2025.04.28
がん肺がんステージ4とは?症状・転移先・治療法と向き合い方を解説

肺がんステージ4は、がんが原発巣である肺の外の臓器にまで転移した状態です。「ステージ4」と聞くと不安が強くなるかもしれませんが、近年は分子標的薬や免疫療法など新しい治療法の進歩により、長期生存を目指す選択肢も広がっています。
この記事では、肺がんステージ4の症状や転移、治療の考え方、QOL(生活の質)を保つポイントまでを解説します。
※肺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>肺がんとは?種類・症状・治療法をわかりやすく解説
目次
肺がんステージ4とは
(参照:https://oncolo.jp/cancer/lung-stage)
肺がんステージ4は、肺がんの進行度を示す病期の分類上では最も進んだ段階を指します。
一般的にがんのステージ分類(TNM分類)はがんの大きさや浸潤、リンパ節転移、遠隔転移の有無によって決まりますが、ステージ4は「遠隔転移」がある状態です。
つまり、肺がんのがん細胞が肺の外の臓器や組織にまで広がった状態を意味します。
肺がんは進行するほど治療が複雑になり、完治を目指す治療から延命や症状緩和を中心とした治療にシフトすることが一般的です。
ステージ分類のなかで最も進んでいる段階と聞くと悲観的になりがちですが、現在の医療だとステージ4でも治療の選択肢は複数あり、新しい薬剤も出てきています。患者さん一人ひとりに合わせた、さまざまな治療を選択できるようになりました。
ステージ4の定義と特徴
(参照:https://www.msdoncology.jp/haigan/category/)
肺がんのステージ4は、TNM分類でみると遠隔転移のある「M1」以上です。肺がんの場合、M1の状態はそのなかでも3分類に分けられています。
M1a:同じ肺内の別の場所や、反対側の肺に転移がある、または胸膜播種や悪性胸水・心膜播種が認められる状態。
M1b:肺以外の単独の臓器(脳、骨、肝臓など)に1か所だけ遠隔転移がある状態。
M1c:1つの臓器内でも複数箇所に遠隔転移が認められる状態や複数の臓器に転移している状態。
基本的にステージ4になると、外科手術での完治は困難です。患者さんの状態や遺伝子変異の有無によっては、分子標的薬や免疫療法などを組み合わせた治療で、がんを長期間コントロールすることを目標に治療を進めるのが一般的です。
肺がんステージ4の症状
肺がんがステージ4まで進行すると、がんが肺の外にまで広がることでさまざまな症状が出現します。症状はがん自体によるものだけでなく、転移した先の臓器の機能低下や、全身状態の悪化が見られることもあります。
進行時に現れる主な症状
肺がんステージ4でみられる代表的な症状には以下のようなものがあります。
- 咳、血痰:気道にがんが広がることで持続的な咳や血の混じった痰が出る。
- 呼吸困難、息切れ:がんが肺全体や胸膜に広がることで肺機能が低下する。
- 胸痛:胸膜や胸壁に浸潤する場合、痛みをともなうことがある。
- 全身倦怠感、食欲不振、体重減少:がんによる代謝亢進や炎症性サイトカインの影響により生じる。
【転移先の臓器により生じる症状】
- 脳転移:頭痛、吐き気、痙攣、意識障害
- 骨転移:骨の痛み、病的骨折
- 肝転移:腹部膨満感、黄疸
- 副腎転移:ホルモン異常による倦怠感など
進行した状態による症状はもちろん、転移先の症状が出るとQOL(生活の質)が大きく損なわれることも少なくありません。
肺がんの主な転移先
肺がんステージ4では、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って各種臓器に広がる「遠隔転移」が起こっている状態です。肺には血管やリンパ節がたくさん集まっているため、肺にできたがんが転移しやすいだけではなく、ほかの場所にできたがんが肺に転移することも多いのです。肺がんにおける代表的な転移先について解説します。
- 脳:転移性脳腫瘍として頭痛、吐き気、意識障害、けいれんなどの症状を引き起こすことがあります。
- 骨:骨痛や病的骨折、脊髄圧迫による神経症状などをきたします。
- 肝臓:多くの場合は無症状ですが、進行すると肝腫大、黄疸、腹水などが現れることもあります。
