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咽頭がんステージ2・3の症状は?がん発症部位別の治療の進め方、生存率について解説

咽頭がん2-3期の症状は?がん発症部位による治療の進め方~生存率を解説

咽頭がんステージ2・3では腫瘍のサイズが拡大したり、浸潤※1していたりと少しずつ悪性度が高くなり、自覚症状がともなってくる人もいるでしょう。

早めに発見することで大きな機能障害に陥ることなく治療を進められるケースもあります。この記事では、咽頭がんステージ2・3の治療法や予後について解説しています。

※咽頭がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんとは?その症状と見つけ方について

※1 浸潤:がんが周りに広がっていくこと

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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咽頭がんステージ2・3の状態

咽頭がんは生じる場所によって、連続する組織である口腔や食道・胃などもあわせて検査をすることがあります。飲酒習慣や喫煙習慣がある人ほどこれらの組織のうち、複数にがんがある危険性が高くなるからです。

口と喉、食道はいずれも「扁平上皮がん」という同じ細胞のがんが多く見られるため、重複がんが起こる危険性が高いことがわかっています。

咽頭がんステージ2・3で見られる症状

咽頭がんの症状が進むと、物を飲み込むときに痛みを感じたり飲み込みにくさを感じたりすることがあります。特に固形物や刺激物を飲み込むときに感じやすくなります。

また、声のかすれなどはっきりとした自覚症状も出てきますが、風邪が少し悪化したような状態にも感じられるため、忙しい方などは風邪薬を飲みながらそのまま様子見してしまうケースもあります。

人によっては耳の下から首にかけてしこりを感じることもあります。異変を感じるものの、内科クリニックなどではリンパ節炎などと診断されてしまうこともあるため、見過ごされやすいがんの一つでもあります。

咽頭がんステージ2・3における治療

咽頭がんステージ2・3の場合には、化学・放射線療法や手術による悪性腫瘍の除去が検討されます。以下にて詳細を解説します。

中・下咽頭がんにおける化学・放射線療法

化学・放射線療法は主に抗がん剤シスプラチンと放射線療法を併用した治療です。腫瘍の大きさがT2以上の大きな場合や、リンパ節転移をともなうステージ2以降の咽頭がんの場合、放射線療法だけでは不十分なことがあります。そのため、抗がん剤と放射線の2つの治療法で同時にがん細胞を攻撃することを試みます。

咽頭がんの腫瘍細胞の大きさとステージについては以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんの初期の症状は?発生部位別の治療法と余命、再発防止について解説

治療スケジュールは単独の放射線療法と変わりなく1回十数分の治療を週に5回、6~7週間継続します。最初にがんが発生した箇所だけではなく、リンパ節に転移していることも多いため、原発がんだけではなく頸のリンパ節にも照射します。

化学療法であるシスプラチンは単独で使います。3週間に1回を1クールとして計200mgを点滴し、3コースを繰り返します。

咽頭がんの治療については以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんステージ4の治療・余命。早期に見られる再発への対処法

>中・下咽頭がんでおこなわれる手術

咽頭がんの治療のひとつである手術は、放射線療法や化学療法と併用されることがあります。治療計画は、がんのステージや患者の全身状態、治療の目的に基づいて医師と患者の相談のうえで決定されます。

中咽頭がんの治療の中心は放射線療法です。しかしステージ2・3までで切除範囲が小さく、術後の機能障害があまり残らないとされる場合にはがんの切除をおこないます。
中・下咽頭がんでおこなわれる手術
(参照:http://www.jshnc.umin.ne.jp/general/section_06.html

部分切除

部分切除
(参照:http://www.jshnc.umin.ne.jp/general/section_03.html

がんが扁桃腺周辺や舌の根元部分にできた場合には、部分切除をすることになります。基本的に機能低下は起こらないことがほとんどです。早期であれば口からのアプローチで扁桃腺摘出術に似た方法で、比較的容易に切除できます。切除範囲も小さいので、機能を温存できる症例が多いのも特徴です。

