2021.11.26
がん【肺がんステージ1】主な症状や早期完治に向けた治療法、余命について解説
現在、日本人の死亡原因でもっとも多いのは悪性新生物「がん」です。肺がんで問題になってくるのは罹患者数ではなく、死亡者数の多さ。昨今さまざまながんが治療により完治する時代となってきましたが、生きるために必要な呼吸に関する臓器「肺」に腫瘍ができる肺がんは、相変わらず恐怖の対象の一つとされています。
では、「肺がんステージ1」とはどのような状態なのでしょうか?今回は「肺がんステージ1」について解説をしていきます。
※ 肺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?その原因と治療法について
目次
肺がんステージ1とは?
肺がんはその病状により、おもに4つのステージ(病期)に分類されています。がんのタイプや腫瘍の大きさ、がんができた場所(原発巣)からの転移の有無により判別されるのですが、その基準となっているのが「TNM分類」。「TNM」とは それぞれ英単語にした場合の頭文字から取られています。それぞれの状態の組み合わせでステージが決定されます。
- T→Tumor(腫瘍)
- N→Lymph Node(リンパ節)
- M→Metastasis(転移)
肺がんステージ1の場合、腫瘍はあるもののリンパ節を含め転移が確認できない状態。つまりTNM分類においては「N→0」「M→0」であり、Tのみ異変の確認ができる状態です。その中でもT分類について確認します。
- Tx→細胞診でがん細胞は検出されるが原発巣がわからない
- T0→原発巣を認めない
- T1a→腫瘍最大径が2cm以下
- T1b→腫瘍最大径が2〜3cm以内で腫瘍が肺の中におさまっている
→ここまでがステージ1のAとされています。 - T2→腫瘍の最大径3〜5cm以下、もしくは腫瘍最大径3cm以下で腫瘍が気管支に及ぶが気管分枝部には及ばず2cm離れているか、臓側胸膜に浸潤がある。あるいは肺門まで連続する無気肺か閉塞性肺炎があるが肺全体には及ばない。その中でもT2aがステージ1で腫瘍の最大径3〜4cm以下とされています。
※ 浸潤:がんが周りに広がっていくこと
※ 無気肺:肺に含まれる空気が抜けて肺が潰れている状態
※ 閉塞性肺炎:気管支が詰まって起こる肺炎
肺がんステージ1の症状はほぼなし?どのように診断するのか?
肺がんステージ1の症状。実はほとんどのケースで無症状なのです。そのため、肺がんステージ1の発覚は、職場の健康診断や家族歴として肺がんに罹患しやすい可能性のある人がレントゲン写真やCT撮影をしたときに偶発的に見つかることが多いです。検診内容によっては痰の検査で発覚することもあります。
確定診断までの流れ
肺がんと確定診断を受けるまでには、いくつかの検査を経ます。一般的な確定診断から治療方針の決定までの流れを解説します。
①レントゲン撮影やCTで異常が発覚
画像検査にて何らかの異常が発覚した場合、肺がんの疑いがあるとして次の検査に進みます。一般的にがんの部分は影のように写ります。
②喀痰細胞診で痰の異常をチェック。胸部の高解析CTで精密画像検査
痰の細胞検査でがん細胞の有無をチェックしたり、より高度な解析で詳細な胸のCT撮影をします。元々50歳以上でヘビースモーカーの人や40歳以上で半年以内に血痰が見られた人はあらかじめ喀痰細胞診の検査を受けられることもあります。
③気管支鏡、針生検などで採取した細胞の病理学的検査
病理学的検査は疑わしい場所の細胞を直接とって調べるので、正確にがんであるかどうかの検査ができます。また、腺がんや扁平上皮がんなどのがんのタイプも併せて調べます。病理学的検査にてがん細胞が確認できれば確定診断となります。
④MRI、PET、骨シンチグラフィーなどの全身の検査をしてステージと治療方針を決める
肺がんであると確定診断がついた後は、肺がんのステージと治療方針を探るための全身検査を行います。肺は血流を集め全身に戻すための主要な臓器であり、転移が起こりやすい部位のため、全身検査にて原発巣以外へのがんの広がりを詳しく調べます。
