある程度示唆されています。

胃がんが発生する原因としては「胃の粘膜が荒れて炎症が長く続いていると細胞ががん化しやすい」と考えられています。

そのため、食習慣が乱れていたり、ストレスが継続的にかかっている
と胃の痛みや胃のむかつきなどが生じ発症のリスクが上がります。また、喫煙や飲酒習慣も胃がんの発生につながる要因の一つです。

胃がんにかかりやすい人について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?

胃に関連する疾患

胃がんの発生にはピロリ菌の感染が深く関わっていることが明らかになっています。ピロリ菌により、胃の粘膜が長期間にわたって慢性的に炎症を起こすことがあるからです。炎症が長期化すると細胞がダメージを受けやすくなり、がん化しやすい環境が作り出されます。

ヘリコバクターピロリ菌感染

胃の粘膜が荒れ、がん化しやすい大きな要因の一つはピロリ菌感染です。ヘリコバクターピロリ菌は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。ヘリコバクターピロリ菌は、感染すると胃の粘膜を保護するバリアを破壊し、胃酸に対して胃壁を弱くするため、炎症や潰瘍の原因となります。

ヘリコバクターピロリ菌感染が確認できたら、除菌治療を受けることを検討したいものです。ピロリ菌の除去により胃がんの発生リスクは30から40%程度減らせるのではないかと考えられています。

このほかにも、ヘリコバクターピロリ菌感染により胃に関するさまざまな疾患が生じます。胃がんにつながる関連疾患も、胃がんの要素になりうるのです。

ヘリコバクターピロリ菌感染について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?

胃ポリープ

胃ポリープは、胃の内側の粘膜にできる隆起性の病変で、ヘリコバクターピロリ菌の感染が原因で発生することもあります。多くの場合、ポリープ自体は良性であり、無症状のまま経過することが多いですが、まれに大きくなったり出血することもあります。ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療をおこなうことで、ポリープが縮小したり、消失することもあります。

胃がんの原因として直接的な要因になることはまれですが、同じ場所が長く炎症症状を呈した場合に、胃がんの要因となりうる理論上のリスクは否定できません。

胃潰瘍

胃潰瘍は、胃の内壁が傷つき、粘膜に深い傷ができる状態です。ヘリコバクターピロリ菌の感染やストレス、鎮痛剤などの乱用により胃の粘膜の防御機能が低下し、胃酸の影響で潰瘍が形成されることがあります。胃潰瘍の状態が長く続くと胃の粘膜が荒れ炎症が起こりうるので、これもまた胃がんの要因になり得ます。

慢性胃炎

慢性胃炎は、胃の粘膜が慢性的に炎症を起こしている状態で、ヘリコバクターピロリ菌の感染がその主な原因とされています。感染が続くと、胃粘膜の萎縮や腸上皮化生(胃の細胞が腸の細胞に変わる現象)といった変化が起こり、これが進行すると、胃がん発生のリスクが高まります。

胃がんの検査・健診

胃がんに関する何らかの症状があった場合、会社や地域の健康診断としておこなわれる胃がん発見のための検査を受けることになるでしょう。検査を通じて胃がんが発見されたあとは、さまざまな追加検査を通じて、胃がんの状態や病状を確認し胃がんの治療方針を決定する指標とします。

バリウム

胃がんは早期発見、早期治療によりその後の予後が大きく異なるがんの1つでもあります。

日本では胃がんによるがんの死亡率を減少させることを目的に、住民検診などがおこなわれ、さまざまな胃がん発見につながる検査を公的資金を用いて受けられます。

一般的な検診でおこなわれる代表的な検査が「バリウム検査」です。バリウムという胃を膨らませる薬と造影剤が入った薬剤を飲み、胃の形状をレントゲンで撮影します。

液体を飲んでレントゲン撮影をするだけなので、体の侵襲が少ないため、比較的手軽に受けられる検査です。

胃カメラ

バリウム検査で異常が見つかったり、バリウム検査が苦手な人は初めから胃カメラと呼ばれる、胃の粘膜を直接観察する内視鏡検査もおこないます。

胃カメラの検査は万が一疑わしい部分が見つかれば、そのまま生検をおこなうことができるのも特徴です。

生検

胃がんの生検は、内視鏡検査などで見つかった異常な組織の一部を採取し、病理検査で詳細に調べる方法です。組織の形態や細胞の状態を顕微鏡で観察することで、がんの有無や進行度を確認できます。胃がんの確定診断には欠かせない検査であり、がんの種類や性質を明らかにして、適切な治療方針を立てるうえで非常に重要です。

