2021.07.26
がんステージ4のがん、生存率について|治療にはどんな方法がある?
ステージ4のがんと聞くと生存率であったり、余命宣告だったりイメージする方が多いのではないでしょうか。ステージ4のがんは、ほとんどの場合リンパ節への転移や他の臓器への転移も認められる状態です。この記事ではステージ4のがんの状態や考えられる治療法などを解説します。
目次
ステージ4のがん、生存率は?
ステージ4の場合、生存率はどのくらいでしょうか。以下の生存率は2010〜2012年の診断例です。がん以外の理由での死亡を排除して計算した生存率である相対生存率をみていきましょう。
部位 | 5年相対生存率(%) |
---|---|
全がん | 22.9 |
食道がん | 13.8 |
胃がん | 6.6 |
大腸がん | 22.9 |
すい臓がん | 1.8 |
乳がん(女性) | 39.8 |
卵巣がん | 33.8 |
前立腺がん | 65.6 |
膀胱がん | 23.2 |
甲状腺がん | 72.2 |
がんの部位によって、5年相対生存率が異なることがわかります。沈黙の臓器ともいわれるすい臓のがんは、初期では自覚症状がありません。自覚症状が出たときには、すでに高いステージであることが多くあります。よってステージ4の時点では5年生存率が1.8%となるのです。
さらに、10年前の統計と比較してみましょう。
部位 | 5年相対生存率(2000〜2004年診断例, %) | 5年相対生存率(2010〜2012年診断例, %) |
---|---|---|
全がん | 18.1 | 22.9 |
前立腺がん | 58.2 | 65.6 |
乳がん(女性) | 35.1 | 39.8 |
すべてではありませんが、ほとんどのがんにおいて、生存率は10年前の統計と比べて上昇しています。医療の発展などが理由と考えられるでしょう。
ステージと余命は必ずしも相関しません。例えば、前立腺がんはステージ1の場合、5年相対生存率は100%です。よって、生存率やそこから導き出される余命に関しては、がんの状態によって大きく幅があります。
ステージ4のがんはどのような状態か
がんにおける進行の度合いやがんの状態を表す方法がステージです。病期(びょうき)とも呼ばれます。
がんのステージ分類は、国際対がん連合(Union for International Cancer Control)の「TNM分類」がよくもちいられます。0期(ステージ0)から4期(ステージ4)までの5段階での分類です。TNM分類は以下の3つの指標をもちいてステージを判定します。
T | 原発のがんの広がり、深さ、大きさなど |
N | がん細胞のリンパ節への転移の有無と広がり |
M | 原発から離れた臓器への遠隔転移 |
大腸がんを例に、それぞれのステージにおける状態をみてみましょう。
大腸がんステージ0
大腸がんは、大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるかがステージを決める因子のひとつです。ステージ0の状態は、がん細胞が大腸の粘膜内にとどまっています。リンパ節への転移はなく、他の臓器への転移もない状態です。ほとんど症状もなく、がん検診などで見つかる場合が多くあります。治療においても、内視鏡治療の対象です。がん患者数の順位が高い大腸がんでも、この時点で早期発見されれば治癒もあります。
ステージ1(Ⅰ)
ステージ1になると、粘膜の下にある粘膜下層から固有筋層までがん細胞が入り込んでいいます。ただし、ステージ1の状態では、リンパ節への転移や他の臓器への転移もない状態です。がん細胞が入り込んでいる深さによって、内視鏡での治療も対象です。固有筋層まで張り込んでいる場合(T2)は、切除手術を考えます。ステージ1時点での5年相対生存率は99.1%です。
ステージ2(Ⅱ)
大腸がんにおけるステージ2は、がん細胞がステージ1よりも奥の粘膜へと入り込んでいる状態です。深くまで入り込んでいても、リンパ節への転移や他の臓器への転移がないため、ステージ2と診断されます。外科的手術が適応されますが、再発のリスクが高い場合は術後に抗がん剤治療がおこなわれることもあります。この時点での5年相対生存率は90.5%です。
ステージ3(Ⅲ)
