2025.01.29
がん白血病治療に適した抗がん剤とは?症状ごとの選び方や治療の流れについて解説

白血病は、血液や骨髄の異常な細胞増殖によって生じる病気です。特に急性白血病は進行が早いため、早期の治療開始が必要とされます。
治療の際には抗がん剤を用いた化学療法も活用されていますが、近年では分子標的薬や造血幹細胞移植などの選択肢も広がっています。
この記事では、急性白血病・慢性白血病の抗がん剤治療の流れや副作用、さらに近年注目されている治療法について解説します。
>>白血病の種類と特徴を徹底解説:タイプ別症状と治療法の違い
白血病治療の基本
白血病のなかでも急性に分類されるものは、基本的に進行が早いので診断がついたらすぐに治療を開始します。基本的に急性白血病の場合には、第1段階から第3段階を経て治療を進めます。
第1段階として導入療法と呼ばれる治療をおこないます。強力な化学療法によって全身の白血病細胞を一気に減らし完全寛解(血液学的完全寛解:顕微鏡検査で異常細胞が確認できない状態)を目指します。
治療開始から1ヵ月ほどでいったん完全寛解になったとしても、白血病細胞はまだ残っていると想定します。そのまま放置すると再発する危険性が高いため、第2段階の治療へと進みます。
第2段階の治療は「寛解後療法・地固め療法」と呼ばれる治療で、強力な化学療法を3回から4回、数ヵ月かけてくり返します。
目にみえない白血病細胞に対して、さらに徹底的に攻撃し限りなくゼロに近づけて完全寛解の状態を強固な状態にする治療です。
第3段階の治療は主に急性リンパ性白血病でおこなわれる「維持強化療法」のことを指します。完全寛解を維持するために、主に外来で少量の抗がん剤による治療を1〜2年間続ける方法です。
近年の急性骨髄性白血病では、地固め療法を強めにおこなえば維持療法をしなくてもよい症例も出てきています。
慢性白血病に関しては、リンパ性白血病であれば進行が緩やかなため症状がみられなければ経過観察をおこないます。慢性骨髄性白血病の場合には分子標的薬が治療の中心です。
詳細の情報については以下の記事も参照にしてください。
>>白血病の治療法とは?:効果的な治療法とアプローチについて徹底解説
急性白血病の抗がん剤治療
急性白血病の治療において、抗がん剤治療は基本となる治療法です。急性骨髄性白血病(AML)では、進行が早いため、診断後できるだけ早く治療を開始することが重要です。
治療は多剤併用療法を用いながら完全寛解を目指し、初期治療(寛解導入療法)、その後の再発予防のための治療(地固め療法)、再発時の治療(救援療法)などが段階的におこなわれます。
急性骨髄性白血病(AML)に使用される抗がん剤
(参照:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/202212/577519.html)
急性骨髄性白血病(AML)では、寛解導入療法として抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法が基本となります。主に以下の薬剤が使用されます。
1.シタラビン(シトシンアラビノシド)
AML治療の中心となる抗がん剤で、白血病細胞のDNA合成を阻害し、細胞の増殖を抑える働きがあります。標準的な寛解導入療法では、アントラサイクリン系薬剤と併用されます。
2.アントラサイクリン系抗腫瘍抗生物質(ダウノルビシン・イダルビシンなど)
DNAの合成を阻害し、白血病細胞を死滅させる薬剤です。シタラビンとの併用で寛解導入療法をおこないます。副作用として、心臓への負担があるため、心機能に問題のある患者には慎重に検討されます。
(参照:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/202212/577519.html)
3.ベネトクラクス+アザシチジン(高齢者・持病のある患者向け)
高齢者や、持病があるため強力な抗がん剤治療が難しい患者に対しては、ベネトクラクス(BCL-2阻害薬)とアザシチジン(DNAメチル化阻害薬)を併用する治療法が選択されます。
ベネトクラクスは白血病細胞のアポトーシス(細胞死)を促す働きを持ち、アザシチジンは白血病細胞の異常な増殖を抑制します。
抗がん剤治療以外の選択肢
急性骨髄性白血病(AML)では、抗がん剤治療が基本ですが、再発リスクが高い場合や標準治療が難しい患者には造血幹細胞移植が検討されます。また、分子標的薬(FLT3阻害薬など)が選択肢となることもあります。患者の状態や遺伝子異常の有無に応じて、さまざまな治療法が決定されるのです。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>急性骨髄性白血病(AML)とは?初期症状から検査・治療法・予後まで徹底解説
急性リンパ性白血病(ALL)に使用される抗がん剤
(参照:https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/hematological_malignancies/index3)
急性リンパ性白血病はリンパ球に育つ前の未熟な細胞(芽球)が増殖する病態です。子どもの白血病の7割を占めています。
急性リンパ性白血病の場合は、フィラデルフィア染色体と呼ばれる異常な遺伝子の有無により治療方針が異なります。
※フィラデルフィア染色体とは?
