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健康の科学

この症状は膀胱炎かも?原因・治療法・予防法について

膀胱炎を効果的に予防・治療するには、膀胱炎になる原因を知ることが大切です。今回は膀胱炎の種類・症状・原因について詳しく述べ、治療・予防法も紹介します。

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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膀胱炎の種類

尿を一時的に溜めておく膀胱に炎症が起きると、排尿時の痛みや頻尿などの症状が表れます。これを膀胱炎といいますが、男性よりも尿道が短い女性に多くみられる病気です。以下、膀胱炎の種類を紹介します。

急性膀胱炎

大腸菌などの腸内細菌が、尿道から入って膀胱に感染します。ただ細菌が膀胱に侵入しただけでは発症しませんが、長時間排尿を我慢する・疲労で免疫力が低下すると発症しやすくなります。主な症状は、排尿時の痛み・排尿回数の増加・尿の濁りです。尿の濁りは炎症部分に集まった白血球や分泌物、はがれた粘膜によるものです。膀胱が炎症を起こしているため、尿に血液が混じることもあります。女性に多い疾患です。

慢性膀胱炎

多くは急性膀胱炎から慢性膀胱炎に移行することが多く、始めから慢性膀胱炎を発症するケースは少ないといわれています。症状は急性膀胱炎と同様ですが、症状の程度は軽く、自覚症状がない場合もあります。しかし膀胱結石や前立腺肥大症などの基礎疾患や長期の尿道カテーテル留置が誘因となり、慢性膀胱炎を発症していることが多く、基礎疾患の治療も同時に行います。男性に多い疾患です。

出血性膀胱炎

アレルギー性膀胱炎とも呼ばれ、何の兆候も基礎疾患もなく、突発的に排尿痛・血尿・頻尿など急性膀胱炎のような症状が現れます。しかし細菌感染は認められず、アレルギーによるものと考えられていますが、いまだ不明な部分が多い疾患です。風邪を引いた後に発症することもあり、ウイルス性と考えられている症例もあります。年齢や性別に関係なく発症しますが、小児に多い傾向があるようです。

間質性膀胱炎

原因は感染ではなく自己免疫疾患という考え方が有力ですが、はっきりしたことはまだわかっていません。特徴的な症状は、膀胱充満時の疼痛で痛みは腰部や外陰部など広範囲に及びますが、膀胱部の疼痛がないケースも見られます。その他の症状には排尿痛・頻尿があり、血尿を伴うときもあります。中年の女性に多く発症し、内服薬での治療を中心に行いますが、治るまでに長期間を要する疾患です。

膀胱炎の主な症状

膀胱炎の三大症状は排尿痛・頻尿・尿の濁り(膿尿)です。急性膀胱炎はこれらの症状が強く現れますが、慢性になると尿の濁り以外の症状は緩和され、基礎疾患がある場合にはその疾患の症状のほうが強く現れます。発熱・悪心・嘔吐・腰痛・側腹部痛がある場合には、腎盂腎炎との合併が考えられます。その他の症状が伴う時には、基礎疾患が存在している可能性があります。

急性膀胱炎では、排尿時の終わりごろに痛みが強くなる傾向があります。下腹部の不快感や血尿を伴う場合もあり、自覚しやすいのですが、慢性膀胱炎になると自覚症状がない人もいます。

また、膀胱炎と症状が似ている別の病気もいくつか存在するため、注意が必要です。
以下の記事では、膀胱炎と似た症状の病気も、種類や特徴などをまとめています。膀胱炎のような症状が出ている方は、ぜひ参考にしてみてください。
>>膀胱炎かどうかチェックしよう。頻尿などの症状を確認

膀胱炎の原因

膀胱炎の原因
急性膀胱炎の原因は、細菌感染で、原因菌は大腸菌などの腸内細菌が9割を占めています。女性に発症することが多いといわれるのは、尿道が男性よりも短いからですが、細菌が膀胱内に侵入してもそれだけで発症するわけではありません。

免疫力の低下

風邪を引いているとき、寝不足や疲労が溜まっているときなど、免疫力が低下します。通常なら膀胱に侵入した細菌に対して、身体に備わっている防御機能で細菌が排除され、排尿により外へ排出されて膀胱炎にかかることはありません。
しかし免疫力が低下したときには、細菌に対する防御機能が上手く働かなかったり、排尿を長時間我慢したりすることがあると、膀胱炎を発症してしまいます。

