2021.06.30
フコイダン低分子フコイダンとは?特徴や構造などを解説
目次
フコイダンとは
フコイダンは、昆布やわかめといった褐藻類という海藻に含まれる食物繊維のことです。海藻の「ぬめり」のモトになっています。1913年にスウェーデンの研究者が発見して以来、さまざまな健康効果が明らかになっており、近年に至るまでたいへんな注目を集め続けている成分です。
フコイダンは、「フコース」という糖が多数連なったヒモ状の構造に、硫酸基やグルクロン酸などの飾りがついた「高分子多糖体」という基本構造が、さらにいくつも連なったもの。この基本構造が、フコイダンのさまざまな作用を発揮する上でとても重要です。
フコイダンと分子量
フコイダンについて詳しく知っていただくために、「分子量」についてまずお話します。
分子量とは
分子量というのは、物質の構造に含まれている元素の原子量の合計のことです。C(炭素)やH(水素)、O(酸素)といったものが元素で、これらの原子量を合計した分子量に単位はありません。原子量は、C=12、H=1、O=16のように決められています。
たとえば、水(H2O)の分子量は、H(1)×2 + O(16)×1 = 18 、二酸化炭素(CO2)の分子量はC(12)×1 + O(16)×2 = 44 です。一般的に、この分子量が大きいものほどたくさんの元素が使われた構造で、大きな塊であるといえます。
また、構造がまっすぐの糸状なのか、球のようになっているのか、枝分かれがたくさんあるのかなどによっても、大きさは変わります。フコイダンは、糸状の構造が連なりあったシートのようになっており、非常に大きな塊です。
フコイダンは、加工によって分子量を変えることがあるため、ここでは分子量が1000までのものを「低分子フコイダン」、1000~1000程度のものを「中分子フコイダン」、10000以上のものを「高分子フコイダン」と定義して話を進めていきます。
海藻の種類と分子量
*順番を入れ替えてここへ移動します(弊社にて対応します)
低分子フコイダン
分子量が1000までのものを「低分子」と定義していますが、低分子フコイダンとして販売されているものは、多くが分子量500以下です。低分子にすると、天然のフコイダンと何が変わるのでしょうか。
低分子フコイダンは吸収率を高めるために生み出された
分子量の大きな天然のフコイダンは、体への吸収率が悪いという難点がありました。そこで生み出されたのが、天然のフコイダンを小さく分けた「低分子フコイダン」です。
腸から吸収できるのは、分子量が3000程度までの物質と考えられています。昆布やわかめ、もずくなどから抽出される天然のフコイダンは、分子量が20〜30万。非常に大きいため、小腸から血液中に入り込む際のフィルターに引っかかってしまい、体にうまく吸収されません。
フコイダンは食物繊維の一種なので、そもそも体の中で消化・分解されにくい成分。体に取り入れる段階で小さくしておくことで、吸収の効率を上げることができるのです。
フコイダンの構造を壊さないことが大切
小さくすると吸収がよくなったり、即効性があったりするからといって、やみくもに小さくしてもいけません。フコイダンとしての働きを持ったまま小さくするには、必要な構造を壊さないことが大切なのです。
フコイダンは、「高分子多糖体」という独特の構造を持っており、この構造によってのちに説明するようなさまざまな効果を発揮します。例えば、海藻のぬめりの強さは、フコイダンに含まれる「硫酸基」の量によって変わることがわかっています。硫酸基は、フコイダンの代表的な作用である「抗がん作用」にも関わる大事な構造。硫酸基の構造を壊してしまうと、フコイダンの効果も弱まってしまいます。
つまり、分子量500〜1000の低分子フコイダンにまで小さくしてしまうと、「高分子多糖体」の構造が壊れてしまい、フコイダンとしての性質が弱まる可能性が高まるのです。
フコイダンの効果をしっかり得たいのであれば、「低分子フコイダン」はあまりおすすめできません。
中分子フコイダンの選択
そこで、天然のフコイダンと低分子フコイダンの間をとった中分子フコイダンをおすすめします。フコース、硫酸基、グルコン酸からなる基本構造が壊されていないのが特徴です。天然のフコイダンよりも小さく身体に吸収されやすい一方で、高分子多糖体として機能する大きさは維持されています。
フコイダンの効果をうまく取り入れたい方には、中分子フコイダンがよいでしょう。
中分子フコイダンについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>中分子フコイダンとは?
