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前立腺がん2-3期ステージの症状・治療法・余命を解説

前立腺がん2-3期ステージの症状・治療法・余命を解説

前立腺がんのステージ2・3期。前立腺内やその周辺に腫瘍が広がり始めた段階です。この時期になるとおもな治療法は手術療法。がん細胞やその影響を受ける組織をしっかりと切除することにより、根治が望める段階でもあります。この記事では、前立腺がんステージ2・3の状態について詳しく解説します。

※ 前立腺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>前立腺がんとは?その症状と治療について

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

前立腺がんステージ2・3はどのような状態か

前立腺がんステージ2・3はどのような状態か
前立腺がんステージ2・3はどのような状態か
(参照:https://wakita-clinic.jp/aboutcanser.html

前立腺がんステージ2は悪性の腫瘍細胞が前立腺内にとどまっている状態です。前立腺の片側にがんがとどまっている場合をステージ2-1、前立腺の片側全体か両側にまたがっている状態をステージ2-2としています。

ステージ3は前立腺の被膜を超えて広がりを持ち始めた状態です。ステージ3-1は被膜外浸潤が認められ、ステージ3-2は膀胱頸部への浸潤や尿管の閉塞などが確認される状態です。ステージ2・3で見られる症状について解説をします。
※ 浸潤:がんが周りに広がっていくこと

前立腺がんステージ2・3で見られる症状

前立腺は女性にはないので前立腺がんは基本的に男性にしか起こりません。前立腺は解剖学的に膀胱のすぐ下側に存在し膀胱直下の尿道と性能から分岐する精管を取り囲んでいます。
前立腺がんステージ2・3で見られる症状
(参照:https://wakita-clinic.jp/aboutcanser.html

前立腺がんが進行してくると、最初に起きる症状は排尿障害です。前立腺がんはおもに前立腺の辺縁系に生じるので初期の頃はほとんど症状がありませんが、腫瘍が増大してきて排尿に影響を及ぼすと以下のようなさまざまな症状が現れます。

  • 夜間に何回もトイレに通う「夜間頻尿」が起こる
  • 排尿のサインに尿の出が細くなり放射線を描いて飛ばなくなる「尿線細小」が起こる
  • 排尿し終わるまでに時間がかかったり、途中で尿が止まりいきまないと尿を出し続けられない「尿線途絶」が起こる

前立腺がんステージ2・3の治療法

前立腺がんステージ2・3の治療法
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/print.html

基本的に前立腺がん2・3期はがん細胞が前立腺内にとどまっているか、被膜を超えて周辺組織にとどまっている状態です。ゆえに適応となる治療法は「手術療法・放射線療法・監視・フォーカルセラピー」とされています。以下に詳細を解説します。

手術療法

前立腺がんステージ2・3の場合に目指す根治的な治療法は手術療法です。基本的には前立腺そのものの他に悪性腫瘍の影響を受けている周辺組織も踏まえて摘出します。従来前立腺の摘出術は下腹部や会陰部分を切開して摘出する方法が主流でした。しかし近年は、腹腔鏡と呼ばれる方法でおこなわれ、体への侵襲を少なくして摘出できるケースがほとんどです。

ロボット手術「ダヴィンチ」支援による前立腺摘除術

近年医療ドラマなどでも注目されている手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いて前立腺がんの摘除術もおこなわれています。ダヴィンチは従来の腹腔鏡とは違い、ロボットのアームが非常に微細な動きを再現できるようになりました。従来の腹腔鏡では難しかった勃起のために必要な神経を遮断することなく温存する手術も可能になったのです。

とはいえ神経周囲のがん細胞の残存などを配慮すると、ステージやがんの悪性度、広がりなどを考え勃起神経もあわせて摘出したほうがよいケースもあります。医師の技術さえ問題がなければロボット支援手術により、患者さんや家族の希望に合わせ性生活を営める可能性を残す治療も可能になったのです。

尿漏れやEDについて

前立腺がん全摘除術を受けたあと、少なからず「尿失禁や尿漏れ、排尿困難」などの症状が生じます。特にくしゃみや咳などにともない尿失禁や尿漏れが起こる「腹圧性尿失禁」は比較的生じやすいです。

これは前立腺につながる膀胱頸部と前立腺の下にある外尿道括約筋が摘出時に影響を受けるためです。尿の漏れ出しをコントロールしている組織が一時的に締まりが緩くなることによって起きます。

