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フコイダン

フコイダンとは?その化学構造や健康への影響についてご紹介

フコイダンはどのような効果があるの?

昔から、ネバネバ・ヌルヌルとした食べ物は、滋養があるとして重宝されてきました。
中でも海藻類に含まれる「フコイダン」という滑り成分には、抗がん作用をはじめとする様々な生理機能があることが分かっています。

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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フコイダンとは

フコイダンは海藻が分泌するヌルヌルとした成分で、1913年にスウェーデンの学者によって発見されました。
海藻の薬理作用は古くから知られていましたが、1970年代にフコイダンの抗がん作用が報告され、注目度がアップ。
フコイダンの研究が盛んになり、美容や健康に役立つ様々な効果が明らかにされています。

フコイダンはどこから取れるの?

フコイダンは海藻の中でも褐色をした「褐藻類」にのみ含まれる「自然由来」の成分です。
世界には1500種もの褐藻類があると言われますが、フコイダン製品の原料としてよく使われるのはモズク・メカブ・コンブなどで、海藻の種類によって機能性が異なります。

特にモズクはフコイダンを最も多く含んでおり、養殖技術も進んでいるため、多くのフコイダン製品に利用されています。
モズクのフコイダンは、消化器粘膜の保護作用に優れています

メカブはワカメの根元部分の名称で、モズクに次いでフコイダンが豊富。
メカブのフコイダンは肝機能をサポートする効果が高いとされています。

コンブには「アルギン酸」という滑り成分も含まれ、フコイダンだけを抽出するのに手間がかかるため、高価な製品が多くなっています。
しかし、免疫活性作用が強いのはコンブのフコイダンです。

フコイダンの化学構造

 
フコイダンの分子構造
フコイダンは、「フコース」という糖と、滑りの元である「硫酸基」、その他いくつかの糖が結合した塊の状態で抽出されます。
この塊の大きさを分子量と言い、フコイダンは「高分子多糖類」と定義づけられていますから、分子量は1万以上で、糖は10個以上結合している必要があります。
ただ、「これがフコイダンの構造です」というような決まった形はありません。海藻によってフコイダンを構成している糖の種類や数が異なり、それが機能性の違いになると考えられています。

また、分子量は吸収率に関係すると考えられますが、こちらは抽出時にメーカーがコントロールしています。
「低分子フコイダン」「高分子フコイダン」などの呼び方は、大きな塊のフコイダンをどこまで小さく分解しているかを表すものです。

フコイダンの健康パワー

フコイダンの健康パワー
フコイダンの研究が進むにつれ、様々な健康増進作用が明らかにされてきました。
ここからは、現時点で分かっている主なフコイダン効果をご紹介します。

抗がん作用

 
フコイダンといえば「がんに効く」というイメージでしょう。
でも、「どうやって?」と思いませんか?フコイダンの抗がん作用は色々ありますが、代表的な3つの作用を見ていきましょう。※1 

①アポトーシス誘導作用
アポトーシスとは「プログラムされた細胞死」という意味で、正常な細胞は古くなると自ら死ぬようにできています。
このアポトーシスが機能せず、どんどん増え続けるのが、がん細胞の特徴。
フコイダンは、がん細胞のアポトーシスを誘導し、自ら死ぬように仕向けることが分かっています。

②血管新生抑制作用
がん患者さんは、普通の食事をしていても痩せていく傾向があります。
がん細胞に栄養を吸い取られてしまうためですが、がん細胞は栄養を得るために自らの周りに新しい血管をつくります。
この栄養補給路である血管をつくらせないようにする働きが、フコイダンの血管新生抑制作用です。
がん細胞も栄養がないと生きてはいけません。

③免疫活性作用
健康な人でもがん細胞は毎日つくられますが、免疫細胞がやっつけて増えないようにしています。
フコイダンは免疫細胞を増やして強くすることで、抗がん作用を発揮します。
また、抗がん剤の副作用である免疫力低下にも効果的です。

※1 フコイダンの三大作用.統合医療と健康を考える会へ

美容効果

 
フコイダンは、褐藻類が乾燥や細菌から身を守り、傷を癒すために分泌している成分です。
肌につけると高い保湿効果があり、優れたバリア機能を発揮するため、化粧品にも配合されています。
また、フコイダンは抗酸化作用も認められており、老化の原因とされる活性酸素を打ち消す効果があります。

肝臓は薬物や栄養素の代謝において、中心的な役割を果たします。
抗がん剤の毒性をスムーズに代謝するためにも、肝機能を維持することが重要です。
フコイダンには肝細胞の再生を促す働きがあり、抗がん剤の副作用の重篤化を防ぐ効果が期待できます。

特に、コンブやメカブのフコイダンは、肝機能のサポート作用が高いことが分かっています。

不定愁訴改善効果

フコイダンには消化器粘膜を保護する作用があり、特にモズクのフコイダンでその効果が高いことが示されています。
胃部の不快感などの症状を訴える人を対象とした試験では、モズクの飲用によって症状が改善されました。

また、胃がんの原因となるピロリ菌陽性の人では、ピロリ菌の低減効果が認められました。

抗アレルギー作用

花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状は、好酸球という免疫細胞からヒスタミンが放出されることによって起こります。
フコイダンには、ヒスタミンの放出を抑制する作用があり、花粉症の人を対象とした試験でその効果が確認されました。

また、アトピー性皮膚炎モデルのマウスに対して、フコイダンが発症を抑えることが報告されています。

生活習慣病予防

フコイダンは、食品学では水溶性食物繊維に分類され、生活習慣病予防のために積極的に摂りたい成分です。
水溶性食物繊維の作用として、血糖値の上昇を抑え、コレステロール値を低下させることが認められています。

また、腸内に生息する善玉菌のエサになるため、腸内環境を整える効果があり、全身の健康増進に役立つとされています。

まとめ

 
がんに効く食品成分として大注目のフコイダン。
他にも、美容や生活習慣病、アレルギー疾患などにも効果があります。

原料となる海藻の種類によって生理機能に違いがありますので、選ぶ際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考文献:
海藻フコイダンの科学.山田 信夫.成山堂書店

近年ではがん治療の統合医療にも、フコイダンが用いられるようになっています。
中分子フコイダンが持つ作用が、がん治療に良い効果をもたらすと期待されているためです。

具体的には、フコイダンは抗がん剤との併用が可能であり、かつその効果を高めたり、副作用を軽減したりする可能性が示唆されています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

フコイダンには、まだまだ秘められたパワーがあると考えられます。

今後研究が進むことで、私たちの健康に対しても医療分野に対しても、さらなる恩恵をもたらしてくれることでしょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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