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肺腺がんとは?非喫煙者にも多い特徴・症状・ステージ・治療法を解説

肺腺がんとは?非喫煙者にも多い特徴・症状・ステージ・治療法を解説

肺腺がんは、日本人を含む世界中で最も多い「非小細胞肺がん(NSCLC)」のタイプで、非喫煙者でも発症しやすい特徴を持っています。

肺の末梢部にできやすいため初期には症状が出にくく、発見が遅れることも少なくありません。

この記事では、肺腺がんの基礎知識から症状、原因やリスク、ステージ分類、検査・診断方法、治療法、そして予後までをわかりやすく解説します。肺腺がんを正しく知ることで、早期発見・適切な治療の選択につなげましょう。

※肺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?種類・症状・治療法をわかりやすく解説

日置医院長

この記事の執筆者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

肺腺がんとは

肺腺がんとは
(参照:https://www.midtown-meieki.jp/colum/2175/

肺腺がんとは、肺がんのなかでも「非小細胞肺がん(NSCLC)」に分類される肺がんのタイプの一つで、日本人では最も多い肺がんの組織型です。女性や非喫煙者にも多く見られ、近年増加傾向にあります。

肺の末梢(外側の部分)に発生しやすいため、早期には症状が出にくいことも多く、発見が遅れるケースも少なくありません。

肺腺がんは肺がんの種類の一つ

肺がんは大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に分けられます。非小細胞肺がんはさらに、肺腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどのタイプに分類されます。肺腺がんは非小細胞肺がんのなかでも最も頻度が高く、日本の肺がん患者さんの約60%以上を占めています。

この分類は治療方針や予後にも影響するため、診断の際に病理検査で正確にタイプを特定し、治療方針を決めるのが一般的です。

肺腺がんの特徴

肺の末梢部は、気管支が細かく枝分かれして酸素を血液に交換する肺胞が多く集まっている場所です。腺組織とは分泌物を作る細胞で構成されており、これががん化すると「腺がん」と呼ばれます。

肺腺がんの特徴から、レントゲンでは発見しにくいこともあり、発見時には進行していることも少なくありません。そのためCT検査などの画像診断が、早期発見のために重要です。

【特徴】

  • 非喫煙者や女性にも多い:喫煙と強い関連を持つ扁平上皮がんなどに比べ、非喫煙者でもかかりやすい。
  • 遺伝子変異が関与する場合がある:EGFR変異、ALK融合遺伝子などが関わり、分子標的薬が有効なケースも多い。
  • 肺の末梢にできるため初期症状が出にくい:肺の外側にできやすく、初期は無症状のことが多い。

肺腺がんと喫煙の関係・リスク因子

肺腺がんは肺がんのなかでも最も多いタイプですが、その発症には複数のリスク因子が関与しています。肺腺がんは非喫煙者でもかかるケースがあり、遺伝的背景や環境因子も重要です。ここでは主な原因やリスク因子について解説します。

喫煙との関係

肺がん全体で見ると、喫煙は最も重要なリスク因子です。タバコの煙には数十種類以上の発がん性物質が含まれ、長年の喫煙歴があるほど肺がんのリスクは高まります。

肺腺がんは扁平上皮がんや小細胞肺がんに比べると喫煙との関連がやや弱いとされています。それでも、喫煙者における肺腺がんリスクは非喫煙者に比べて確実に高いということは十分に考えられるでしょう。

非喫煙者でもなる理由

非喫煙者でもなる理由
(参照:https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00310.html
肺腺がんは、非喫煙者でも発症するのが特徴のひとつです。特に日本を含むアジア人女性に多く報告されています。主な理由には以下があげられます。

  • 遺伝子変異の関与:EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子など特定の遺伝子異常が多い
  • 受動喫煙:家庭や職場などで他人の煙を吸うこともリスクになる
  • 環境要因:大気汚染、調理時の煙(特にアジアの一部地域での固形燃料使用)など

非喫煙者でも油断せず、長引く咳や体調変化があれば医療機関への相談を検討したいところです。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>肺がん初期症状とは?見逃しやすい兆候と進行時の変化を徹底解説

肺腺がんの症状

肺腺がんは、肺がんのなかでも比較的ゆっくり進行するタイプですが、
早期にはほとんど症状が出ないことが多いのが特徴
です。そのため、発見時にはある程度進行してしまっているケースも少なくありません。ここでは、肺腺がんの早期・進行時の代表的な症状、そしてほかの肺がんとの違いについて解説します。

早期には症状が出にくい

肺腺がんは肺の末梢(外側寄り)に発生する傾向にあり、初期の段階では気管支を塞ぐことが少なく、咳や痰などの自覚症状が出にくいのも特徴です。健康診断の胸部X線やCT検査など、無症状の状態で偶然見つかるケースもあります。

進行すると現れる症状

肺腺がんが進行して大きくなると、以下のような症状が現れることがあります。しかしながら症状によっては、肺腺がん特有の症状ではないので、「ちょっと風邪が長引いている?」というように、見過ごされてしまうことも少なくありません。

