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【肺がんステージ3】主な症状や余命は?進歩する治療法と完治に捉われないがんとの向き合い方

今回は「肺がんステージ3」について解説します。肺は自覚症状が出にくい臓器だからこそ、気が付いた時にはがんの症状が深刻になっていることも少なくありません。症状や治療法、余命や生存率について知っていただき、ぜひ役立ててください。

※ 肺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?その原因と治療法について

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

肺がんステージ3の概要

肺がんステージ3は、肺がんの深刻度により分けられる4つのステージの上から2番目。症状が比較的深刻で、治療方法も症状や患者さんの状態によって広く検討される段階です。

肺がんの進行具合の分類方法として用いられるのが「TNM分類」。TNMはそれぞれ以下のように3つの指標を用いています。

  • T→Tumor(腫瘍)
  • N→Lymph Node(リンパ節)
  • M→Metastasis(転移)

肺がんステージ3では、腫瘍の大きさが基準値以上であることのほかにも、原発巣からの転移が確認できる状態です。少なくとも原発巣がある同じ肺だけでなく、リンパ節や反対側の肺や縦隔などにもがんの転移が見られる症状を指します。肺がんのステージ3はA期とB期に分けられており、A期は「N2」の段階で、気管や食道まわりに転移している状態、B期は反対側の肺にも転移が見られる状態です。

肺の断面図
(参照:https://shinshu-surgery.jp/thoracic/treatment/lung_anatomy.php

・T2→腫瘍の最大径3〜5cm以下、もしくは腫瘍最大径3cm以下で腫瘍が気管支に及ぶが気管分枝部には及ばず2cm離れている、または臓側胸膜に浸潤がある。あるいは肺門まで連続する無気肺か閉塞性肺炎があるが肺全体には及ばない

※ 浸潤:がんが周りに広がっていくこと

・T3→腫瘍の最大径3〜7cm以下、もしくは腫瘍最大径5cm以下でも壁側胸膜、胸壁、横隔神経、心膜のいずれかに直接浸潤が見られる場合

・T4→腫瘍の最大径7cm以上、もしくは大きさに関わらず横隔膜や縦隔、気管、食道、心臓などに直接浸潤が見られる場合

以上のように肺がんステージ2の腫瘍の大きさは「T2~T4」とさまざまになります。重症度は腫瘍の大きさよりも周辺組織にいかに深く、広く浸潤しているかどうかです。転移とは異なるポイントであることを押さえましょう。

肺がんステージ3でのリンパ節転移はどのような状態?

肺がんのステージ3では、リンパ節転移も広く見られます。詳細を解説します。

・N1→がんが発生した肺と同じ側の肺の肺門部や肺内のリンパ節に転移が見つかっている状態。気管支周辺に広がっていることもある。

・N2→原発巣と同じ側の縦隔や気管支の枝分かれ部分にあるリンパ節にがんが転移している状態。

・N3→ 原発巣とは反対の肺の入り口のリンパ節や縦隔に転移している状態。または原発巣と同じ側の筋肉や大きなリンパ節に転移が見られる状態。

以上のように肺がんステージ3は「T2〜T4」と「N1〜N3」の組み合わせで詳細のステージが決まります。

ここに遠隔転移である「M:Metastasis(転移)」の指標が分類としては加わりますが、遠隔転移が見られる場合は、いずれにしてもステージ4となります。

※ がんのステージ4の詳しい情報は以下の記事を参考にしてください。
>>ステージ4のがんとは?症状や具体的な治療法について

肺がんステージ3の症状は?

肺がんは自覚症状が出にくい疾患です。とはいえ、ステージ3になってくると何かしらの症状を感じる方も増えてきます。しかし咳や痰、ちょっとした息苦しさなど「少し風邪の症状が進行しているかな?」程度の違和感として感じてしまうケースも少なくありません。その理由は、肺の中には痛みを感じる神経がないため、がんが大きくなっても自分では気がつきにくいからです。

がんの発生している場所により、筋肉や横隔膜に浸潤することもあります。その場合には呼吸時に痛みを感じたり、肩や首が張るような違和感を感じることも。中には声のかすれ(嗄声)として症状が生じるケースもあります。多くの場合、自覚症状が見られる場合は病状が進行していることも少なくありません。

「いつもと違うぞ?」という違和感を無視せず、できるだけ早めに医療機関の受診を視野に入れましょう。

特に喫煙習慣がある人や家族の中で肺がんにかかったことがある人がいるならば、注意が必要です。

肺がんステージ3で選択する治療とは?


