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食道がんの初期「0・1期」の症状は?治療法~再発予防、余命までを解説

食道がんの初期「0・1期」の症状は?治療法~再発予防、余命までを解説

食道がんのなかでも、ステージ「0・1期」は、比較的初期のがんといわれていて、5年生存率も高い傾向にあります。

この記事では、食道がんの初期ステージ「0・1期」の治療法や再発防止に向けて意識したいことを解説しています。食道がんの初期の状態について詳しく知りたい方向けの内容を深堀りしました。

また、食道がんの症状や治療法について詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>食道がんとは?その症状と治療法について

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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食道がんの初期の症状

食道がんの初期は、ほとんどの場合自覚症状がありません。そのため発見が遅れやすいがんの1つでもあります。人によっては熱いものや酸っぱいものを食べたときに喉にしみる感じがしたり、食べ物や飲み物を飲み込むときに違和感を覚えたりすることもあるようです。しかしその症状も、日常生活にほとんど差し障りのない範囲で現れるため見過ごされてしまうことも少なくありません。

食道がんは内視鏡検査や造影検査などで偶発的に見つかることが多いです。また、自覚症状を感じるよりも前に定期検診や集団検診で食道の異常を指摘されたり、あるいは他の病気の検査でたまたま異常を指摘されて医療機関を受診したりした際に発覚することもあります。

がんの早期発見について詳しくは以下の記事を記事をご覧ください。
>>がんを早期発見するには?検査方法などを詳しく解説

食道がんのステージ

食道がんが見つかったあと、治療法を選ぶ際の指標の1つにステージ(病期)分類があります。食道がんのステージはがんの広がり方や、がん細胞が他の臓器や周辺組織に転移しているかどうかによって分けられています。

食道がんの場合、ステージを決める際にはTNM分類を指標としています。

【TNM分類とは】
T因子:がんの大きさや胃粘膜への浸潤(T:原発腫瘍)
N因子:周辺のリンパ節へ転移の有無(N:所属リンパ節)
M因子:別の臓器への転移の有無(遠隔転移)

それぞれの因子を用いて、どの程度広がったり大きくなっていたりするかによってステージを決めています。
食道がんのステージ

(参照:食道がん治療|https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html

さらにTNM分類のなかのT因子に関しては、腫瘍の浸潤度(※1)によってTの0から4まで分けています。

※1 浸潤:腫瘍が食道の壁のどこまで達しているか
食道がんのステージ
(参照:食道がん治療|https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html

Tの0はがんがごく小さく、非常に初期の段階で粘膜内にとどまっている段階です。そのあと、粘膜層に対して浸潤が認められるようであればその浸潤の深さによりT1からT4まで分類します。

食道がんの主な原因

食道がんの主な原因
がんは、体を作る細胞が複製されるときに遺伝子が傷ついて、異常細胞が増殖を繰り返す病気です。食道がんになる要因の多くは生活習慣のなかに潜んでいます。特に飲酒と喫煙は食道がんと大きく関係していると考えられているのです。

食道がんのリスクを高める生活習慣としては主に「飲酒」と「喫煙」。「飲酒」と「喫煙」はアルコールやニコチンなどの刺激物を含むため、食道を通過していく際に細胞の遺伝子に異常をきたすダメージを与え、がんの発生要因につながると考えられています。そのためお酒をよく飲む習慣があったり喫煙習慣があったりすると、食道がんに罹患しやすい傾向にあるといえます。

食道がんの検査

食道がんの検査には、胃カメラなどによる内視鏡の検査と造影剤を飲んで食道の様子をチェックするバリウム検査の2種類があります。

内視鏡検査

食道がんの発見には、胃カメラなどによる内視鏡検査が役立ちます。 内視鏡検査は端に小さなレンズがついた細い管を直接口や鼻から挿入し、食道の壁の様子をモニターに映し出して観察します。
見ただけで判断ができかねるような状況の食道粘膜には、ルゴール液と呼ばれる粘膜を染色する液体を散布して染色し、識別しやすいようにします。 正常な細胞は暗褐色に染まりますが、がん細胞は染まらないので早期の食道がんの発見にも役立ちます。

バリウム検査

バリウム検査とは、造影剤を患者さんに飲んでもらい、その造影剤が食道を通過する様子をレントゲンで撮影する検査です。 食道の内腔の狭窄(※2)の程度や食道がんの全体像の把握に有効とされていて、患者さんの苦痛がほとんどないのもメリットです。 一方で食道粘膜の細かな様子は分かりにくく、早期がんは発見しにくいのがデメリットといえるでしょう。

※2 狭窄:管の中が細く狭くなること。

食道がんの初期0・1期の治療法

一般的に食道がんの初期といわれているステージは、0・1期とされています。食道がんの0期はがんが粘膜内にとどまっている状態であり、1期はがんが粘膜下層内にとどまっている状態を指しています。

最終的にはがんの大きさや基礎疾患なども考慮して治療方針を決めるのが一般的です。食道がん初期の場合、主な治療法は内視鏡を使ってがんを切除する方法です。1期になると、手術療法が選択されるケースも増えてきます。

食道がんの初期0・1期の治療法
(参照:食道がんのステージと治療の選択|https://www.esophagus.jp/public/cancer/05_stage.html

内視鏡治療

食道がんの治療法には、主に内視鏡による治療、手術、化学療法、放射線治療があります。がんが粘膜にとどまっていて転移がないステージ0の場合には、内視鏡での治療を第一選択とするケースが多いです。

従来の一般的な食道がんの手術は、開胸・開腹手術でした。非常に大掛かりな手術になるのに加え、手術後の体力回復にも時間がかかるので、患者さんにとっても負担が大きいものだったのです。しかし、近年では食道がんの初期治療としては内視鏡での治療が主流になってきています。

