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がんによる腸閉塞は?症状と一般的な治療法について解説


がんは日本人の2人に1人が診断される可能性のある病気です。もし、がんになってしまうと合併症として腸閉塞を起こす危険性があります。腸閉塞を起こすと病状が悪化したり治療の進行に支障を来す可能性もあります。

この記事では、

  • 「腸閉塞とは?」
  • 「腸閉塞の要因になるがんには何がある?」
  • 「がんによる腸閉塞はどのような症状が出る?」
  • 「がんで腸閉塞になってしまったときの一般的な治療方法」

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

腸閉塞とは?

腸閉塞は、なんらかの原因により腸のとおりが悪くなり、腸の中に内容物がたまっている状態のことです。がんが原因の場合は、腫瘍が大きくなり腸が圧迫されることで起こります。腸のとおりが悪くなると、口から摂取した食べ物の消化吸収後にあたる残渣物を排便できなくなります。たまっている状態が続いた結果、お腹の痛みや嘔吐などの症状を起こすのです。

腸閉塞は4種類に分けられます。

  • 単純性腸閉塞
    がんの腫瘍、炎症、寄生虫、結石などにより腸管が狭くなったり、塞がれたりした状態。
  • 絞扼性腸閉塞
    腸が捻れたり(捻転)、結ばれたりして腸の血流が阻害され、長時間そのままにすると腸管が壊死する状態。
  • 麻痺性腸閉塞
    腹部の手術後に腸と腹壁がくっついてしまうこと(癒着)で腸の腸内容物を運ぶ機能が停止した状態。
  • けいれん性腸閉塞
    腸の一部がけいれんを起こして縮むことで、腸内容物を運ぶ機能が傷害された状態。

腸閉塞の要因になるがんには何がある?

腸閉塞の原因になるがんには、「胃がん」や「大腸がん」があります。胃がんによる腸閉塞は手術後の癒着によって起こるケースがほとんど。胃がんの進行度はステージ(病期)といわれ、ステージによって治療方法が異なります。ステージはⅠ期(ⅠA、IB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB、ⅢC)、Ⅳ期の8段階に分けられ、手術対象となるステージはステージⅠ~Ⅲです。


引用元:福井済生会病院

大腸がんは、大腸にある腫瘍が大きくなることで腸管を圧迫します。腸管を圧迫し腸が塞がれることで腸閉塞となるのです。日本医科大学斉藤外科教室 木村薫によると、腸閉塞発症例のうち、がんによる腸閉塞は約5%と20人に1人発症しています。

引用元:日本医科大学斉藤外科教室 木村薫 本邦イレウス症例の統計的観察

胃がんや大腸がんについては以下の記事も併せてご参考ください。
>>胃がんとは?その症状や治療法などについてご紹介
>>大腸がんとは?その症状と治療法について

がんによる腸閉塞はどのような症状が出る?

がんによる腸閉塞の症状は、腹痛、腹部膨満感(お腹が膨らむこと)、排ガス(おなら)の停止、便秘、吐き気・嘔吐、発熱などがあります。

腸内容物が排泄されずおならも出なくなり腹部膨満につながります。その後、腹痛や吐き気・嘔吐の症状が出ます。腹痛は、単純性腸閉塞の場合は強くなったり弱くなったりを繰り返しますが、絞扼性腸閉塞の場合は持続的な強い痛みをともないます。さらに、絞扼性腸閉塞は腸の血流障害により、顔面蒼白や冷や汗、頻脈が出現し、悪化するとショック状態となる可能性もあるのです。

嘔吐は、腸の閉塞部位によって症状の出る早さに違いがあります。嘔吐の性状は、最初は胃液や胆汁など黄色や緑がかった色ですが、時間が経過すると糞便のような臭いをともないます。

胃がんや大腸がんの手術後は、腸の運動が弱くなっているため起こりやすいです。重篤化する可能性もあるため、腹痛や吐き気が続くときは看護師やスタッフを呼んで対応して貰いましょう。

