2021.10.29
健康の科学【医師監修】肝臓・肝機能に良い食べ物とは?
「アルコールは肝臓に悪いと聞くけど、肝臓に良い食べ物はなんだろう?」
「最近、肝臓が疲れている感じがする……」
春は歓送迎会、夏は海での飲み会などアルコールを飲む機会が1年を通してありますよね。アルコールを飲みすぎたと感じることはありませんか?
アルコールは少量であれば肝臓に影響を与えることは少ないですが、過剰な飲酒は肝臓の細胞を傷つけてしまいます。まず、アルコールの量を減らすことがおすすめです。
今回は、肝臓の働きや肝臓の病気、そして肝臓に良い食べ物を紹介します。
肝臓は私たちの体になくてはならない臓器です。毎日を健康に過ごすために、日々の食事に良い物を取り入れてみましょう。
肝臓・肝機能の働きとは?
肝臓は、人体のなかで最も大きい臓器のひとつです。さまざまな働きが知られています。
・タンパク質の合成
・ビタミンなどの栄養素の貯蔵
・エネルギーの貯蔵
・アルコールや薬など有害物質の解毒・分解
・消化に必要な胆汁の合成・分泌
肝臓の働きは幅広いため、肝臓の機能が正常であるということは、私たちの体にとって重要です。再生する能力が強い臓器のため、病気になっても症状が出にくいこともあるので注意しましょう。
お酒・アルコールによる肝臓の病気の種類
アルコールを飲みすぎると、肝臓に悪いと聞くことがありますよね。ここでは、アルコールの過剰な摂取によって起こる肝臓の病気についてみていきましょう。
・脂肪肝
肝臓に中性脂肪がたまった状態のことをさします。「肝臓がフォアグラ状になる」と表現されることも。診断としては、肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまった状態です。初期の脂肪肝による症状は、ほとんどありません。気付かずに放置してしまうと、やがて肝炎などを引き起こしてしまいます。そのあと、肝硬変に進行することも。また、肝臓の病気だけでなく、メタボリックシンドロームと合併がしやすいことが特徴的です。脂肪肝は、飲みすぎだけでなく食べすぎも原因になります。
・アルコール性肝線維症
アルコール性肝線維症は、毎日の継続的な飲酒によりコラーゲンが作られ、脂肪の変性や軽い炎症から肝臓に線維化が起こる状態です。アルコールの多量摂取により起こる脂肪肝から、肝線維症につながります。禁酒することで肝臓の機能は改善することが特徴的です。症状は悪化していくまでほとんどありません。この時点では、軽度の肝炎が起こったり、肝臓の細胞が壊れたりすることもあります。
・アルコール性肝炎
アルコール性肝炎は、肝臓の細胞が変性し破壊されている状態です。脂肪肝やアルコール性肝線維症の状態からさらに過剰な飲酒をおこなった場合に起こります。この状態になると症状は明らかです。肝細胞が壊されることで、肝臓の機能障害、腹痛、黄疸、発熱などの症状が出てきます。さらに腎不全や感染症、消化管の出血などが併発することで、死亡する例もあります。
・アルコール性肝硬変
アルコールによる肝臓における病気の末期です。この状態では、肝臓の細胞破壊が慢性的に続いています。壊された肝臓細胞を再生しようと、コラーゲンの生成が増加。どんどん肝臓が固くなってしまいます。肝臓が固くなると機能が低下し、アルコール性肝線維症やアルコール性肝炎がさらに悪化するのです。アルコール性肝硬変になっても続けて飲酒することで、おなかに水がたまり、黄疸、肝性脳症などを生じてしまいます。禁酒した場合、病状の進行は抑えられますが、肝機能の改善は期待できません。
アルコールと肝臓の関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>お酒の飲み過ぎはなぜよくないの?肝臓とアルコールの関係
肝臓に良い食べ物
ここでは、肝臓に良い食べ物をみていきましょう。肝臓の働きを助けたり、ダメージを受けた肝臓を修復したり、肝臓の解毒作用を促したりする食べ物・飲み物です。意識して、毎日の食事に取り入れてみましょう。
・海藻
肝臓は、アルコールの飲みすぎなどでダメージを受けると、ビタミンを蓄える力が低下してしまいます。肝臓の働きを良くする食べ物として、海藻がおすすめです。海藻には、ビタミンやミネラルが多く含まれます。海藻のぬるぬる成分であるフコイダンに注目してみましょう。肝細胞の再生を促し、肝臓機能を高めるという作用が期待されています。これはフコイダンにおける肝細胞増殖因子(HGF)の産生促進によるものです。肝臓の病気により、肝細胞がダメージを受けたときにHGFが働き細胞を修復すると考えられています。
関連記事:海藻の健康効果と推奨される摂取量。毎日食べるのはNG?
