2022.04.28
健康の科学高齢者の低栄養に注意!原因や予防法を知って健やかな老後を
「昔ほどご飯が食べられなくなった」
「最近、おばあちゃんの体調があまりよくないので心配」
もしかしたら高齢者に見られる低栄養の状態かもしれません。
年を重ねると陥りやすくなる低栄養状態。この記事では、高齢者における低栄養に関する原因や防ぐポイントを紹介します。自分自身で、または周りの方が早めに気づいてケアすることが大切です。
目次
高齢者に増えてきた「低栄養」
65歳以上で低栄養の傾向にある高齢者が増えてきたというデータがあります。厚生労働省の調査では、男性で12.4%、女性で20.7%の人が低栄養状態でした。低栄養は、だれにでもおこりうる問題であるとの認識が必要です。
低栄養の症状とは?
低栄養とは身体に必要なたんぱく質やビタミンなどの栄養素、身体を動かすためのエネルギーが不足している状態です。低栄養によって以下の症状が出てきます。
● 体重が減ってくる
● 転びやすくなる
● 風邪をひきやすくなる
● 疲れやすい
● おなかや脚のむくみ
● 口の中の乾き
● 抜け毛
栄養分の不足により、筋力や免疫機能の低下がおこります。
高齢者は脱水にも陥りやすいので注意!
高齢者は脱水にも注意が必要です。食事量の低下は、脱水症状を起こすことがあります。食事量が減ると、食事からの水分を十分とれなくなるからです。高齢者は脱水状態に気づきにくいので、こまめに水分をとることを意識しましょう。
低栄養と脱水状態において見られる共通の症状としては以下があります。
● 口の中の乾き
● 肌の乾燥
● 唾液の粘り
低栄養かどうかチェックする方法
低栄養かどうかをチェックするために、体重をチェックしましょう。毎日でなくてもよいので、週1回を目安にチェックしてください。もし体重が減少傾向であれば、早めに低栄養を疑い対処することが大切です。
また体重を元に計算するBIMや食事量、水分量の確認も低栄養かどうかをチェックできます。
1日の中で体重が2kg程度の増減がある場合は注意が必要です。むくみの可能性があります。ふくらはぎの太さなどを気にしてみましょう。
低栄養になってしまう原因
高齢者が低栄養量になってしまう原因としては、4つあげられます。順番に見ていきましょう。
周りの気遣い
高齢者を心配するあまり、好きな食事だけを用意したり、食事の量を言われるがまま少なく用意したりしていませんか?
実は周りの方の気遣いにより知らないうちに低栄養になっている可能性もあります。
また転倒による骨折が怖く、できるだけ外出させないようにしていたり、歩けるけども、相手を思ってあえて制限していたりしていませんか?
高齢者を心配する気遣いが、身体機能の低下や低栄養を促している場合があるので注意しましょう。
身体的な要因
加齢により筋力が落ちてしまうと、長い距離を歩くのが難しくなったり、重いものを持ったりするのがおっくうになることも。なかなかスーパーに行けず、また台所に立つのも体力的に難しくなります。
菓子パンやインスタント食品、レトルト食品だけで食事しないようにしましょう。栄養が偏ってしまうと、低栄養状態に陥ってしまうのです。
また噛む力や味覚の低下から食欲がなくなってしまい、食事の頻度が減ることもあります。
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社会的な要因
特に一人暮らしの高齢者や高齢夫婦の場合は、低栄養になりやすいと言われています。原因としては、交通手段が限られ社会的に孤立してしまうからです。
結果、身体的な要因と同じように買い出しの頻度が減り、保存性の高い食品で食事をまかなおうとしてしまいます。
また年金だけでは経済的にも余裕がなくなる世帯も増え、栄養価の高い食事への優先度が下がることも。そうなると食生活の偏りにつながってしまいます。社会的な要因も低栄養の原因です。
心理的な要因
年を重ねると、配偶者が先に亡くなってしまったり、兄弟姉妹などの家族や友人の死
を経験したりすることもあります。精神的なダメージも食欲を失う原因です。
高齢になるにつれ運転できなくなる、歩くのが困難になる、耳が遠くなるなどの身体的な要因も心理的な要因のひとつとなります。
また認知機能の低下から、食事を忘れることにも注意しましょう。人と関わりを避け外食の機会が減ったり、栄養の高い食事への意識が低下したりします。
