2021.06.30
フコイダン海藻のぬめり成分「フコイダン」の効果と含まれる海藻について
わかめ・もずく・昆布といった海藻にはぬめり成分がありますが、この成分の1つが「フコイダン」です。このフコイダンには抗アレルギー作用や免疫力向上など、さまざまな効果が期待できます。
今回は海藻とフコイダンの関係について解説します。
目次
フコイダンとは
健康や美容に気を使っている方なら1度は聞いたことがあるであろう「フコイダン」。フコイダンとは海藻のヌルヌル成分のひとつです。ここ数十年でさまざまな健康や美容につながる成分として脚光を浴びるようになりました。
フコイダンは水溶性食物繊維のひとつで、日本人になじみの深い海藻類に多く含まれています。科学的には「硫酸化フコースを主とする高分子多糖類」に分類されています。フコース以外にもガラクトース、マンノース、キシロース、ウコン酸なども結合しています。
フコイダンの歴史
フコイダンは1913年にスウェーデンの科学者であるウプサラ大学の「H・Nキリン教授」によって発見され、その後100年以上経過した歴史のある成分です。今なお世界中で研究され続けています。残念ながらその全容は未だ解明できていません。ですのでフコイダンを人工的に合成することはできず、現在も海藻などから抽出したものを活用しているのです。
日本で脚光を浴び始めたフコイダン
日本でフコイダンが一躍脚光を浴び始めたのが1996年。第55回日本癌学会で「フコイダンの化学構成と抗がん作用」が発表されたのがきっかけです。
人体に有害な副作用をおこすことなくがん細胞に対して「アポトーシス(細胞の自滅)」を促進させる可能性が示唆されました。多くの医師ががん治療の一環としてフコイダンを取り入れるようになったのです。
フコイダンの抗アレルギー作用確認
さらに翌年、1997年には日本農芸化学会の大会で「褐藻由来のフコイダン抗アレルギー作用」に対して研究発表がなされました。
フコイダンは花粉症の症状の元となるIgE抗体の発生を抑制し、症状を改善に導く働きがあることもわかったのです。この発表により「ヒスタミンの作用を抑えるしかない対症療法」であった花粉症などのアレルギー治療に大きな変化が訪れました。
フコイダンの健康効果
フコイダンは健康につながるさまざまな効果が認められています。現状わかっているだけでも以下の4つが代表的。順番に紹介します。
免疫力を高める
人間はもともと細菌やウイルス、がん細胞などの異常細胞があると、備えられている免疫システムによりそれらを排除しようと働きます。その免疫力を活性化させるのに一役買っているのが「フコイダン」。
フコイダンのような多糖類は体内に取り込まれると免疫細胞の1つであるマクロファージを刺激します。マクロファージのTLR4(Toll like receptor 4)という受容体に取り込まれたフコイダンを認識。刺激を受けると標的を攻撃するための物質「IL-12」「抗腫瘍サイトカイン」などを分泌し、免疫細胞を活性化します。
免疫力を高める働きにつながるはっきりとした理由はまだわかっていませんが、「免疫細胞がフコイダンを病原菌などと勘違いして活性化するのでは?」と推測されています。
抗ウイルス・抗アレルギー
アレルギーの原因はTh1細胞(遅延型アレルギーに関与)とTh2細胞(即時型アレルギーに関与)のバランスが乱れることで症状が強くなるといわれています。フコイダンの働きとしてTh2を抑制しTh1を増加させることがわかっています。フコイダンを摂取することで免疫能の調律がとれると考えられているのです。
さらに免疫機能のバランスを調節するだけではなく、花粉症などの症状を悪化させる「IgE抗体(1型アレルギーを引き起こす免疫グロブリン)」の発生を抑制することもわかっています。
また、フコイダンは HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)などの感染細胞にアポトーシスを誘導させることがわかっています。さらに、ヘルペスやHIVなどをはじめとするウイルスに対して細胞を保護し、抗ウイルス作用を発揮することも確認されているのです。
胃粘膜の保護・ピロリ菌除去
フコイダンは胃粘膜の保護やピロリ菌に対しての作用。フコイダンの構成成分である「フコース」が有益な作用を発揮していると考えられています。
このフコースはピロリ菌に絡みつき、捕獲。さらにピロリ菌の胃粘膜への接着を阻害し、排泄を促すと考えられているのです。またフコースなどのヌルヌル成分が胃粘膜を保護してくれるので、胃の不快感を軽減したり過剰分泌が起きている胃酸から胃粘膜を保護し回復を促進させるといわれています。
生活習慣を予防
生活習慣病とは、食事や運動などをはじめ喫煙や飲酒などの生活習慣を因果関係として発症する疾患の総称です。日本人の死因の上位を占めるがんや心臓病、脳卒中などは生活習慣病の代表選手。さらに高血圧や糖尿病、肝臓病、腎臓病なども含まれます。