生検を実施して、はじめて悪性腫瘍としての確定診断となります。

CT

CTは、X線を使って体内の断面画像を撮影する検査です。胃がんが周囲の臓器やリンパ節にどの程度広がっているか、また遠隔転移の有無を調べる際に活用されます。

MRIが苦手な骨や肺、心臓周辺の画像を検出しやすいのがCTの強みです。

CT検査により、腫瘍の大きさや位置、周囲の臓器との関係を立体的に把握でき、手術の適応や治療計画の立案に役立ちます。

MRI

MRIは、強力な磁場と電波を利用して体内の詳細な断面画像を作り出す検査です。CTとは異なり、放射線を使用しないため被ばくの心配がありません。

胃がんの診断においては、がんの位置や大きさ、周囲の臓器への浸潤の程度をより詳細に把握できます。MRIは、軟部組織の描出に優れており、CTでは見逃しやすい小さな病変もとらえることができます。
H3PET
PETは、がん細胞の活動性を評価するための検査です。専用の薬剤を体内に注射し、その薬剤ががん細胞がある箇所に集積する様子を撮影することで、がんの存在や転移の有無を確認します。

PET検査は、全身のがんの分布を一度に評価できるため、胃がんがどこに転移しているかを把握するのに非常に有用です。特に、CTやMRIでは検出しにくい微小な転移を発見できるのが強みです。

腫瘍マーカー

唯一血液検査で抽出できる胃がんの指標に「腫瘍マーカー」というものがあります。胃がんがある場合に血液中に増える腫瘍マーカーには、「CEA・CA19-9・AFP」などがありますが、早期の胃がんでははっきりとした数値の変化は見られないこともあります。

胃がんの検査について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>スキルス胃がんとは?原因・特徴・治療法から予後までを解説

胃がんのステージ分類

胃がんのステージ分類
(参照:https://www.uwajima-mh.jp/cancer/03info/

胃がんの進行具合は、主に悪性腫瘍がどのぐらい深く進行しているか、とリンパ節転移の有無、他臓器への転移の有無などを指標として決定されます。

胃がんはステージ1からステージ4の、4つの段階に分けられています。「TMN分類」と呼ばれる3つの指標を参考にしてステージ分けがされます。

TMN分類

TMN分類は、がんの進行度を評価する指標となる方法で、腫瘍(Tumor)、リンパ節(Node)、遠隔転移(Metastasis)の3つの要素をもとに判別します。大腸がんに限らず、多くのがんの進行度の指標とされているのです。

Tumor(T):腫瘍の大きさや広がり Node(N):周囲のリンパ節に転移しているかどうか Metastasis(M):多臓器への遠隔転移の有無
Tis:上皮内にとどまるがん(insitu) N0:リンパ節に転移がない M0:遠隔転移がない
T1-T4:腫瘍の大きさや浸潤の程度により、数字が大きくなるほど進行している N1-N3:転移しているリンパ節の数や位置により分類。数字が大きいほど転移が広がっている M1:遠隔転移がある

TNM分類のなかには「Tx、Nx、Mx」などのように「X」で評価される指標もありますが、この状態は評価ができない・見つけられない不明な状態を指しています。

胃がんの治療

胃がんはその病状や進行度により主に4つの治療方法が存在します。患者さんの病状やがんの特性を抑えつつ年齢や体力基礎疾患の有無の他に患者さんの移行を反映して治療方法が選択されます。

ちなみに放射線の感受性が低いことなどから、胃がんに関しては放射線治療が積極的におこなわれることは少ないです。

内視鏡治療

内視鏡治療

(参照:https://www.scchr.jp/ideal-care/minimally-ope/endoscopic-esd.html
胃がんが粘膜層にとどまっている場合に、内視鏡を使って胃の内側からがんを切除するのが内視鏡治療です。内視鏡検査で疑わしいがんが見つかれば、その場で切除してしまう場合もあります。

ほとんどの場合、内視鏡治療で病巣を取り除くことができれば、
完治への期待は非常に大きい
といえるでしょう。

内視鏡治療について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?

手術

手術
(参照:https://www.cancer-infonavi.jp/igan/treatment/02/

病巣をすべて取り除けると判断した場合、病巣を含めた胃の粘膜を切除する方法が手術です。

どの部分に病巣ができているかなどにより手術の方法は変わります。また進行胃がんでも、食事摂取などを含めた生活の質を改善することを目的とした場合にも手術を実施するケースがあります。

胃がんの手術について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がん2-3期ステージの症状・治療法を解説

薬物療法

胃がんの薬物療法には抗がん剤や分子標的薬を使用した化学療法、免疫チェックポイント阻害薬を使用する免疫療法などがあります。

胃がんの薬物療法は多種多様で患者さんの病状や基礎体力、血液検査の数値、胃がんの特徴などにより多彩な治療方法を選択できるのが特徴です。

薬物療法について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>がん免疫療法とは?仕組みと具体的な治療方法について解説
>>がんの薬物療法とは?その治療方法や方法についてご紹介
>>抗がん剤の種類について

