1. コラムTOP
  2. がん
  3. 【肝臓がんステージ3】症状を進行度から解説。余命や生存率を知り、適切な治療で完治を目指す
がん

【肝臓がんステージ3】症状を進行度から解説。余命や生存率を知り、適切な治療で完治を目指す

【肝臓がんステージ3】症状を進行度から解説。余命や生存率を知り、適切な治療で完治を目指す

沈黙の臓器といわれている肝臓がん。肝臓がんステージ3の場合、どのような症状が現れるのでしょうか?この記事では、肝臓がんステージ3の気になる症状や治療法、生存率について解説します。

※ 肝臓がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>肝細胞がんとは?その原因と治療法について

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

肝臓がんステージ3の症状?むくみ・黄疸とは?

肝臓の病気は、消化器系臓器のなかでは比較的ゆっくりと進行します。 肝臓はとくに予備力が大きいため、自覚症状が現れにくいという特徴があります。ステージ3であっても自覚症状が無い患者さんもいます。自覚症状がある場合でも、食欲不振や体のだるさなど、ちょっとした体調不良のような症状で患者さん自身が気にも留めていないこともあります。

※予備力:対象の臓器が治療などを含めたストレスにどれだけ耐えられるのかを示す指標

ときに「なんとなくいつもより、むくみが気になる」「肌の色や眼球の色が気になってきた」などの、むくみや黄疸の症状が見られることもあります。

むくみ

肝臓ではアルブミンというタンパク質を生成しています。アルブミンの特徴として血液中の水分と結合し、水分量を調整する役割があります。

ところが、肝臓の働きが低下するとアルブミンの量が少なくなるので、血管内の水分の含有量が増加します。そのため、浸透圧の影響により血管内に含まれている水分が血管の外に漏出し、むくみとなるのです。

この現象が皮膚で起きれば「むくみ」となり、腹部で起きれば「腹水」となります。

黄疸

黄疸とは目の白い部分が黄色くなったり、皮膚が黄色っぽくなったりする症状です。黄疸は、肝臓の症状が進むにつれて出現しますが、その要因は「胆汁」です。胆汁は肝臓で作られており、食物の消化吸収をサポートする役割を持ちます。

胆汁の成分はおもに「胆汁酸」と「胆汁色素(ビリルビン)」にわけられています。ビリルビンは赤血球中に含まれるヘモグロビンが、肝臓で分解されたときに生成されます。

しかし、人体にとってはビリルビンは有害物質。通常は便として排泄されます。便が黄色から茶色なのはビリルビンによる着色の影響です。

肝臓に障害が起き、ビリルビンの排泄がうまくいかなければ、本来便として排泄されるはずのビリルビンが血液内に漏出します。そのため、全身にビリルビンが回り、眼球や皮膚が着色され、黄疸としての症状が出現するのです。

ちなみに、黄疸が出ると尿も黄色くなります。血液中に含まれているビリルビンが尿として排泄されることに起因します。

肝臓がんステージ3のステージ評価

肝臓がんの進行度を評価する際には、「TNM分類」が使用されます。
TNM分類は以下のような判別基準のひとつです。

  • T:原発のがんの広がり、深さ、大きさなど
  • N:がん細胞のリンパ節への転移の有無と広がり
  • M:原発から離れた臓器への遠隔転移

肝臓がんステージ3はNとMには評価はないものの、T因子としては肝臓の臓器内に原発がんがとどまっている状態です。しかし、ステージ2と比較して腫瘍のサイズが大きく、肝臓の主要な血管などにがん細胞の浸潤が見られます。

※ 浸潤:がんが周りに広がっていくこと

肝臓がんステージ3のステージ評価
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/treatment.html

また、T因子の

  • 腫瘍が1つ
  • 腫瘍の大きさは2cm以下
  • 脈管(がん周囲の血管やリンパ管)へのがん細胞の侵襲がない

のうち、1つが該当する場合を「肝臓がんステージ3」としています。

※侵襲:がんが入り込むこと

肝臓がんの基本治療となる3本柱「手術・焼灼・塞栓」とは?

肝臓がんの基本治療となる3本柱「手術・焼灼・塞栓」とは?
肝臓がんの基本的な治療法はおもに以下の3つに分類されます。

  • 手術でがん腫瘍の切除、摘出
  • がん細胞を焼灼
  • がん細胞周囲の血管からアプローチする塞栓治療

肝臓がんの病態像や、肝臓の機能がどのくらい保たれているかにより治療方針は異なります。ときとして複数の治療法を複合して進めることもあります。

肝臓がんは他の臓器に比べ、手術以外の治療法も多種多様です。 その理由のひとつとして肝臓がんは主に、肝炎や肝硬変から移行して発症するからです。肝機能が悪いと手術に耐えられない症例も多く、手術後の回復も難しいため肝臓の疾患では手術以外の治療法が開発されてきました。 ここでは肝臓がんの治療法の主軸のひとつ「焼灼療法」について解説します。

焼灼療法

焼灼療法とは何らかの熱エネルギーをがん細胞に照射し、がん細胞そのものを焼き殺す治療法です。 おもな焼灼療法には「ラジオ波焼灼療法」と「マイクロ波凝固療法」があります。それぞれについて解説します。

ラジオ波焼灼療法

ラジオ波焼灼療法は、ラジオ波を熱源としてがん細胞を死滅させる方法です。ラジオ波焼灼療法は、がん腫瘍に直接針を挿入してラジオ波による熱を発生させ、がん細胞を凝固させます。針を刺すだけで、腹部を切開せずに治療できます。

