2023.03.30
がん肝臓がんの症状とは?見逃しやすい初期サインと原因・予防法まで解説
肝臓がんは早期にはほとんど自覚症状が現れない「沈黙の臓器」の病とも呼ばれ、気付いたときにはすでに進行していることも少なくありません。
2023年の統計では、肝臓がんはがんによる死亡原因の5位に位置づけられており、予防と早期発見の重要性があらためて注目されています。
この記事では、肝臓がんの原因や肝臓が悪くなっていくまでの症状、検査でわかる兆候、主な治療法、予防のために知っておきたい生活習慣のポイントまで幅広く解説します。リスクの高い方はもちろん、健康に過ごしたいすべての方にとって役立つ情報をお届けします。
肝臓がんとは?

(参照:がんの統計2025_図表編|公益財団法人 がん研究振興財団、https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2025_fig_J.pdf P.15)
国立がん研究センターが2023年に実施した調査によると、肝臓がんは日本人のがんによる死亡原因として5位となっています。初期症状に乏しく早期発見が難しいので、発見されたときにはすでに手術が難しい進行例も少なくありません。
肝臓がんは通常、慢性肝炎→肝硬変→肝臓がんと徐々に時間をかけて進行する傾向にあります。肝臓がんのリスク因子を抱える方は、定期的な検査による早期発見が重要です。
原因の多くは肝炎ウイルス感染
肝臓がんの原因の大部分はウイルス性肝炎で、約90%以上が肝炎ウイルスの感染といわれています。他にも肝臓がんの原因には、数は少ないものの以下のようなさまざまな要因があります。
- B型肝炎ウイルス(HBV)感染歴
- C型肝炎ウイルス(HCV)感染歴
- 長期にわたる大量飲酒
- 脂肪肝・NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)
- 糖尿病・肥満などの生活習慣病
何らかの要因があり慢性的な肝細胞の炎症と壊死が続くと、やがて肝硬変を経て肝細胞がん(HCC)へと進行するリスクが高まります。
肝臓がんになるまでの経過

(参照:肝がんの原因・症状について|国立がん研究センター、https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/001/index.html)
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状が出にくい臓器です。初期段階ではほとんど症状が現れません。肝臓の病気は多くの場合、肝炎から始まります。肝炎→肝硬変→肝臓がんと、進行にともなって段階的に症状が出てくるのが一般的です。
肝炎のときの症状
- 倦怠感
- 微熱、発熱、頭痛
- 食欲不振
- 腹部の不快感、腹痛
肝炎が生じている場合、自覚症状があっても「風邪のような症状」に近いので、見過ごされがちです。肝炎には、激しい症状が起きるものの短期間で治ることの多い急性肝炎と、6ヵ月以上炎症が持続する慢性肝炎に大別されます。基本的にはほとんど治癒しますが、ごくまれに「劇症肝炎」と呼ばれる、広範囲の肝細胞に炎症が広がってしまう病態になることもあります。
肝硬変のときの症状
- 皮膚のかゆみや黄疸
- 腹水の貯留
- 食道静脈瘤による吐血
- 手のひらの赤み(手掌紅斑)
慢性肝炎が起きている肝臓は、組織が破壊と再生を繰り返しています。肝硬変は、慢性肝炎の状態が進行し、肝臓の細胞が壊死して線維化してしまった状態です。肝機能障害も進行し、肝臓の働きが低下します。自覚症状が現れていることもありますが、なかには肝硬変になっても自覚症状を感じずに生活している方もおられます。
肝臓がんの症状
- 右上腹部の痛み・張り感
- 体重減少
- 微熱やだるさ
- 食欲不振
- 黄疸や吐血(進行例)
肝臓がんの患者さんの既往歴をみると、慢性肝炎や肝硬変から肝臓がんに移行している症例も少なくありません。進行とともに何かしらの症状は見られるようになりますが、初期の頃には自覚症状を感じていない症例もあります。がんが進行し、末期に近づくほど出血傾向や肝性脳症(意識障害)といった深刻な症状が現れやすくなります。
肝臓がんの症状について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
>>【肝臓がんステージ3】症状を進行度から解説。余命や生存率を知り、適切な治療で完治を目指す
>>【肝臓がんステージ4】余命や生存率は?知っておくべき適切な治療法と完治に対する考え方
検査データでみる「肝臓がんの兆候」