  • 持続する咳や痰
  • 血痰
  • 呼吸困難・息切れ
  • 胸痛
  • 声のかすれ(反回神経麻痺による)
  • 原因不明の体重減少や食欲不振

 
また、リンパ節や他臓器への転移がある場合には、骨痛、頭痛、神経症状などの全身症状が出ることもあります。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>肺がん初期症状とは?見逃しやすい兆候と進行時の変化を徹底解説
>>肺がんステージ4とは?症状・転移先・治療法と向き合い方を解説

肺腺がんのステージ分類

肺腺がんのステージ分類
(参照:https://www.cancer-infonavi.jp/haigan/expert/13/

肺腺がんの治療方針や予後を考えるうえで最も重要な情報の一つが「ステージ(病期)」です。ステージはがんの進行度を示し、腫瘍の大きさや周囲への浸潤、リンパ節転移、遠隔転移の有無によってI期からIV期までに分類されます。以下に各ステージの特徴を簡潔にまとめます。

ステージI(早期がん)

腫瘍が肺のなかに限局しており、リンパ節転移もない状態。
症状が出にくく、健康診断などで偶然見つかることが多い。
外科手術による切除が主な治療で、治癒率も比較的高い。

ステージII

腫瘍が大きくなるか、近くの肺門リンパ節に転移している状態。
咳や軽い呼吸症状が出ることも。
手術が基本だが、再発予防のために術後補助化学療法をおこなうことも多い。

ステージIII

腫瘍が周囲の組織に浸潤したり、縦隔リンパ節などより広い範囲に転移している状態。
呼吸困難、胸痛、声のかすれなどの症状が出てくる。
手術単独では治癒が難しく、放射線治療や化学療法、免疫療法を組み合わせた治療が必要。

ステージIV(進行・転移がん)

がんが肺の反対側や遠隔臓器(脳、骨、肝臓、副腎など)に転移している状態。
全身症状(体重減少、倦怠感など)が出やすい。
手術は適応外で、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いた全身治療が中心。

肺腺がんの検査・診断方法

肺腺がんの検査・診断方法
肺腺がんは早期には症状が出にくいものの、早期治療における生存率は高い治癒率が期待できるため、異変に気が付いたときの正確な検査と診断が非常に重要です。診断には画像診断や内視鏡検査、組織を採取して顕微鏡で調べる病理診断、血液検査などを組み合わせておこないます。それぞれの方法の特徴を以下に解説します。

画像診断

肺の状態を詳細に可視化し、腫瘍の大きさ、形、転移の有無を評価するための基本的な検査です。

レントゲン

胸部X線検査は最も手軽なスクリーニング検査ですが、小さな早期がんを見逃すこともあります。腫瘍が大きくなると影が映り、精密検査のきっかけになることもあります。

CT

コンピュータ断層撮影は、肺の詳細な断面画像をえられ、小さな腫瘍やリンパ節転移も検出可能です。肺腺がんの診断においても広く使われます。

MRI

特に脳への転移評価に有用です。CTよりも軟部組織の描出能が高いため、転移の有無をより詳しく調べられます。肺がんの転移先として脳は見られやすい遠隔転移先です。

PET

がん細胞の代謝活性を利用して、体全体のがんの広がりを評価します。転移や再発の有無、治療効果の判定にも使われます。

骨シンチ

骨への転移を調べるためにおこなわれます。骨にがんが広がると、痛みを生じることもあり、ステージ判定に重要です。

喀痰細胞診・気管支鏡検査

痰に混じるがん細胞を顕微鏡で調べる痰細胞診は、患者さんに負担なくできる検査なので、検診などでもよく用いられます。しかし、肺腺がんにおいては診断精度は決して高くありません。気管支鏡検査は内視鏡を使い、直接腫瘍を観察し組織を採取できるため、確定診断の際には有効ですが、肺腺がんの場合、腫瘍ができた場所によっては気管支鏡では、細胞が確認できない例もあります。

生検・病理診断

がんの最終的な確定診断は、生検で採取した組織を顕微鏡で調べる病理診断によっておこなわれます。がんの組織型(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんなど)を特定し、治療方針決定の参照情報を得るために用いられます。肺腺がんの場合、組織の採取方法は、気管支鏡検査に加え、経皮的針検査、胸腔鏡検査などがあります。

血液検査

がんの診断を補助し、進行度や治療反応の把握に役立ちます。

腫瘍マーカー

血液中の腫瘍マーカー(CEA、CYFRA21-1、SCCなど)は診断の補助や治療経過のモニタリングに使われます。腫瘍マーカー単独での診断はおこないません。

遺伝子変異検査(EGFR、ALKなど)

肺腺がんでは、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子などの遺伝子変異の有無を調べます。遺伝子変異が見つかれば分子標的薬が有効なケースもあり、治療法の選択の一助にできます。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?種類・症状・検査・治療法をわかりやすく解説