緩和ケア・対症療法

緩和ケアや対症療法は、胃がんの末期の治療と思われがちですが、近年では治療を始めたあとでも健やかに過ごせるよう、そして生活の質を落とさないように早い段階から取り入れることが理想とされています。

痛みのコントロールはもちろんですが、痛みが生じてなくても薬物療法の副作用で吐き気や味覚の変化などが辛ければ早い段階で担当医師や看護師などに相談し、病状をコントロールしながら生活の質を維持できるよう上手に活用しましょう。

胃がんの転移

胃がんが転移する場合、その転移形式は大きく3種類に分けられます。

①リンパ性転移
粘膜下層まで胃がんが浸潤した場合、胃壁のなかにあるリンパ管にがん細胞が侵入しリンパの流れに乗って転移が起こります。

②血行性転移
血行性転移は、胃がんが胃の壁の中の静脈内に浸潤した場合、血液の流れに乗って全身に広がる転移です。

③腹膜播種性転移
腹膜播種性転移とは、胃の壁の外まで浸潤した胃がんが胃の壁から離れ複数内で散らばってしまい、お腹を覆っている腹膜というところに転移してしまう状態です。

緩和ケアについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>緩和ケアとは?どこで受けられるかなど解説
>>がんの痛みは治療できる|痛みの原因と治療方法について

胃がん治療における気になる日常生活や療養について

胃がん治療における気になる日常生活や療養について
胃がん治療や治療後の日常生活において、工夫が必要な点や調整が必要なこともあります。胃がんの治療中や治療後の療養生活を想定し、あらかじめ対策ができることについては対処法を知っておくとよいでしょう。 

ダンピング症候群予防のために食べ方の「リハビリ」をする

胃がんで手術治療を受けた場合、特に問題となる後遺症の一つに「ダンピング症候群」というものがあります。

ダンピング症候群は、胃がん手術後、胃を取り除いたことにより十分に消化されていない食べ物が急速に小腸に流れ込み、急激な各種ホルモンの分泌が起きたり、血糖値の変動が起こる後遺症です。主な症状として、冷や汗や動機、全身倦怠感などのさまざまな症状が起こります。

対策としてできることは、胃の弱った消化機能を助けるためにゆっくりよく噛んで食べることと、1日3食にこだわらず少量の食事を1日複数回に分けて摂ることです。ダンピング症候群の予防に役立ちます。

胃がん手術後の食事における注意点について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>胃がん2-3期ステージの症状・治療法を解説

妊孕性・性生活について

胃がんは、時として若い年齢でも発症することがあります。まだまだ働き盛りの年齢でがんが発症した場合、子供を持てるかどうかというのも一つの気がかりでしょう。

がん治療のなかでは、妊娠するための力のことを「妊孕性(にんようせい)」と表しています。

胃は直接妊娠に関連する臓器ではありませんが、薬物療法などをおこなう場合には生殖機能や胎児に影響を与える可能性は否定できません。

現在のところ、胃がんの薬物治療には生殖機能に関する十分なデータがないのです。

そのため、胃がんの治療をする際に「将来子供が欲しい」と考えているようであれば、治療の方向性も含めて担当医と十分に相談することが重要です。

また、生殖行為そのものは胃がんの治療に影響を及ぼすことはありませんが、薬物療法を受けているならば、分泌物などに薬の成分が含まれる可能性も否定できないため、コンドームなどを使った避妊をおこなうようにしましょう。

若い年齢で胃がんを発症した場合の問題点について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>AYA世代(若い世代)のがんは種類が違う?問題点や支援の概要

胃がんの臨床試験

胃がんの臨床試験
(参照:https://www.kanazawa-med.ac.jp/~tiken/patient/about.htm

現在一般的におこなわれている治療は、現時点で最も効果が高いと証明された治療法で、これを「標準治療」と呼びます。

しかし、その治療法をそのまま使い続けるということは、治療方法が全然進歩しないという側面も含んでしまうのです。

実際に、現在多種多様な胃がんの治療法があるのは、過去にたくさんの臨床試験がおこなわれていたからでしょう。

現代にある優れた効果を持つ新たな標準治療は、さまざまな臨床試験を経たうえで確立されているからです。

胃がんの臨床試験とは、新しい薬や治療法の効果や安全性を確認するために行われる試験です。

上記の図を参照すると、試験薬は最初に健康な成人に使用してもらい、副作用の有無を確認するところから始まります。しかし抗がん剤の場合、一般的な薬とは異なり最初の段階(第Ⅰ相試験)から患者さんに協力を仰ぐことが多いです。

臨床試験は、患者さんの安全を守るために厳密なルールに従って実施されます。試験実施計画書に基づき治療や検査が計画的に行われ、患者さんの権利や安全が確保されているのです。