体への負担が少なく、繰り返しできる治療法です。しかし 腫瘍のサイズが大きい場合や、がん細胞が他の臓器に接近している場合は選択できません。

がん診療ガイドラインを参照すると、ラジオ波焼灼療法は、腫瘍のサイズが3cm、3個以内を適応としています。また、腹水などがある場合は適応となりませんが、治療などにより取り除くことができれば治療対象となります。

ラジオ波焼灼療法で問題になるのは、がん細胞が別のところに生じてしまう「播種(はしゅ)」です。焼灼療法によってがん細胞の焼き残しや焼きムラがあると、針を引き抜く際にがん細胞がその針に付着し、穿刺した道沿いに散らばってしまう可能性があるのです。

頻度は非常に稀ですが、重要な合併症のひとつです。播種に対しては、がんを触った針は焼灼が終わるまで動かさないこと、焼き残しや焼きムラが出ないようにしっかり焼くこと、治療が終了した際には穿刺ラインを焼きながら針を抜くことなどの予防策を講じながら治療を進めます。

マイクロ波凝固療法

マイクロ波凝固壊死療法は2450MHzのマイクロ波を発生させ、その振動熱でがん細胞を凝固壊死させる治療法です。

身近なものでは電子レンジに採用されているのがマイクロ波。マイクロ波凝固壊死療法には経皮的にアプローチする方法と、開腹して直接肝臓内の腫瘍に電極針を刺して照射する治療法の2種類があります。残った肝臓の機能をしっかり温存し、肝切除とほぼ同等の有効性を持つとされています。とくに開腹方法であれば、実際に目で見て穿刺しがん細胞を死滅させることができます。

手術療法

手術療法は手術での切除が予後に好影響と判断される場合に行われます。具体的には腫瘍の数が数個と限られているかつ切除が可能、さらに肝臓の予備力が保たれている場合に選択されます。

手術療法について詳しくは知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
>>【肝臓がんステージ2】主な症状とは?余命や生存率を伸ばすためにできること

塞栓注入治療

肝臓がんにおける塞栓注入治療とは、肝臓がん腫瘍の栄養血管でもある「門脈」や「肝動脈」を遮断し、腫瘍へのエネルギー供給を防ぐ治療法です。血流の豊富な肝臓におけるがんは、その成長に多くの血流量を必要とします。血流が豊富な肝臓ならではの治療法です。

塞栓注入治療について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
>>【肝臓がんステージ4】余命や生存率とは。知っておくべき適切な治療法と完治に対する考え方

その他の治療

肝臓がんの治療では、手術療法や焼灼療法では治療が難しい症例で用いられる「化学療法」や「放射線療法」もあります。

化学療法では抗がん剤や分子標的薬を用いてがん細胞の死滅を狙います。放射線療法ではがん細胞をターゲットとして照射します。腫瘍の個数が多い場合や、遠隔転移がみられる場合に選択されます。

肝がんステージ3の生存率は?

肝臓がんステージ3の5年実測生存率は14.2%。そんななかでどのように余命の延長を追求するのが良いのでしょうか?

肝臓は体の代謝機能や体の負担となる物質の解毒作用を担っています。肝臓の負担を少しでも少なくし、回復につなげられる生活習慣を意識することが重要でしょう。

まず意識したいのは「食生活」です。 肝臓に負担とならないような適切な量のエネルギーを摂取し、肝臓の機能回復をサポートするビタミンやミネラルをしっかりと摂取します。 また、とくに肝臓の解毒作用の負担になる食品添加物の摂取などには意識を配りたいところです。

生存率を伸ばすための食生活について詳しくは知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
>>【肝臓がんステージ2】主な症状とは?余命や生存率を伸ばすためにできること

 

肝臓の状態に適した運動習慣で余命延長・完治を目指す

肝臓の病状が進行してくると、体のだるさや疲労感により運動量が減ってしまうこともあります。また、かつて肝臓病では安静第一とされていましたが、現在では過度な安静は肥満や脂肪肝を招くうえ、全身の筋肉量が減ってむしろ肝臓の負担が増すということもわかってきました。

筋肉は体のタンパク質の貯蔵庫ともなっています。運動時のおもなエネルギー源は肝臓から補給される糖質です。肝機能が低下して糖質が不足してくると、体のタンパク質を分解してエネルギー源に使います。

そうなると筋肉が減少してしまい筋力とともに身体機能も低下し、肥満や糖質代謝の異常などにつながります。結果として肝臓の機能に負担をかけてしまうのです。

肝臓にとって良い運動とは、毎日無理なく続けられ肝臓の機能に負担をかけない運動です。自分のペースでできる有酸素運動を選ぶと良いでしょう。

ゆっくりと酸素を取り込むと、体内の糖や脂肪を、時間をかけてエネルギー消費できます。 運動経験のない人や運動習慣のない人でも一日15分ぐらいを目安にできるウォーキングなどであれば無理なく続けられるはずです。 楽しみながら習慣化できることを目標に選ぶと良いでしょう。

ただし、肝臓の機能が一定以下になると、タンパク質代謝に伴うアンモニアの処理や糖質の代謝などの肝臓の仕事を、筋肉が代行することも明らかになっています。肝臓の予備力が低下し筋肉が減少している場合には、肝臓の病状に影響を与えることもあります。運動をはじめる前に医師に相談して、問題がないようであれば自分の肝臓や筋肉量にあう運動を選ぶようにしましょう。

まとめ

まとめ
肝臓がんステージ3では、はっきりとした症状が出現しないケースもあります。なんとなく不調を感じる程度かもしれませんが、異変を放置せず早めの受診を検討することが、多くの治療の選択肢をとれる近道となるでしょう。

肝臓がんの早期発見や予後の余命延伸にむけて意識すべきことを理解し、肝臓の予備力をできるだけ温存しながら、できることから実践していきたいですね。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

1

この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

おすすめの関連記事

スマホ用のフローティングバナー