(参照:https://oshiete-gan.jp/leukemia/facts/test/all.html)
フィラデルフィア染色体とは、9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わることでBCR-ABL1融合遺伝子が形成され、異常な22番染色体が生じる染色体異常のことです。
フィラデルフィア染色体が確認できる場合は分子標的薬
フィラデルフィア染色体の確認ができる場合は、分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が治療の中心となります。年齢や体力などを評価の一つとして、そこに複数の抗がん剤やステロイド薬を組み合わせて治療を進めます。
フィラデルフィア染色体が確認できない場合は抗がん剤
フィラデルフィア染色体が確認できない場合は、複数の抗がん剤やステロイド薬を併用する多剤併用療法が一般的です。強力な抗がん剤を用いますが、年齢が若いほど強力な治療が可能で治療成績もよいとされています。
用いられる抗がん剤はメトトレキサートやシタラビンなどです。
慢性白血病の抗がん剤治療
慢性白血病は、急性白血病と比べて進行が緩やかで、初期には無症状のことも多い病気です。しかし、病状が進行すると治療が必要となり、近年では従来の抗がん剤に代わり、分子標的薬が治療の中心となっています。
慢性骨髄性白血病(CML)の治療の中心はチロシンキナーゼ阻害薬
(参照:https://oncolo.jp/cancer/leukemia-cml-treatment)
慢性骨髄性白血病(CML)は、フィラデルフィア染色体に現れる「BCR-ABL1融合遺伝子」を持つ血液細胞が増えてくる病態です。フィラデルフィア染色体は慢性骨髄性白血病ではほぼ必ず、急性リンパ性白血病でも精神の患者さんの4人に1人はみられる異常な染色体です。
ですので、治療の中心となるのは細胞増殖を促す異常なたんぱく質「BCR-ABL1」の働きを止める分子標的薬「チロシンキナーゼ阻害薬:TKI」が治療の中心となります。
慢性骨髄性白血病(CML)は、慢性期の頃には自覚症状はほとんどありません。しかし進行してくると急性転化し、致命的になることがあるので無症状のうちから治療を進めることが重要です。
TKIを続けることで異常な増殖は止まり、異常な遺伝子を持つ細胞は限りなくゼロに近づくため、急性転化する危険性も減ると考えられています。
慢性リンパ性白血病(CLL)の治療の中心は抗がん剤ではなく分子標的薬
(参照:https://www.cancernet.jp/cancer/blood/cll-treatment)
慢性リンパ性白血病(CLL)は、病状の進み方が比較的ゆっくりで無症状のまま経過することも多い病気です。健康診断などの機会に偶発的に発見されることもあります。
特に症状がない場合は、まずは経過観察をするのが一般的です。何かしらの症状が現れたときに治療を進めますが、最初におこうのは主に分子標的薬の一つである「ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬:BTK」です。
BTK阻害薬の服用を毎日続けることで、がん化したリンパ球の増殖が止まり、死滅していくことが期待できます。
慢性リンパ性白血病(CLL)の詳細については以下の記事も参照にしてください。
>>慢性リンパ性白血病(CLL)の症状・検査・治療と予後を徹底解説
分子標的治療の進展と抗がん剤
白血病をはじめとした血液のがんに対しては、従来抗がん剤を使った治療が中心でした。抗がん剤の大きなデメリットとして、その作用はがん細胞だけに効くものではないことがあげられます。残念ながら抗がん剤は、健康な細胞まで攻撃し、さまざまな望ましくない副作用を引き起こしてしまうのです。
近年白血病の原因として、遺伝子異常が要因の一つであることが発見されました。遺伝子異常が要因となっているタイプの白血病であれば、特有のたんぱく質や酵素などに含まれる特定の分子だけに作用する「分子標的薬」が非常に効果を発揮するようになってきています。
近年は白血病の治療も抗がん剤以外の選択肢が増え、目覚ましい治療成績の向上がみられるようになりました。抗がん剤の副作用を被ることなく治療を進められるようになったのです。
白血病治療に用いられる分子標的薬(BCL-2阻害薬・FLT3阻害薬・抗体医薬品)
分子標的薬は、白血病細胞の特定の分子を標的にして作用し、がん細胞の増殖や生存を抑える治療薬です。従来の抗がん剤よりも選択的にがん細胞を攻撃し、副作用を軽減できると期待されています。ここでは、白血病治療に用いられる代表的な分子標的薬を紹介します。
①BCL-2阻害薬
BCL-2阻害薬は白血病細胞の生存を抑制し、がん細胞の自然死(アポトーシス)を促進します。ほかの抗がん剤と併用されることが多いです。
②FLT3阻害薬
