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悪性腫瘍と癌って何が違う?定義から見たそれぞれの違いを解説

悪性腫瘍と癌って何が違う?定義から見たそれぞれの違いを解説

日本人の死亡要因としていまだ上位に食い込んでいる「癌(がん)」。癌を表す言葉として「悪性腫瘍」「がん」「癌」などさまざまな呼称があります。その明確な違いについて気になる方も少なくないはず。この記事では、悪性腫瘍と癌(がん)の違いについて掘り下げていきます。

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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悪性腫瘍と癌の違い

悪性腫瘍と癌は、同じ意味合いを持つ言葉として使用される傾向にありますが、掘り下げていくとその定義は少し異なります。

「悪性腫瘍」は、組織内で異常な細胞が増殖してできた腫瘍のことを指しています。その細胞が他の組織や臓器に侵入する能力を持ち、転移(metastasis)して他の部位へ広がる特徴があります。

一方で「癌」は、悪性腫瘍ではあるのですが、その中でも上皮細胞(組織)から発生する腫瘍を指すとされています。上皮細胞は体の表面や内臓の膜を覆う組織で、皮膚や内臓の表面などが該当します。(上皮細胞の詳細については後述します)

簡潔に言えば、悪性腫瘍は細胞の異常増殖と他の細胞へ転移(進入)する力を持っています。癌はそのうち上皮組織から発生するものとして区別ができます。
 

悪性腫瘍とがんは何が違う?

では「癌」という漢字の呼称に対して、ひらがな・カタカナで表記される「がん(ガン)」は悪性腫瘍とはどのような違いがあるのでしょうか?

前述した通り「癌」は上皮細胞から発生する悪性腫瘍です。一方でひらがなで表される「がん」は明確な定義は設けられていません。多くの場合、悪性腫瘍と同じ意味合いで扱われています。つまり「がん」=「悪性腫瘍」との認識でとらえておいてよいでしょう。

臨床の場では病理検査などの結果提示の際に「悪性腫瘍」と用いられ、患者さんへの説明の場やスタッフ間での伝達時には、簡易的に「がん」と呼称されることが多いようです。

>>がんとはどのような病気なのか?その正体と治療法についてご紹介

 

癌と肉腫の違い

ではここでもう一つ、「がん」について掘り下げていくならば「肉腫」についても抑えておきましょう。先ほど述べた「上皮細胞」から発生するものではない悪性腫瘍を「肉腫」と分類します。

よく耳にするものでは「骨肉腫」「悪性リンパ腫」などがあります。骨肉腫は骨芽細胞や線維芽細胞より悪性腫瘍が発生するので上皮細胞性ではありません。また、悪性リンパ腫はリンパ球という細胞ががん化するので、こちらも上皮細胞性ではありません。
 

上皮細胞とは

上皮細胞とは、皮膚の表面にある「表皮」や内臓・血管などの表面を覆っている細胞のことを指しています。上皮細胞は結合力が強く細胞層は薄い膜状になり構成されるので、外部からのバリア機能を果たします。また、それぞれの場所に適した役割を担っています。例えば腸の上皮は栄養吸収を助けるなどの機能も確認できます。

上皮細胞とは
(参照:http://db.kobegakuin.ac.jp/kaibo/his_pp/10/10.pdf|P5

上の写真を見てみると、食道内では食道粘膜の一番内腔を上皮組織で覆っているのがわかります。

悪性腫瘍と良性腫瘍の違い

がんをはじめとした「腫瘍」組織。人体に発生する腫瘍には、主に「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2種類が存在します。どちらも増殖する特徴があり、大きくなると人体に何かしらの影響を及ぼす可能性があります。「良性」と「悪性」その性質により特徴があるので、分類が設けられているのです。

良性腫瘍

良性腫瘍は特定の細胞が膨らむように増殖し、腫瘍とその他の組織との境界線が明らかです。形も比較的整っているので、切除などの外科的処置をする際も比較的容易に切除できます。また、増殖のスピードも比較的穏やか。一度切除してしまえばほとんどの場合再発することはありません。一般的に手術などで摘出してしまえばほとんどの場合根治的な治療になるでしょう。

悪性腫瘍

一方で悪性腫瘍は増殖するスピードが早く、その他の組織に浸潤するように増殖します。スポンジの目に入り込むように肥大化するので境界がわかりにくく、切除するとなると周辺組織も含めて大きく切除しなくてはいけないケースが多いです。腫瘍の状況によっては非常に切除するのに技術を要するものもあります。

また、腫瘍細胞が血流やリンパに乗って遠くの組織へ転移してしまうのも大きな特徴です。治療法は腫瘍の種類や進行度により異なり、手術だけではなく放射線療法、化学療法、分子標的療法などさまざまな組み合わせが必要になる症例もあります。

>>がんの転移とは?

