2022.01.31
がんスキルス胃がんとは?原因・特徴・治療法から予後までを解説
スキルス胃がんは、その独特の進行形態と診断の難しさから、難治性のがんといわれています。
主に胃の粘膜の下層で進行し、初期段階での発見が困難であるため病状が進行してから見つかるケースも少なくありません。
この記事では、スキルス胃がんの基本的な特徴、原因、治療や予後について掘り下げていきます。
※胃がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>>胃がんとは?その症状や治療法などについてご紹介
目次
スキルス胃がんとは
スキルス胃がんとは、主に粘膜の奥側で増殖し、胃粘膜全体が硬くなるタイプの胃がんです。粘膜表面からは見つかりにくいタイプのがんで、比較的若い年齢層の女性に多く見られます。
早期発見が難しく、見つかったときには多くのケースで進行しているため、進行の早いがんというイメージを持たれています。
スキルス胃がんは多くの場合、一般的な胃がんとは異なり胃の壁をじわじわと浸食するように進行するため、胃粘膜の異変がわかりにくく見つけにくいため発見が遅れてしまいがちです。
スキルス胃がんは「4型」「LP型」「未分化型」とも呼ばれている
スキルス胃がんは近年になってその名称がついたことで、「一般的な胃がんとは異なる病態」としてとらえられるようになり認知度が高まってきました。
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/about.html#:~:text=%EF%BC%94%EF%BC%8E-,%E7%B5%84%E7%B9%94%E5%9E%8B%E5%88%86%E9%A1%9E,-%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E7%B5%84%E7%B9%94)
スキルス胃がんは、形態としては未分化型の腺がんです。がん組織がバラバラになり周囲に染み込むように入り込んで増殖するタイプのがんを未分化型の胃がんと呼称しています。
また、進行が早いという特徴も持ち合わせています。
正常な組織との境界は多くの場合不明確で、手術による切除も難易度が高いといえるでしょう。
スキルス胃がんの原因
(参照:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/287.html)
スキルス胃がんの原因は、現在のところ完全には特定されていませんが、複数のリスク因子が関与していると考えられています。
最も注目されている原因の一つ「ヘリコバクター・ピロリ菌」は胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、スキルス胃がんのリスクを高めることが知られています。その他、生活習慣、食習慣、ストレス、家族性の要因などもスキルス胃がんの発生に影響を与える可能性があります。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染は、未感染の人に比べると胃がんの発症リスクを約5倍に高めることもわかっています。
適切な除菌治療はスキルス胃がんのリスクを減少させることができるため、感染が確認された場合は除菌治療を受けることも検討しましょう。
ヘリコバクター・ピロリ菌について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>スキルス胃がんになりやすい人は?原因と早期発見・予防について解説
スキルス胃がんの症状・前兆について
スキルス胃がんを含めて、胃がんは基本的に初期症状や前兆に乏しいがんであるといえます。症状が出たとしても、他の消化器疾患にも生じる食欲不振や胸やけなど、日常的にも感じることのある症状です。
胃がん特有の症状はなく、特にスキルス胃がんの生じやすい若年者は多少の不調ととらえられてしまいがちで「疲れがたまっているのかな……」「ストレスかな?」と見過ごされやすいです。
症状自体は軽くてもスキルス胃がんだった場合、自覚症状がある時点で病状が進行しているケースも少なくありません。
症状が長く続く場合には医療機関への受診を検討するようにしましょう。
スキルス胃がんの症状について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>スキルス胃がんの症状は?早期発見方法や治療法について解説
スキルス胃がんの検査
(参照:https://www.ganclass.jp/kind/lung/know/patient)
日本において、がんの死亡原因の中でもっとも多いのは「胃がん」です。
一方、国で対策に取り組んでいるため、定期的に検査が受けられる体制も整っています。地域や職場の定期検診などで精密検査が必要といわれた場合、必ず追加の精密検査を受けることを検討しましょう。
ここでは、スキルス胃がんを診断するための検査について解説します。
血液検査(腫瘍マーカー)
