2021.10.04
がん卵巣がんの初期症状は分かりずらい “サイレントキラー”の特徴と予防・治療の基本
卵巣がんは婦人科がんのなかでも発見が難しく、進行した状態で見つかることも少なくないがんの一つです。初期にはほとんど自覚症状がないため、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれています。
卵巣がんは40代以降から徐々に増加します。妊娠・出産歴やホルモンバランス、遺伝的な要因なども発症リスクに関与すると考えられています。この記事では、卵巣がんの症状や原因、検査・治療法、妊よう性との関係について解説します。早期発見・予防のためにも、正しい知識を身につけておきましょう。
※大腸がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>大腸がんとは?その症状について
目次
卵巣がんとは

(参照:卵巣がん・悪性卵巣腫瘍|京都済生会病院、https://www.kyoto.saiseikai.or.jp/pickup/2025/03/post-88.html)
卵巣がんとは、女性だけにある臓器の一つ「卵巣」にできる悪性腫瘍です。卵巣は腹腔内の比較的深い部分にあり、手軽に検査できる方法も少ないです。「これが異常であれば卵巣がん」というはっきり分かるものがありません。卵巣がん特有の初期症状もないので、発見が遅れがちになります。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>沈黙のがん「卵巣がん」を知る:原因から治療、予後までを解説
卵巣がんの症状
卵巣には卵巣がんである悪性腫瘍以外にも良性の腫瘍もできやすいです。卵巣にできる腫瘍のうち85%以上は良性なのですが、残りの15%程度は悪性腫瘍です。卵巣がんは初期にはほとんど症状がなく、何らかの病気の診察や別の症状の診察をしているときに偶発的に見つかることも少なくありません。
初期症状
卵巣がんは初期の頃には自覚症状がほとんどありません。なんとなくの違和感としてお腹が張るような感じが出ることもあるようです。ですが卵巣がんに特徴的な症状ではなく、便秘などでも感じる程度の違和感なので見過ごされることも少なくありません。卵巣がんの場合、なんらかの自覚症状がありがんと分かったときには約6割の人は進行しているとの報告もあります。
卵巣がんに気付いたきっかけ
卵巣がんが初期の頃に見つかる場合、検診や他の病気の診察などでたまたま見つかって発覚するようです。卵巣がんは比較的腫瘍が大きくなってくる頃に違和感を感じて受診し、別の診療科でエコー検査などを受けた際に見つかることも少なくありません。
進行症状
卵巣がんも進行してくると、悪性腫瘍の塊が大きくなりお腹が張ったり腫れたりする症状も見られてきます。痩せ型の人であればなんとなくしこりを感じたり、なかには痛みを感じてくる人も出てきます。今まで普通に着用していたスカートやズボンなどがきつくなったり入らなくなったりするのですが、太ったと勘違いしてしまい見過ごされてしまうこともあるようです。
腫瘍の増大とともに膀胱や腸などが圧迫され、おしっこが出にくくなったりトイレが近くなることもあります。なかには便秘や吐き気、食欲減退感などの症状が生じる人もいます。
末期症状
病状が進行し末期になってくると、腹膜に転移する播種転移が起こります。腹膜に転移が起こると腹水が生じ、ますますお腹は張り、大きくなってきます。その後、横隔膜や胸郭にも転移し始めます。さらに病状が進行すると胸水がたまり、呼吸困難などの症状が現れることもあります。
ひどくなると卵巣がん自体が破裂してしまい、激しいお腹の痛みも生じることもあります。卵管がねじ曲がることもあり、激しい腹痛や嘔吐、出血やうっ血などが生じることもあります。
卵巣がんの原因・なりやすい人

