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「小細胞肺がん」とは? 進行が早いがんの特徴・症状・治療・予後までを解説

「小細胞肺がん」とは? 進行が早いがんの特徴・症状・治療・予後までを解説

小細胞肺がん(SCLC)は、全肺がんの約15%程度の比較的まれながんでありながら、進行が非常に速く、転移もしやすいという特徴があります。発見時にはすでに進展型となっているケースも多く、治療の選択肢や予後にも影響を及ぼしています。

また、小細胞がんは喫煙との強い関連性があることでも知られており、予防や早期発見の重要性が高いがんでもあります。

この記事では、小細胞肺がんの概要から症状、診断分類、標準治療、補完療法、そして予後や今後の展望について解説します。

日置医院長

この記事の執筆者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

小細胞肺がんとは

小細胞肺がんとは

参考:https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100023/122200030/
小細胞肺がん(SCLC:Small Cell Lung Cancer)は、肺がんの中でも比較的まれなタイプで、全体の約15%程度です。悪性腫瘍の細胞が小さく高密度であることからこの名前がついており、顕微鏡で観察すると核が大きく細胞質が少ない特徴があります。
小細胞肺がんの特徴の一つは、非常に増殖スピードが速く転移もしやすい点です。発見された時点で、すでに他の臓器やリンパ節に転移していることも少なくありません。そのため、非小細胞肺がん(NSCLC)と比べて、診断時に治癒を目指す治療ではなく、化学療法や放射線療法を主体とした延命や症状緩和治療を選択せざるをえない症例も少なくありません。

小細胞肺がんと喫煙の関係

小細胞肺がんと喫煙の関係
参考:https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/

小細胞肺がんは、喫煙と非常に強い関連性があることも明らかになっています。実際に長期間・多量の喫煙をしてきた人ほど発症リスクが高いという研究データもあります。

タバコの煙には60種類以上の発がん性物質が含まれており、これらが気道粘膜の細胞に慢性的なダメージを与え、DNA損傷を引き起こすことでがん化のリスクを高めます。小細胞がんは“喫煙者特有の肺がん”ともいわれるほどです。

また、小細胞がんに関しては受動喫煙も発症リスクに関与することがわかってきており、家庭や職場などでの受動喫煙防止対策も国を挙げて取り組むようになりました。(厚生労働省:なくそう!望まない受動喫煙

小細胞肺がんの分類とステージ

小細胞肺がんの分類とステージ
参考:https://www.ganclass.jp/kind/lung/select/select02
小細胞肺がんは、進行の速さと早期転移の特性から、通常の肺がんのステージ分類(I〜IV)とは異なり、主に「限局型(Limited stage)」と「進展型(Extensive stage)」の2つに分類されます。

限局型

限局型とは、がんが一側の肺およびその周囲のリンパ節にとどまっている状態です。この段階であれば放射線治療の照射範囲内に収まり、放射線治療が有効な治療法の一つとなります。また、胸水などの進行症状も見られません。限局型の状態で発見されれば、化学療法と放射線療法の併用によって良い治療効果が期待できます。

進展型

一方、進展型は、がんが反対側の肺や胸膜、遠隔臓器(脳・肝臓・骨など)へと転移している状態です。この場合、根治を目的とした治療が難しい症例も出てきます。その場合、主に全身化学療法や緩和ケアによって延命と症状緩和を目指します。

小細胞肺がんの症状

小細胞肺がんの症状
小細胞肺がんは非常に進行が速いがんであり、発見された時点ですでに広範囲へ転移している「進展型」と診断されるケースも少なくありません。しかも、初期には目立った症状が出にくいため、異変に気づきにくいという特徴があります。

ここでは、初期症状と進行時に見られる症状を段階的に解説します

小細胞肺がんの初期症状

小細胞肺がんは初期症状が目立ちにくい特徴があります。初期の頃には症状が全くないことも珍しくありません。

それでも、中枢型の肺がんのため、抹消型の肺がんと比較すると咳や痰などの症状は出やすくはあります。

小細胞肺がんに特徴的な症状として、慢性的な咳(特に喫煙者に見られやすい)、痰の増加、胸部の違和感や痛み、息切れなどが見られることがありますが、肺がん独特の症状ではないため風邪や気管支炎と間違われることも少なくありません。咳や痰の特徴については以下の記事も参考にしてみてください。

