2021.11.26
健康の科学血糖値を下げる食事術「果物・ハチミツは大丈夫」はウソ?
巷には血糖値や糖尿病に関する情報があふれています。すべて鵜呑みにしないとは思いますが、誤った解釈を招きそうなものも少なくありません。不確かな情報に惑わされないように、まずは血糖値についてきちんと知り、毎日の食生活に活かしましょう。
目次
血糖値が上がる仕組み
そもそも血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のこと。糖質を含む食事を摂ると、腸で消化されてブドウ糖ができます。それが血液中に吸収され、血糖値が上がるのです。
健康な人では食後30分で血糖値が140mg/dlくらいまで上がり、2時間もすると70~110mg/dlに戻ります。血糖値を下げるために、「インスリン」というホルモンが分泌されるからです。糖尿病の人ではインスリンの分泌が少なかったり、効きが悪くなったりして、血糖値が高い状態が続きます。
食後高血糖に要注意!
健診時の血糖値が正常範囲内でも、糖尿病でないとは限りません。食後に血糖値が跳ね上がり、2時間後も140mg/dl以上ある人は「食後高血糖」と診断されます。
食後高血糖は「隠れ糖尿病」とも呼ばれますが、通常の健診では前日の夜から何も食べずに採血することが多いため見逃されがち。食後の血糖値が高い状態が続くと、いずれ空腹時の血糖値も高くなって糖尿病を発症するだけでなく、食後高血糖自体が動脈硬化のリスク因子となります。
血糖値が下がる仕組み
血糖値は、様々なホルモンの作用によって、常に一定範囲内に保たれています。ただし、血糖値を上げるホルモンは複数ありますが、血糖値を下げるホルモンは膵臓から分泌されるインスリンだけ。インスリンは血糖値の上昇に伴って分泌され、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込ませることで、血糖値を下げます。
例えば、朝食を抜いて、お昼にうどん定食などの炭水化物多めのメニューを食べると、一気に血糖値が上がり、大量のインスリンが分泌されます。その結果、一時的な低血糖状態に陥ることもしばしば。食後に急激な眠気に襲われる時などは、インスリンが無駄に多く分泌された可能性があります。
血糖値が急上昇するような食生活を続けていると、やがて膵臓が疲れ果て、インスリンを分泌する力が弱ってしまうでしょう。糖尿病を防ぐには、血糖値をコントロールしてインスリンを節約し、膵臓を長持ちさせることが大切です。
食後血糖値が上がりにくい食品とは?
炭水化物には糖質が含まれるので、ごはん、パン、麺類などを食べると血糖値が上がります。でも、同じ量の炭水化物を食べても、含まれる食品によって、血糖値が上がるスピードやピークに違いがあるのをご存知ですか?
「GI値」は食後血糖値の上昇具合を示す指標で、ブドウ糖を100とした場合の相対値で表されます。GI値が高い食品ほど血糖値が上がりやすく、70以上は高GI食品、55以下なら低GI食品に分類されます。
例えば、白米は高GI食品で、玄米は低GI食品です。これらは含まれる炭水化物の量もカロリーもあまり変わりませんが、血糖値の上がりにくさでは玄米が圧勝。
食後高血糖を防ぐために低GI食品を選ぶことは大切ですが、GI値は低くても気を付けたほうが良い食品もあります。
また、水溶性の食物繊維は、腸内で水と結びついてゲル状の物質を形成。これにより、糖や他の栄養素が腸から血液に吸収される速度が遅くなり、結果として血糖値の上昇が緩やかになります。
このことから、食物繊維は血糖値が上がりにくい食品と言えるでしょう。食物繊維の働きについて詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。
低GI食品の落とし穴
「果物やハチミツは低GI食品だから大丈夫」と思われているかもしれません。たしかに、果物やハチミツに多く含まれる糖質は、ブドウ糖ではなく果糖(フルクトース)なので、果糖が血液中に吸収されても血糖値は上がりません。
