2023.05.30
がん急性骨髄性白血病とは?症状・治療・余命までを解説
進行速度が速く、早期発見と治療が求められる急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:以下AML)。この病気はどういったメカニズムで発症するのでしょうか。本記事では急性骨髄性白血病の仕組みや症状、治療などについて解説します。現状では予防法のない病気ですので、なるべく早期発見ができるように役立ててくださいね。
目次
骨髄性白血病を紐解く。血液細胞の生成(造血の仕組み)とは?
(参照:https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=2)
骨髄性白血病は、骨髄の中で起こる造血という現象に異常が発生している病態です。まずは造血の仕組みについて理解しておきましょう。造血とはすなわち、血液の成分を骨髄の中で作り出すこと。一般的に赤血球や白血球、血小板などの血液細胞は、造血幹細胞と呼ばれる細胞から白血球や赤血球などの各細胞に成長する過程(分化)を経て生成されます。
この造血過程は骨髄で行われ、骨髄は胸骨や骨盤などの大きな骨の中に存在します。造血幹細胞は骨髄内に存在し、これが分化して赤血球、白血球、血小板といったさまざまな血液細胞に変化していきます。
急性骨髄性白血病に見られる一般的な症状
急性骨髄性白血病の症状は、前述した通り異常白血球の増殖によって正常なほかの血球成分(赤血球や血小板など)が減少することで症状が現れます。骨髄という狭い容器の中に入る血球成分には限度があり、白血球の異常細胞の増殖により容量が過密になり、正常血球数が減少するのです。
以下に急性骨髄性白血病によく見られる症状を解説します。
疲労感、貧血
疲労感や体力の低下は、急性骨髄性白血病でよくみられる初期症状です。これは、骨髄内が異常な白血球で占められて正常な赤血球の生成が減少することで起こります。赤血球は酸素や栄養素を運搬する役割を担っているため、赤血球が減少すると血中酸素が少ない状態に陥り、結果として、体全体のエネルギーや酸素供給が減少し全身の疲労感や倦怠感につながります。
発熱や感染症
白血球は免疫系の一部であり、感染症に対する防御機能を担っています。急性骨髄性白血病では白血球数は増えるものの、正常な働きは期待できません。なぜなら、好中球という白血球の45~75%を占める病原菌を排除する成分が減少するためです。これにより免疫系が弱くなり感染症に対する耐性が低下、特に発熱や感染症にかかりやすくなります。
歯肉の出血や内出血
急性骨髄性白血病では血小板も減少します。血小板は血液凝固に関わる血液成分です。急性骨髄性白血病では正常な血小板が不足し、血液の凝固能力も低下します。その結果、歯茎などの小さな傷による過剰な出血や内出血、頻繁な鼻血、身に覚えのない内出血といった症状が起きやすくなります。
骨痛や関節痛
異常な細胞が骨髄内で過剰増殖すると圧迫を引き起こし、骨や関節に痛みが現れることもあります。特に、骨髄が多く存在する骨(腰骨、骨盤など)は、痛みを感じやすい部位です。
食欲不振や体重減少
急性骨髄性白血病の患者さんは食欲がなくなったりや体重が減少することがあります。これは、酸素やエネルギー運搬がうまくいかなくなる影響と、白血球細胞が全身に広がり脾臓や肝臓などの臓器に侵入することで、腹腔内の臓器に腫れが生じにることにより起こります。結果として、腹部膨満感や食欲の低下、場合によっては食事の摂取自体が難しくなることもあります。
急性骨髄性白血病を見つける検査
急性骨髄性白血病の主な診断方法は、患者さんの骨髄および血液を詳しく調べることです。以下に、急性骨髄性白血病の診断方法について詳しく解説します。
血液検査
血液検査は急性骨髄性白血病の初期診断に活用されます。血液検査によって、白血球数や赤血球数、血小板数などの異常が検出されます。異常な白血球の数が増加と正常な赤血球や血小板の減少、こういった急性骨髄性白血病の特徴が見られるかどうかを確認します。
骨髄の細胞診による鑑別検査
血液検査で異常が疑われた場合、骨髄などから少量の骨髄液を取り(骨髄穿刺)、顕微鏡下で採取した細胞を観察します。ここで採取した細胞は、急性骨髄性白血病の診断と治療薬の選択や予後の予測を立てるのにも役立ちます。
WHOの定義では、骨髄検査で白血病細胞が20%以上あると急性白血病との診断されます。また、採取した骨髄液や骨髄組織を用いて、染色体検査や遺伝子検査などを行うと染色体や遺伝子の異常が確認できることもあります。こういった具体的な検査を経て、正しい診断結果を得た上で治療法の検討に進みます。※1
※1 一般社団法人 日本血液学会
第Ⅰ章 白血病
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_1.html
一般的な治療から骨髄移植までを解説
急性骨髄性白血病は、診断が確定すれば早急に治療を開始し、基本的にはじめは抗がん剤での完全寛解を目指すのが原則です。急性骨髄性白血病の治療方法について詳しく解説します。
化学療法
化学療法は急性骨髄性白血病の主要な治療法です。急性白血病は非常に進行が早い疾患で、診断後直ちに入院となり治療が開始されます。治療は強力な抗がん剤を複数組み合わせた「多剤併用化学療法」と呼ばれる化学療法を2段階に分けて進めます。
