2024.04.30
がんすい臓がんのリスクと原因とは?家族歴・糖尿病・生活習慣病などから見る発症のメカニズム

すい臓がんは「沈黙のがん」とも呼ばれ、発見されたときにはすでに進行していることも少なくありません。
そのため、日頃からリスク因子(危険因子)を正しく理解し、早期発見につなげる意識的な行動が重要です。
この記事では、すい臓がんの原因と考えられる代表的な要因を解説し、どのような人が発症しやすいのか、どのような生活習慣がリスクを高めるのかを分かりやすくご紹介します。
※大腸がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>大腸がんとは?その症状について
すい臓がんのリスク・原因
(参照:https://www.suizou.org/pdf/pancreatic_cancer_cpg-2022.pdfP39)
すい臓がんは「サイレントキャンサー(沈黙のがん)」とも呼ばれ、発見が難しく、見つかったときには進行していることが少なくないがんのひとつです。そのため、あらかじめリスク因子(危険因子)を把握し、該当する方は定期的なチェックを心がける意識も持っていたいところです。
実は、すい臓がんの「明確な原因」はまだ解明されていません。しかし、これまでの研究により、発症リスクを高める要因はいくつか分かってきています。ここでは、その代表的な危険因子について紹介します。
すい臓の機能に負担がかかることがすい臓がんの原因と考えられている
すい臓がんのリスク因子に共通しているのが「すい臓に継続的な負担がかかる状態」が続いていることです。
高脂肪食や慢性すい炎、過度な飲酒、喫煙、糖尿病、肥満などはいずれも、すい臓の機能を酷使する生活習慣や疾患といえるでしょう。
すい臓は、消化液の分泌や血糖調整という生命活動の要となる働きを担っている臓器です。すい臓の機能を長期にわたり過剰に稼働させるような状態が続くと、すい臓の組織に炎症や変性が起こりやすくなり、細胞のDNA損傷や異常増殖のリスクが高まると考えられています。
すい臓の組織の慢性的な炎症は、がん発症の引き金となる可能性があるため、日常生活ですい臓の負担を減らす工夫が大切です。
家族歴がある場合は最大32倍
すい臓がんは「家族性」の要素が強いがんの一つです。なかでも「第一度近親者(親・兄弟姉妹・子)」にすい臓がん患者がいる場合、その人自身の発症リスクも高まることが分かっています。
【すい臓がんの患者さんが近親者にいる人数とリスク倍率】
(参照:膵がんの危険因子:どのような人が膵がんになりやすいのでしょうか?|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査、https://miyuki-cl.com/column/%E8%86%B5%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E5%8D%B1%E9%99%BA%E5%9B%A0%E5%AD%90)
- 1人いる→約4.5倍
- 2人いる→約6.4倍
- 3人以上→約32倍
家系内ですい臓がんが複数発症している場合、「家族性すいがん」として注意深く経過を見ていくのが望ましいです。家族性すいがん家系ではなくとも、第一度近親者に1人でもすい臓がんの方がいれば、すい臓がんのリスクは「1.5〜1.7倍」上昇するという報告もあります。
遺伝性の腫瘍症候群の可能性
家族歴とは別に、「遺伝性の腫瘍症候群」と呼ばれる遺伝的なリスクも存在します。すい臓がんに関連するものとして、以下の疾患を持つ人はすい臓がんのリスクが高まることが知られています。
- Peutz-Jeghers症候群(ポイツ・ジェガース症候群)
- 家族性すい炎
- 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(BRCA1/2)
- Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)
これらの疾患は、特定の遺伝子異常によってがんのリスクが高まる病気です。血縁者にこうした疾患を持つ人がいる場合、自身のリスクも高い可能性があることを念頭におく必要があります。
糖尿病は発症から1年以内は5.4倍
持病として糖尿病がある人も、すい臓がんの発生リスクは高いことが分かっています。なかでも発症から2年以内の糖尿病患者さんは、すい臓がんのリスクが高いとされています。
- 発症1年未満:5.4倍
- 発症2年以降:1.5〜1.6倍
新たに糖尿病を発症した高齢患者さんの場合、すい臓がんを背景にしている可能性もあるため、医療機関での精密検査を検討する症例もあります。
BMI30以上の肥満は最大3.5倍
肥満もすい臓がんのリスク因子のひとつです。リスク要因としてBMIが30以上の人ではすい臓がんのリスクが約1.5〜3.5倍に増加するとのデータがあります。20代の肥満男性の場合、3.5倍までリスクが上昇することも分かっています。