定期検診などに含まれる血液検査とは異なりますが、希望すれば健診時の血液検査と合わせて検査項目として抽出してもらうことができます。
体内の細胞のがん化を数値として測定することができる「腫瘍マーカー」という検査は、血液検査でデータ化することが可能です。
胃がんがある場合に血液中に増える腫瘍マーカーは、「CEA・CA19-9・AFP」などと呼ばれます。胃がんが進行したり再発したり、転移したりすると腫瘍マーカーが基準値を超えて上昇する場合があります。
早期の胃がんでは腫瘍マーカーが陰性であることもほとんどですが、進行胃がんでは数値が上昇することもあります。
画像診断
スキルス胃がんを見つけるためには、画像診断も有効です。ここでは、スキルス胃がんを特定するために活用される画像診断について解説します。
バリウム検査
バリウムという造影剤を口から摂取して、消化管内のとおり方をレントゲンで撮影する検査です。バリウムは人体に無害ではありますが、消化も吸収もされないため検査後は下剤を飲んで排泄しなくてはいけません。
バリウムがくっついた粘膜の形状を撮影することで、粘膜の状態を知ることができます。胃の粘膜の小さなくぼみやシワやひだまでチェックすることが可能で、がんやその疑いがあるかどうかを判定するのに役立ちます。
CT・MRI
ドーム状の撮影機器に入り、体の周囲からレントゲンや磁器を照射して撮影をします。コンピューターで体の内部情報を解析しながら、体内の様子を輪切りの画像として抽出する検査です。
胃がんそのものの大きさだけではなく、転移や周辺の臓器への広がり具合も調べることができます。CT検査にしてもMRI検査にしても、造影剤を使って撮影するケースもあります。
造影剤検査は、体内に薬を注入して撮影するため、よりきれいで鮮明な画像を抽出できます。体内に薬液が入る際に熱く感じることもありますが、基本的にはそれ以外の苦痛はほとんどない検査です。造影剤に含まれているヨード物質にアレルギーがある場合は、造影剤検査は受けられません。
PET
ブドウ糖類似物質に放射性同位元素を結合させた薬剤を体内に注射し、その薬剤がどこに集まるかを調べることで、全身を一度に撮影できる画期的な検査方法です。がん細胞は通常より多くのブドウ糖を消費するため、この薬剤はがん細胞に多く集まります。薬剤からでてくる放射線は画像として検出されて、体内のどこにがんがあるのかを、全身を通して一気に検査することが可能です。
内視鏡
内視鏡検査は通称胃カメラともいわれ、外からは見えない胃の粘膜を直接観察し撮影・記録もします。先端にライトと小さなカメラがついたチューブを胃のなかまで挿入し、画像に映し出すことで、胃の内側の状況を医師が直接確認できるのです。病変がある場合には、その広がりや深さなどもあわせてチェックできます。
エコー
エコー検査は一般的に超音波検査といわれている方法です。胃がんの精密検査の場合は内視鏡検査とあわせておこなわれる「超音波内視鏡検査」のことを指すことが多いです。
この検査は、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて胃粘膜からさらに粘膜の下の深層部分、胃の壁やその外の組織などを超音波を用いて観察し、胃がんが周辺組織にどれぐらい深く広がっているか確認をするのに役立ちます。また、あわせて胃の外側のリンパ節の腫れなども確認できるため、リンパ節の転移の様子などについて調べることも可能です。
生検
生検は多くの場合、内視鏡検査のときに同時に疑わしい病巣部の細胞を摂取しておこないます。採取した粘膜の組織を顕微鏡で調べ、細胞を観察します。
がんであるかどうかをチェックするとともに、がんであればどのような種類なのかその悪性度もあわせて調べます。生検がおこなわれて初めてがんとしての診断がつきます。
スキルス胃がんの発症頻度
スキルス胃がんは、胃がんのなかでも比較的希少なタイプです。2017年のデータによると、スキルス胃がんは全胃がんの約7%で、進行胃がんの場合にはその割合が15%に上ります。
スキルス胃がんは、他のタイプの胃がんに比べて早期に腹膜播種(※)を起こす傾向が強いです。発見時にはがんが進んでいることが多く、治療が困難で予後も不良です。このがんの浸潤性の高さと拡散性は、治療を困難にする大きな要因となります。そのため、定期的な検診と早期発見が非常に重要です。
(※)腹膜播種:腹膜播種はがん細胞が原発巣から離れて腹膜に移行し増殖する、悪性腫瘍における転移の一つ
スキルス胃がんの男女差
スキルス胃がんの発症には男女差が存在します。一般的に胃がんというカテゴリで考えると女性よりも男性のほうが胃がんに罹患する確率が高いです。
しかしながらスキルス胃がんに限定した場合、女性のほうが罹患率が高いという研究結果もあります。一部の研究では女性ホルモンとの関係性も示唆されていますが、はっきりとした理由はわかっていません。
スキルス胃がんの治療
スキルス胃がんであっても、基本的な治療方法は胃がんと大きく変わりはありません。しかしながら進行した状態で発見されるケースが多いため、取れる選択肢が少ないのも実情です。