肝臓がんは自覚症状が乏しいまま進行することも多いため、早期発見には血液検査や画像検査が有効です。健康診断や定期検査の数値の変化を知っておくことで、早期の兆候を見逃さずに済む可能性があります。肝炎や肝硬変の既往がある場合は、定期的に検査を受けるよう意識しましょう。
血液検査
血液検査では、肝臓の機能を示す代表的な指標に「AST」「ALT」「γ-GTP」があります。肝臓に炎症が起き、負担がかかっていないかをチェックする指標です。各指標について、詳しく解説します。
AST(GOT)
ASTの基準値は8〜38IU/L。肝臓だけでなく心臓や筋肉などにもある酵素です。肝臓や心臓などの組織に障害が起きると、数値が上昇します。肝臓に問題がある場合もASTは上がりますが、他の臓器由来の上昇もありえるため、ALTとのバランスを見ながら判断します。
ALT(GPT)
ALTの基準値は4〜43IU/L。ほとんどが肝臓に存在している酵素です。ALTが上昇している場合はウイルス性肝炎・脂肪肝・薬剤性肝障害など、肝臓そのものにトラブルがある可能性が高いと考えます。ASTよりもALTのほうが肝臓の指標を表すため、肝疾患の初期変化を捉える指標として重要です。
γ-GTP(ガンマGTP)
γ-GTPの基準値は男性が86U/L以下、女性が48U/L以下です。肝臓の胆道や解毒機能に関係する酵素で、アルコールの摂取や薬剤の影響で数値が上昇しやすいです。胆汁の流れが滞る「胆汁うっ滞」でも高くなります。飲酒習慣のある方では、この値が早く反応する症例もあります。
腫瘍マーカー
肝臓がんの診断では、腫瘍マーカーと呼ばれる血液中の物質の検査もします。肝臓がんで代表的な腫瘍マーカーとその特徴を解説します。
PIVKA-II(ピブカツー)
PIVKA-IIは、健康な人の血中には存在しない物質で、肝細胞がんが発生すると上昇する腫瘍マーカーです。ビタミンKの欠乏時や肝障害でも増えることもありますが、AFPと併用することで肝臓がんの発見の一助にします。
AFP(アルファ・フェトプロテイン)
AFPは、本来胎児期にしか見られないたんぱく質で、成人では血中にほとんど存在しません。肝臓がんの発症時には数値が上昇するため、診断の補助に用いられます。
AFP-L3%(AFP-L3分画)
AFPのなかでも、肝臓がんに由来する部分だけを取り出して比率で示したものがAFP-L3%です。慢性肝炎や肝硬変と肝臓がんとの鑑別に有用で、より精度の高い診断を補助する指標として活用する場合もあります。
CEA(がん胎児性抗原)
CEAは、本来胎児の消化器官に見られるたんぱく質です。大腸がんや胃がんなどの消化器系がんに加え、肝臓がんでも上昇することがあります。また、肝内胆管がんや混合型肝臓がんでも数値が高くなることもあります。糖尿病や喫煙、その他の疾患でも上昇する可能性があります。
CA19-9
CA19-9は、膵臓がんや胆道がんなどの消化器系がんで高くなる腫瘍マーカーで、肝臓がんのなかでも胆管に関連するがん(胆管細胞がんなど)で上昇することがあります。CEAやAFPと組み合わせることで、診断の補助として用いられます。
フェリチン
フェリチンは体内の鉄分を貯蔵するたんぱく質ですが、炎症や悪性腫瘍によっても上昇することがあります。肝臓がん特有の腫瘍マーカーではありませんが、肝疾患の補助的な評価指標として用いられています。
画像検査
血液検査や腫瘍マーカーで異常が疑われた場合、画像検査でも腫瘍の有無や進行状況を調べます。
- 腹部エコー(超音波検査):スクリーニングに適した簡便な方法です。
- 造影CT:腫瘍の血流パターンやサイズ、転移の有無を確認できます。
- MRI:より精密に性質を評価し、良性・悪性の鑑別にも役立ちます。
必要に応じて肝生検(組織検査)を実施し、実際の細胞レベルでの診断をすることもあります。
肝臓がんの治療法は?