がんで腸閉塞になってしまった場合の一般的な治療法


もし、がんで腸閉塞になってしまった場合の一般的な治療法を以下の表にまとめました。

単純性腸閉塞 保存的療法・ステント治療
麻痺性腸閉塞 保存的療法
絞扼性腸閉塞 手術療法
けいれん性腸閉塞 薬物療法

基本的には対症療法ではありますが、症状によっては他の選択をする場合もあります。

保存的療法

単純性腸閉塞や麻痺性腸閉塞が主な対象です。保存的治療は、絶飲食(食事と飲み物を取らない)とし、点滴で栄養管理します。また、鼻からイレウスチューブという細いチューブを入れて、腸のなかにある内容物やガスを吸引し治療します。腸閉塞から回復するまでチューブは挿入しておくため、長期間チューブを入れておく可能性もあるのです。

ステント治療

腸閉塞により腸の機能が失われた場合におこなう治療方法です。腸の機能が失われた場合は排便ができなくなるため、ひと昔前まではストーマ(人工肛門)を造設するのが主流の治療でした。ストーマ造設後の感染症やお腹のなかに新たに腫瘍ができるなど合併症のリスクもあるので治療方法の思索が続いていたのです。

ステント治療は2012年より始まり、ストーマの造設を回避できる治療方法です。しかし、穿孔やステントの逸脱のリスクもあります。イムス富士見総合病院 廣岡映治らによると、
大腸ステント手術をおこなうときの偶発症は穿孔率5%、ステントの逸脱率が3%、手術後は選好率が4%、逸脱率10%、再閉塞率10%、死亡率が0.5%と報告されています。

手術療法

絞扼性イレウスが主な対象の治療方法です。腸がねじれているのを治したり、血流が長時間阻害され腸が腐敗していたりする場合は切除します。腸の切除後は残された腸を吻合(つなぐこと)しますが、吻合できなかった場合は上記で説明したストーマやステント留置の手術が必要です。

腸閉塞が起きても手術できない状態は?

腸閉塞が起きても手術ができない状態は、「高齢であり手術に対応できる体力が残っていない」場合です。腸閉塞を起こした場合、病状により手術となるのですが、その手術で命を落とすこともあるのです。手術は全治二ヵ月の大けがと同様と言われるほど、体にとってはダメージとなります。

ご家族の希望に合わせて手術をおこなうか決めることもあるため、事前に危篤時の対応を話し合っておくケースもあるのです。

薬物療法

薬物療法は、麻痺性腸閉塞、けいれん性腸閉塞が対象の治療方法です。

麻痺性腸閉塞は腸の動きが弱くなることで起こるため、腸の動きを促進するための薬剤を投与します。けいれん性腸閉塞は、けいれんを起こす原因となる疾患を治療したり、けいれんを抑える薬を投与して治療します。

がんの薬物療法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
>>がんの薬物療法とは?その治療方法や方法についてご紹介

腸閉塞につながりやすいがんのステージは?

腸閉塞につながりやすいがんのステージは胃がんはステージ4、大腸がんはステージと深い関係性はありません

胃がんは「腹膜播種」というがん細胞が胃の壁を突き抜けて腹部に付着して大きくなる状態になると腸閉塞を起こす可能性が高まります。胃がんは、他臓器に転移する段階でステージ4と診断されます。

大腸がんによる腸閉塞はがんの腫瘍が大きくなることで起こりますが、腫瘍の大きさはステージとは深い関係ありません。大腸がんのステージを決める要素は

  • 腸管への深達度
  • リンパ節転移
  • 遠隔転移

の3つです。国立大蔵病院外科 篠原 央らによると、大腸がんが発見されたときにはステージが進行していることが多く、腸閉塞を発症している場合もあります。大腸がんは発見が遅くなると腫瘍が大きくなり腸閉塞を起こす可能性が高まるのです。日頃からお腹の痛みや便秘傾向ではないかなどを気にして生活を心がけ、早期発見に努めたいですね。

まとめ


今回はがんによる腸閉塞について解説しました。

腸閉塞になりやすいがんは、「大腸がん・胃がん」。大腸がんや胃がんは進行すると手術適応となり、術後はお腹の動きが弱くなるため腸閉塞を起こしやすいです。そのため、腸閉塞の症状であるお腹の痛みや便秘、排ガスの有無を気にかけて過ごしましょう。

日本はがんの発生数が多く、生涯では2人に1人ががんと診断されると言われています。時代とともに治るがんも増えてきていますが、まだまだ完全には打ち勝てていないのが実情です。普段から体の声に耳を傾けて自分の体をいたわる生活習慣が大切ですね。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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