2024.06.27
がん咽頭がんの初期の症状は?発生部位別治療法と余命、再発防止について解説
喉のがんは、咽頭がんと喉頭がんにわけられ、そのなかでも咽頭がんはがんが生じた部位によって「上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がん」にわけられます。
咽頭がんは中咽頭がん、下咽頭がんの発症が多く、上咽頭がんは少なめです。
この記事では、咽頭がんの初期症状や治療法、再発防止につなげる対策を解説しています。
※咽頭がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がんとは?その症状と見つけ方について
咽頭がんの初期の症状
咽頭がんでは、発症初期に症状が現れることはほとんどありません。
早期のうちに症状が現れるのはまれですが、声門にがんが生じた場合は、早い段階で症状を自覚することもあります。「嗄声」という声が掠れる症状が現れるため、異変に気づきやすいのが特徴です。
咽頭がんも進行して、自覚症状が現れてくると、喉風邪によく似た状態が続きます。風邪と違って1ヵ月以上続くときは、がんの可能性も考えられますので、病院受診を検討しましょう。
咽頭ってどこ?喉の解剖
(参照:https://www.kango-roo.com/word/9110)
一般的に喉は、咽頭と喉頭という2つの部位から成り立ちます。喉は鼻の奥から気管と食道の入り口までを指します。咽頭は鼻腔と口腔から食道と気管をつなぐ部分です。
上咽頭から下咽頭、喉頭を含めて約13cmぐらいの長さであることが一般的です。咽頭が空気と食べ物の両方の通り道で、喉頭は空気の通り道です。食べ物を飲み込むときに、軟口蓋(喉ちんこ)の部分が上に動いて鼻腔への通路を防ぐと同時に、喉頭蓋が後ろに倒れて気道を塞ぎ、食べ物が気管に入らないように自動調節をしています。
上咽頭は鼻の奥に位置し、耳へつながる耳管などがあります。中咽頭は口腔の奥、口蓋扁桃と舌根のあたり、下咽頭は気管と食道につながる位置にあたります。
咽頭がんのステージ
咽頭がんのステージ分類は、「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」によって異なります。これは、がんができる部位によって治療方針が異なるためです。
基本的に進行度を判断するうえで参考とするのは「TNM分類」です。
【TNM分類】
T因子:がんの大きさや胃粘膜への浸潤(T:原発腫瘍)
N因子:周辺のリンパ節へ転移の有無(N:所属リンパ節)
M因子:別の臓器への転移の有無(遠隔転移)
がんのステージについては以下の記事を参考にしてください。
>>がんのステージってなに?ステージの分類や生存率について
特に、T因子・N因子を参照とした悪性腫瘍の大きさや、がん細胞が隣接する組織にどのくらい広がっているかによって病期は変わります。「上咽頭がん」の病期分類には以下のような指標があります。
【上咽頭がんのTNM分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/nasopharynx/treatment.html)
【上咽頭がんのステージ分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/nasopharynx/treatment.html)
【中咽頭がんのTNM分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/treatment.html#anchor2)
【中咽頭がんのステージ分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/treatment.html#anchor2)
また、中咽頭がんではヒトパピローマウイルスの陽性、陰性によっても治療方針は若干異なります。p16という因子の有無により治療方針も変わります。p16はヒトパピローマウイルス(HPV)感染をしめるマーカーで、HPV陽性の咽頭がんは、一般的に予後が比較的良好であるとされています。
【下咽頭がんのTNM分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/hypopharynx/treatment.html)
【下咽頭がんのステージ分類】
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/hypopharynx/treatment.html)
咽頭がんの主な原因
口や咽頭・喉頭がんの発症に最も大きく関わるのは喫煙と飲酒と言われています。がんになりやすい要素として、組織の慢性的な炎症があります。慢性炎症は細胞の異変が生じやすくなり、がんの要因のひとつとされています。
実際に喉のがんを患う患者さんの90%以上が喫煙者という統計も出ています。また大量飲酒とは、純アルコール量で1日平均60gを超えることと厚生労働省健康日本21では示されています。実際に週に300g以上飲酒する場合、罹患リスクは3.2倍もあるとの統計も出ています。
