2024.07.26
がん大腸がんの抗がん剤治療とは?主な薬の種類と治療の流れ、副作用対策まで徹底解説

大腸がんの治療において、抗がん剤を用いた化学療法(薬物療法)は非常に重要な選択肢の一つです。特に進行がんや再発症例、手術後の再発予防において、化学療法はがん細胞をたたいたり、症状を緩和させるために欠かせない治療手段となっています。
近年では、患者さん一人ひとりに最適な治療計画(レジメン)を立て、副作用を抑えながら最大限の治療効果を目指す個別化医療が主流です。また、抗がん剤の種類や組み合わせも多岐にわたり、分子標的薬のようにピンポイントでがん細胞を狙う薬も登場しています。
この記事では、大腸がんに対する化学療法の基本的な流れや抗がん剤の種類、外来での治療の現状、副作用対策、さらには補完的に用いられる療法までを幅広く解説します。
大腸がんの化学療法
大腸がんの場合、治療計画に沿って進められるのが基本です。治療計画書(レジメン)には抗がん剤による治療の薬の投与順、量、治療スケジュールなどが決められています。
抗がん剤を用いた化学療法の流れ
大腸がんの化学療法は、患者さん一人ひとりの病状や体調に合わせて進められます。治療計画には、使用する抗がん剤の種類や投与量、投与スケジュール、治療期間、副作用対策などが設けられています。
一般的な化学療法の流れは以下の通りです。
①治療前の評価
血液検査、画像検査、腫瘍マーカーなどの検査をして、治療の適応や体の状態を評価します。必要に応じて心機能や腎機能、肝機能のチェックもおこないます。
②治療計画の決定
患者さんのステージ、全身状態、希望などを考慮し、FOLFOX、FOLFIRI、CAPOXなどの中から最適なレジメンを医師が選定します。
③投与スケジュールとタイミングの説明と開始
化学療法は通常1サイクルが終了したら休薬期間を設け、体を回復させながら次の治療に進みます。一般的な投与スケジュールは2〜3週間です。血液検査や患者さん本人の体力なども視野に入れながら治療のタイミングを決定します。
④治療中の副作用管理
吐き気や下痢、手足のしびれ、白血球減少など予測できる副作用に備えます。あらかじめ各種副作用に対する予防薬を用いるのが一般的です。必要に応じて治療の中断や調整もおこなわれます。
⑤定期的な評価と治療継続の判断
数サイクルごとに画像検査などをして、がんの縮小や病状の進行有無をチェックします。効果があれば継続し、副作用が強い場合や効果が乏しい場合は、次の治療法(二次療法など)へと移行します。
化学療法の主な薬剤
大腸がんの薬物療法ではさまざまな種類の抗がん剤が使われます。代表的な薬剤は以下です。
一般名 | 一般名 | 商品名 | |
---|---|---|---|
5-FU | フルオロウラシル テガフール・ウラシル テガフール・ギメラシ 配合剤 カペシタビン |
UFT S-1 ゼローダ |
点滴 内服 内服 内服 |
イリノテカン | トポテシン・カンプト | 点滴 | |
オキサリプラチン | エルプラット | 点滴 | |
トリフルジン・チ ピラシル塩酸塩 |
ロンサーフ | 内服 |
FOLFOX
大腸がんでよく用いられる組み合わせが「FOLFOX(フォルフォックス)」です。フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンの組み合わせで2週間ごとに46時間の持続点滴で投与して用います。
FOLFIRI
大腸がんの抗がん剤治療で主軸となるもう一つの薬の組み合わせが「FOLFIRI(フォルフィリ)」です。フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノカテンを組み合わせて2週間ごとに46時間の持続点滴で投与して用います。
CAPOX
大腸がんの抗がん剤治療で主に術後の化学療法で用いられるのが「CAPOX(カポックス)」です。カペシタビン+オキサリプラチンを組み合わせて3週ごとにおこないます。
ロイコボリンとは
ロイコボリンとはビタミンの一種である葉酸の製剤です。抗がん剤の作用を軽減したり一部の抗がん剤の作用を強める働きがあるとされています。