>>咳や痰が続くのは肺がんのサイン?症状の見分け方と対処法

小細胞肺がんの進行時のサイン

小細胞肺がんの進行時のサイン
参考:https://www.haigan-tomoni.jp/know/about/type02.html

肺がんは、がんが進行してきて初めてわかりやすく自覚症状が出てきます。

咳や痰が長く続き、症状が重くなるほか、声のかすれや嗄声(させい)も見られるようになり、異変に気がつくこともあります。声のかすれが出た場合には、がんが反回神経に影響を及ぼしている可能性もあります。

さらにがんが進行してくると脳や骨、肝臓、副腎などへ転移したがんがさまざまな症状を呈するようになります。小細胞性肺がんで見られやすい転移は以下です。

  • 脳転移:頭痛、吐き気、視力障害、麻痺、けいれん、意識障害などの神経症状
  • 骨転移:腰や背中、肋骨などの持続的な痛み、夜間痛
  • 肝転移:倦怠感、黄疸、食欲不振など
  • 副腎転移:多くは無症状、まれにホルモンバランスの異常が見られることもある

小細胞肺がんの治療法

小細胞肺がんの治療法1
参考:https://oncolo.jp/cancer/small_cell_lung_cancer-ldtreatment
小細胞肺がんの治療法2
参考:https://oncolo.jp/cancer/small_cell_lung_cancer-edtreatment

小細胞肺がんは進行が非常に早く、診断時にはすでにがんが広がっている「進展型(ED)」であることもあります。一方で、がんが肺の片側に限局しており、かつリンパ節転移が限定的な「限局型(LD)」であれば、根治を目指した治療が可能です。

小細胞肺がんの治療はがんの広がり方(進行度)によって大きく異なります。限局型では化学療法と放射線療法の同時併用が基本で、進展型では全身へ向けた治療のための化学療法が基本です。

また、治療の可否や方針には、患者さんの体力や生活状況(パフォーマンスステータス)も重要な判断材料です。ここでは、小細胞肺がんに対する主な治療法とその特徴、さらに補完代替療法として注目されているフコイダン療法についても解説していきます。

化学療法

小細胞肺がんの治療の中心は化学療法(抗がん剤治療)です。がん細胞の増殖スピードが非常に速いため、早期から全身的な治療が必要となります。
小細胞肺がんの場合、プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)をベースに他の抗がん剤を併用する2剤併用療法が基本です。進展型でも症例により高い治療効果を示すこともあり、がんのサイズが縮小する例も少なくありません。
しかしながら、再発率も高く、最初の治療効果が見られたとしても数ヶ月〜1年以内に再燃するケースもあるのが特徴です。再発時には、初回と同じ薬剤が再使用できる「感受性再発」か、効果が乏しくなる「難治性再発」かによって治療に用いられる薬剤が異なります。

放射線療法

放射線療法
参考:https://gantaisaku.net/%E3%80%90%E5%B0%8F%E7%B4%B0%E8%83%9E%E8%82%BA%E3%81%8C%E3%82%93%EF%BC%9A%E7%B6%AD%E6%8C%81%E7%99%82%E6%B3%95%EF%BC%881%E5%B9%B4os%EF%BC%89%E3%80%91%E3%80%8C%E8%83%B8%E9%83%A8%E7%85%A7%E5%B0%84/
放射線療法は、限局型の小細胞肺がんに対しておこなう治療の一つです。化学療法と並行して化学放射線療法として取り入れるのが一般的です。照射対象となるがんの範囲を狭め、治療効果を高めるとともに、肺機能温存を図ります。
また、小細胞肺がんでは脳転移のリスクがあるため、症状が出る前に予防的に全脳照射(PCI:予防的全脳照射)が検討されることもあります。これは、治療効果が確認された後の脳転移による予後悪化を防ぐ目的でおこなわれる予防的治療です。