また飲酒や喫煙習慣のある患者さんよりは少なくなりますが、EBウイルスやヒトパピローマウイルス(HPV)への感染ががんの発症に関係している場合もあります。
咽頭がんの検査
基本的に喉のがんを早期発見するための検査は、ほとんどの自治体では定期検診に組み込まれていません。
喉の症状が気になっていたり、喉風邪のような症状が長引いていたりする場合は、できるだけ早く専門医の診察の受診を検討しましょう。喉の症状の専門診療科は耳鼻咽喉科になります。鼻や耳だけではなく、舌や歯肉などの口腔内側の粘膜から喉の奥の咽頭がんに関する広い範囲の診察をしてもらえます。
喉の症状が気になったら、いつからどのように続いているのか、喫煙習慣や飲酒習慣についてもあれば伝えましょう。
そこで違和感などがあり、必要とされれば精密検査へ進みます。
内視鏡(ファイバースコープ)
口や喉のがんの確定診断は耳鼻科専門医による指針や触診によりおこなわれます。口や舌の中のがんであれば、直接目で見て確認しますが喉や鼻の奥など見えない部分は内視鏡(ファイバースコープ)を使って粘膜の状態を詳しく観察します。
基本的には細い内視鏡を鼻から入れて、口の奥や喉の部分をカメラで詳しくみます。
細胞の炎症状況やしこりの有無など原因となるものを探します。耳鼻科で取り扱う内視鏡は3〜4mm程度の太さが一般的です。麻酔薬を鼻にスプレーをしたりゼリーを塗ったりする程度で受けられるので、その日のうちに詳細な状態がわかります。
内視鏡検査に加えて首元や耳下なども触り、違和感がないかどうかを診察します。ここで異変が見つかれば、しこりや病変部分の細胞を確認する検査に移行します。
生検・細胞診
最終的に悪性腫瘍かどうかを判断するためには、細胞自体をしっかりと観察し診断するための生理検査・細胞診が必要になります。内視鏡(ファイバースコープ)を用いて病変を確認し、細胞の採取が必要な場合は、内視鏡の先から小さな鉗子を使って細胞を取ります。検査に必要な量を採取し、病理検査をおこないます。ごくまれですが、病変が生じている場所によっては全身麻酔で採取することもあります。
また、リンパ節転移が疑われる場合は、リンパ節の細胞を採取することもあります。
確定診断までにはだいたい1週間〜2週間程度かかることが一般的です。採取した組織を顕微鏡で調べ、がん細胞が確認されれば悪性腫瘍であるとの診断が確定します。
ウイルス検査
中咽頭がんなどで、ヒトパピローマウイルスの感染の可能性がある場合には、ウイルス検査もあわせておこないます。ウイルス検査のp16が陽性となった場合は、病気分類を判断するための判定基準も異なります。
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/treatment.html#anchor2)
画像診断
がんの状態により、がんの進行度や転移の有無を調べる必要がある場合には画像診断もあわせておこなわれます。CTやMRIレントゲンや超音波、PET-CTというさまざまな機械を用いて、口や喉に限らず検査をおこないます。
見えない部分に広がっている深さを調べたり、全身に転移していないかどうかの確認をしたりします。喉のがんでは特に肺への転移が見られやすいので、的確な全身診断には画像検査が必要です。
咽頭がんの初期(ステージ0・1)の治療法
咽頭がんは、どこに腫瘍ができているかによって治療方針も異なります。がんのある部位と病気によって、治療の選択肢は変わります。咽頭がんの場合、ステージに限らず放射線療法を治療方針に取り入れることは少なくありません。
ここでは咽頭がん初期における治療について解説します。
がんの早期発見については以下の記事を参考にしてください。
>>がんを早期発見するには?検査方法などを詳しく解説
中・下咽頭がんの初期治療内視鏡治療
中・下咽頭がんは内視鏡によって病変部がしっかりと観察できるため、内視鏡を使って原発部位を切除する方法が一般的です。
内視鏡を用いて病変部分を確認し、腫瘍部分を含めて広めに切り取ります。治療方法としては「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」などが一般的です。
ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)
普段、下咽頭の部分は食べ物が通過していないときはつぶれています。耳鼻科でおこなわれる「ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)」は、湾曲喉頭鏡と呼ばれる器具を使用して、下咽頭の部分まで粘膜部分を大きく広げて視野を確保し、内視鏡で直接病変部位を観察し、腫瘍部分を取り除く治療法です。
ELPSについては以下の記事を参考にしてください。
>>咽頭がん2-3期の症状は?がん発症部位による治療の進め方~生存率を解説
上咽頭がんではステージに関係なくメインの治療となる放射線治療
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/nasopharynx/treatment.html)