ステージ3になると、がん細胞がどれだけ粘膜の奥へと入り込んでいるかではありません。リンパ節に転移しているかどうかです。大腸の周りには血管が存在し、血管に沿うようにリンパ節が存在しています。ステージ3は、リンパ節への転移があるかないか、またリンパ節の転移している数で分類されるのです。ステージ3の時点での5年相対生存率は84.3%です。
ステージ4(Ⅳ)
他の臓器に転移している時点でステージ4と診断されます。1つの臓器に転移が見られる場合と2つ以上の臓器の場合で分類が異なります。腹膜転移がある場合もステージ4に分類されます。腹膜とは、腸や胃を包む薄い膜です。症状はなくても、がん検診などで指摘された大腸がんが他の臓器や腹膜に転移しているとステージ4と診断されることも。5年相対生存率は、急激に下がり22.9%です。
ステージ4のがん治療について
ステージ4の状態では基本的に外科的手術が第一選択になることが多くあります。がんの進行度合いによって、抗がん剤を利用する化学療法や放射線治療なども併用します。ここでは、それぞれの治療方法について紹介します。
手術によるがんの切除
手術によるがんの切除は、内視鏡ができない場合に第一選択になる場合が多くあります。一般的な開腹手術だけではありません。最近では、腹腔鏡手術やロボット支援手術など、患者さんへの負担が少ない手術方法などもあります。
手術は、がんを取るだけではありません。例えば胃がんの場合は、がん細胞を切除したうえで、食事が摂れるように消化管をつなぎ合わす再建術がおこなわれます。
外科的手術ですべてのがん細胞も取り切ることが理想です。しかし、手術後に検査では確認できなかったがんや転移しているがんがある場合は化学療法を併用する場合もあります。
抗がん剤などの化学療法
抗がん剤を使う場合は、大きく分けて2つです。ひとつは治療としての化学療法です。血液のがんや悪性リンパ腫などのがんでは、薬物治療での治癒を目的にします。外科的手術前に抗がん剤でがんを小さくすることを目的に化学治療がおこなわれることも。手術後に抗がん剤をもちいる場合は、手術で確認しきれなかった小さながん細胞が再発するのを抑えることが目的です。
次に、延命に対して抗がん剤が使用されます。主に手術後にがんが再発した場合です。がんの種類によりますが、抗がん剤による薬物治療において延命が期待できる場合もあります。
放射線治療
放射線をがん患部に照射し、がん細胞のDNAに損傷を与えることでがん細胞をやっつけるのが放射線治療です。リニアックと呼ばれる高エネルギー放射線治療装置で高いエネルギーのX線や電子線を発生させ、患部に照射します。放射線治療だけでがん治療をおこなう場合もありますが、ほとんどの場合は薬物治療や外科的手術との併用です。
放射線治療は基本的に痛みがありません。放射線治療の方法として一般的なのが外部照射です。体の外からがん細胞がある部分へ放射線をあてます。他にも、放射性物質を体内にいれたり、飲み薬や注射で体内に投与したりする内部照射があります。
免疫療法
3大がん治療として外科的手術、化学療法、放射線治療があげられますが、最近では免疫療法が第4のがん治療法として注目されています。免疫療法とは、人が本来持っている免疫力を回復させて、がんを攻撃する考え方です。私たちの体にはもともと免疫があり、体内に細菌やウイルスが入ってきた場合に、免疫反応により体を守ります。免疫システムが活性化することで、遺伝子変異して異物となったがん細胞に対しての効果が期待できるのです。
免疫療法に対し民間療法のイメージがある方もいますが、最近では慶應義塾大学で新しい療法としてがん免疫療法が研究されています。免疫チェックポイント阻害薬を使うことで、免疫ががん細胞を攻撃する力にブレーキをかけるのを防ぎます。効果が証明された免疫療法としてがん治療にもちいられています。
まとめ
がんにおける各ステージの状態やステージ4の時点で考えられる治療法について紹介しました。まずは主治医とよく相談し、必要な治療を選択するようにしましょう。そのうえで注目が集まっている免疫療法を選択肢と考えるのもひとつです。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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