卵巣がんの原因にはいくつかの要因があります。その要因の一つが排卵です。排卵周期により排卵すると、卵巣の卵子の出る部分が破れて傷つきます。この卵巣の組織の損傷と治癒の過程で徐々に細胞に遺伝子異常が起こり、細胞のがん化が進むと考えられています。これらの要因から、卵巣がんの原因やなりやすい人にはある程度の傾向があるといえます。
閉経している人
閉経後の女性は、閉経を迎えるまでの長年にわたる排卵の影響が蓄積していると考えられています。損傷ダメージの蓄積に加え閉経後にホルモンバランスが変化し、エストロゲンが相対的に優位になることも発症に関与している可能性があります。実際、卵巣がんの発症年齢のピークは60代前後にあることもわかっています。
妊娠・出産の経験がない、初潮が早く閉経が遅い
卵巣がんは排卵する際に、卵巣表面にできる傷と治癒が関連するとされており、排卵回数が多いほど危険性が高まるとも考えられます。つまり出産の経験がない人、初潮が早かった人、閉経が遅い人などはそれだけ排卵の回数が多くなるため、よりリスクが高まります。
子宮内膜症・チョコレート嚢胞の既往がある
子宮内膜症とは、本来子宮の内側を放っているはずの子宮の内膜の細胞が子宮以外のいろいろな場所にできてしまう病気です。そのなかでも卵巣に発生してしまった子宮内膜症が「チョコレート嚢胞」と呼ばれています。
子宮内膜は月経のたびに月経血として体外に自然と排出されますが、卵巣にできてしまった場合、子宮内膜を外に排泄できないので徐々に血液がたまってしまいます。結果として卵巣がだんだん腫れてきてしまう病態です。
一般的に子宮内膜症であればそのほとんどは良性なのですが、チョコレート嚢胞は不妊の要因になるばかりではなく、まれに卵巣がんに進展することも分かっています。
がん化する確率は0.7%とのデータもあり、嚢胞のサイズが大きくなるほどリスクが高く、さらに40歳以降になるとリスクが増します。
ホルモン療法を受けたことがある
更年期症状の緩和を目的としておこなわれるホルモン補充療法(HRT)は、 卵巣がんの発症リスクに影響を及ぼす可能性が研究されています。複数の研究から、HRT使用と卵巣がん発症に関してリスク上昇につながる可能性があるという報告があります。研究内容によるとエストロゲン単独療法、エストロゲン+プロゲステロン併用療法ともに、発症リスクが1.2倍前後になるというデータも出ています。
HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)
卵巣がんの患者さんのなかでも全体の10〜15%は遺伝的な要因が関わっていることも分かっています。その代表的なものが遺伝性乳がん卵巣がんである「HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)」です。家族性の卵巣がんである場合、BRCA1、もしくはBRCA2と呼ばれる遺伝子に変異が見られます。
卵巣がんの検査

卵巣がんの事前診断には、画像検査や腫瘍マーカーなどの複数の検査を組み合わせておこなうことが一般的です。卵巣がんは初期症状が乏しいため、検診や他疾患の精査中に偶発的に発見されることも少なくありません。画像検査としては経膣超音波検査やCT、MRIなどが用いられ、腫瘍の大きさや性状、他臓器への転移の有無などを確認します。
比較的手軽にできる血液検査では、卵巣がんの市場でもある腫瘍マーカー「CA125」を参考の一つにします。卵巣がんの場合、事前検査で病状を探りながらも最終的な確定診断には、手術や腹腔鏡下で実際に病巣部や周辺組織を観察します。さらに採取した細胞を病理検査で確認して診断確定となります。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>沈黙のがん「卵巣がん」を知る:原因から治療、予後までを解説
卵巣がんの治療
卵巣がんの治療は、がんの進行度や患者さんの年齢、全身状態、患者さんの希望などに応じて決定します。基本的な治療は手術で、可能な限り腫瘍を切除するのが原則です。さらに術後には補助化学療法(抗がん剤治療)がおこなわれるケースも少なくありません。進行例では手術でできるだけ取り切れる状態にするために、術前に化学療法を実施してから手術をおこなうこともあります。基本的には初回手術後に正確なステージなどの確定が判断されるので、最終的な治療方針は手術後に決まるのが一般的です。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>沈黙のがん「卵巣がん」を知る:原因から治療、予後までを解説
フコイダン療法
フコイダンはモズクやコンブなどの褐藻類に含まれる多糖類の一種で、免疫活性やアポトーシス誘導作用があるとされ、がん治療の補完療法として注目されています。卵巣がんに対しても、フコイダンの摂取が腫瘍の増殖抑制につなげられる可能性があります。卵巣がん治療の補助的な手段として、フコイダン療法を取り入れている患者さんも少なくありません。実際に、当院ではフコイダンを治療の一部に加え、腹膜播種を改善した症例を確認しております。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>“臨床例②:ステージⅢCの卵巣がんの腹膜播種(62歳女性)”
卵巣がん治療と妊よう性
卵巣がんの治療では卵巣や子宮を摘出するのが基本術式です。妊娠・出産に関わる組織を摘出するため、妊よう性の温存が困難になることもあります。
卵巣がんを患った患者さんが若年者だった場合、早期に発見された場合には片側の卵巣や子宮を温存する「妊よう性温存手術」が選択されることもあります。また、治療前に卵子や受精卵を凍結保存しておくなどの方法もあり、妊娠を希望する患者にとっての選択肢の一つとなります。妊よう性の維持については、診断時点で患者さんと医師との相談が必須です。婦人科腫瘍専門医や生殖医療専門医と連携しながら、将来性も視野に入れて治療計画を立てる必要があります。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>沈黙のがん「卵巣がん」を知る:原因から治療、予後までを解説
まとめ
卵巣がんは発見が難しく、発見時には進行していることも少なくない疾患です。リスク因子を理解し、定期的な検診や違和感への早期対応を心がけることで、早期発見の可能性を高めることもできるでしょう。
進行度に応じて治療の選択肢も広がっており、患者さんの妊よう性や生活の質(QOL)を尊重した医療も進んでいます。また、フコイダンなどの補完療法の活用についても関心が高まっていて、一般的な治療との併用が検討される場合もあります。自分や家族の健康を守るために、正しい情報をもとに適切な判断と行動をとれるようにしましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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