化学療法の第1段階は「寛解導入療法」と呼ばれ、全身の白血病細胞を一気に減らし、完全寛解を目指します。この第1段階で完全寛解が得られたとしても白血病細胞は残っていることも多く、放置すると再発する危険性があるので第2段階である「地固め療法」に進みます。
地固め療法は強力な化学療法を数ヶ月かけて繰り返します。残存している白血病細胞をさらに徹底的に攻撃し、限りなく「0」に近づけることでより強固な完全寛解を目指します。
造血幹細胞移植
一部の急性骨髄性白血病患者さんに対しては、骨髄移植(造血幹細胞移植)が検討されることもあります。 移植は患者さんの白血病細胞を死滅させ、健康な造血幹細胞を移植することで正常な造血機能を復活させる治療法です。
寛解導入療法で完全寛解が得られない場合や、完全寛解は得られたものの予後がよくないと予測される場合、また化学療法や分子標的療法が難しい場合、再発した場合などに検討されます。
白血病治療の多くの場合「同種造血幹細胞移植」と呼ばれる他人の造血幹細胞を提供してもらい、移植する方法が検討されます。 また、最近では臍帯血を用いた造血幹細胞移植が行われる場合も多いようです。臍帯血を用いた移植は、適合する型が見つかりやすい、拒絶反応は比較的軽めといったメリットもあります。 一方で定着するまでに時間がかかる傾向にあるといったデメリットもあります。※2
分子標的療法
近年、急性骨髄性白血病治療において分子標的療法も注目されています。分子標的療法は、白血病のがん細胞だけに見られる分子をピンポイントで攻撃できる正常な細胞には作用しにくい薬剤を用いて治療します。 急性白血病の中でも染色体異常による病態に効果的に作用すると考えられています。
※2 特定非営利活動法人 兵庫さい帯血バンク
さい帯血移植の流れ
https://www.saitaiketu.org/about/transplant
急性白血病の治療後の予後は?
治療後の予後には「患者さんの特徴」「白血病細胞の特性」が影響します。
患者さんの以下のような特徴を持つ場合、予後の悪化が懸念されます。
- 年齢が60歳以上である
- 体力が低下している
- 合併症を起こしている
また、白血病細胞の特性として、染色体異常が見られるケースや、初発か再発かなどは予後に影響を及ぼす因子です。また、診断時の白血球数、細胞の形態なども影響します。
一般的に65歳未満の急性骨髄性白血病患者さんの約80%で完全寛解が得られるとされています。さらにその中の40%には5年以上症状が出現しない「治癒」も期待できます。※3
急性白血病の場合、基本的には一連の治療終了後も4〜5年間は定期的に血液検査・骨髄検査を行い、再発の兆候がないかをチェックしながら経過観察を続けます。
再発が見られず完全寛解が5年以上継続すれば、急性白血病は治癒したと考えます。
急性骨髄性白血病の診断後の患者さんの生活の変化
急性骨髄性白血病との確定診断を受けた場合、早急に抗がん剤投与などの治療が開始されます。患者さんは大きなショックや戸惑いなどの感情を処理しきれない状態で治療が進むことになりますので、医療従事者をはじめ家族や親近者のフォローは必要不可欠です。
多くの場合、患者さんは診断が確定したら早期に入院治療を開始します。 患者さんは感染症に対して弱くなっている状況なので「無菌病棟」という外の空気が流れ込まない、感染症にかかりにくい環境を維持した病棟に入院します。
施設によりさまざまですが、多くはガラス窓越しに面会をすることになるため、患者さんは不安の中、1人で闘病生活を送ることになるでしょう。
無事に治療を終え退院したあとは、無理をしないながらも適度に体を動かし、体力の向上や体調を整える意識を持つのも重要です。
また、定期検査を忘れず体調の変化にはできるだけ気を配るようにします。感染症から身を守るために外出時にはマスクを着用し、手洗いやうがいなどをこまめにして清潔を心掛けましょう。
中には化学療法の影響で食欲が低下したり、美味しく食事を食べられないなどのケースもあります。そうした場合でも工夫しながらなるべくいろいろな栄養素を摂り、体力が低下しないように意識しましょう。
急性骨髄性白血病の診断がつけば、患者さんの環境は一変します。患者さんにとってさまざまなサポートが必要になるので、密なコミュニケーションを取りながら連携を図れるよう関係性を維持していくのが重要です。
※3 JALSG
5.急性白血病
https://www.jalsg.jp/leukemia/acute_leukemia.html
まとめ
急性骨髄性白血病(AML)は、異常な白血病細胞が増殖し、正常な血球生成を妨げる疾患です。特徴となる症状は疲労感や貧血、発熱、感染症、出血傾向などで、これは正常な血球数が減少することにより発生します。
診断は血液検査と骨髄細胞診で行われ、骨髄内の白血病細胞の割合が診断に影響します。治療は化学療法が主流で、2段階アプローチで行われます。病態によっては、造血幹細胞移植や分子標的療法も検討されるでしょう。
診断後は早急な治療が必要であり、患者さんと家族のフォローや支援が欠かせません。入院治療中は感染対策や健康管理が重要であり、治療後も定期的な検査や健康維持が大切です。患者さんや関係者とのコミュニケーションを大切にし、それぞれに負担にならない治療生活を目指しましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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