大腸がん再発予防のための補助化学療法
一般的に大腸がんは手術でしっかりと取りきれるがんではありますが、目に見えないがん細胞が残っていて、ときとして再発することもあります。この取りこぼしたがん細胞をたたく目的で実施する化学療法です。
適応となるのは、リンパ節に転移がある患者さんなのでステージ3以上ですが、中には再発リスクの高いステージ2の患者さんにおこなうこともあります。
進行・転移がんの化学療法
(参照:https://www.jsccr.jp/forcitizen/2022/comment03.html)
手術が適応にならない進行がんや、再発転移の例に抗がん剤を使って全身の化学療法を進める場合もあります。
症例によっては全身の化学療法によりがんが縮小することもあり、その場合は手術が不可能だったケースでも手術が可能になる症例もあります。
一般的には一次、二次、三次、四次と治療の反応を見ながらフェーズを調整します。「効かなくなったら次!」と順にステップがあがっていくのです。効果の高いものから始めていくのが一般的な治療の進行方法です。
一次化学療法
FOLFOXかFOLFIRIを軸に薬剤を組み合わせて治療します。
二次化学療法
二次化学療法ではFOLFOXかFOLFIRI治療法のいずれか(初期治療で使用しなかった薬剤)にベバシズマブなどを加えて進めます。
三次化学療法
3次化学療法ではレゴラフェニブを軸としてFTD/TPIを組み合わせて進めます。
分子標的薬
抗がん剤はがん細胞を殺す作用もありますが、同時に健康な細胞までも殺してしまうため副作用が強いというデメリットがあります。
それに対しできるだけがん細胞だけを狙い撃ちするのが分子標的薬です。現在大腸がんで有効性が確認されている主な分子標的薬は以下の通りです。
薬剤の種類 | 一般名 | 商品名 | 投与方法 |
---|---|---|---|
抗EGFR抗体薬 | セツキシマブパニツムマプ | アワビタックスベクティビックス | 点滴 |
血管新生阻害薬 | ベバシズマブラムシルマブアフリベルセプト | アバスチンサイラムザザルトラップ | 点滴 |
マルチキナーゼ阻害薬 | レゴラフェニブ | スチバーガ | 内服 |
抗PD-1薬 | ベムブロリズマムニボルマブ | キートルーダオブジーボ | 点滴 |
抗CTLA4薬 | イピリムバブ | ヤーボイ | 点滴 |
BRAF阻害薬 | エンコラフェニブ | ビラフトビ | 内服 |
MEK阻害薬 | ビニメチニブ | ペクトビ | 内服 |
TRK阻害薬 | エヌトレックチニブラロトレクチニブ | ロズリートレクヴァイトラックビ | 内服 |
分子標的薬を判断する遺伝子検査
分子標的薬は、その薬の種類によって効果が発揮される場所が異なります。がん細胞に直接作用して細胞増殖を抑える抗EGFR抗体薬、がん細胞に酸素や栄養を送る血管を抑制する血管新生阻害薬などがあります。
分子標的薬の採用の可否には遺伝子検査などをおこない、薬が期待する効果を発揮できるかどうかのチェックをして薬剤を選択します。遺伝子検査にはRAS遺伝子検査、BRAF遺伝子検査、MSI検査などがあり分子標的薬や抗がん剤を含めた薬物療法の薬剤を選択する際の指標とします。
外来治療
近年では術後補助化学療法にしても、進行再発がんの化学療法にしても、外来での通院治療が一般的になりつつあります。抗がん剤や分子標的薬の中には内服で進められる治療法もあるので、通院での薬物療法が比較的容易になってきました。
また、点滴の薬剤であっても携帯型ポンプという小さな機材を用いて、外来で治療することが可能になりました。
外来で点滴治療を進める際には、リザーバーと呼ばれる中心静脈の入り口を埋め込む手術が必要です。
とはいえ、この手術は外来で30分程度で済むもので、その日はそのまま帰宅することも可能です。点滴を開始するときは病院で点滴の針を入れる必要がありますが、その後は自宅に戻れるので、慣れれば治療の終了後に自分で点滴の針を抜くことも可能です。
リザーバーを埋め込んだとしても、ポートの部分が少し盛りあがりますが、入浴や運動もできて普段通りの生活が送れるのもメリットの一つです。
副作用対策