臨床試験の参加については担当医師からの提案を受け、文書による十分な説明を受けたうえで患者さん自身が参加の可否を決定します。臨床試験はあくまでも治療の選択肢の一つです。患者さんが途中で辞退しても、不利な扱いを受けることはありません。

胃がんの臨床試験に参加するということは、まだ世の中に浸透していない先進医療をいち早く受けられる可能性もあるといえます。

さらに臨床試験を受ける大きなメリットとして、厳重なフォローチームが介入するので一般的な標準治療よりも、はるかに専門的できめ細やかな診療や看護が受けられるという特徴もあるでしょう。

また、新薬に関する臨床試験だった場合、検査費用や薬剤の費用は基本的に製薬会社が負担してくれるので、金銭的な不安が軽減されるというメリットもあります。

しかしながらもちろん、デメリットもあり副作用が起こる可能性は否定できません。これは標準治療でも同様です。

そして標準治療と臨床試験のどちらを受けるかがランダム(※1ランダム化比較試験:RCT)で選択されるので、実際の治療はどちらがおこなわれているかがわからないという背景もあります。

また新しい治療の効果が期待通りに得られない可能性もあるでしょう。

臨床試験への参加の有無は、担当医師や担当の検査官などと十分に話し合ったうえで決定するとよいでしょう。

臨床試験の参加を打診され、それを拒否したとしても今後の治療にはまったく影響しないので、患者さん自身の意思で選択するのが大切です。

※1ランダム化比較試験
ランダム化比較試験
(参照:https://ez2understand.ifi.u-tokyo.ac.jp/terms/terms_03/

ランダム化比較試験(RCT)は、治療の効果をより正確に比較するための方法として考えられています。ランダム化比較試験では、被験者をランダムに2つ以上のグループに分け、一方のグループには新しい治療を、もう一方には既存の治療やプラセボ薬を用いた治療をします。

ランダムに2つのグループに振り分けることで患者さんの年齢や性別、病状の違いなど、さまざまな要因による影響を最小限に抑え、純粋に治療効果を比較できるようにするのです。

また、ランダム化比較試験では医師や患者がどちらの治療を受けているかを知らない状況ですすめられます。患者さんはもちろん、主治医ですらどちらの薬を使用しているかわからないように進めます。「何を使っているかわからない」という状況が、より結果に対する期待や先入観を取り除けるため、新薬に対する治療効果の信頼性が高まるのです。

胃がんの予防・再発防止について

胃がんの予防法について、残念ながら現在のところ確実な方法はありません。

普段の日常生活はもちろん、胃がんの治療を受けたあとの再発防止を考えるなら、やはり胃に優しい生活を意識するのが大切です。さらに現時点でがんを発生しやすい生活習慣などがあれば、あわせて見直しが重要でしょう。

特に喫煙習慣は、明確にがん発生との関係性が示唆されています。

また、胃がんに関してはヘリコバクターピロリ菌の感染が影響を及ぼしていることが分かっています。

感染が確認できる場合は、除菌治療を受けることも検討しましょう。現在の日本ではヘリコバクターピロリ菌の除菌治療は保険適用で受けることができます。

胃がんの予防方法について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>スキルス胃がんになりやすい人は?原因と早期発見・予防策について解説

がんに効く?「フコイダン」とは

がんの治療に効果がある成分として、フコイダンが研究者の間で注目されています。

フコイダンは、海藻類から抽出することができる成分で、がん細胞を弱らせて自滅させる効果(アポトーシス作用)や抗がん剤の副作用を軽減する効果があることが期待されています。
100%天然成分であるため副作用がなく、現在がん治療をしている患者さんの負担が増えることなく始められるということで、いま話題になっています。

また、がんへの作用以外にも以下のような報告がされており、積極的に摂取したい成分の一つです。

抗腫瘍・抗がん作用/抗アレルギー作用/肝機能向上作用/抗生活習慣病/抗ウイルス作用/抗ピロリ菌作用/血液凝固阻止作用/美肌作用/育毛作用

>>フコイダンについてもっと詳しく知りたい方はこちらへ。

>>中分子フコイダン療法による胃がんの臨床報告はこちら
フコイダンラボ.臨床例⑥:ステージⅢBの胃がんの再発(80歳男性)

まとめ

胃がんは早期発見と適切な治療が生存率を大きく左右する病気です。特に、定期的な検診とヘリコバクターピロリ菌感染への対処が予防に重要となるでしょう。

治療には内視鏡治療、手術、薬物療法、緩和ケアがあり、進行度や患者さんの状態に合わせた最適な治療を選択することができます。また、再発防止のために生活習慣の見直しやピロリ菌除去、禁煙などの対策も有効です。

胃がん治療後の療養生活を意識しながら、生活の質を落とすことなく過ごすことも意識したいところですね。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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