2021.07.04
フコイダンフコイダンの抗ウイルス作用や仕組みについて解説
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、免疫活性作用や抗ウイルス作用のある「フコイダン」に注目が集まっています。
この記事では、フコイダンの研究論文をもとに、今最も気になる抗ウイルス作用について解説します。
目次
フコイダンとは
フコイダンは、コンブ・メカブ・モズクなどの褐藻類に含まれる滑り成分で、がんを抑制する効果で知られています。他にも、以下のような作用が認められています。
・血圧やコレステロールを下げる
・肝機能をサポートする
・消化器粘膜を保護する
・アレルギーを抑える
・活性酸素を除去する
・腸内環境を整える
・ウイルスから身を守る
・免疫を活性化する など
中でも、がんや基礎疾患を抱える方々から期待されているのが「抗ウイルス作用」と「免疫活性作用」です。
免疫力の低下が新型コロナウイルスの重症化リスクであるため、フコイダンの摂取を検討されている方も多いでしょう。
フコイダンの抗ウイルス作用
一口に「抗ウイルス作用」と言っても色々あり、フコイダンは以下の3つの作用でウイルス感染から身を守るとされています。
①ウイルスの侵入を防ぐ
②自然免疫系を活性化する
③獲得免疫系を活性化する
そもそも、ウイルスや細菌などの病原体や、がん細胞を検知して排除する仕組みを「免疫」と呼び、主に白血球がその役割を担っています。
白血球は「自然免疫」を担当する細胞と、「獲得免疫」を担当する細胞に分けられ、これらが連携して働くことで、精緻な生体防御システムが成り立っているのです。
フコイダンがウイルスの侵入を防ぐ
ウイルスは他の細胞に寄生しない限り、自分だけで増えることができません。
まずはウイルス感染の仕組みを踏まえ、フコイダンがどのように作用するのか見ていきましょう。
ウイルス感染の仕組み
ウイルスの基本構造は非常に単純で、「カプシド」というタンパク質の殻の中に、遺伝子として「DNA」か「RNA」を持っています。
一部のウイルスはカプシドの周りに「エンベロープ」という膜があり、カプシドかエンベロープのどちらかに、細胞と結合するための「スパイク」という突起があります。
ウイルスのスパイクが細胞と結合すると、細胞内に取り込まれ「感染」が成立。
細胞内に入ったウイルスは、核の中に自分の遺伝子を送り込み、どんどん複製していくのです。
それをベースに細胞内で新しいウイルスがつくられ、細胞外に放出されます。
ウイルス感染までのフコイダンの作用
新型コロナウイルスと同様に、RNAとエンベロープを持つ「ヒトパラインフルエンザウイルス」の試験では、フコイダンが細胞とウイルスの結合を阻害し、感染を防ぐことが示されました。※1
また、デング熱ウイルスにおいては、フコイダンがエンベロープに直接作用して、侵入できないようにすることが報告されています。※2
【参考文献】
※1 Fucoidan inhibits parainfluenza virus type 2 infection to LLCMK2 cells.Naomi Taoda.Biomed Res. 2008 Dec;29(6):331-4
※2 Structure and anti-dengue virus activity of sulfated polysaccharide from a marine alga.Kazuya IPJ HidariBBRC 376(1):91-5 2008
フコイダンが自然免疫系を活性化する
ウイルスが細胞内に侵入してしまっても、自然免疫を担当する細胞がしっかり機能すれば、ウイルスの増殖を食い止めることができます。自然免疫系の仕組みと、フコイダンの作用を簡単に説明します。
自然免疫系の仕組み
ウイルスに対する自然免疫を担当する細胞は、主に「NK細胞」「マクロファージ」「樹状細胞」の3つです。
ウイルスに感染した細胞は、「インターフェロン」という物質を分泌し、周りの細胞に危険を知らせます。
NK細胞はインターフェロンによって活性化され、感染細胞を検知して破壊。マクロファージはウイルスを食べて分解し、小さなかけらにします。そのウイルスのかけらを樹状細胞が取り込み、どんなウイルスかを獲得免疫を担当する細胞に伝えます。
ここまでを自然免疫系と呼び、獲得免疫系が動き始めるまでの時間稼ぎをします。
自然免疫系に対するフコイダンの作用
フコイダンがNK細胞、マクロファージ、樹状細胞の活性化に関与することがいくつかの論文で報告されています。
マウスを「ヘルペスウイルス」に感染させる試験では、感染の1週間前にフコイダンを投与すると、軽症で済むことが確認されました。この時、マクロファージとNK細胞の活性化が見られたとしています。※3