肺腺がんの治療方法

肺腺がんの治療方法
肺腺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)、全身状態、遺伝子変異の有無などを総合的に評価して決定します。ここでは一般的な肺腺がんの治療方法を解説します。

外科手術

早期の肺腺がんでは、がんを完全に切除することを目指して手術が第一選択となります。一般的には、がんのある肺葉を切除する「肺葉切除」が標準的です。より小さい病変には「区域切除」や「楔状切除」などの縮小手術が適応になることもあります。最近では胸腔鏡手術など、低侵襲な手術も普及しています。

放射線治療

手術が難しい場合や、高齢や合併症で手術を避けたい患者さんに対しては、放射線治療が選択肢になります。特に「定位放射線治療(SBRT)」は直接的な効果を評価する「局所制御率」が99%以上であるという報告もあります。早期肺がんでも何かしらの理由により手術を受けられない場合や、手術以外の治療をおこないたいという患者さんの意思に注目されている方法です。

化学療法

進行がんや再発がんに対して全身治療として用いられます。シスプラチンやカルボプラチンを中心としたプラチナ製剤併用療法が基本です。手術後の再発リスクが高い場合にも補助化学療法として検討されます。

分子標的薬・免疫療法


肺腺がんは、EGFR変異、ALK融合遺伝子、KRASなど特定の遺伝子異常をともなうことが多く、それぞれに対応した分子標的薬があります。例えばEGFR変異にはオシメルチニブなどのEGFR阻害薬が有効です。

ALK融合遺伝子を持つタイプにはALK阻害薬であるクリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブなどがあり、がん細胞の増殖の抑制に働きかけます。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?種類・症状・検査・治療法をわかりやすく解説

肺腺がんの一般的なステージ別の治療

肺腺がんの治療はステージに応じて異なります。ステージと肺がんのタイプ、個人の体の状況を踏まえて、個別性に応じた治療を選ぶことが一般的です。

  • ステージI〜II:外科手術が基本。手術後に再発リスクが高ければ補助化学療法を追加。
  • ステージIII:手術が可能な場合は化学療法と組み合わせた治療をおこなう。手術困難な場合は化学放射線療法。
  • ステージIV:全身治療が中心。分子標的薬、免疫療法、化学療法を組み合わせ、患者さんごとの遺伝子変異や体調を踏まえて治療を選択するのが一般的。

肺腺がんの転移先

肺腺がんは進行すると血液やリンパの流れに乗ってほかの臓器へ転移しやすい特徴があります。肺がんの場合、脳、骨、肝臓、副腎などへの転移がよくみられます。転移先や数によって治療方針や予後も大きく変わるため、画像検査などで全身状態を確認しながら治療を進めるのが一般的です。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんステージ4とは?症状・転移先・治療法と向き合い方を解説

肺腺がんの予後・生存率

肺腺がんの予後は、発見時のステージによって大きく異なります。早期に発見・治療できれば比較的良好な成績が期待できますが、進行してからの診断では転移や再発のリスクが高くなります。

肺腺がんのステージごとの5年生存率

肺腺がんのステージごとの5年生存率
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph#h-title

肺腺がんの予後は、診断時のステージ(進行度)によって大きく異なります。一つの目安として、国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」の2015年の「非小細胞性肺がん」のデータを参照すると、以下のような5年生存率が示されています。

ステージI:74.8%
早期に発見された場合は手術による根治が可能なケースも多く、比較的良好な予後が期待されます。CT検診の普及や精度の向上などで発見率が上がりつつあります。

ステージII:48.6%
がんが周囲組織やリンパ節へ及んでいる場合もありますが、手術が可能であれば治癒を目指す治療がおこなわれます。術後補助化学療法なども選択肢となります。

ステージIII:28.9%
リンパ節転移が広がっている場合などで、治療は手術単独ではなく化学療法や放射線療法、免疫療法などを組み合わせた治療が必要です。

ステージIV:9.0%
ほかの臓器への遠隔転移がある段階です。根治は難しいとされますが、近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、進行・再発肺がんでも長期生存を目指せるケースが増えています。

治療法の進歩により、個別性に合わせた医療が進み、遺伝子変異の有無などに応じた最適な薬剤を選ぶことで予後の改善が期待されています。また、統計としての5年生存率ではありますが、実際には患者さんの年齢や体力、遺伝子変異、治療内容などによって個人差があるのも実情です。

まとめ

肺腺がんは非喫煙者や女性にも多く、早期には症状が出にくいため発見が遅れやすいがんです。しかし、近年はCT検診の普及や分子標的薬・免疫療法の進歩によって、治療成績は大きく向上してきています。

遺伝子変異の有無などに応じた個別性のある治療も進み、進行がんでも長期生存を目指せる時代になっています。長引く咳や呼吸苦、原因不明の体重減少など、気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることを検討しましょう。

正しい知識を持ち、早期発見・早期治療につなげる意識を持つことも大切です。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

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がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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