2024.05.29
がん胃がんの13タイプ:種類ごとの特徴と治療法を比較解説
胃がんは、その性質や進行状況によってさまざまな種類に分類されます。特に胃がんの治療方針を決めるにあたって重要とされる、病理学的な組織分類は、大分類が3種類に分けられ、さらに細分化された小分類13種類に分けられています。
さらにこの記事では、がん細胞の増殖方法や組織学的特徴、胃壁への浸潤状況、さらには腫瘍の広がり方に基づく肉眼的分類まで、胃がんの詳細な分類や種類について徹底解説します。
それぞれの種類が持つ特性や治療の違いを知ることで、胃がんへの理解を深める助けとしてください。
がん細胞の増殖方法によりおおきく2種類にわけられる
(参考:https://p.ono-oncology.jp/cancers/gc/01/04_type/01.html)
分化型がん
分化型がんは、がん細胞が比較的正常な胃粘膜の構造に近い形態を持つタイプです。一般的な胃がんの進行に多いタイプです。
分化型のがん細胞は、腺管を形成しながらゆっくりと増殖します。代表的な分化型がんには管状腺がんや乳頭腺がんです。
分化型がんは、早期段階で発見されれば治療効果が高い場合が多いですが、進行すると周囲の臓器やリンパ節に浸潤することもあります。
- 特徴:未分化型がんと比べると比較的進行が遅い、腺管を形成する
- 主な治療法: 内視鏡治療や外科手術が中心。進行に応じて化学療法も検討
未分化型がん
未分化型がんは、がん細胞が未成熟で、正常な胃粘膜の形態とは異なる特徴を持つタイプです。腺管の構造が不明瞭で細胞同士がちらばっていることが多く、分裂や増殖が非常に活発です。
このタイプのがんは進行が速い傾向にあり、血流やリンパ液を介して転移しやすい特徴もあります。代表的な未分化型がんには粘液がん、印環細胞がん、低分化腺がんが含まれます。
- 特徴: 進行が速く、転移しやすい
- 主な治療法: 手術に加えて、化学療法や放射線治療が必要な場合も多い
病理組織学的分類
(参照:https://www.cancer-infonavi.jp/igan/treatment/01/)
胃がんはその細胞の構造や組織的な特徴によって病理組織学的におもに3種類に大別され、さらに細かく分けると約13種類に分けられます。
胃がんの大半を占めるタイプは腺がんであり、一般型に分類されます。腺がんはさらに分化型と未分化型に分類され、それぞれに特徴や治療法が異なります。胃がんのなかでも腺がんではないものを特殊型に分類しています。基本的には病理診断専門の医師により診断されます。
分化型
「胃がん」と診断を受けた場合、比較的確認されやすい腫瘍のタイプです。細胞の構造が腺管を形成し、正常な胃の組織に近い特徴を持っています。未分化型と比較すると進行が遅い場合もありますが、治療の選択肢や効果はがんの進行度によっても大きく異なります。
管状腺がん
管状腺がんは、胃の粘膜に形成される腺管構造を特徴とするがんです。このタイプは腺がんのなかでも比較的多く見られ、発症初期には進行が遅い場合が多いです。特徴としては、腺管の形が整っており、早期に発見されれば治療効果が高いとされています。治療法としては内視鏡的切除や外科的切除が中心で、進行している場合は化学療法を併用します。
管状腺がんは、さらに細胞の分化具合によって「高分化型」と「低分化型」にわけられます。
①高分化型
高分化型管状腺がんは、がん細胞が正常な胃粘膜の腺管構造に近い形態を持つため、比較的成熟しており進行が遅い傾向にあります。
②低分化型
低分化型管状腺がんは、がん細胞が未成熟で腺管の構造が崩れているのが特徴です。このため、進行が速く、転移のリスクが高いタイプです。
乳頭腺がん
乳頭腺がんは、腺管が乳頭状の構造を形成する特徴があります。このタイプのがんは分化型でありながら、進行が速いケースもあり、リンパ節への転移が起こりやすいのが特徴です。治療は手術が中心で、必要に応じて抗がん剤治療が加えられます。
未分化型
未分化型胃がんは、腫瘍の構造が不明瞭な細胞から成り立つタイプです。このがんは進行が速いケースもあり、転移しやすい傾向もあるため早期発見が重要です。
発見された段階で治療が難しい場合もあり、進行度に応じた化学療法や外科的治療が検討されます。
粘液がん
