2021.08.31
がん【前立腺がんステージ4】症状・治療法、骨の転移は?余命についても解説
前立腺がんは自覚症状が少ないため、初期の頃には症状を見逃してしまうことがあります。仮に排尿障害が出たとしても、意識的に力むことで排尿できることもあり、受診が遅れがちな疾患でもあります。
それが前立腺がんの恐ろしさの一つです。何かしらの症状が出て受診したときには進行性のがんや転移がんの状態になっていることも少なくありません。
この記事では、前立腺がんステージ4の症状や治療法、余命について解説しています。
※ 前立腺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>前立腺がんとは?その症状と治療について
目次
前立腺がんステージ4の症状
前立腺がんがさらに進行すると、前立腺周囲の組織にもさまざまな影響を及ぼします。
周辺の組織やリンパ管を腫瘍が圧迫して、足のしびれや下肢・下腹部にむくみが生じたり背骨や腰などに痛みが生じたりすることもあります。
前立腺がんが進行すると腎臓から膀胱へ尿を送る尿管も圧迫され、尿の流れが滞り水腎症を起こしたり、腎臓の働きが低下したりする要因ともなりうるのです。
※水腎症:尿の流れがせきとめられ、尿の通り道や腎臓が尿がたまることで拡張した状態
骨転移しやすいのが前立腺がんの特徴「造骨型骨転移」
前立腺がんは骨に転移しやすいがんの一つです。骨に転移すると骨盤や腰椎などに影響を及ぼし、背中や腰の痛みや足のしびれなどが生じることもあります。
ここまでの症状が出ているとがんはかなり広がっている状態です。ときとして脊髄内の神経を圧迫し、鈍い痛みから鋭い痛みまでさまざまな痛みが襲ってくることもあります。
前立腺がんの転移先としては、骨盤や脊椎、大腿骨、肋骨など大きな骨への転移が多く見られます。一般的に骨転移は骨がもろくなるイメージですが、前立腺がんでは異常な骨が作られる「造骨型の転移」が生じます。
前立腺がんステージ4の治療法
前立腺がんのステージ4は前立腺のみだけではなく、周囲の組織や遠隔転移が起こっている状態です。基本的に手術の対応ではなくなり、がん腫瘍のある場所や全身に作用する治療法を選択し治療を進めていきます。詳細な治療法について解説します。
放射線療法
放射線治療はX線などを始めとした放射線を照射する治療法です。前立腺がんの放射線療法には、体の外側からがん腫瘍に向かって照射する「外部照射療法」と放射線を出す小さなカプセルを埋め込んで体の内側から放射線を当てる「内部照射療法」があります。
いずれの場合もメリットとしては勃起障害などの影響が少なく、70歳以上などの高齢者でも可能で通院での治療もおこなえるところです。
デメリットとしては「外部照射療法」だと前立腺周囲の膀胱や直腸などに合併症が起こる可能性もあります。一方で「内部照射療法」は周囲組織への障害などのリスクは軽いもののカプセルを埋め込む手術が必要です。
ホルモン療法
前立腺がんは男性ホルモンアンドロゲンが刺激となってがんが増殖することがわかっています。つまり、ホルモンに依存してがん細胞が増殖するのです。
そこで男性ホルモンの分泌や男性ホルモンの作用を抑えてがん細胞の増殖を防ぐのが「ホルモン療法」の目的です。ホルモン療法を継続しておこなうとホルモン依存性により増殖しているがんは減っていきます。
しかし一方でホルモンに依存していないがん細胞は増殖し続けます。やがてホルモン非依存性の腫瘍が残り、ホルモン療法自体が効果を得られなくなっていきます。そのためホルモン療法はがんの根治を目指す治療ではなく、がんを縮小させる目的でおこなわれます。
ホルモン療法には大きく分けて、薬物療法による治療と外科的に精巣を摘出して男性ホルモンの影響を受けなくする治療法があります。
1.精巣摘出術
精巣を摘出する際は「両側精巣摘出術」として手術によりおこなわれます。精巣から分泌される男性ホルモンが確実になくなるので、手術した1・2週間後には血液中のテストステロン量が急激に低下し、そのままの状態で維持します。
手術自体も比較的簡単で、30分程度で済み、体の負担も少ないのが魅力です。精巣自体を取り除くだけで袋は残るので外観上の違和感も大きな変化はありません。
2.ホルモン療法(単独)
一方で薬物を使って治療をする方法はアンドロゲン(※男性ホルモンの総称。テストステロンも含まれる)の働きを抑える抗アンドロゲン剤やテストステロンという男性ホルモンの分泌を抑えるLH-RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、LH-RHアンタゴニストという薬剤を使うのが主流です。