- 副腎:一般的に症状は出にくいですが、まれにホルモン異常を起こす場合もあります。
- 肺、胸膜:胸膜や原発巣ではない肺にも転移しやすいです。
肺がんステージ4の治療と考え方
肺がんステージ4では全身にがん細胞が広がっているため、局所治療だけでなく全身にアプローチできる治療が中心となります。患者さんの年齢、全身状態、がんの原因となる遺伝子変異の有無、患者さん本人の希望などを総合的に考慮して治療法を選択するのが一般的です。
完治を目指す「根治治療」ではなく、症状を緩和し、生活の質(QOL)を保ちながら、可能であればがんの進行を抑えることを目的とした治療を進めます。
抗がん剤治療
抗がん剤(化学療法)は、がん細胞の増殖を抑える全身に対する治療の基本です。非小細胞肺がんの場合、プラチナ製剤を含んだ2剤併用の抗がん剤療法が一般的です。
抗がん剤は正常細胞にもダメージを与えるため強い副作用が現れます。抗がん剤の効果を高めつつ、副作用をできるだけ抑える方法として複数の抗がん剤を組み合わせて投与する方法を多剤併用療法と呼んでいます。
特に小細胞がんでは抗がん剤が治療の中心です。小細胞がんに関しては、抗がん剤が効きやすいという特徴があることから基本となる治療法として用いられています。小細胞がんの場合、後述する薬物療法と放射線療法の2つの併用した治療で進められることも少なくありません。
生活の質の維持も考慮しながら副作用(吐き気、骨髄抑制、脱毛など)への対策をしつつ、患者さんの体力や合併症を考慮しながら投与量を調整します。
分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬
非小細胞肺がんでは、がん細胞の遺伝子変異に応じた「分子標的薬」が使われます。EGFR、ALK、ROS1、BRAFなどの遺伝子異常を持つ場合、それをピンポイントで狙う薬剤が有効です。
また、がん細胞が免疫から逃れるしくみをブロックする「免疫チェックポイント阻害薬」も広く使われています。免疫の働きにブレーキをかけるPD-1、PD-L1などを標的とし、患者さんの免疫の力でがんを攻撃する治療法です。
放射線治療
肺がんステージ4の放射線治療は骨転移の痛みや脳転移による神経症状、肺内の出血や閉塞などの転移にともなって生じている症状の緩和に用いられています。
肺がんステージ4の場合、骨転移と脳転移に対して放射線治療は効果が期待できます。例えば骨転移の疼痛の7~9割が放射線療法で緩和されることもわかっていますし、骨折を予防するために用いられることもあります。脳転移では症状の緩和や薬物療法後の再発予防として放射線療法が用いられることもあります。
緩和ケア
進行がん治療では、がん自体を制御する治療だけでなく、痛みや呼吸困難、不安などを軽減する「緩和ケア」が重要視されます。ステージ4に進行する前から抗がん剤治療などと並行して、早期から緩和ケアを取り入れることでQOLを保ち、患者さんが自分らしい生活を送れるようなケアや治療を取り入れます。肺がんは進行していくのにともない、さまざまな苦痛が生じることも少なくありません。
咳や呼吸困難などの症状はやはりつらいもので、胸膜にがんが浸潤している場合は痛みが出現することもあります。痛みのコントロールをするのはもちろん、痛み以外の苦しい諸症状のコントロールをおこなうことで心理的に余裕を持った闘病生活を送れるようになるでしょう。
患者さんの苦しむ様子は、本人はもちろん家族にとってもつらいものです。つらいと感じたら、担当の医師や看護師などに遠慮なく相談をするようにしましょう。苦痛なく過ごす方法をチームで検討し、患者さん一人一人に合わせた病状のコントロールをしていくことが大切です。
日常生活や生活の質(QOL)への影響
肺がんステージ4の治療では、単にがんを抑えるだけでなく「生活の質(QOL)」をいかに保つかが大きな課題です。病気の進行や治療の副作用は日常生活にさまざまな影響を及ぼします。
体力・呼吸機能の変化
肺がんが進行すると、肺の機能が低下しやすくなります。息切れ、疲労感、ちょっとした動作での息苦しさなどが生じ、日常動作が制限されることもあります。呼吸リハビリテーションや軽い運動を取り入れることで、筋力や呼吸機能の維持を目指します。医師や理学療法士に相談しながら、自分に合ったペースで体を動かすことも大切です。
痛み・症状コントロール