(参照:肝細胞がん | 大阪赤十字病院がん診療センター、https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer4.html)
肝臓がんの治療は、がんのステージ(進行度)や患者さんの肝機能に応じて検討・選択されます。肝臓がんの主な治療法について解説します。
手術
がんとその周囲の肝臓組織を手術で切除する治療です。うまくいけばがんを取り除ける治療法ではありますが、その他の治療法と比較すると体への負担や入院期間は長くなる傾向にあります。
ラジオ波・マイクロ波焼灼療法(RFA・MWA)
電極をがんに刺し、高温の熱で焼灼します。小さな肝臓がんに有効です。局所麻酔で治療でき患者さんへの負担は少ないのですが、再発のリスクがあるのがデメリットです。
肝動脈塞栓術(TACE・TEA)
がんに栄養を送る動脈を塞いで、がん組織が活動するための栄養補給路を断つ治療法です。腫瘍を兵糧攻めにして死滅させることを狙います。切除不能例などに使用されます。
経皮的エタノール注入療法(PEIT)
エタノールをがん細胞に直接注入して腫瘍を壊死させる方法です。
薬物療法(分子標的薬・免疫療法)
肝臓がんが進行していて局所治療(手術・焼灼など)が難しい場合には、薬による全身治療(薬物療法)が検討されます。肝臓がんでは、代表的な薬物療法として以下の2種類が挙げられます。
分子標的薬:がんの増殖や血管新生に関わる特定の分子を狙って攻撃する薬です。代表的な薬剤には「ソラフェニブ(ネクサバール)」「レンバチニブ(レンビマ)」などがあります。がんの進行を緩やかにしたり、生存期間を延ばす効果が期待されます。
免疫チェックポイント阻害薬:がん細胞を攻撃する免疫の働きを回復させる薬です。「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」の併用療法が近年注目されており、治療成績の改善が報告されています。
治療法の詳細については以下の記事も参考にしてください。
肝臓がんを予防するには?

肝臓がんは、B型・C型肝炎ウイルスの感染が主な要因です。基本的には肝炎ウイルスの対策をとることが一番の予防策になりますが、その他に生活習慣の見直しなども予防の一助になります。
肝炎の予防と治療
B型肝炎はワクチンで予防が可能です。C型肝炎も、現在は飲み薬による治療で完治が望める時代となりました。感染しても早期に治療すれば、がんへの進行を防ぐ効果が期待できます。過去の輸血や手術歴がある方は、一度肝炎ウイルスの検査を受けることを検討しましょう。
定期的な検査
肝臓は異常があっても自覚症状が出にくい臓器です。健康診断だけでは不十分なこともあるため、肝炎ウイルスの有無や肝機能の状態を定期的に調べることも検討しましょう。
生活習慣の見直しも大切
飲酒の量を控え、バランスのよい食事と適度な運動を心がけることで、脂肪肝や生活習慣病による肝臓への負担を減らせます。肥満や糖尿病も肝臓がんのリスクとなるため、日々の生活習慣の見直しが予防につながります。
まとめ
肝臓がんは、ウイルス感染や生活習慣など、予防可能なリスク要因が数多く関与しています。B型・C型肝炎は、現在では検査や治療法が充実しており、早期に対応すればがんへの進行を防ぐことも可能です。
定期的な血液検査や画像検査によって異常の早期発見に努めること、そして日々の飲酒・食生活・体重管理を見直すことが、肝臓がん予防の第一歩です。肝臓は「沈黙の臓器」だからこそ、静かに進行する病に対して“先回りの健康管理”を意識していきましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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