体重が増加するほどリスクも上昇する傾向があり、内臓脂肪型肥満が強く関連していると考えられています。
肥満はインスリン抵抗性や慢性的な炎症を引き起こすことで、すい臓に負荷をかけてがんの発生を促す可能性も指摘されています。
飲酒・喫煙で約1.1倍から1.8倍
喫煙はすい臓がんのリスク因子です。たばこを吸う人は吸わない人に比べて、1.7〜1.8倍リスクが高まることが分かっています。喫煙歴が長く、1日に吸う本数が多いほどそのリスクは上昇します。
一方で、過度な飲酒もリスク上昇に関与しています。なかでも、アルコール性慢性すい炎を起こすような大量飲酒は、すい臓に慢性的な炎症が起こることもあり、がんの発症につながる一因となるでしょう。
1日のアルコール摂取量が24〜50g以上の場合、お酒を飲まない人と比べて慢性すい炎になるリスクも1.1〜1.3倍、飲酒単独でのリスク上昇は約1.1〜1.2倍程度とされていますが、喫煙との併用により相乗的にリスクが高くなることも分かっています。
慢性すい炎で最大16.2倍
慢性すい炎を患っている人は、すい臓がんの発症リスクが非常に高くなります。慢性すい炎はその名のとおり、長い間すい臓に炎症が起こり続けている状態です。
発症後5年以上経過した慢性すい炎患者では、すい臓がんリスクが約16.2倍に上昇すると報告されています。
慢性すい炎ではすい臓の組織が繰り返し炎症と修復を繰り返すため、細胞のダメージが蓄積しやすくなると考えられています。炎症が長く続くとすい臓本来の機能が働かなくなり、糖尿病の悪化や消化吸収機能にも異変をきたしやすくなります。
慢性すい炎の原因には、アルコールの多飲、胆石、自己免疫、遺伝的要因などがあり、これらも含めてリスク評価の対象となります。
すい神経内分泌腫瘍1.1~2.5倍
神経内分泌腫瘍は、以前はカルチノイドとも呼ばれていて、神経内分泌細胞が由来となる腫瘍です。
すい臓に関する神経内分泌腫瘍としては日本では2015年「すい・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン」というものができました。
神経内分泌腫瘍は消化管や肺などさまざまな臓器に発生する腫瘍で、すい臓にもできやすいとされています。
近年の画像診断の進歩により、以前なら見過ごされてしまったような小さな腫瘍も発見されることが増えてきました。
すい臓にできる腫瘍のなかには、「すい神経内分泌腫瘍(PNETs)」という種類もあります。これは比較的稀ながんですが、ホルモンを分泌することが特徴です。
このすい神経内分泌腫瘍を持つ人は、将来的にすい管がん(一般的なすい臓がん)を発症するリスクがやや高いとされ、1.1〜2.5倍程度のリスク増加が報告されています。
また、遺伝性疾患と関連している場合もあり、複数の腫瘍がすい臓内にできるケースでは、定期的な検査がすすめられています。
すい臓の機能とは
(参照:https://www.daichi-hmc.com/vo38/watahiki/)
すい臓の主な働きは消化酵素を作る外分泌機能という働きと、インスリン・グルカゴンなどのホルモンを作るという内分泌機能という2つの働きがあります。
また、生産される消化液はタンパク質分解酵素・脂肪分解酵素・糖分解酵素など多数の種類があります。
外分泌機能:消化酵素の分泌
外分泌機能とは、すい臓の「腺房細胞(せんぼうさいぼう)」という部分で作られる「すい液(すいえき)」を分泌する機能です。
すい液には以下のような消化酵素が含まれています。
- アミラーゼ(糖質分解酵素)
- リパーゼ(脂肪分解酵素)
- トリプシンなど(たんぱく質分解酵素)
これらの酵素はすい臓内の「すい管」を通って、最終的に十二指腸乳頭という場所から十二指腸に分泌され、食物と混ざり合って消化を助けます。
すい臓の外分泌機能は、私たちが食べたものを体が吸収できるようにするために欠かせない重要な役割を担っているのです。
内分泌機能:血糖を調整するホルモンの分泌
一方、内分泌機能とは、すい臓のなかにあるランゲルハンス島と呼ばれる場所からホルモンを分泌しています。
代表的なホルモンには次の2つがあります。
- インスリン:血糖値を下げる働き
- グルカゴン:血糖値を上げる働き
インスリンやグルカゴンは、血中に直接分泌されて血糖値をコントロールする働きを担っていて、糖尿病の発症にも深く関係しています。
すい臓がんの初期症状はほぼなく発見が難しい
実際のところすい臓がんは、初期の頃に目立つ症状はありません。
すい臓がんは「早期発見が難しいがん」として知られており、発見が遅れやすい理由はいくつか存在します。すい臓の位置は体の奥深くにあるため、他の臓器と重なりやすく、画像診断でもがんの存在が分かりにくいという体の構造上の特徴があります。
さらに、すい臓がんの初期段階では、自覚症状がほとんど現れないことも早期発見を難しくしている要因です。