しかし、血中の果糖は肝臓に運ばれて、一部はブドウ糖に変換されます。さらに、どんな糖質でも摂り過ぎると脂肪に変換され、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されるのです。
内臓脂肪が溜まるとインスリンの効きが悪くなるため、低GI食品でも糖質が多い果物やハチミツの摂り過ぎは、血糖値コントロールに悪影響を与える可能性があります。
血糖値コントロールには食べ方も重要
野菜を先に食べる「ベジファースト」を実践している人は多いでしょう。野菜には血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維が多く含まれるので、血糖値コントロールには効果的です。そのうえ低カロリーな野菜でお腹を少し満たせば、食べ過ぎも防げます。
同様に「ミートファースト」「プロテインファースト」と言って、肉や魚などのタンパク質食品を先に食べるのもおすすめ。食が細い高齢者では野菜でお腹がいっぱいになると栄養不足になるので、ミートファーストを試してみてはいかがでしょうか。
タンパク質を食べると、インスリンの分泌を促進する「インクレチン」というホルモンが増え、炭水化物を食べた時の血糖上昇が抑えられるとされています。インクレチンは糖尿病の治療にも利用される物質で、食欲を抑える作用もあります。
腸内環境が血糖値に影響する
人間の大腸にはおよそ100兆個、500~1000種類もの腸内細菌が住み着いており、その種類と数が血糖値と深く関わっているとされています。イリノイ大学の発表によると、血糖値コントロールが良好なグループでは腸内細菌の数が多く、特に善玉菌に分類される菌が多かったとのこと。※1
腸内環境と血糖値の関係で注目されているのが、腸内細菌が水溶性食物繊維から作る短鎖脂肪酸という物質です。短鎖脂肪酸には、先ほど述べたインクレチンの分泌を増やす作用があるとされます。つまり、水溶性食物繊維を摂ると短鎖脂肪酸が増え、血糖値が下がるというわけです。
※1 Gut bacteria may contribute to diabetes in black males(イリノイ大学2015年3月5日)
水溶性食物繊維を摂るなら海藻がおすすめ
水溶性食物繊維は、熟した果物、大麦、海藻などに多く含まれています。一方、普段よく食べるような野菜、大豆、キノコ類には不溶性食物繊維が多く、水溶性食物繊維はあまり含まれません。
果物や大麦は糖質を多く含むため、もし今の食生活に一品追加するとしたら、海藻類がおすすめです。海藻のヌルヌル成分は「フコダン」や「アルギン酸」といった水溶性食物繊維で、様々な健康パワーが認められています。中でも、沖縄のもずくはフコイダンを多く含み、調理も簡単なので取り入れてみてはいかがでしょうか。
中でも、「フコイダン」という成分には肝機能向上作用があることが報告されているため、積極的に食事に取り入れてみるといいでしょう。
フコイダンで報告されている作用は、現時点で以下の通りです。
抗腫瘍・抗がん作用/抗アレルギー作用/肝機能向上作用/抗生活習慣病/抗ウイルス作用/抗ピロリ菌作用/血液凝固阻止作用/美肌作用/育毛作用
中でも注目したいのは、日本の死因第1位であるがんに対する作用です。
がん治療の統合医療においてフコイダンは、抗がん剤との併用が可能であり、かつその効果を高めたり、副作用を軽減したりすると期待されています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
毎日の食事に気軽に取り入れられることから、治療だけではなく予防のための活用も可能。
フコイダンは、様々な病気に対する良いアプローチを見込める成分です。健康維持にぜひお役立てください。
まとめ
血糖値コントロールのために「GI値」を意識することは重要です。けれども、低GI食品だからといって果物やハチミツの摂り過ぎは肥満のもと。内臓脂肪が溜まるとインスリンの効きが悪くなるため、血糖値が下がりにくくなります。血糖値を下げるには、食べる順番を意識し、水溶性食物繊維をたっぷり摂るのが良いでしょう。
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