内視鏡治療の最大のメリットは、病巣を内視鏡で切り取れるので、体にかかる負担がほとんどないことです。食事も翌日から可能なことが多く、入院も長くても1週間程度。早期の食道がんであれば、体への負担が軽い状態での完治を目指せます。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
(参照:食道がん|https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/endoscopy/040/010/index.html

内視鏡で食道がんの治療をする方法の1つに内視鏡的粘膜下層剥離術(以下:ESD)というものがあります。ESDは、病巣をまとめて取る処置です。内視鏡から取り出せるナイフのような器具で、粘膜下層の組織ごと、がんを切除する方法です。組織をまとめて取れるため、術後の病理検査でも病状を正確に把握できます。しかし、食道壁を傷つけやすいため熟練した技術が必要です。

EMR(内視鏡的粘膜切除術)

EMR(内視鏡的粘膜切除術)
(参照:食道がん|https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/endoscopy/040/010/index.html

内視鏡を使った治療方法には、、内視鏡的粘膜切除術(以下:EMR)と呼ばれるものもあります。こちらは、がんの腫瘍部分に電気の通ったワイヤーを引っ掛けて焼き取る方法です。

一度に切除できるのはワイヤーの長さにもよりますが、約2~3cm以内と非常に小さな範囲のみです。それ以上のサイズの大きながんは、分割して切除します。しかし、分割切除をすると治療後の病理検査で浸潤具合などが把握しにくく、再発も見られることから近年ではこの方法で治療する例は徐々に減ってきています。

内視鏡治療は食道がん初期における画期的な治療ではありますが、腫瘍の根は浅くても範囲が広い場合、つまり長さがある場合には360度ぐるっと取り囲んでがんを取り除けないため内視鏡治療の対象にはなりません。

腫瘍の直径が5cm以上の広い場合には表層拡大病変と呼ばれ、転移などの可能性が高いと考えられています。そのためよりがんの進行度合によって手術の内容が変わることもあります。

手術

食道がんの初期治療でも、内視鏡治療では取りきれないと判断された場合には手術が適応になります。手術の方法も病巣の大きさや深さによりさまざまな方法があり、患者さんの個別性に合わせて内容が検討されます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>食道がん2・3期の治療法・余命を解説!こんな症状は要注意

放射線療法と薬物療法の組み合わせ

食道がんの1期であっても、腫瘍ができた部位によってはものを食べたり、声を出したりする際に支障が生じることがあり、生活の質(QOL)への影響を予測できる症例もあります。また、元々の疾患や体力の兼ね合いもあり、手術そのものが適応外になることも。

患者さんによっては手術以外の手段で治療を検討する場合もあります。その場合には、化学療法や放射線療法で根治的な治療を目指すケースもあるのです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>食道がんステージ4の治療や余命は?がんとの共存について解説

食道がんの初期0・1期の余命

食道がんの初期0・1期の余命
(参照:がん情報サービス|https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c01#h-title

食道がんステージ1の5年実測生存率は71.4%。初期といわれている段階でも他のがんと比べると決して高い数字とはいえません。食道がんの再発につながる危険因子は、食道粘膜へのさまざまな物理的刺激や科学的刺激とされています。食道がんは特に扁平上皮がんであるので、喫煙や飲酒はおおいに影響を受けると考えられているのです。

再発リスクを上げる飲酒と喫煙

食道がんに罹患する危険因子。実は生活習慣のなかに危険な要因がたくさん潜んでいます。特に飲酒と喫煙は、食道がんへの罹患因子として大きな影響を及ぼしていることがわかっています。実際に日本人の中高年男性に対して、アルコール摂取や喫煙と扁平上皮がんとの影響を調査した興味深い結果が出ています。調査結果では、アルコール摂取と喫煙は食道扁平上皮がんの発生率と関係があることがわかりました。※3

※3 National Library of Medicine、2009年
Effect of alcohol consumption, cigarette smoking and flushing response on esophageal cancer risk: a population-based cohort study (JPHC study)

食道がんは早い段階で見つかることは非常にまれで、症状が進行してしまえば完治が難しい疾患でもあります。早い段階で見つけて完治を目指せるのであれば、再発リスクを少しでも下げるために飲酒と喫煙についての習慣は見直すほうがよいといえるでしょう。

食道がん再発を予防するのに意識したい食べ物や食べ物の食べ方は?

食道がんの治療後、食べてはいけないもの・食べた方がいいものというのは厳密に定められているわけではありません。

しかし、固いものなどは治療後に機能の衰えた消化吸収機能に負担をかけることがあります。そのため、治療後すぐには意識して避けておきたいものがいくつかあるのは事実です。

例えば、水に溶けない不溶性食物繊維は術後しばらくは食べ過ぎないように注意しましょう。

また食道の粘膜に対して、物理的刺激となる熱すぎる食べ物やあまりにも辛い食品、しょっぱい食品は刺激になってしまいます。食道の安静のためや、さらなる症状の悪化を防ぐためにいわゆる消化がよく胃に優しい食材を意識して摂ると食道への負担が少なくてすみます。絶対に食べてはいけないものではありませんが、自分の状態にあわせて検討したり、過度な摂取は見送ったりするなど調整しながら食べ方を考えましょう。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
>>がん患者が食べてはいけないものってあるの!?がんと食事について解説

まとめ

まとめ
食道がんの初期であるステージ0・1期。生活を工夫し、定期的な受診行動を意識すれば、余命延長への一助になるはずです。自分の生活を振り返ると、再発に繋がりうる危険要因が見つかるかもしれません。

食道がんに罹患した方はもちろん、本記事を読んで気になった方は、生活習慣を見直し健康な毎日を意識することで早期発見、早期対処につなげていきましょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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