なお、肺は全身から血液が戻ってくる場所なので他の原発巣からの転移も起こりやすい部位とされています。
肺がんステージ1の基本的な治療
肺がんステージ1は、原発巣が局所にとどまっている状態です。がんの治療は状態によって適切な治療法を選択する必要がありますが、肺がんステージ1ではほとんどの場合、手術で悪性腫瘍を摘出することで完治を目指します。早い段階でがん摘出をして、経過観察をしながら体調に気をつけて過ごしていけば、社会復帰ができる可能性も高いです。
こちらのパートでは主に手術について掘り下げていきます。
手術がメインの治療
肺がんステージ1では、がんができている部分を直接摘出することで治癒が目指せます。その多くの手段として選択されるのが手術です。 最近ではごくごく早期の小さながんに対してレーザー治療などを施す場合もありますが、ステージ1の標準的な治療として推奨されるのは外科手術です。
ステージ1の場合、原発巣が限られているので肺を小さく切除するケースも多いです。しかし一概に、小さく切ると言い切れるものではなく、がんの位置や大きさや広がり方によって時に片側の肺を全て切除する場合などもあります。 手術の方法は、肺をどれだけ切除するかによって、部分切除・区域切除・肺葉切除・肺全摘出の4つに分類されます。
(参照:https://www.haigan.gr.jp/guidebook2019/2020/Q32.html)
肺は解剖学医的に右肺の「上葉・中葉・下葉」、左肺の「上葉・下葉」といったように左右それぞれの肺でいくつかの部位に分けられ、その中でもさらに細かく区域ごとに分けられます。肺の中のどこをどれだけ切除するのかによって術式は異なります。
(参照: https://www.haigan.gr.jp/guidebook/2022/2022/Q32.html )
以下に切除方法の分類について紹介します。
1.部分切除(縮小手術)
- 部分切除は、がんが肺の特定の部分にとどまっている場合に選択します。
- 患部周辺の正常な肺組織と一緒にがん組織を切除します。
2.区域切除(縮小手術)
- 区域切除は、がんが肺の一つの区域内にとどまっている場合に行われます。
- がんの位置に応じて該当する区域を切除します。
- 周囲のリンパ節も一緒に切除されることもあります。がんの拡散を防ぐ目的です。
3.肺葉切除
- 肺葉切除は、肺の一つの葉全体を切除する手術です。
- 通常、肺がんが特定の葉にとどまっており、他の部分に拡散していない場合に行われます。
4.肺全摘出
- 肺全摘出は、がんが肺全体に広がっている場合や特定の葉への手術が不可能な場合に選択されます。
- 右肺または左肺全体を切除します。
その他の手術手技について
最近では手術に伴う技術も発展してきて、胸腔鏡の手術や、より低侵襲に胸腔鏡の手術操作を行えるようになったロボット手術なども行われるようになってきました。 ステージ1の手術であればより小さめに取り除くケースも多いので、これらの対象になる症例は多いです。
また、ステージ2・3では多くの症例で行われる「リンパ節郭清」という方法もあります。リンパ節への転移が見られる場合、または予測される場合に摘出術と合わせてリンパ節の摘出をします。摘出したリンパ節を検査して、実際にどの程度がんの広がりがあるのか、がんのステージを正確にとらえる手段の一つにもなるのです。
時に肺の入り口部分や気管支などにもがんがみられた場合、肺の切除に合わせて気管支も切除しなくてはなりません。その場合、残った気管支同士をつなぎ合わせる気管支形成術も同時に行われます。
手術が受けられないケースもある
ステージ1だと手術をして、腫瘍そのものを摘出してしまえば完治が可能です。しかし、その手術自体ができないケースもあります。それは、患者さんの体力や気力が手術に耐えられるだけの状態ではないと判断された場合です。また、呼吸機能に問題がある場合なども、手術以外の治療を選択することがあります。
例えば「COPD」と言われる閉塞性肺疾患など、肺活量などの肺の機能が十分に保たれていない事例です。手術後の残った肺だけでは十分に呼吸ができないということが予測できます。