FLT3は白血病細胞の増殖を促す酵素の一種です。FLT3遺伝子に変異がある患者に使用され、がん細胞の増殖を抑えます。
③抗体医薬品
白血病細胞の表面にある特定のたんぱくに結合し、がん細胞を破壊する薬です。免疫の働きを利用することで、再発・難治性白血病の治療に用いられます。
造血幹細胞移植と抗がん剤
造血幹細胞移植(骨髄移植)は、白血病の根治を目指す治療法です。移植前の前処置として抗がん剤や放射線治療がおこなわれます。これにより白血病細胞を除去し、患者さん自身の骨髄機能を抑制したうえで、健康な造血幹細胞を移植します。
【白血病治療で用いられる移植】
- 同種造血幹細胞移植:強力な抗がん剤で白血病細胞を排除したあとにドナー細胞を移植
- ミニ移植(骨髄非破壊的移植):抗がん剤の使用を抑え、免疫抑制剤を中心に治療
- 臍帯血移植:抗がん剤の前処置後、へその緒の血液から採取した幹細胞を移植
移植は抗がん剤と併用することで効果を高めますが、感染症やGVHD(移植片対宿主病)などのリスクもあるのがデメリットです。
白血病治療の抗がん剤治療の副作用
(参照:https://www.cancer-support.net/side-effects/)
抗がん剤治療は白血病の根治を目指す重要な治療法の一つですが、正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が生じることもあります。
一般的に抗がん剤の副作用は、増殖が盛んな細胞から現れやすくなります。個人差はあるものの、何かしらの副作用が出てくることが通常です。
吐き気・嘔吐、食欲低下、口内炎
消化管の粘膜や口の中の粘膜も細胞分裂が盛んな場所です。重症化すると口内炎などの痛みも強く生じ、食事や飲み物を取りにくくなるほか、吐き気や食欲低下などが生じます。
刺激の少ない食べ物を食べたり、痛み止めを飲むなどで予防を試みることも少なくありません。
骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板減少)と感染症リスク
抗がん剤は骨髄の働きを抑え、「白血球・赤血球・血小板の減少(骨髄抑制)」を引きおこします。抗がん剤の副作用としてはどうしても生じやすくなるので、輸血をして正常な血球を補ったり、明らかに感染しやすい時期には入院して無菌室で過ごしたりして対処します。
脱毛・皮膚・爪の障害
抗がん剤を投与後、2週間ぐらいから現れ始める副作用です。毛髪細胞なども細胞分裂が早いため、副作用として脱毛症状が現れやすくなります。
毛髪だけではなく眉毛や体毛にも同じような症状が現れます。治療が終わってから半年〜1年ほどで毛は再生するとされていますが、ストレートだった髪の毛にうねりが出るなど毛質が変わることもあります。
心筋障害や肝機能障害のリスク
アントラサイクリン系の抗がん剤を用いる場合、「心毒性」といって使用量に比例して心臓に悪影響をおよぼす副作用が生じます。また、抗がん剤そのものが毒性の強い薬なので、肝機能に負担がかかりやすい実態もあります。
副作用症状の軽減につながる栄養素
抗がん剤による副作用症状を低減する栄養素として、近年「フコイダン」が注目されています。フコイダンは、海藻類(モズク・ワカメ・コンブなど)に含まれる硫酸化多糖の一種で、免疫調整作用や抗炎症作用が期待されています。
抗がん剤治療の副作用軽減につながる理由として、特に免疫力の維持や消化器症状の緩和に有用なためと考えられています。
免疫力のサポートや消化器系の症状の低減につながるのであれば、薬ではない方法で副作用症状を楽にすることができるかもしれません。
モズクやワカメ、コンブなどの食品からもフコイダンは摂取可能ですが、これらに含まれるフコイダンは分子量が約200,000以上の高分子構造であることが多く、含有量は豊富であっても、体内への吸収効率があまり高くありません。
そのため、効率よく体内に取り入れるには、分解加工された「中分子フコイダン」のサプリメントの摂取が有効だと考えられます。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>フコイダンとは何か?種類や成分と健康への影響について解説
まとめ
白血病の治療は、抗がん剤治療を中心に、分子標的薬や造血幹細胞移植などを組み合わせることで、より高い治療効果を目指す方向へと進化しています。
特に、急性白血病では迅速な治療開始が生存率向上の鍵となり、治療計画は患者の年齢や遺伝子異常、体力などを考慮して決定されます。
また、治療にともなう副作用には適切な対応策があり、患者の生活の質を維持しながら治療を続けることが可能です。近年の医学の進歩により、白血病は「治る病気」になりつつあります。希望を持って治療に取り組んでいきましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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