2021.07.26
がんがん末期のせん妄とは?家族でできるケアについても解説
がん末期におけるせん妄は、患者さんや家族にとって非常につらい症状の1つです。本記事では、余命に伴うせん妄の発生やその原因、せん妄に対するケアについて解説します。また、因子についても触れ、せん妄によって患者さんや家族が不安に感じる要因や対策についても解説します。
目次
がん末期のせん妄とは
がん末期のせん妄は、末期がん患者さんにしばしば見られる症状の一つです。せん妄とは、知覚や認識の障害を伴う状態であり、患者さんの意識レベルや思考力が変動し、混乱や錯乱、幻覚などの症状が現れます。
その症状は個人によって異なりますが、一般的な症状としては、混乱した思考や言語の問題、注意力の欠如、幻覚や妄想、不安や怒りの増加、睡眠障害、興奮や抑制などが挙げられます。せん妄は、患者さん自身にとっても苦痛な状態であり、また家族や周りの人々にとっても大きな負担となるのです。
がん末期では、がん以外の病気や症状によりせん妄が発生する場合もあるのですが、ここではがんによるせん妄について解説します。
せん妄が余命数日の患者さんに多く見られる理由
せん妄は、がん末期の患者さんに特に見られやすくなります。がん末期の余命数日となっている状況では、がんが進行し全身へさまざまな影響が及ぶため、身体的な症状や代謝の変化も生じます。
せん妄が発生する要因はさまざまですが、余命が短くなるにつれて発生する可能性が高くなるとされています。具体的には、以下のような理由が考えられます。
・代謝や排泄機能の低下
がんの進行に伴い、身体の代謝や排泄機能が低下します。栄養素の吸収や老廃物の排出がうまく行われなくなるため、脳への栄養供給や毒素の除去にも影響を及ぼします。これにより、脳の機能が低下し、せん妄が生じる可能性も高まるのです。
・栄養不良や脱水症状
がんの進行によって食欲が低下し、栄養不良や脱水症状が起こりやすくなります。栄養不足や水分不足は脳の機能に影響を与え、せん妄を引き起こす可能性があります。
・痛みや不快感の増加
がんの進行に伴って痛みや不快感が増加します。患者さんが痛みや不快感に苦しむと、それによって脳にストレスがかかり、認知機能や情動の制御に影響を及ぼすことがあるのです。このような身体的な苦痛や不快感がせん妄の症状を悪化させる可能性もあります。
・抗がん剤や鎮痛剤などの薬剤の影響
がん治療に使用される抗がん剤や鎮痛剤など薬剤の影響を受けることもあります。これらの薬剤はがんの症状を緩和するために必要ですが、副作用としてせん妄を引き起こしてしまう場合もあるのです。薬剤の種類や使用量によって個人差はあります。
・脳病変などの進行による影響
脳病変などの進行によってせん妄につながることもあります。がんの進行によって、脳内の腫瘍や転移が増えたり、脳血管疾患が進行すると脳の正常な機能を妨げるため、せん妄の症状が現れやすくなります。脳の病変は必ずしも脳腫瘍の場合にのみ起こるわけではありません。原発巣が異なる場合でも脳にがんが転移してきて影響を及ぼす可能性もあります。
せん妄につながる因子について
(参照:https://www.kango-roo.com/learning/6507/)
せん妄は、準備因子、誘発因子、直接因子という3つの因子が関与することで起こります。以下にそれぞれの因子について解説します。
準備因子
準備因子は、せん妄が発生しやすい環境・要素のことです。例えば、高齢である、認知症がある、基礎疾患がある、脳に病変がある、などが挙げられます。準備因子がある場合、せん妄のリスクが高まります。
誘発因子
誘発因子は、準備因子が存在する状態でストレスなどの特定の要素が加わりせん妄が引き起こされる要素です。一般的な誘発因子には、感染症、疼痛、薬物の副作用、外傷、手術、睡眠障害、不適切な環境などがあります。
直接因子
直接因子は、せん妄の症状を直接的に引き起こす要素です。これには、神経伝達物質の変化、脳の構造的な変化、脳腫瘍の進行などによる低酸素状態などが含まれます。
3つの因子は相互に関連しており、せん妄の発症や進行に影響を与えます。ただし、せん妄の発生には個人の特性や状況によって異なる要因が関与するケースもあります。
せん妄の症状と進行
せん妄の症状は様々であり、患者により非常に多種多様です。複数の症状が入り混じることも多いのです。以下に代表的な症状を紹介します。
意識レベルの変化
患者さんは混乱し、注意力が散漫になります。意識がぼんやりしたり、周囲の状況に対する正確な把握が困難なこともあります。
思考や判断、認識の障害
患者さんは人や物体を正しく認識できない症状が生じます。時間や場所の認識がずれたり記憶力や判断力が低下したりします。言葉の理解や表現にも困難を感じる場合もあります。
幻覚や妄想
非現実的な感覚や思考が生じる症状です。例えば、見えない人や物が存在すると感じる、過去の出来事を再現するなどがあります。
興奮や不安などの情動の障害
落ち着きがなく、焦燥感や不安感が強まることがあります。激しい動きや発声などをする場合もあります。
せん妄は進行し、症状が悪化していく場合もあります。進行した場合、症状の深刻度や頻度が増し、患者の機能がより制限されることもあります。また、せん妄の症状は時間や場面によって変動することもあります。日中比較的落ち着いている一方で、夜間に症状が悪化する傾向が多いです。
せん妄の薬物療法によるケアと対策