抗がん剤を治療する人の中には、副作用がつらくても耐えて治療を続けようと思ってしまう人も少なからずいます。しかし副作用を我慢してまで治療を続けようというこの考え方は、決してよいものではありません。
実際のところ、副作用を我慢して治療を続けると、体力が低下してしまうこともあるのです。体力が低下してしまうことにより、免疫力なども低下し抗がん剤治療を継続していくことそのものが難しくなるケースもあります。結果としてうまく治療が進められずに治療成績が悪くなってしまうこともあ考えられます。
ですので、基本的に抗がん剤治療をきちんと続けていくには、副作用に悩まされないように治療を受けていくことが非常に大切です。
医師はもちろん看護師や薬剤師とも連携を密に取り、少しでもつらい症状や異変があれば細かく情報を共有し、早め早めの対策で副作用症状をできるだけ生じないのはもちろん悪化させないように工夫しながら治療を進めることが重要です。
標準治療以外の方法
大腸がんの治療では、抗がん剤や手術、放射線療法といった「標準治療」が基本となりますが、患者さんの中にはこれらに加えて補完・代替医療を検討する方も少なくありません。補完療法とは、標準治療の効果を高めたり、QOL(生活の質)を保つことを目的としておこなう療法です。
その一例がサプリメントや漢方薬、鍼灸、食事療法、運動療法などであり、中にはがん治療に役立つ可能性が報告されている成分や手法もあります。
しかし、中には科学的根拠が不十分なものや、治療効果が期待できないものも存在します。そのため、補完・代替療法を取り入れる際には、必ず主治医と相談したうえで検討することが重要です。そして検討する代替医療を取り入れる際は、専門的な知識を持った医師と連携を取ることも大切です。
フコイダン療法との併用
がん治療のアプローチのサポートとして期待されている成分に「フコイダン」という成分があります。
「フコイダン」とは、モズクやメカブなどの褐藻類に含まれる海藻由来の成分です。近年がん領域で注目される補完的な療法の一つなのです。フコイダンには免疫力の活性化やアポトーシス(がん細胞の自然死)の誘導作用などがあるとされ、研究や臨床例も増えてきています。
特に中分子フコイダンは、吸収性と安定性のバランスがよいとされ、一部の進行がんや再発がんの症例で改善が報告されたケースもあります。たとえば、分子標的薬と併用した結果、脳転移を含む腫瘍が画像上で消失したという報告も存在します。
なお、当院・日置クリニックでもフコイダン療法を取り入れておりますので、ご関心ありましたら、詳しい内容については以下のページをご参照ください。
>>中分子フコイダン療法による臨床報告はこちら
フコイダンラボ.臨床例①:ステージⅣの肺がんの脳転移(58歳⼥性)
フコイダンラボ.臨床例②:ステージⅢCの卵巣がんの腹膜播種(62歳女性)
フコイダンラボ.臨床例③:ステージⅢCの肺がんの遠隔リンパ節転移(69歳男性)
フコイダンラボ.臨床例④:ステージⅠの皮膚がん(95歳女性)
フコイダンラボ.臨床例⑤:ステージⅢBの肺がんの再発と頸部リンパ節転移(72歳女性)
フコイダンラボ.臨床例⑥:ステージⅢBの胃がんの再発(80歳男性)
フコイダンラボ.臨床例⑦:ステージⅢAの浸潤性乳管がん(70歳女性)
まとめ
大腸がんに対する抗がん剤治療は、病期や患者さんの状態に応じて柔軟に選択・調整される重要な治療手段の一つです。標準治療としての化学療法に加え、分子標的薬のような新しい治療法や、フコイダン療法などの補完的手段も選択肢に加わりつつあります。
抗がん剤治療は副作用とのバランスを取りながら継続することが、治療成功のカギとなるでしょう。医師や看護師と連携しながら、自分に合った治療方法を見つけることが、よりよい予後と生活の質の維持につながります。
「抗がん剤=つらい治療」というイメージにとらわれ過ぎず、最新の治療法や副作用対策に目を向け、前向きに治療と向き合うことが大切です。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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