また、すい臓の周囲には肝臓・胃・小腸・大腸などの重要な臓器が密接して存在しており、がんが周囲に転移しやすいという性質もあります。これらの理由から、診断時にはすでに進行しているケースがあり、治療の選択肢が限られてしまうことが少なくありません。
すい臓がんの代表的な症状
すい臓がんが進行してくると、次のような症状が現れることがあります。
- 胃のあたりや背中の違和感・痛み
- なんとなくお腹の調子が悪い、食欲がない
- 体重減少
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 急激に悪化する糖尿病
内臓の奥深くに腫瘍があるため、前面よりも背部に痛みを感じる方が多い傾向にあります。
消化酵素の分泌低下や腫瘍による消化管の圧迫などが原因です。
腫瘍による栄養吸収の妨げや、消化機能の低下、がんによる代謝亢進が関係します。
すい頭部にできたがんが胆管を圧迫することで胆汁が肝臓に逆流し、血中ビリルビンが上昇するために起こる症状です。すい臓がんのサインの一つとされています。
インスリンを分泌するすい臓の内分泌機能が腫瘍によって妨げられることで、それまで安定していた血糖コントロールが急に悪化することがあります。高齢で急激に糖尿病が悪化した場合は、すい臓がんが潜んでいる可能性も考えられます。
リスクがある場合の早期発見につなげる方法
すい臓がんは早期発見が非常に難しいがんのひとつです。その理由の一つとして、初期段階では症状がほとんど現れないという特徴があります。
すい臓がんの予後を考えると早期発見は非常に重要な要素です。ここではすい臓がんのリスクがある場合にできる早期発見につなげる方法について解説します。
定期的な検診の重要性
すい臓がんは、ステージ0やⅠの段階ではほとんど症状が現れないため、症状が出てからの受診では、すでに進行している可能性が高くなります。そのため、普段から定期的な健康診断やがん検診を受けることが非常に重要です。
なかでも以下のようなハイリスク因子を持つ人は、すい臓がんを早期に発見するために意識的な受診を心がけたいものです。
- 家族にすい臓がんの患者がいる(家族歴)
- 慢性すい炎の既往がある
- 糖尿病(高齢で急激に発症・悪化した場合)
- 肥満や喫煙などの生活習慣リスク
「尾道方式」による取り組み
(参照:尾道市医師会独自の各種プロジェクト、https://www.onomichi-med.or.jp/outline/project.php)
すい臓がんの早期発見の取り組みの一例として、「尾道方式」と呼ばれるプロジェクトが注目されています。これは、ハイリスク因子を持つ「尾道市」の市民を対象に、地域ぐるみで医療機関と連携しながらスクリーニングをおこなう取り組みです。この方法では、すい臓がんの5年生存率の改善が報告されており、早期発見のモデルケースとして注目されています。尾道市という地域で始まった取り組みですが、今後ますます日本国内でも普及していくでしょう。
尾道方式は、積極的な受診行動を促すだけではなく、異常があれば早い段階で連携する病院へ紹介し、無症状のうちに治療を開始できるような体制を整えています。
フコイダン療法による予防
フコイダンには、血糖値や血圧の上昇を抑えたり、脂質を調整したりといった働きがあり、生活習慣病の予防に役立つといわれています。
すい臓がんのリスク因子には、糖尿病や肥満、高血圧といった生活習慣病が含まれているため、フコイダンの継続的な摂取によってすい臓の負担につながる因子をコントロールできれば、結果的にすい臓がん予防にもつながる可能性があります。
ハイリスク群に該当する人にとっては、毎日の食生活と合わせた取り入れなどが望ましいです。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>海藻のぬめり成分「フコイダン」の効果と含まれる海藻について
意識を高め、行動することがカギ
早期発見には、単に検査を受けるだけでなく、「自分はリスクがあるかもしれない」と自覚し、医療機関と積極的に連携する姿勢が大切です。
中高年以降で糖尿病の悪化や体重減少、原因不明の背部痛などがある場合は、すい臓がんのチェックも視野に入れることを検討しましょう。
すい臓がんの予後を改善するためには、「予防と検診」をセットでとらえ、症状が出る前から“備える医療”の意識を持つことが重要になるでしょう。
まとめ
すい臓がんの発症には、家族歴や遺伝性疾患、糖尿病、肥満、喫煙・飲酒、慢性すい炎など、さまざまな因子が影響していることが分かっています。
なかでも「すい臓の機能に過剰な負担がかかる生活習慣」は共通の背景にあり、リスクを軽減するためには、日常的な体調変化への意識や、定期的な検診が重要です。
もし該当するリスクがある場合には、早めの受診と医師との連携を心がけ、将来の健康に備える行動を始めてみましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
がんの種類を知る
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