拡大手術

拡大手術
(参照:http://www.jshnc.umin.ne.jp/general/section_03.html

悪性腫瘍のサイズが大きくなりステージも進行してくると必要な切除範囲も広くなります。口からアプローチすることが困難な症例もあり、その際には首元から切開して腫瘍組織を摘出することもあります。それに合わせて手術後食事をとったり、呼吸をしたりする際に機能障害が出る可能性があります。

日常生活の機能にできるだけ障害を残さないようにするため、取り除いた組織の機能を取り戻すための再建手術もおこない、できるだけ機能が残存するようにします。

頸部郭清術

頸部郭清術
(参照:http://www.jshnc.umin.ne.jp/general/section_03.html

頸部郭清は、咽頭がんの治療において、がんが頸部リンパ節に転移している可能性がある場合におこなわれる手術の一つです。頸部郭清は、リンパ節を含む頸部の組織を摘出する手術で、がん細胞の広がりを防ぎ、がんの再発や転移のリスクを低減することを目的としています。

頸部郭清は、主に咽頭がんの進行度やリンパ節への転移の有無を判断し、必要と思われる区画ごと切除します。

首のリンパ節を広く切除するので、首から顎もとにかけて大きな切開創ができ、術後の負担も大きいですが、治療成績を飛躍的に向上させることができるのです。

ELPS・TOVS

ELPS・TOVS
(参照:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000985.html

咽頭がんのステージ2・3の症例でがんの根が深くない場合に選択される治療法です。従来、首元を切開して摘出する必要があったがんでも、ELPS(内視鏡的咽喉頭手術)やTOVS(経口腔的ビデオ咽喉頭鏡下手術)によりがん腫瘍を切除できるようになっています。

ELPSは、2004年に湾曲喉頭鏡の活用という大きな医療の進歩がありました。湾曲喉頭鏡の活用により、下咽頭部分まで大きく術野の確保が可能になったため、咽頭の比較的奥深くに生じたがん腫瘍も取り除くことができるようになりました。

体の表面の切開も不要、組織を大きく切り取る必要もないため、患者さんの体への負担も軽度で済みます。術後の患者さんのQOLが高く保てるため、近年急速に普及しています。

ELPSについては以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんの初期の症状は?発生部位別の治療法と余命、再発防止について解説

上咽頭がんで用いられる化学・放射線療法

上咽頭がんで用いられる化学・放射線療法
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/nasopharynx/treatment.html

上咽頭がんの治療において、手術は選択肢に入りません。上咽頭がんは、体の構造上手術ができないのです。そのため、基本的な治療方針は初期の段階から放射線療法となり、進行するにしたがって化学療法を併用します。

上咽頭がんは、放射線の感受性が強いため放射線治療がよく効きます。放射線療法はあまり効果がなく、末期の人に活用されるイメージもありますが、咽頭がんにおいては放射線治療は標準治療のひとつです。

放射線治療については以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんの初期の症状は?発生部位別の治療法と余命、再発防止について解説

化学療法については以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんステージ4の治療・余命。早期に見られる再発への対処法

咽頭がん手術後に障害が残る可能性のある機能

咽頭がんの手術後は、大きく組織を切り取ったり、頸部郭清がおこなわれたりすることで失われる機能があります。

①発声機能

咽頭がん手術によって、声帯や喉頭部分の一部、もしくは完全に摘出された場合、発声機能に障害が残る可能性があります。声そのものが出なくなったり、声が低くなったり、声がかすれたりすることがあります。

②嚥下機能

手術によって、咽頭や舌、口蓋などの一部やすべてを切除した場合、構造が変化し機能障害が残ることもあります。嚥下機能が低下すれば、食事や飲み物の摂取に問題が生じる可能性があります。

③味覚や嗅覚

咽頭がん手術後、口腔内の一部が影響を受けることがあり、味覚や嗅覚が変化する可能性もあります。五感の変化により、食事の楽しみや食欲が低下する場合もあります。

④口腔機能

咽頭がん手術によって口腔内の一部が摘出されることがあり、口腔機能が影響を受ける可能性もあります。ときとして口の開閉や舌の運動能力、口唇の動きなどが術前と比較して退化する可能性もあります。

⑤呼吸機能

咽頭がん手術後、喉頭や気道の構造が変化することがあります。特に呼吸機能に影響を与え、気道の構造が変化すれば日常生活における過ごし方が大きく変化することもあるでしょう。