その場合には手術に変わる代替治療として、放射線治療や薬物治療などが検討されます。
その他の治療法
肺がんステージ1の主な治療法は手術ですが、前述した通り体調などの医学的な理由を含めた何かしらの問題があり、手術が受けられない際には放射線療法が選択されます。 また、放射線療法の補助療法として、もしくは手術後の後療法として薬物療法を検討される場合もあります。
放射線療法
放射線療法は高エネルギーのX線や陽子線などを用いて、がん細胞を破壊する治療法です。各エネルギー源ががん組織だけを狙うように集中的に照射をします。かつては周囲組織へのダメージが懸念された治療法でしたが、 現在では技術が進化し健康な組織へのダメージを最小限に抑えた治療ができるようになりました。詳しくは以下の記事を参照してください。
>>【肺がんステージ3】主な症状や余命は?進歩する治療法と完治に捉われないがんとの向き合い方
薬物療法
薬物療法は分子標的薬や抗がん剤などを用いてがん細胞を殺したり、がん細胞の成長を抑制するための薬剤を使い治療を進める方法です。たくさんの種類の中からがんのタイプやステージ、患者さんの状況に合わせてさまざまな治療薬を用います。薬物療法は個人差があるのも実情です。詳しくは以下の記事を参照してください。
>>【肺がんステージ2】症状や治療法、生存率は?完治を目指すための治療法も解説
肺がんステージ1の気になる余命と生存率は?完治に向けがんの原因を取り除く生活を
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/)
2015年のステージ1「5年実測生存率」を参照すると、生存率は74.3%。5年生存率は比較的高めです。ステージ1は「治りやすい」と言われているからこそ、経過観察や再発予防に努めたいですね。
がん治療や手術後の経過・再発予防などを考えると患者さん自身の生活習慣を整え、免疫力の維持を意識することが大切です。不規則な生活習慣は発がん性物質の働きを助長させ、がん細胞の発生につながる可能性もあります。
※ がんと生活習慣の関係についてはこちらの記事も参考にしてください。
>>がんとブドウ糖の関係性とは?がんが増殖する仕組みと取るべき栄養素についても解説
>>がんには「お茶」が効く⁉免疫力を高め、膀胱がんにもアプローチできる飲み物を解説
とくに肺がんに大きな影響のあるとされるのが喫煙習慣。肺がんの治療を受け、完治に向かって歩みを進めるなら禁煙が必要です。
(参照:https://www.tottori.med.or.jp/mado/がんの原因と予防法)
少し古い情報ですがハーバード大学が調査した結果、アメリカ人の「がんの原因」トップ2はたばこと食事。生活習慣からの悪影響として考えると非常に大きな2つの因子です。
肺がんの治療後において、どちらも気をつけたい重要な要素です。禁煙を心がけるのはもちろんですが、禁煙により食事の美味しさに気が付き食事量が増える人も見られます。
さらに今までよりも、呼吸のしづらさや苦しさを感じて積極的な運動ができなくなってしまうことも。運動不足に陥ってしまい、肥満や生活習慣が乱れる悪循環に陥ってしまう例も少なくないのです。
がんの再発を防ぎ完治へ向かうには、肺がんの治療後は意識的に健康的な食事を取りつつ、適度に体を動かしましょう。正しい生活習慣は体力を充実させるだけではなく、免疫力を活性化させ再発予防が期待できます。
免疫力とがんの関係についてはこちらの記事を参考にしてください。
まとめ
肺がんステージ1の治療において、完治に向けて選択する治療法は外科手術。ステージ1の肺がんは原発巣が局所にとどまっているので、通常、手術によってがんを摘出し完治が可能です。
禁煙はとくに重要。喫煙習慣は肺がんの原因の一つです。生活習慣を改善し、適度な運動と健康な食事を取り入れることで免疫力を高め、再発を防ぎ、完治への道を歩んでいきましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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