手術
スキルス胃がんは、進行胃がんと呼ばれているため手術ができないと思われるケースもありますが、病状や進行度によっては手術適用となる症例もあります。
治療を目的とした手術がおこなわれる場合のほかに、生活の質を上げるために病巣部を切除する手術などもあり、手術適用となるケースはさまざまです。
化学療法
スキルス胃がんにおいて手術ができない場合、メインとなってくる治療法が化学療法です。がんの進行を抑えて症状を軽減したり延命を図るために用いられます。
胃がんの化学療法で使われる薬剤にはさまざまな種類があり、複数の選択肢のなかから病状や胃がんのタイプに合わせて薬剤の選択をおこないます。
化学療法では主に複数の薬剤を並行して使う多剤併用療法をおこなうのが一般的です。また最近では分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬なども用いられ、多数の選択肢が持てるようになりました。
がん治療に用いられる薬剤の種類について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>抗がん剤の種類について
腹膜内化学療法
スキルス胃がんの画期的な治療法として近年話題になっているのが「腹膜内化学療法」であり、「腹膜播種」に対して有効な治療とされています。
腹膜内化学療法は抗がん剤を直接腹腔内に注入する方法で、特にスキルス胃がんのような進行性の胃がんに対しておこなわれています。
腹膜播種を抑制し、患者の生存期間の延長を目指すための治療です。2020年7月からは、この治療法の有効性を確かめるために4型進行胃癌における術後、あるいは周術期補助化学療法としての全身・腹腔内併用化学療法と全身化学療法の比較を目的とした治験が開始されました。
この治験により、スキルス胃がんにおける腹腔内化学療法の効果と安全性が明らかになることが期待されています。
治験の内容としては、再発するまでの期間、生存期間、腹膜に再発するまでの期間、副作用などが詳細に評価される予定です。
治療の選択肢が広がることを通じて、スキルス胃がんにおいてより効果的な治療方法の確立が期待されています。
スキルス胃がんの生存率・予後
(参照:https://gan-mag.com/gastrointestinal/8826.html)
スキルス胃がんは膵臓がんとともに並ぶ難治性のがんといわれています。その理由として、スキルス胃がんが分類されるステージ4の5年生存率は7%台。数字だけ見ると悲観的であるといわざるを得ないでしょう。
そのなかでも、スキルス胃がんの5年生存率は0~9.5%といわれていて、施設や医師の腕により有意差があるのも実情です。
そのため、長く健やかに過ごすためには、日頃から検診を受けて意識を高めておくことも重要です。
スキルス胃がんの予防・再発防止の方法
スキルス胃がんの予防と再発防止においては、早期発見が極めて重要です。早期に発見されたスキルス胃がんは手術によって根治が可能であり、5年生存率が約50%に達するとされています。
しかし、スキルス胃がんは自覚症状が少なく、早期発見が困難なケースも多いため、定期的な胃の検査が必須といえます。
日頃から検診を受ける
胃カメラ検査はスキルス胃がんの早期発見には不可欠です。この検査により胃の内部を直接視覚化し、疑わしい部分から組織を採取して病理検査をおこなうことができます。これにより、早い段階でがんの種類や進行度を正確に把握できます。万が一スキルス胃がんであっても早期治療により完治が期待できます。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除去治療を受ける
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染は、スキルス胃がんのリスクを高める要素の一つです。この菌は胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がんの進行を促進することが知られています。
ヘリコバクター・ピロリ菌の検査と除菌治療は、胃がん、特にスキルス胃がんの発症リスクを低減させることもわかっています。除菌治療を受けることで胃の炎症が改善され、胃潰瘍や胃炎の再発予防にもつながります。
まとめ
スキルス胃がんの早期発見は治療の選択肢を広げます。スキルス胃がんは診断が難しいため、定期的な健康検診とリスク要因への対策が重要です。
最新の医療技術と継続的な研究を通じて、治療法の改善なども進められていますが今なお難治性のがんの一つであることには変わりありません。
ピロリ菌の除菌治療や定期的な内視鏡検査が、スキルス胃がんのリスク管理には欠かせないといえるかもしれませんね。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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