がんの進行や転移にともなって痛みが出現する場合もあり、その痛みは生活の質(QOL)を大きく損ねる要因となります。適切な鎮痛薬の使用や、場合により医療用のモルヒネ製剤の使用も含めて検討し、痛みをしっかりとコントロールすることも治療の一助となるのです。また、咳、呼吸困難、不安などの症状に対しても対症療法をおこない、快適さを維持する工夫を意識することも大切です。
食事・栄養管理
肺がんの治療中は、食欲低下や味覚異常、吐き気などが起こることもあります。また、がんによる代謝の亢進で体重減少が進む場合もあります。栄養状態を維持することは、体力を保ち、治療を続けるためにも重要です。管理栄養士など専門家のサポートを受け、少量ずつでも栄養価の高い食事を心がけましょう。
心理的ケアと家族のサポート
肺がんステージ4と診断されると、患者さん自身はもちろん、家族も大きな不安を抱えます。気持ちの落ち込み、不安、怒りなど、さまざまな感情が生じるのは自然なことなのです。
心理カウンセリングや緩和ケアチームの支援を受けることも検討しましょう。専門家と話すことで、心の負担を軽くできます。家族も一緒に情報を共有したり、家族自身の心の負担にも目を向けることも大切です。
肺がんステージ4では「余命」という数字にとらわれない
肺がんステージ4は、がんがほかの臓器へ転移している状態を指し、完治が難しいとされます。5年生存率は全体で10%を切るとも報告されていますが、近年では治療法の進歩により生存期間が延びるケースも増えてきています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬剤の登場により、特定の遺伝子変異を持つ患者さんでは長期生存も期待できるでしょう。
重要なのは「余命」という数字だけにとらわれず、今を大切に生きながら、病気と向き合う方法を自分らしく選択することです。穏やかに日々を過ごすことが目標となります。
がんとともに健やかに生きるための治療
肺がんステージ4の治療は、単にがんを小さくすることだけを目的とせず、痛みや呼吸困難、全身の倦怠感などを緩和しながら、患者さんが自分らしく生活を続けられるようにサポートする「治療」が中心です。
抗がん剤や分子標的薬、免疫療法、放射線治療を組み合わせながら、病状や体調に合わせて治療を調整します。また、緩和ケアチームが介入することで、身体の症状だけでなく、心のケアや家族のサポートまでを包括的に受けることを検討したいですね。
フコイダン療法との併用
近年注目されている補完療法のひとつに「フコイダン療法」があります。フコイダンは昆布やモズクなどの海藻に含まれる多糖体で、免疫機能の維持やがん細胞のアポトーシス(自然死)誘導、血管新生抑制などの作用が報告されています。フコイダンの効果の恩恵を享受しやすいといわれているのが、分子量が「中分子」であるフコイダンだといわれています。
肺がんステージ4の患者さんでも、標準治療とフコイダンを併用することで、抗がん剤治療の副作用軽減やQOLの維持につながる方も増えています。フコイダン療法はまだまだ研究段階の自然由来の治療法です。患者さんの希望を尊重しながら、フコイダン療法を専門的に扱う医師と相談のうえで取り入れることが大切です。
※詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>フコイダンを抗がん剤と併用することで期待できる効果とは?
>>臨床例③:ステージⅢCの肺がんの遠隔リンパ節転移(69歳男性)
>>臨床例⑤:ステージⅢBの肺がんの再発と頸部リンパ節転移(72歳女性)
まとめ
肺がんステージ4は遠隔転移をともなう進行がんで、完治を目指すよりも病気と長く付き合いながら生活の質を保つことが大きな目標です。最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、個別化医療による治療法の選択肢も増えています。
大切なのは「余命」という数字にとらわれ過ぎず、自分らしい生き方を選び、医療チームや家族と一緒に納得のいく治療とケアを進めることといえそうです。息苦しさや痛み、不安などを和らげながら、日々を大切に過ごしていきましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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