フコイダンの三大作用
さきほども少し触れましたが、近年フコイダンの研究が進み、フコイダンには抗がん作用があることが報告されました。
日本人の死因第1位、がんの治療方法は多岐にわたり、近年では、統合医療もおこなうようになっていますが、なかでもフコイダンに注目が集まっています。
>>がんとはどのような病気なのか?その正体と治療法についてご紹介
フコイダンの抗がん作用につながる、代表的な3つの作用についてご紹介します。
アポトーシス作用
フコイダンには、アポトーシス作用といって、異常のある細胞を自然に消滅させる作用があります。
細胞は、分裂して増える際、DNAの構成にミスがあったり、うまく分裂できなかったりすると、消滅するようにあらかじめプログラムされています。このプログラムがアポトーシスです。しかし、がん細胞はアポトーシスのプログラムが壊れており、自然に消滅せずに生き残り、増殖してがんを発症させてしまいます。
フコイダンは、がん細胞にもアポトーシスが起こるように働きかけることが実験で明らかになっています。この働きを、がんの予防に使えないだろうかということで、日々研究がおこなわれています。
免疫力強化
フコイダンは、体の免疫を担う「白血球」の働きを調整します。
白血球の中でも、とくに「NK細胞」というリンパ球は、がん細胞を直接攻撃して排除する働きを持つことで有名です。フコイダンは、NK細胞の働きを活発にしてくれます。実際、フコイダンを摂取した人のNK細胞は、働きが活発になっていることが確認されました。
実際にがんの発症を予防したり、がん細胞の増殖を抑えたりするかどうかはまだわかりませんが、これからの研究に期待が集まっています。
血管新生抑制作用
フコイダンは、がん細胞が新たな血管を作り出すのを抑える「血管新生抑制作用」を持ちます。
がん細胞は、自分たちが増殖するためにたくさん栄養を取り込もうと、細胞の周りに新しい血管をたくさん作る性質があります。実際に使われている抗がん剤のなかには、血管を作らないように阻害する血管新生阻害剤が使われているほど、重要な作用です。
フコイダンにもがん細胞が血管を作らないよう邪魔する作用があり、現在では、統合医療で抗がん剤と併用してフコイダンが使われています。
一部の臨床試験では、他のがん治療との併用により、進行がん患者の生活の質を改善したり、治療効果を高める可能性が示されています。
以下の記事では、実際の臨床例も紹介しています。フコイダンとがん治療について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
>>フコイダンはがんに作用する?フコイダン療法と低分子・中分子・高分子の違い
まとめ
今回は、フコイダンについて、その構造や働きを解説しました。フコイダンは、天然のものでは大きすぎて吸収が難しく、小さく加工した低分子フコイダンでは効果が弱まってしまいます。フコイダンの効果をより効率的に取り入れるためには、中分子フコイダンを摂取するのがおすすめです。
近年ではがん治療の統合医療にも、フコイダンが用いられるようになっています。
中分子フコイダンが持つ作用が、がん治療に良い効果をもたらすと期待されているためです。
具体的には、フコイダンは抗がん剤との併用が可能であり、かつその効果を高めたり、副作用を軽減したりする可能性が示唆されています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
フコイダンには、まだまだ秘められたパワーがあると考えられます。
今後研究が進むことで、私たちの健康に対しても医療分野に対しても、さらなる恩恵をもたらしてくれることでしょう。
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