2021.12.28
がんスキルス胃がんの進行速度と治療の選択肢について解説
スキルス胃がんは、その進行速度の速さから特に注意が必要なタイプのがんとされています。この記事では、スキルス胃がんの進行の特性に焦点を当て、早期発見やどのような治療が選択可能かを解説します。
目次
スキルス胃がんとは
スキルス胃がんは、胃の壁にじわじわと広がるように進行するため、胃の壁を厚く硬くすることが特徴です。そのため、スキルス胃がんは、「びらん型」や「浸潤型」「未分化型」とも呼ばれています。スキルス胃がんは粘膜下層に広がるため、初期段階では症状が現れにくく内視鏡などで直接観察しても見過ごされてしまう症例もあります。
また、スキルス胃がんは全胃がんのなかの10%ほどであると考えられています。一般的な胃がんは50代以降の男性に多いのですが、スキルス胃がんに限って見てみると、若い女性のほうが罹患している割合が高い傾向にあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
>>スキルス胃がんとは?原因・特徴・治療法から予後までを解説
スキルス胃がんの進行速度
スキルス胃がんは、初期段階から末期に至るまで他の胃がんとは特徴が異なり、治療の複雑性も増します。
スキルス胃がんの進行速度が速い理由
(参照:
http://shutoku.fc2web.com/special_subjects/4th_grade/S5/frame/gaster.html)
スキルス胃がんは、他の胃がんと比較して進行が非常に速い未分化型の胃がんです。一般的な胃がんが年単位で進行するのに対して、スキルス胃がんは若年層に発症することもさながら、時として月単位で急速に広がることもあります。
スキルス胃がんは、他のタイプのがんとは異なり、大きな腫瘍を作るよりも組織に染みわたるように病巣を広げます。また、がん細胞も細かくバラバラであるため、病巣としてとらえにくく、広がりやすい特徴を持っています。
一般的な胃がんとの進行速度の違い
一般的に胃がんは、胃の粘膜のどこの層まで侵されているかによって早期胃がんか、進行がんかを区別します。
胃は内部粘膜層から見てみると、粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜という順番で重なっていて、奥に行くほど他の臓器とも近くなります。
(参照:https://www.e-kanpo.jp/bui/bui4.php)
粘膜下層を超えて固有筋層に達してくると「進行胃がん」として区別されます。
一般的に胃がんは早期に見つかった場合、3〜4年かけて進行がんへと移行します。10mm程度の小さな早期胃がんが進行がんになるまでには数年かかる一方で、進行がんになると一気に生命に関わる状態に進展することもありえます。
また、リンパ節などに近くなってくると遠隔転移のリスクも出てきます。
そのなかでもさらにスキルス胃がんは、進行が速い例もあり数ヵ月のうちに末期状態に達することもある特殊なタイプの胃がんです。
スキルス胃がんの進行段階別の症状
スキルス胃がんは、進行度により異なる症状が現れます。ここでは、スキルス胃がんの進行段階別にわけて生じる症状について解説します。
スキルス胃がんの初期症状
スキルス胃がんは初期には症状がほとんど現れないことが多いですが、がんが進行するにつれてさまざまな症状が現れ始めます。
初期ではせいぜい軽い胃の不快感など、他の消化器系の不調でもありうる程度の症状です。
進行してくると胸やけやげっぷ、食欲不振、さらに進行して胃壁からの出血が生じてくると黒い便(消化管出血の兆候)などが見られるようになります。
スキルス胃がん末期の症状
スキルス胃がんがさらに進行し、末期に差しかかると、症状はより重篤なものとなり治療も複雑になります。症状には強い痛み、激しい嘔吐、倦怠感、栄養不足による体力の消耗なども生じ、体重減少もみられてきます。さらに病状が悪化すると腹水などもたまってきて著しく生活の質を下げる可能性もあるでしょう。
症状が進行すると患者さんの生活の質を大幅に低下させるため、対症療法として痛みの管理や栄養状況のサポートが重要になってきます。
また、末期のスキルス胃がんでは、治療の目的が病気の完治から症状の管理や生活の質の向上にシフトすることが一般的です。いろいろな治療を患者さんにあわせて選択し、工夫しながら化学療法、放射線療法、時には緩和ケアも含めます。患者さんだけではなくその家族に対する包括的なサポートも活用することが重要です。
早期発見の重要性