・しじみ
しじみは、タンパク質やビタミン、ミネラルを多く含みます。また、しじみに含まれるオルニチンは、肝臓によい成分です。他にもアミノ酸の一種であるタウリンも肝細胞の膜を丈夫にし、肝臓の働きを助けます。
・カキ
海のミルクと呼ばれるカキ(牡蠣)には、肝臓に必要なビタミンやミネラル、アミノ酸などが含まれています。また、牡蠣にはグリコーゲンがたっぷりと含まれています。グリコーゲンは、肝臓で貯蔵されている成分です。血糖値の維持や、肝臓での解毒作用に関わっています。
・枝豆
枝豆は、良質なタンパク質を含んでいる食品です。また枝豆に含まれる成分のメチオニンが肝臓によいと知られています。メチオニンは、アルコールの分解を促すことにより肝臓の働きを助けます。脂肪燃焼をアップするコリンや、肝臓の脂肪を分解する効果のあるレシチンが含まれていることも特徴的です。
・豆腐
豆腐は、良質なタンパク質を含む食品です。肝臓のタンパク質の補給源として注目されています。豆腐は、大豆製品のなかでも吸収率が最も高いと知られています。他にも、消化率が高く低エネルギーなので毎日の食事に取り入れてみましょう。
・納豆
納豆は、タンパク質やビタミンが多く含まれていることから、肝臓の働きを助けます。肝細胞の再生を促すビタミンB2も含まれています。ビタミンB2は体内にためられないため、毎日の摂取がおすすめです。また納豆は大豆と比較しても、タンパク質の消化吸収率が高いと知られています。
・かぼちゃ
かぼちゃには、ビタミンAが豊富に含まれています。他にもビタミンCやビタミンEをかぼちゃから摂取することが可能です。肝臓には、ビタミンを蓄える働きがあります。しかし、機能の低下によりビタミンを蓄える能力が落ちてしまうので、日々のビタミンの補給が重要です。
・にんにく
滋養強壮の効果が有名である、にんにくも肝臓に良い食べ物として知られています。にんにくの働きのひとつが、脂質や糖質の消化吸収の調節です。また、にんにくに含まれる硫黄化合物であるアリシンは、肝臓に蓄積された毒素を体の外へと排出します。
・梅干し
アルコールは、肝臓で酵素によって代謝され解毒されます。しかし、大量のアルコールを飲酒すると、肝臓での解毒作用が追いつかず、肝臓に負担をかけてしまうことも。そこで効果的なのが梅干しです。クエン酸などの有機酸が、肝臓でのアルコールの解毒作用を助けます。
・キャベツ
キャベツには、ビタミンUが含まれています。水溶性のビタミンに似た成分で、一般的にキャベジンと呼ばれています。肝臓にある余分な脂肪が代謝されることで、肝臓の働きを高める作用が特徴的です。またキャベツには、グルコシノレートと呼ばれる肝臓の解毒作用を高める成分も含まれています。
・牛乳
牛乳には、良質なタンパク質が含まれています。特に牛乳のタンパク質は、肝臓に必要なアミノ酸が含まれています。肝臓病において、鉄分の摂取はできるだけ控えなければなりません。牛乳は鉄分が少なく、タンパク質が良質なことから、毎日コップ1杯(約200mL)飲むことがおすすめです。
食生活の改善方法
肝臓によい食べ物を紹介しましたが、そればっかりを食べればよいというわけではありません。毎日の生活のなかで、栄養バランスのよい食事が私たちの健康を作ります。肝臓の働きを高めるためには、良質なタンパク質とビタミン、ミネラルの摂取が重要です。上記にあげた肝臓によい食べ物を中心にし、脂質や糖質を控えた食生活に変えてみましょう。
また、大量の飲酒だけでなくインスタント食品やレトルト食品、スナック菓子は肝臓の解毒作用に負担をかけるので注意が必要です。
肝機能を改善する食生活については、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
>>その疲れ、肝臓からかも!肝機能を改善する食事について
まとめ
肝臓によい食べ物について紹介しました。肝臓は、再生力の強い臓器であることから病気になってもなかなか症状が出ず、悪化により症状が出てくる臓器です。
普段の食事から、肝臓によい食べ物を意識して摂るようにしましょう。良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを含む食品がおすすめです。
海藻に含まれるフコイダンは、肝臓の細胞を修復するHGFの産生を促す作用があるのでおすすめです。肝細胞の再生や肝臓の機能を高める成分として注目されています。ぜひ毎日の食事に取り入れてみましょう。
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