また、動物や培養細胞の試験では、樹状細胞の活性化が見られました。※4,5
樹状細胞は獲得免疫への橋渡し役としても重要です。
【参考文献】
※3 Defensive effects of a fucoidan from brown alga Undaria pinnatifida against herpes simplex virus infection.Kyoko Hayashi.Int Immunopharmacol. 2008 Jan;8(1):109-16
※4 Ascophyllan purified from Ascophyllum nodosum induces Th1 and Tc1 immune responses by promoting dendritic cell maturation.Wei Zhang.Ascophyllan purified from Ascophyllum nodosum induces Th1 and Tc1 immune responses by promoting dendritic cell maturation.Wei Zhang.Mar Drugs. 2014 Jul 14;12(7):4148-64. doi: 10.3390/md12074148
※5 Ligand of scavenger receptor class A indirectly induces maturation of human blood dendritic cells via production of tumor necrosis factor-α.Jun-O Jin.BLOOD 2009 JUN;23(113):5839-5847
フコイダンが獲得免疫系を活性化する
獲得免疫は感染拡大を制圧し、一度かかった病気にかかりにくくする仕組みです。主に「B細胞」と「T細胞」が担当していますが、これらに対してもフコイダンの関与が認められました。
獲得免疫系の仕組み
獲得免疫では、全身に広がったウイルスを一気にやっつけるため、免疫細胞同士の連携がより重要になります。
その指揮をとるのが「ヘルパーT細胞」です。
ヘルパーT細胞は、樹状細胞からウイルスの情報を受け取り、B細胞、マクロファージ、「細胞障害性T細胞」を活性化。
B細胞は抗体をつくる細胞で、抗体がウイルスに結合すると感染力を失います。
無力化したウイルスをマクロファージが食べて処理。
細胞障害性T細胞は、感染細胞を攻撃する細胞です。
こうしてウイルスに総攻撃をかけ、ある程度制圧できたら「制御性T細胞」が一連の免疫反応を終わらせる合図を出します。
さらに、一部のB細胞とT細胞は「記憶細胞」に変化して、同じウイルスが再び侵入してきた時に、すばやく反応できるようにスタンバイ。
この仕組みを活用しているのがワクチンです。
獲得免疫系に対するフコイダンの作用
T細胞とB細胞に対するフコイダンの作用としては、次のような報告があります。
高齢者のインフルエンザワクチンに対する免疫反応を調べる研究で、フコイダンを4週間摂取した後にワクチンを接種すると、抗体産生が増加することが示されました。
さらに、自然免疫を担当するNK細胞の活性化も見られました。※6
免疫抑制されたヘルペスウイルス感染マウスでも、フコイダンの経口投与によって、細胞障害性T細胞の活性が増加し、抗体産生が著しく促進されたとしています。※3
まとめ
フコイダンは、ウイルス自体に働きかけて感染防御に役立つと言えるでしょう。さらに、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞といった免疫細胞を活性化することで、ウイルスだけでなく、様々な病原体やがん細胞と戦う力を高めると考えられています。
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近年ではがん治療の統合医療にも、フコイダンが用いられるようになっています。
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具体的には、フコイダンは抗がん剤との併用が可能であり、かつその効果を高めたり、副作用を軽減したりする可能性が示唆されています。
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フコイダンには、まだまだ秘められたパワーがあると考えられます。
今後研究が進むことで、私たちの健康に対しても医療分野に対しても、さらなる恩恵をもたらしてくれることでしょう。
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