術後におこなわれるリハビリ

術後におこなわれるリハビリ

咽頭がん手術後に機能障害や機能の低下が生じれば、リハビリテーションで手術後の機能的な回復と生活の質の向上を目指します。咽頭がん手術後のリハビリテーションとして取り入れられるものについて解説します。

低下した機能回復

咽頭がん手術によって、食道や咽頭、舌、声帯などの構造が変化し、機能が低下した場合、機能の回復や代替え手段の取得を目指します。

リハビリテーションの主な目標は、摂食や発声、嚥下機能の回復、口腔機能の改善、咽頭・喉頭機能の維持などの回復や補助を促進することです。

咽頭がん手術後のリハビリテーションは、言語聴覚士(スピーチセラピスト)、理学療法士、作業療法士などの専門家が、患者の個別のニーズに応じて実施します。

①食事摂取と嚥下訓練

特に重要視されるのは食事摂取と嚥下訓練です。咽頭がん手術後、食事や嚥下機能が影響を受けることで患者さんのQOLは著しく低下します。リハビリテーションにより、食事や嚥下のトレーニングを取り入れ、食材や飲み物の摂取方法のトレーニング、嚥下筋肉の強化、嚥下の安全性を確保するためのテクニックなどを鍛えます。

②言語と発声訓練

咽頭がん手術によって、声帯や咽頭機能が影響を受けると言葉をうまく話せなくなったり、発声そのものに障害が出たりすることもあります。言語聴覚士は、発声や声の質の改善、コミュニケーション能力の向上、咽頭機能の維持などをサポートし、患者に対して言語と発声の訓練をおこないます。

③口腔ケアと機能回復

咽頭がん手術後、口腔の健康と機能の回復も重要です。口腔衛生の維持や口腔筋肉のトレーニング、口腔内の感覚の改善などがリハビリテーションの一環としておこなわれる場合もあります。

咽頭がんステージ2・3の余命は?

咽頭がんステージ2・3の余命は?
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph#h-title

咽頭がんステージ2・3の余命は、5年後の生存率として50%以上を維持しています。生存率も気になるところですが、咽頭がんの場合、残された機能をどのように活用しQOLを維持していくかも重要です。

闘病生活にばかり目を向けていると楽しみや人生の活力が低下し、体の機能も衰えにもつながりかねません。

手術後に生じた後遺症があれば、上手に付き合うことでQOLを維持していくように意識したいところです。

手術後の後遺症とうまく付き合い、QOLを高める

咽頭がん手術後の後遺症には、嚥下障害、声帯・口腔機能の変化、食事摂取にともなう制限などがあげられます。

嚥下障害が起こった場合、嚥下訓練や食事内容の検討、カトラリーの補助具を活用することで低下した機能をサポートしながら食事が楽しめます。

また、声帯機能の変化には、発声訓練や音声補助具の使用が役立ちます。発声訓練では、トレーニングを受けることで、声帯機能の改善や声帯を使用しない発声法を習得します。また、電子音声補助装置や音声補助装置の使用によって、声帯機能を補助することができます。

さまざまなコミュニケーション方法を取得し、周囲の人と積極的に意思疎通を図るサポートになります。

咽頭がん手術後は、食事や意思疎通など術前には当たり前にできていたことができなくなり、心理的なストレスや不安を感じやすい状態です。心理カウンセリングやサポートをおこない、心理的な側面にも意識を配りつつ、QOLを向上させることが重要です。

まとめ

まとめ
咽頭がんのステージ2・3では、早期の治療が重要です。症状が進むと飲み込みにくさや声のかすれなどの自覚症状が現れ、治療後に機能障害が生じる可能性も高くなります。

放射線療法や化学療法、手術など、複数の治療法がありますが、適切な治療法はがんの種類や進行度によっても異なります。

手術後には、発声機能や嚥下機能などの機能障害が残る可能性がありますが、リハビリテーションを通じて機能の回復を図ることが重要です。咽頭がん手術後に生じた後遺症に対処し、心理的なサポートやリハビリテーション、社会資源を上手に活用することでQOLを高めていくようにしましょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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