抗アンドロゲン剤は、男性ホルモン自体は生成されますが前立腺に作用する前にその働きを阻止します。一方でアゴニスト、アンタゴニストは脳の下垂体に作用してテストステロンの分泌そのものを抑える作用を持ちます。いずれの場合も最終的に男性ホルモンであるテストステロンの働きを抑えることを目的としているのです。
3.CAB療法
CAB療法とはLH-RHアゴニストと抗アンドロゲン薬を併用する治療です。男性ホルモンの95%は精巣から分泌されていますが、残りの5%は副腎から分泌されています。2種類の薬剤を併用することによってより強力に男性ホルモンをブロックする作用が期待できるのです。治療費が若干高額になるのがデメリットですが、高い効果を期待しつつ短期間でホルモン療法の結果を得たい人に向いています。
ホルモン療法後は骨密度低下対策を
ホルモン療法を長く続けていると、骨がもろくなり骨粗鬆症が起こりやすくなります。ホルモン療法を継続している場合は骨や筋肉の材料となるカルシウムやタンパク質、カルシウムの吸収を高めるビタミンDなどを積極的に補給することを心がけましょう。
化学療法
一般的に悪性腫瘍の治療としては手術・化学療法・放射線療法が三大治療法とされています。しかし前立腺がんにおいては化学療法は効かないとされてきました。
近年前立腺がんにも効果が期待できる「ドセタキセル」という薬剤が日本でも2008年に承認され、使われるようになりました。
化学療法はホルモン療法を続けたあとに効果がなくなったときに使われています。ホルモン療法を継続して効果が見られなくなったときにも延命治療ができるようになったのです。
前立腺がんステージ4の余命は?
グラフ | 性別 | 病期 | 年齢階級 | 手術の有無 | 対象数 | 実測生存率 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 男性 | Ⅰ期 | 全年齢 | 全体 | 29,438 | 89.60% |
B | 男性 | Ⅱ期 | 全年齢 | 全体 | 22,329 | 91.10% |
C | 男性 | Ⅲ期 | 全年齢 | 全体 | 11,587 | 86.40% |
D | 男性 | Ⅳ期 | 全年齢 | 全体 | 10,319 | 51.10% |
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c12#h-title)
前立腺がんステージ4の5年実測生存率は51.1%。さまざまな悪性腫瘍のなかでは比較的良好な成績を示しています。
これには前立腺がん自体が比較的高齢者に発症しやすいのと高齢であるがゆえに進行が遅いという実情が考えられます。前立腺がんが進行し前立腺がんによる影響を及ぼす前に天寿を全うするケースも少なくありません。
根治を目指さなくても定期的に受診し、経過観察をしながら上手にお付き合いをしていくことで質のよい余生をすごせることも期待できるでしょう。
経過療法とは異なる待機療法
待機療法とは症状が出るまで何もしない方法で、基本的には期待余命が10年以下の高齢者が対象となります。必ずしもステージ4で取られる治療法ではありません。
初期の前立腺がんでも期待余命が10年未満であれば選択される場合もあります。高齢者の場合、多少進行していても前立腺がん自体が寿命に影響を及ぼす可能性は低いこともあるため、今後の症状が出ないと考えられる場合に待機療法を取り入れます。
症状が出た場合は原則としてホルモン療法になりますが、根治を目指すものではない緩和治療が待機療法の特徴です。前立腺に影響を及ぼし、排尿障害などの不快な症状が出るよりも、何もしない選択肢で安楽に過ごせるよう重視した際には待機療法を取るケースもあるのです。
まとめ
前立腺がんステージ4は進行が著しく、骨転移が生じやすい状態です。治療法として放射線療法、ホルモン療法、化学療法があり、これらを組み合わせることで症状の緩和や余命の延長が期待できます。
個々の患者さんの状態によっては進行が遅く、気になる症状がない場合には経過観察で様子を見るケースも少なくありません。根治にこだわらず患者さんが何を重要と感じているかによって最適な治療法を模索するため、医師との相談は重要です。
患者さん自身が「どのように過ごしたいのか」をしっかりと見極めて、進行具合を加味しながらよりよい選択をしていきたいですね。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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