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高齢者における低栄養のリスク
低栄養の状態が長く続くと、身体的なリスク以外にも自分では見えない部分でのリスクが増えてしまいます。
● 食欲を調節するホルモンの分泌の減少
● 胃や腸などの機能低下
● 薬の副作用を受けやすくなる
● 認知機能低下リスクが高い
● 様々な病気の元になる
食事からのたんぱく質やビタミンなど栄養は、身体の機能を正常に保つ性質があります。
たんぱく質の摂取により、認知機能の維持にも役立つことも。
また低栄養の状態が長く続くと、サルコペニア(筋肉量減弱症)やロコモティブシンドローム(運動器症候群)などの運動機能に関する病気に注意が必要です。
薬の副作用にも注意しましょう。食事からのたんぱく質を摂取できないと、血中のたんぱく質濃度が下がってしまい薬の濃度が上がってしまうことがあります。
また肝臓における薬の代謝活性が下がってしまい、薬が効きすぎて副作用につながります。
高齢者の低栄養を防ぐ6つのポイント
高齢者が陥りやすい低栄養を防ぐポイントを紹介します。ただ、食べる量を増やせばよいのではないことを知っておきましょう。
①栄養のバランスがよい食事
菓子パン、加工食品、インスタント食品が多いと感じている方は、まず栄養のバランスがよい食事を選ぶことからはじめてみましょう。
たんぱく質の多い肉や魚、卵、大豆製品などを食事に取り入れます。また緑黄色野菜はビタミンが多いのでおすすめです。自分で買いに行けない場合は家族やヘルパーさんなどにお願いしましょう。
②1日3食の規則正しい食事
もし食欲がないからといって1日1回など食事回数が減っている場合は、1日3回を守るようにしましょう。朝・昼・晩と規則正しい食事により、活動量も増え、空腹を感じやすくなります。
1回の量を増やす必要はありません。1日3回という習慣を作ることで、低栄養を防ぎやすくなります。
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③適度な運動
適度な運動は、活動量を上げ食欲を感じやすくさせるのでおすすめです。
運動と栄養指導を取り入れた介護予防教室において、高齢者の食事の改善と体力的な向上を認めた報告もあります。
食事と運動は高齢者における低栄養の予防につながり、介護予防の効果も期待できるでしょう。
ただし、すでに低栄養の方が無理な運動をすると低栄養を悪化させる可能性があります。
④食事の時間を楽しくする
食事の時間を楽しめず、食事に対しての興味をなくし低栄養になる方もいます。作るのが大変であれば、宅配弁当を利用するのもひとつです。彩りのあるものや栄養を考慮したおいしい宅配弁当などがあります。
また、デイサービスや地域の高齢者サービスを利用して、外で食べたり、だれかと一緒に食べたりする機会を作ることも大切です。
⑤栄養補助食品を活用する
食欲がどうしてもない場合は、サプリメントなどの栄養補助食品を活用するのもひとつです。
最近では、高齢者向けのゼリー状のものやドリンクタイプがあります。他にもお味噌汁に混ぜても味を変えないプロテインパウダーなどもおすすめです。
ただし、栄養補助食品をすべての食事の代わりにしないようにしましょう。
⑥入れ歯や義歯、とろみ剤などで食事をしやすく
噛む機能が低下すると、食事回数や食事量が減ることがあります。
自分にあっていない入れ歯や義歯は、噛む度に違和感につながり、食事がおっくうになることも。自分にあった入れ歯や義歯を準備するようにしましょう。
また食事にとろみを付けると食べやすくなります。とろみのある食材や市販されているとろみ剤の利用がおすすめです。
まとめ
高齢者の低栄養は、人ごとではなく多く見られる状態です。低栄養になると身体的だけでなく、薬の副作用が出てきやすくなるなどのリスクにもつながります。
この記事を読んで、もしかしたら自分が、または周りの高齢者が低栄養の状態かもしれないと感じた方は、ぜひかかりつけの医師や薬局の薬剤師に相談してみてください。
低栄養におけるリスクを改善して、アクティブに動けるシニアを目指しましょう。
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