良性腫瘍も悪性腫瘍も腫瘍であることに変わりはないのですが、人体への悪影響の差があることから悪性と良性に分類されているのです。

がん細胞とがん抑制遺伝子について

がん細胞とがん抑制遺伝子について
実は人の体内では、がん細胞は毎日のように生まれています。その中で悪性腫瘍としてがん化しないのには「がん抑制遺伝子」と「免疫システム」が働き、肥大化する前に死滅させているからです。
 

がん発生のメカニズム

悪性腫瘍につながる「がんの芽」ですが、人体にはがんの芽を摘む機能が備わっていて、悪性腫瘍になるべく増殖する前にその成長を抑えています。

私たちの体は約37兆個の細胞でできています。その1つ1つの細胞は遺伝子(DNA)を持っていて、正常な細胞分裂をすると遺伝子も同じものが複製されます。正常な細胞はこの分裂を約50回くらい行うと寿命を迎え、自然に自滅します。

このプロセスが通常通り行われればがんになることはなく健康体でいられるのですが、発がん物質(タバコ・紫外線・活性酸素・放射線・ウイルスなど)によって細胞の遺伝子に傷がつくと細胞が自滅せずがんの芽が育ち、成長を続けていきます。

がん細胞が成長を始めたとしても通常であればがんの芽が大きくなる前に、人体に備わっている免疫システムやがん抑制遺伝子が働き、がんの成長を抑制します。

がん抑制遺伝子は細胞の増殖や分化を抑制する役割を持ちます。がん抑制遺伝子は通常、異常増殖するがん細胞を通常のサイクルである自然死を迎えるようサポートします。
がん細胞ががん抑制遺伝子の影響を受けると、異常な増殖が進行しなくなり細胞死を迎えるので腫瘍化までには至りません。

がん抑制遺伝子に変異が起きるとがん細胞が制御を逃れ、がんの進行につながります

しかし、がん抑制遺伝子がうまく機能しなくて免疫機能も正常であれば、がんの芽が大きくなる前に摘まれることも多くあります。しかし免疫機能に影響を及ぼす生活習慣(化学物質や過剰な塩分、強いアルコールの常飲など)で免疫力が弱まれば、がんの芽を攻撃する以上にがん細胞が成長し、やがて悪性腫瘍となってしまうのです。

通常細胞の分裂は約50回ほどですが、がん細胞はハイスピードで無限に分裂するので、放っておけばどんどん肥大化し、臓器や血管の壁を食い破り、中には血管などを伝わって転移してしまい、早いスピードで人体を侵食していきます。

がんの芽を正常な細胞に戻すのには免疫力を低下させないことが重要。免疫力の土台になっている肝臓の機能をしっかりと発揮できるようにビタミンやミネラルを十分に摂取し、肝臓の代謝機能の負担になる脂肪とアルコール、タバコなどは極力摂取しないようにしましょう。また、ストレスなどの影響も受けやすいので、生活の中で適度なリフレッシュを意識することも重要です。

免疫力の低下を防ぐ方法については、次の記事でも紹介しています。
>>感染症に負けない!免疫力をつける5つの方法

まとめ

まとめ
この記事では、悪性腫瘍と癌(がん)の違いについて詳しく解説しました。悪性腫瘍=がんは細胞の異常増殖と侵入能力を指し、癌は上皮細胞から発生する悪性腫瘍を指します。
さらに、良性腫瘍と悪性腫瘍の違いは人体に対して悪影響を及ぼすかどうかで分類されています。

健康な体内でもがんの芽は発生しますが、がん抑制遺伝子と免疫システムががん化を防ぐ役割を果たしています。がんの芽は発がん物質や遺伝子の傷害によって肥大化し、免疫力の低下も進行を助長します。

したがって、バランスの取れた食事や健康的な生活習慣ががん予防に重要です。免疫力の維持やがん抑制遺伝子の機能を支え、がんの発症リスクを減少させられるような生活習慣を意識したいですね。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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