パフォーマンスステータス(PS)と治療選択

パフォーマンスステータス(PS)と治療選択
参考:https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment_sclc.html
小細胞肺がんの治療選択においては、がんの進行度だけでなく、「患者さんの全身状態(PS:パフォーマンスステータス)」が大きくかかわります。PSは、患者さんの日常生活動作(ADL)がどの程度保たれているかを0〜4で評価する指標で、PSが良好であれば積極的な化学療法が行える一方、PSが高い(状態が悪い)場合は、緩和的治療が中心となることがあります。
例えば、高齢者や基礎疾患を持つ患者では、標準治療の副作用リスクが高いため、治療強度の調整や支持療法の併用が必要になります。

補完代替療法としてのフコイダン療法

小細胞肺がんの治療では、標準治療である化学療法・放射線療法に加え、補完的な選択肢としてフコイダン療法が注目されています。フコイダンは、モズクやコンブなどの海藻に含まれる多糖類で、がんの血管新生抑制やアポトーシス誘導(がん細胞の自然死)などの作用が報告されています。
再発や転移のリスクが高い小細胞肺がんにおいて、がんの進行を抑え患者の生活の質(QOL)を保つための補助療法として期待されています。当院でも、フコイダンを活用した肺がんの補完療法として、良い成績を出している症例もあります。
(詳しい臨床報告はこちら)
臨床例③:ステージⅢCの肺がんの遠隔リンパ節転移(69歳男性) – フコイダンラボ
臨床例⑤:ステージⅢBの肺がんの再発と頸部リンパ節転移(72歳女性) – フコイダンラボ

また、フコイダンは抗がん剤の副作用を和らげ、治療効果を高める可能性について研究が進められています。以下記事では、長年にわたりがん治療に携わってきた医師が、これまでの臨床経験や科学的知見に基づく仮説をもとに、フコイダンががんにどのように作用するのか、そしてなぜ治療の選択肢として期待されるのかを分かりやすく解説しています。詳しくはこちらをご確認ください。
>>>【医師が解説】なぜ、フコイダンはがんに効くのか

小細胞肺がんの生存率

小細胞肺がんの生存率
参考:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c07#h-title
小細胞肺がんは発見の遅れがちながんであることから、予後不良ながんと認識されるケースも少なくありません。また、短期間で再発や遠隔転移が起る症例もあり、予後不良ながんと言われることもあります。
限局型で治療が奏功した場合でも、5年生存率は約20%前後にとどまり、進展型では5年生存率は1〜2%未満とされています。がんが脳や肝臓、骨などに転移すると、より一層予後が悪くなる傾向があります。
また、小細胞肺がんは治療による一時的な寛解後の再発がほとんどであり、特に再発時には化学療法に対する耐性が生じやすく、次の治療が難しくなります。こうしたがんの特性が生存率に大きく影響しています。

小細胞肺がんは完治するのか

小細胞肺がんは進行が早く、発見時にはすでに転移しているケースもあるため、完治は難しいとされています。ただし、限局型で早期に治療を開始できれば、長期生存や完治が可能な場合もあります。治療には化学療法や放射線療法が用いられ、完治が難しい場合でも病勢を抑えて長期生存を目指すことが重要です。

まとめ

小細胞肺がんは、進行の早さや高い再発率が特徴的ながんであり、発見のタイミングによって治療の選択肢やその後の経過が大きく変わります。
限局型であれば化学放射線療法による根治も期待できますが、進展型では延命や症状緩和を目的とした治療が中心となります。再発後は治療抵抗性が高まるため、初回治療の選択や補完療法の併用がQOL維持にも重要なポイントとなります。

喫煙歴のある方や症状に気づいた方は、早めの受診・相談を検討しましょう。知識をもって向き合うことで、治療の選択肢や生活の質を広げる一助にできます。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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