スキルス胃がんは進行が非常に速く初期症状がほとんど現れないため、早期発見が極めて重要です。早期に発見されれば治療の選択肢が増え、生存率向上にもつながるでしょう。
一方で進行した段階で見つかると、治療が難しくなり予後も悪化します。そのため、リスク要因を持つ人や不調を感じる人は、定期的な検診を受けることが重要です。
早期発見する方法
スキルス胃がんを早期発見するには、普段からの意識づけと自分のリスク因子を知っておくことが重要です。
①定期的な胃の検診を受ける
スキルス胃がんを早期発見することを考えるなら、胃の内部を直接観察できる胃内視鏡検査(胃カメラ)を意識的に受けましょう。小さな異常も見逃しにくい検査です。特にリスクの高い人は年に一度の検査が望ましいでしょう。日本では胃がんの検診は積極的におこなわれています。地域の検診や職場の検診も活用するとよいでしょう。
② ピロリ菌の検査と除菌
ヘリコバクター・ピロリ菌の検査を受けるのも有用です。ピロリ菌の感染は胃がんのリスクを高めます。検査で陽性の場合は、医師と相談して除菌治療を検討しましょう。
③家族歴の確認と相談
家族に胃がんの患者がいる場合は、リスクが高まる可能性があります。罹患した胃がんのタイプの確認をするとともに、遺伝的要因を確認しておくとよいでしょう。
④自覚症状に注意する
小さな異変にも敏感になり、食欲不振、体重減少、胃の不快感などの症状が続く場合は、早めに医療機関の受診を検討しましょう。
スキルス胃がんの治療法
スキルス胃がんの治療法は多岐にわたり、病気の進行度や患者さんの健康状態に応じてさまざまな方法から選択されます。ここでは、主要な治療方法を説明します。
スキルス胃がんの根治治療は手術
スキルス胃がんは胃全体に広がっていることもめずらしくありません。目に見える病巣は小さくても、広く深く浸潤していることがあるため、おこなわれる手術は胃全摘が採用されることも少なくありません。
(参照:https://www.ringe.jp/civic/20200302/p07)
胃を摘出するだけではなく、周辺のリンパ節も広く切除し、転移の予防や再発予防に努めます。手術は、可能であればがんの完全な切除を目指します。
また、スキルス胃がんの治療には、手術のほかにも化学療法や免疫治療が含まれます。体内に広く散らばりやすいタイプのがんなので、目に見えないがん細胞を根絶するための治療も同時におこなうことが検討されるからです。
化学療法はがん細胞の成長を阻害する薬剤を使用し、病気の進行を遅らせるためにおこなわれます。近年、免疫治療が注目されており、特に進行したスキルス胃がんに対して、体の免疫システムを活用してがん細胞を攻撃する新しい「免疫チェックポイント阻害剤」が注目されています。
腹膜播種を起こさないことが目標
(参照:
https://plaza.umin.ac.jp/~phoenix2/peritoneal_meta.html)
スキルス胃がんのもう一つの特徴として、進行が進むと「腹膜播種」という状態に陥ることがあげられます。
腹膜播種は、がん細胞が腹腔内にばらまかれ広がってしまう転移状態です。腹膜播種が起こると手術による根治が難しくなります。腹膜播種の状態では、手術による治癒がほぼ不可能になり、現在のところ化学療法による病状進行の抑制が主な治療法となります。
そのため、患者が期待する「完治」とは異なり、病状のコントロールが治療の目標となることが多いのです。
つまり、腹膜播種を起こさないことが、スキルス胃がんの治療における重要なポイントといえるでしょう。腹腔内に抗がん剤を投与する新しい治療法や、免疫チェックポイント阻害剤などが試みられていますが、現在のところ完治させる確実な治療法は見つかっていません。
スキルス胃がんは早期発見され、腹膜播種やリンパ節転移がない段階であれば、手術による完治の可能性も見込めます。
早期発見と進行の抑制がスキルス胃がんにおいて最も重要であり、腹膜播種を防ぐための早期介入が鍵となるでしょう。
まとめ
スキルス胃がんは進行速度が非常に速く、若い世代でも発症しやすい特徴を持つため、早期発見が極めて重要です。
特にスキルス胃がんにおいては腹膜播種を防ぐためには、がんが広がる前の段階での介入が治療成功につながる大事な段階といえるでしょう。
手術や化学療法、免疫治療などさまざまな治療法がありますが、進行が進んでしまうと治療の目標は完治から症状の管理に移行します。定期検診や早期発見に努めることで、治療の選択肢を広げ、スキルス胃がんの進行を抑える可能性を高めていきたいですね。
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