上咽頭がんは手術が難しい部位であること、上咽頭がんの細胞は性質上放射線療法が効きやすいことから、すべてのステージで放射線療法が標準的な治療法となります。また、中咽頭がん、下咽頭がんでも喉の機能を温存したいと患者さんの希望があると初期治療として選択される場合があります。
放射線療法は以下のペースで進められるのが一般的なスケジュールです。
- 週5回のペース
- 6~7週間
- 1回5~10分程度照射
CTやMRIで照射部位を特定するのですが、近年では画像診断の精度が非常に向上しました。悪性腫瘍の範囲に対してできるだけ限定的な照射が可能になったため、正常な組織に対する副作用も比較的生じにくくなっています。
放射線療法の最大のメリットは声を残せることです。手術では、腫瘍組織をしっかり取り除く副作用によって声を出す発声機能に障害が残ることもありますが、放射線治療では発声の機能を残すことが可能です。
放射線を照射する位置のずれを防ぐためシェルというお面のような固定具を作成します。
(参照:https://www.konicaminolta.jp/healthcare/products/medical_product/radiation/index.html)
治療の途中でも画像検査で部位を確認し、副作用で体型などが変わればシェルを作り直します。
照射部位にずれがなく、正確な照射ができるための治療を進めます。放射線療法は被爆量の関係から一度しか受けられません。万が一再発したりがんが残ったりした場合は、手術や化学療法で治療する方法に移行します。
咽頭がん最新放射線治療IMRT
近年、がんをピンポイントで狙える最新の放射線治療として「強度変調放射線治療」があります。
従来の放射線療法では正常な細胞にも放射線の影響が及ぶ副作用の問題がありました。しかしこの治療では、がんの大きさや深さ、形に応じて多方向から集中的に照射できるため正常な細胞への影響を最小限に抑えることが可能となりました。
体の周囲を放射線の照射装置が回転し、さまざまな角度からがんの形に合わせた照射ができます。
咽頭がんの初期(ステージ0・1)の余命
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph#h-title)
咽頭がんの初期ステージの5年生存率は82.2%。他の部位のがんと比較すると比較的良好な成績です。しかしながら、再発が見られるがんでもあるため、再発防止に向けた取り組みとして生活習慣の見直しなどは必要となるでしょう。
禁煙や禁酒は重要
咽頭がんの発症リスクは、喫煙・飲酒で大幅に増加します。タバコに含まれる有害物質が喉の組織に悪影響を与え、がんの発症を促進します。喫煙を続けることは、咽頭がんの再発リスクを高める可能性があるため、再発防止を目指すなら禁煙することが重要です。
また、アルコールの摂取も咽頭がんのリスク因子です。アルコールが喉の組織に直接的な刺激を与え、炎症や細胞の異常を引き起こすことがあります。過剰な飲酒は咽頭がんの再発リスクを増加させるのでアルコールの摂取量を制限することが重要です。可能であれば禁酒をして、咽頭がんの再発防止の一助としましょう。
咽頭がん再発防止のサポートとなる食べ物
咽頭がんの再発を予防するためには、喫煙と飲酒の制限を含む健康的な生活習慣を実践しつつ、健康的な体と健やかな免疫力を維持することが大切です。
健康的な食事は体内の免疫機能を強化し、細胞の修復を促進します。バランスの取れた食事として意識したいのは、「炭水化物・タンパク質・脂質」をバランスよく摂取することです。咽頭がんの場合、「食べてはいけない食べ物」はありませんが、普段の食事を意識して、健やかな体を維持しましょう。
例えば、野菜、果物、全粒穀物、タンパク質源(魚、鶏肉、大豆など)、脂肪(ナッツ、オリーブオイルなど)などは、良質なものを接種しましょう。また、抗酸化物質は、体内の活性酸素を中和し、細胞のダメージを軽減するのに役立ちます。ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンなどの抗酸化物質を豊富に含む食品(例:野菜、果物、ナッツ、種子)を摂取することで抗酸化力のサポートにつなげられます。
がん患者が食べてはいけないものについては以下の記事を参考にしてください。
>>がん患者が食べてはいけないものってあるの!?がんと食事について解説
まとめ
咽頭がんは、喉の咽頭と呼ばれる部分に発症するがんであり、上咽頭・中咽頭・下咽頭に区分されます。初期の症状はほとんど現れませんが、声門にがんが生じる場合には嗄声が現れます。
咽頭がんの初期治療は部位やステージによっても異なり、放射線治療が一般的ですが、症状や主治医の方針により内視鏡治療が選択される場合もあります。早期発見が重要ながんではありますが、初期症状は風邪の症状にも似ているため見過ごされがちです。また、咽頭がんを発見できる検査は日本では定期検診には組み込まれていません。
特に、飲酒・喫煙習慣がある方は、違和感を感じたら早めに専門医への受診を検討しましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
がんの種類を知る
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