粘液がんは、大量の粘液を分泌する細胞が主成分のがんです。腫瘍内に粘液が多く含まれるため、画像診断や病理検査で特定されます。粘液によって腫瘍が周囲の組織に広がりやすく、診断が難しい場合もあります。進行が速い傾向にあり、化学療法や放射線治療が適用されるケースも少なくありません。
印環細胞がん
印環細胞がんは、細胞がリング状に見える特徴的な形を持ち、胃の粘膜内に散在して広がるタイプのがんです。このがんは未分化型のなかでも特に進行が速く、早期発見が難しいため予後が悪いケースが多いです。治療は手術が中心ですが、進行した場合には、化学療法が併用されることもあります。
低分化腺がん
印環細胞がんは、細胞がリング状に見える特徴的な形を持ち、胃の粘膜内に散在して広がるタイプのがんです。このがんは未分化型のなかでも特に進行が速く、早期発見が難しいため予後が悪いケースが多いです。治療は手術が中心ですが、進行した場合には、化学療法が併用されることもあります。
>>スキルス胃がんとは?原因・特徴・治療法から予後までを解説
特殊型
特殊型胃がんは、腺がんとは異なる特性を持つまれなタイプのがんです。扁平上皮がんなど、腺細胞以外の構造や神経内分泌細胞ががん化したものが含まれます。
腺扁平上皮がん
腺扁平上皮がんは、腺がんと扁平上皮がんの両方の性質を持つ珍しいタイプのがんです。このがんは進行が速く、周囲の臓器や組織に直接浸潤することが多いです。治療には手術、化学療法、放射線治療が用いられます。
扁平上皮がん
扁平上皮がんは、胃の扁平上皮細胞から発生する稀なタイプのがんです。進行が速く、通常は早期発見が難しいため、診断時にはすでに進行が進んでいることが多いです。治療は手術を始め、化学療法や放射線治療も使用されます。
内分泌細胞がん
内分泌細胞がんは、ホルモンを分泌する細胞ががん化したもので、非常に進行が速いのが特徴です。血液やリンパを介して他の臓器に転移することもあり、化学療法が中心の治療となります。
肝様腺がん
肝様腺がんは、胃に発生するがんのなかでも非常に稀なタイプで、肝臓の腺細胞に似た形態を持つ特徴があります。治療は手術のほかに、進行度に応じて化学療法が併用される場合があります。
未分化がん
特殊型に分類される未分化がんは、腺管構造が崩壊した状態を特徴とします。このタイプのがんは進行が速く、転移のリスクが高いことが特徴です。化学療法や放射線治療が主な治療法としておこなわれますが、早期発見が重要です。
リンパ球浸潤がん
リンパ球浸潤がんは、がん組織内にリンパ球が大量に浸潤しているのが特徴です。このがんは周囲の臓器への浸潤や転移が少ない傾向にあります。治療は手術による切除が基本で、確実に切除できれば根治の可能性が高いがんです。
カルチノイド腫瘍
カルチノイド腫瘍は、胃の粘膜内に発生する神経内分泌腫瘍の一種です。腫瘍がホルモンを過剰に分泌することにより、血管拡張や下痢などの全身症状を引き起こす場合があります。進行が比較的遅いことが多いですが、稀に転移をともなうことがあります。治療は腫瘍の大きさや転移の有無に応じて、内視鏡的切除や外科的手術が選択されます。進行している場合には、薬物療法が用いられることもあります。
深達度分類
(参考:https://oici.jp/hospital/department/gansenmoni/syoukakigeka/igeka/)
胃がんは腫瘍が胃壁にどれほど浸潤しているかによって種類分けする方法があり、これを「深達度分類」と呼びます。
深達度の分類はがんの進行度を評価するための重要な指標の一つです。治療方針や予後を決定する際の重要な要素となります。
胃の壁は内側から外側に向かって、粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜(外膜)の4層構造になっており、深達度分類は腫瘍がどの層まで達しているかで、がんの進行度を以下のように分類します。
粘膜内がん(T1a)
腫瘍が胃の最も内側にある粘膜層にとどまっている状態です。早期胃がんに該当し、多くの場合症状がほとんど現れませんが、内視鏡検査で発見されることがあります。
- 特徴: 転移のリスクが低い
- 主な治療法: 内視鏡治療(ESDやEMR)が適用されることが多い
>>胃がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命を解説。食べてはいけないものは?