せん妄のケアと対策には、薬物療法と非薬物療法の両方があります。患者の症状によりさまざまな対処法を選択します。
こちらでは薬物療法によるケアについてご紹介します。せん妄の症状を和らげるために、主に以下のような薬剤が使用されます。
抗精神病薬
抗精神病薬は、せん妄の症状を軽減するために使用されます。これらの薬物は、神経伝達物質のバランスを調整し、幻覚や妄想などの症状にアプローチします。適切な薬剤や投与量は、患者さんの状態や症状に基づいて医師によって慎重に判断されます。
鎮静薬
鎮静薬は、患者の不穏や興奮を鎮め、落ち着かせるために使用されます。ただし、適切な薬剤と適切な投与量を使用することが重要です。
鎮痛薬
末期がんのがん患者さんは痛みを有していることが多いでしょう。痛みはせん妄の原因になり得ます。適切な鎮痛薬の使用により痛みを軽減できれば、せん妄の発生を抑えることができるでしょう。
薬物療法は、個々の患者さんの症状や原因に合わせて選択されます。治療中は、定期的な評価とフォローアップが重要です。薬物療法には副作用や相互作用のリスクがあるため、医師も慎重に使用の開始や継続を判断していくのが一般的です。
せん妄の非薬物療法によるケアと対策
せん妄の症状を和らげるためには薬物療法以外の手法もあります。看護師や家族が提供するケアとして一般的です。また、末期がんの患者さんは家族の付き添いも多く、家族が安心して過ごせる環境づくりも重要です。患者さんとその家族、皆が少ない負担で過ごせるようにそれぞれに対するサポートをご紹介します。
【患者さんへのサポート】
患者とのコミュニケーション
患者さんと積極的にコミュニケーションを取り、彼らの感じていることや症状の変化に注意を払いましょう。心配事や不安を共有し、話し合えれば患者さんの支えになることができます。
安心感を提供する
患者さんに安心感を与えることが重要です。落ち着いた環境を提供し、リラックスできるような配慮をしましょう。また、安定した日常生活のルーティンの維持も役立ちます。
安全な環境の確保
せん妄の症状によって患者さんの判断力や認識能力が低下する場合があります。安全な環境を確保しましょう。家具の配置や段差の処理など、転倒やけがのリスクを最小限に抑えましょう。
医療チームとの連携
医師や看護師との定期的なコミュニケーションを取り、症状の変化や治療効果について情報を共有しましょう。患者さんや家族が抱え込まずにオープンに相談できる環境づくりが重要です。
【家族や周りの人へのサポート】
患者さんの状態を理解する
せん妄の症状や進行について学び、患者さんが経験していることを理解しましょう。それによって、彼らの行動や感情の変化を適切に解釈し受け止め、適切なサポートを提供できます。
忍耐強く接する
せん妄の症状によって、患者さんの行動や言動が変化することもあります。中にはもともとの人格から大きくかけ離れてしまうことも。悲観せず冷静で忍耐強く接し、患者さんを支えることが大切です。過度な反応や非難は避け、穏やかな態度で接するように心掛けましょう。
安心感を与える環境づくり
患者さんに安心感を与えるために、落ち着いた環境を整えましょう。静かな場所や患者さんの好きな音楽をかけることで、心地よさを感じたりリラックスしながら穏やかに過ごしてもらえます。
コミュニケーションのサポート
患者さんが自分の気持ちや意思を伝えることが困難な場合もあります。その際は、質問を簡潔にし、選択肢を提示してコミュニケーションを支援しましょう。また、身振りや表情などの非言語的なサインにも注意を払いましょう。
感情のサポート
患者さんが不安や恐怖を感じている場合は、共感し、積極的に寄り添うことが大切です。彼らの感情を受け止め、支えることで安心感を提供しましょう。
サポートメンバーのケア
家族や周りの人も、自分自身のケアを怠らないようにしましょう。心身の健康を保つために、十分な休息やストレス管理を心掛けましょう。また、感情を抑え込まずに吐き出す場を持つことも重要です。複数の手があるならば、交代でしっかりと休息を取るなど、家族間でのケア方法も思案しておきましょう。
まとめ
がん末期のせん妄は、がんの進行や治療によって引き起こされる意識障害です。せん妄は幻覚や妄想、興奮、不安などの症状を伴い、時間や場面によって変動することもあります。もともとの患者さんの性格や立ち居振る舞いから大きく変わってしまいショックを受ける家族も少なくありません。
ただ、実際には患者さん本人も混乱や不安を少なからず感じているはずです。患者さん本人の視点にたち、患者さんの視点で考えながらコミュニケーションを大切にして、心のケアと支えを提供することができます。
がん末期のせん妄は患者さんや家族にとって大きな負担となりますが、適切なケアとサポートを行えれば、患者さんの症状の軽減や心の安定を促すことができます。医師や専門家の指導を受けながら、患者さんと家族の力を合わせて、せん妄に対する積極的なケアを行いましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
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がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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