肺がんステージ3になってくると腫瘍の広がりが大きく、手術ができないケースが増えてきます。肺がんステージ3のおもな治療方法は、薬物療法と放射線療法です。

主となる放射線治療について

放射線療法は、レントゲン撮影などでもおなじみの「X線」を使って治療をする方法です。X線が細胞を透過する時にそのエネルギーを吸収し、イオン化する性質を利用して治療をします。

体の表面からX線を当てて、がん細胞のDNAを破壊し、細胞分裂するのを抑制します。がんの腫瘍がなくなるわけではありませんが、痕跡だけを残して細胞を死滅させる治療です。体の中に腫瘍が残ることで不安を感じることもあるでしょうが、がん細胞が体を犯すことはなくなります。

かつて放射線療法は、がん末期の緩和治療といったような位置づけでした。しかし現在では、技術も進み完治を目指す治療として用いられることも増えてきました。

現在の放射線治療の効果は放射線を照射する「線量」で決まります。肺がんの治療では1回2Gyの合計60Gy(グレイ)という単位で照射をします。これを概ね20〜30回程度繰り返します。


(参照:https://www.wjog.jp/library/pdf/handbook_v3/sec07_web.pdf

かつて放射線は大量照射により、体内の他の臓器や組織を傷つける可能性のある治療法でした。しかし、近年はその技術が発達して、がん組織にピンポイントで照射することが可能になり、放射線治療も有効な治療手段のひとつとなっています。また新たな照射方法などの技術開発も進み、体力があまりない人でも治療が可能です。

ただし、がんの遠隔転移があり他の臓器にも腫瘍が出てきてしまえばいたちごっこに陥ってしまうこともあります。

放射線治療の効果は年々高まっているとはいえ、効果の実感を得られるのは今のところステージ3までとも言われています。

原発巣以外のがん細胞を叩くために薬物療法と併用し、体内に散らばる可能性のあるがん細胞を同時進行で叩いていくのがステージ3のメインとなる治療法です。

肺がんステージ3で検討されるその他の治療法

肺がんステージ3では、放射線でがんの縮小を目指しつつ、薬物療法でがん細胞そのものへの攻撃も試みます。また、まれなケースではありますが、限られた症例で手術が検討される場合もあります。

薬物療法

肺がんステージ3で主な治療法のひとつになるのが薬物療法。主に放射線療法と併用される「化学放射線療法」が中心となります。それぞれを単独で行うのではなく、放射線の照射をしながら薬物療法を進めます。局所にあるがんの原発巣を放射線で叩きながら、体内に転移している可能性のあるがん細胞を薬物療法で攻撃するイメージです。
薬物療法について詳しくは以下の記事を参照してください。

>>【肺がんステージ2】症状や治療法、生存率は?完治を目指すための治療法も解説

手術療法

薬物療法や放射線療法によって腫瘍が小さくなったのを確認して、手術での摘出を検討される場合もあります。
  

【3Aなら手術を受けられる可能性あり】

肺がんでステージ3と診断された際、手術を受けられないと悲観的になる人も少なくありません。しかし肺がんステージ3でも手術を受けられることもあります。基本的には手術療法単独で行われるわけではなく薬物療法や放射線療法との併用になりますが、ステージ3Aという段階であれば手術適用になる可能性もあります。(とくにT3N1M0、T4N0~1M0の場合)

医師の判断や、患者さんの病状により異なるところではありますが、がんの大きさや肺まわりの組織への浸潤度により「手術の効果が大きい」と判断された場合に、手術適用となる症例もあるのです。手術での完治を目指すのではなく、「手術により進行に抑制がかけられる」と判断した場合にも手術適用となるケースがあります。

肺がんステージ3の余命・生存率は?治る見込みはあるの?



(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/

こちらは2015年の肺がんの5年実測生存率をグラフ化したものです。しかし、現在は当時よりも優れた治療法が開発され、今なおよりよい治療法が研究され続けています。

ステージ3でも手術での切除が可能であった場合には5年生存率は30〜40%ほどに向上しているとの報告もあります。

そして生存率とは「肺がんに罹患しているけれども生存が確認されている」例も含みます。つまり、肺がんにかかってから5年間、完治はしていないものの上手にコントロールしながら生存している方もいるのです。

「生存率が悪い」と悲観するのではなく、患者さん自身が病気と向き合い、体力を維持しながら生活習慣を整え、免疫力を意識して過ごすことで余命の延長を追求することも可能ということです。

私たちの体に備わっている免疫細胞の1つ「NK(ナチュラルキラー)細胞」は、がん細胞を攻撃する免疫として有名です。そしてNK細胞は笑うことや良質な睡眠、適度な有酸素運動などで活性化することがわかっています。

(参照:https://kobayashibyoin.com/nk-cells/

がんを治すことばかりにとらわれず、上手に共存する道もあることを知っておくといいかもしれませんね。

まとめ


肺がんステージ3は、その進行度合いに応じてさまざまな治療法が存在します。ステージ3では、腫瘍が大きくなりリンパ節への転移も見られます。手術の難しいケースが一般的です。主要な治療法は薬物療法と放射線療法。ただし、ステージ3Aの一部では手術の選択肢も考慮されることがあります。

肺がんステージ3の余命や生存率は、治療法の進歩により改善の兆候が見られます。数字だけにとらわれず悲観的にならないよう、患者さん自身が健康的な生活習慣を実践し、免疫力を高める努力をすることで、余命の延長や病気との共存も可能になるでしょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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