尿漏れや排尿困難などの症状は早ければ1ヵ月、長くても1年くらいでおおむね改善されますがなかには尿漏れが残ってしまうケースもあります。泌尿器科では骨盤底筋群のトレーニングなどの指導をされるので、医師の指示にともないできる範囲で積極的におこなうようにします。骨盤底筋群の筋肉トレーニングをすることで、いくらか症状を和らげることも可能です。

骨盤底筋群体操をわかりやすく表すと、排尿中におしっこを止める動作です。排尿時におしっこを止める意識をしたり、肛門周囲をキュッと締め付けることにより骨盤底筋群のトレーニングができます。

また、前立腺全摘手術をおこなったあとに生じる合併症の一つに勃起障害があります。勃起神経は陰茎海綿体の平滑筋の収縮と主管を調節することにより陰茎を勃起させたりもとに戻したりすることができる機能です。

前立腺の両側に神経血管束があり、神経と血管の束がほとんど前立腺に接するようにして走っていて勃起神経もそのなかにあります。通常の前立腺摘除術だと勃起神経も切除してしまうため、ほぼ100%勃起が起こらなくなるのが実情です。

しかし近年は、手術方法の向上により勃起神経を残存させる方法も可能になりました。しかしその分、がん細胞残存などのリスクもあり再発リスクが高くなる可能性もあります。

夫婦生活の有無などを加味したうえで、勃起神経を残存させるかどうかというのは慎重に判断し、医師と相談しながら治療を進めることが大切です。

監視・フォーカルセラピー

監視治療法は、定期的にPSAを測定しながら前立腺がんが進行していないかどうかを経過観察していく治療法です。進行の気配が見られたら何かしらの治療を開始していきます。フォーカルセラピーは、できるだけ前立腺の機能を温存しながらがん細胞の部分だけを狙って治療していく監視療法と手術療法の間のような治療法を指しています。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>前立腺がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・再発予防対策を解説。効果的な食べ物や気になる余命は?

ホルモン療法

ホルモン療法とは、各種薬剤を用いて男性ホルモンの分泌を抑制し、がん細胞の増殖を抑えたり腫瘍を小さくしたりすることを目的としておこなわれます。基本的には根治的な治療ではなく根治を目指すには別の治療を併用するケースがほとんどです。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>【前立腺がんステージ4】症状・治療法、骨の転移は?余命についても解説

放射線療法

放射線療法はX線やガンマ線、粒子線などがん細胞に向けて収束照射し治療を進めます。以前は骨転移に対して照射し、痛みに対しての治療とされていましたが、近年は非常に精度も上がっている治療法として活用されています。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>【前立腺がんステージ4】症状・治療法、骨の転移は?余命についても解説

前立腺がんステージ2・3の余命は?

前立腺がんステージ2・3の余命は?

グラフ 性別 病期 年齢階級 手術の有無 対象数 実測生存率
A 男性 Ⅰ期 全年齢 全体 29,438 89.60%
B 男性 Ⅱ期 全年齢 全体 22,329 91.10%
C 男性 Ⅲ期 全年齢 全体 11,587 86.40%
D 男性 Ⅳ期 全年齢 全体 10,319 51.10%

(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c12#h-title

前立腺がんステージ2・3の余命の指標となる5年生存率。他のがんと比較しても高い成績を収めており80%台後半から90%台を維持しています。

前立腺がんは前立腺や周辺組織を切除することにより根治的な治療が可能です。定期検診をしながらPSAにて主要マーカーを観察しつつ経過も終えるのが予後につながる因子ともいえるでしょう。

手術療法による排尿障害や勃起障害などのリスクはありますが、自分の生活において何が重要かを検討し、どのように生活の質を維持していくかが余命につなげる検討事項になるといえそうです。

まとめ

まとめ
前立腺がんの2-3期ステージではおもな治療法は手術療法です。悪性腫瘍の影響を受ける前立腺や周辺組織を適切に摘出することが重要です。

症状としては排尿障害が現れ、夜間頻尿や尿線細小などが起こります。近年では手術療法としてロボット手術による前立腺全摘除術があり、副作用として尿失禁や勃起障害があるものの、近年の技術向上で選択肢が増えました。

その他の治療法として監視・フォーカルセラピー、ホルモン療法、放射線療法も考慮されます。余命の観点では前立腺がんは他のがんと比較して高い治癒率が期待され、定期検診と治療選択により生活の質を維持することが可能です。

排尿に関する気になる症状が出たら、そのままにせず早い段階で病院受診を検討し、少しでも早く根治的な治療を受けるようにしましょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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