免疫力は、普段の生活や食事内容を工夫することで、高めることができます。
免疫力をつける方法を、以下の記事で紹介していますのでぜひご覧ください。
>>感染症に負けない!免疫力をつける5つの方法

性行為

女性に多くみられます。女性器と尿道が近い距離にあることや、肛門周りや陰毛には目に見えなくても腸内細菌が付着していることが多いことから、性交時に感染する可能性が高まるといわれます。性行為が原因の膀胱炎は「ハネムーン膀胱炎」とも呼ばれています。新婚旅行中に感染することが多いからですが、通常と異なる生活で免疫力が落ちていることも影響していると思われます。性交後には排尿をすることが予防法として有効です

生理

膣内には常在菌が存在し、強い酸性に保つことで雑菌の繁殖を防いでいます。生理中はエストロゲンの量が低下する影響で、常在菌が減少して膣内は雑菌が繁殖しやすい状態になります。生理中はナプキンの使用などで、経血が長時間肌に密着した状態になり、雑菌が繁殖しやすい環境です。女性の体の構造上、尿道口のすぐ近くに膣があることも、急性膀胱炎にかかりやすい原因になっています。

生活習慣

生活習慣によっては、急性膀胱炎が発症しやすくなります。たとえば次のような生活習慣は注意が必要です。
・水分をあまり摂らない:排尿の回数・量が少ないと、尿路に侵入した細菌が繁殖しやすい
・排尿を我慢する:尿を膀胱に溜めておく間に、細菌が増殖する
・疲労やストレスを溜めやすい:免疫力が低下して発症しやすくなる
・下痢や便秘が多い:腸内細菌が肛門周囲に付着しやすく、細菌が侵入する機会が増える

膀胱炎の治療法

膀胱炎の原因の多くは細菌によるものなので、抗菌薬が使われます。同時に自宅で体力の回復や水分をしっかり摂って、排尿を促すことで治療効果が高まります。

治療薬の服用

抗菌薬を使います。原因菌がグラム陰性桿菌にはセフェム系・ニューキノロン系、グラム陽性球菌にはニューキノロン系が始めに選択されます。細菌の種類により効き目が異なりますが、有効な薬であれば3日程で効果が現れます

セルフケア

安静に過ごし、排尿により細菌を体外に出すために十分な水分を摂取することを心がけます。疲労と免疫力を回復できる栄養のある食事を摂り、身体を温めるようお風呂ではお湯につかり、下腹部をしっかり温めます。※4

膀胱炎のセルフケア方法

膀胱炎のセルフケア方法

膀胱炎は生活習慣にも深く関わる疾患なので、病院で処方された薬以外にもセルフケアを行うことが重要です。細菌の体外への排出と免疫力をつけることに気を配って生活をすると、早期回復の手助けになります。

水分をたくさん摂る

水分を摂る量が少ないと、膀胱内で繁殖した細菌を排出するのに十分な尿量が確保できないため、膀胱内に残った細菌がまた増殖してしまいます。水分を多めに摂って尿量を増やし、細菌が増えすぎる前に体外に出すことが必要です。

体を温める

体が冷えると免疫力が下がり、膀胱内に侵入した細菌が増殖しやすくなります。体をしっかり温めて、免疫力の低下を防ぐことが大切です。お風呂に浸かる以外に、体を温める食べ物や飲み物もおすすめです。

漢方薬を服用する

排尿を促す作用のある漢方、たとえば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)猪苓湯(ちょれいとう)などは薬局・ドラッグストアなどで購入することができます。治療中は必ず事前に医師に相談してください。

膀胱炎の予防と治療には排尿と免疫力が大事

膀胱炎はいくつかの種類がありますが、最も多いのが急性膀胱炎です。特に女性は身体の構造上、急性膀胱炎になりやすいので、記事内の生活習慣に気をつけて予防することが大事です。

尿道から細菌が膀胱内に侵入しても、直ちに膀胱炎になるわけではなく、排尿で膀胱内の細菌排出と免疫力で、発症は防げます。そのためには水分を十分に摂ることと、体を冷えから守り、ストレスや疲労を溜めないようにしましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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