フコイダンが生活習慣病予防にアプローチできるといわれるゆえんは以下の通り。
- 血中のグルコース吸収を阻害し血糖値の上昇を抑制する
- コレステロールや中性脂肪を低減
- 血液凝固能の抑制
- 血圧上昇抑制作用
- 血流を改善する作用
これらの働きが認められています。
生活習慣病は、さまざまな因子が複雑に絡みあって発症することがわかっています。その根本となる血流や血液成分を安定させるのに一役買っている「フコイダン」。生活習慣病のもととなる要因をターゲットにできるので、生活習慣病予防につながると考えられているのです。
フコイダンが含まれている海藻
海藻類に含まれる成分として注目を浴びているフコイダンですが、実は含まれる海藻類は限られています。海藻類と一言でまとめてもその種類は「緑藻・褐藻・紅藻」などにわけられています。
その中でも私たちの生活の中でなじみ深い「もずく・昆布・わかめ」といった「褐藻類」にのみ含まれる成分なのです。フコイダンはそれぞれの海藻類により含有量も異なります。
海藻ごとの含有量
褐藻類は、私たちが普段よく食べる海藻です。食卓によくあがる海藻に含まれるフコイダンの量は以下の通りです。
- めかぶ:100g(乾燥)/㎏
- わかめ:15g(乾燥)/㎏
- もずく:250g(乾燥)/㎏
フコイダンの摂取方法
健康を意識するなら毎日継続的に摂取するのがおすすめ。シンプルなのはやはり海藻類をできるだけそのままの状態で摂取すること。
フコイダンは海藻類を煮込んでしまうと、出汁として溶け出してしまいますので煮汁もそのまま摂取しなければなりません。
さらに乾燥した海藻類を戻した場合、フコイダンはほとんど含有していないこともわかっています。ですので、できるだけ生の状態のまま食べることをおすすめします。
食事から摂取する「もずく」はフコイダン含有量が多くおすすめです
食事から摂取する際、乾燥しているものや焼き海苔のように加工されているものにフコイダンはほとんど含まれていません。ですので、できるだけそのままの形態で摂取できる料理を選択しましょう。とくにもずくは少量でもたくさんのフコイダンが含まれています。もずく酢などは手軽にフコイダンを摂取できるので積極的に食べたいですね。
サプリから摂取する
食事からフコイダンを摂取できるのが一番理想的です。しかし、毎日新鮮な海藻類を食べるのも大変ですよね。そんなときに活用したいのが「サプリメント」。
サプリメントであれば1日数粒内服すればOKなので、手軽にフコイダンを摂取できます。その日の食事から、必要に応じて適宜活用してみましょう。
フコイダンは天然の海藻から抽出される成分で、他のサプリメントや医薬品との相互作用は今のところ報告されていません。併用にも大きな問題はないと考えられます。
摂取量に注意
最近ではフコイダンのさまざまな健康へのサポート力がわかり、各社からいろいろなサプリメントや健康食品が販売されています。
しかし、その製造方法や原料となる海藻類はメーカーにより異なります。いずれにしても海藻が主原料となるフコイダン製品では、「ヨウ素(ヨード)」が含まれている可能性があるでしょう。
フコイダン製品に含有されている可能性のあるヨウ素。甲状腺甲状腺ホルモンの構成成分となるミネラルで、甲状腺に集積する性質を持ちます。ヨウ素の1日あたりの摂取上限量は「3mg」。過剰摂取することにより、甲状腺機能低下症などを引き起こす原因になることがわかっています。
フコイダン製品も1日の摂取目安を守り、健康のために過剰に摂取しないように気をつけたいですね。
まとめ
さまざまな健康や生活の質を向上させるのに役立つ「フコイダン」。とくに生活習慣病の予防や改善を目的とする場合は、短期間で期待する効果を得るのは難しいでしょう。つまり、継続して摂取することが望ましいのです。
しかし、過剰摂取してしまっては健康を損ねる可能性もあり、推奨されている摂取量をきちんと守ることが大切。
手軽に摂取できるフコイダンのタイプを見つけて、10年20年後の健康にアプローチしましょう!
近年ではがん治療の統合医療にも、フコイダンが用いられるようになっています。
中分子フコイダンが持つ作用が、がん治療に良い効果をもたらすと期待されているためです。
具体的には、フコイダンは抗がん剤との併用が可能であり、かつその効果を高めたり、副作用を軽減したりする可能性が示唆されています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
フコイダンには、まだまだ秘められたパワーがあると考えられます。
今後研究が進むことで、私たちの健康に対しても医療分野に対しても、さらなる恩恵をもたらしてくれることでしょう。
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