粘膜下層浸潤がん(T1b)
腫瘍が粘膜下層にまで浸潤している状態です。進行はまだ比較的早期の段階ですが、リンパ節転移のリスクが高まり始めます。
>>胃がん2-3期ステージの症状・治療法を解説
筋層浸潤がん(T2)
腫瘍が筋層に達した状態です。この段階ではリンパ節転移が現れるケースもあります。この段階から進行胃がんに該当します。
漿膜浸潤がん(T3/T4a)
腫瘍が胃壁の最も外側にある漿膜にかかるか突破し始めた状態です。この段階では、腫瘍が周囲の臓器や組織に直接浸潤する症例も出てきます。
>>【胃がんステージ4】症状・治療法は?余命についても解説
他臓器浸潤がん(T4b)
腫瘍が胃壁を突き抜け、膵臓、大腸、肝臓などの周囲臓器にまで浸潤している状態です。この段階では転移も広範囲に及ぶことが一般的です。
肉眼的分類
(参考:https://oncolo.jp/news/scirrhous-stomach-cancer)
胃がんの種類を分別する際、内視鏡や手術で摘出した組織を直接みたときに判別する肉眼的分類もあります。腫瘍の形態や進行の程度に基づいて0〜5型に分類されます。
肉眼的分類は、日本胃がん学会が定めた基準に基づいており、がんの進行度や広がり方を評価するうえで重要な要素の一つです。
特に内視鏡検査や画像診断で確認される形状が診断や治療方針の決定に活用されます。
0型(早期がん)
参照:https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/jv63tefn-t4c
胃がんが粘膜層または粘膜下層にとどまっている早期段階のがんを指します。早期がんはさらに形態によって以下の3つの種類に分けられます。
0-I型(隆起型)
ポリープ状に隆起したがんで、明確な境界を持つのが特徴です。
0-II型(表面型)
粘膜表面に広がるがんで、さらに3つに分類されます。
○ IIa型(隆起型): 微妙に隆起している
○ IIb型(平坦型): 平らで粘膜の異常が目立ちにくい
○ IIc型(浅陥凹型): わずかに凹んでいる
0-III型(陥凹型)
深くえぐれるような形状で、がんが粘膜層内で拡がっていることが多いです。
1型(腫瘤型がん)
腫瘍がきのこのように大きく隆起した形状のがんを指します。
境界が明確であることが多いですが、進行して胃壁の奥深くに浸潤している場合もあります。
2型(潰瘍限局型がん)
潰瘍をともない、潰瘍の部分が腫瘍によって境界が明瞭に囲まれているがんです。
広く胃壁内に広がっていることもあります。
3型(潰瘍浸潤型がん)
潰瘍をともないながら、腫瘍が胃壁内外に広範囲に浸潤しているがんです。
浸潤が深く進行している場合が多く、周辺の臓器やリンパ節に転移していることもあります。
4型(びまん浸潤型がん)
がんが胃壁全体にびまん性に広がるタイプで、スキルス胃がんが該当します。
胃全体が硬くなることもあり、消化吸収機能に影響を及ぼす場合もあります。進行が早いケースもあり、診断時にはすでに他臓器への転移が見られる場合も少なくありません。
内部リンク:スキルス胃がん
5型(非定型型がん)
形態が明確でなく、上記いずれの型にも該当しないがんを指します。
診断が難しい場合があり、肉眼的特徴だけでは進行度を把握するのが困難です。組織検査や画像診断を併用し診断をつけるのが一般的です。
まとめ
胃がんは、腫瘍のタイプや種類ごとに特徴や進行度が異なります。いくつかの検査を併用しながら、それに応じた治療法が求められます。
分化型と未分化型のような増殖方法の違いから、胃壁への浸潤の深さ、さらには腫瘍の広がり方による肉眼的分類まで、多岐にわたる分類が診断と治療の指針となります。
本記事で解説した内容が、胃がんの特性や治療法への理解を深める一助となれば幸いです。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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