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白血病の末期症状と治療法は?種類ごとの違いや生存率について解説

白血病の末期症状と治療法は?種類ごとの違いや生存率について解説

白血病は血液や骨髄の造血細胞ががん化する病気です。種類によって進行スピードや治療法、予後が異なります。

なかでも急性白血病は進行が早く早急な治療が必要なのに対し、慢性白血病は長期間にわたり病状が進行します。白血病が末期に進行すると、貧血や感染症、出血、臓器の異常などの症状が現れ、生存率や余命にも影響をおよぼします。

この記事では、白血病の種類ごとの進行の違い、末期症状、生存率・余命、そして治療や緩和ケアについて詳しく解説します。

>>白血病の種類と特徴を徹底解説:タイプ別症状と治療法の違い

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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白血病の末期症状

白血病が進行し末期の状態に入ると、さまざまな症状が現れます。これは、白血病細胞が正常な血液細胞の働きを奪い、体の機能が次第に低下していくためです。

白血病の末期症状は、血液細胞が作られなくなることによる貧血や出血、免疫力の低下による感染症、臓器への浸潤による圧迫感や神経症状など、多岐にわたります。

急性白血病の場合は短期間でこれらの症状が急速に悪化し、慢性白血病では徐々に進行していきます。

感染症の増加

白血球が減少し、免疫力が極端に低下するため、通常であれば問題にならないような細菌やウイルスにも感染しやすくなります。特に、肺炎や敗血症(血液の感染症)などが発生すると、命に関わることもあります。

貧血による極度の疲労や息切れ

白血病が進行すると、赤血球の減少により酸素を運ぶ能力が低下します。その結果、重度の貧血症状が生じ、極度の疲労感、息切れ、めまいなどの症状が現れます。日常生活のちょっとした動作(立ち上がる、歩くなど)で息が切れることも少なくありません。

出血傾向の悪化

白血病が進行すると、赤血球の減少により酸素を運ぶ能力が低下します。その結果、重度の貧血症状が生じ、極度の疲労感、息切れ、めまいなどの症状が現れます。日常生活のちょっとした動作(例えば、立ち上がる、歩く)でも息が切れることもあるようです。

臓器の腫大と圧迫感

白血病細胞が脾臓や肝臓に浸潤すると、これらの臓器が大きく腫れます。お腹にある臓器なのでお腹の張りや圧迫感、食欲低下が生じます。特に、脾臓が大きくなると、左上腹部に痛みや違和感を感じることがあります。

神経症状の悪化

白血病細胞が脳や脊髄に浸潤すると、頭痛、めまい、視力の低下、けいれん、意識障害などの神経症状が現れます。進行すると意識を失ったり、コミュニケーションが取れなくなったりすることもあります。

末期と判断される基準

白血病の末期と判断される厳密な診断基準はありません。しかし、一般的ながんの末期の状態を参考にすることができます。
一般的ながんの末期の状態に加え、白血病の病状を鑑みたときの以下のような状態は、末期の状態の一つととらえることができるでしょう。

  • 標準治療に反応しなくなり、寛解が得られない
  • 白血病細胞が骨髄の造血機能をほぼ完全に破壊し、正常な血液が作られなくなる
  • 重篤な感染症や出血などの合併症が制御できない状態
  • 治療が困難になり、緩和ケア中心の治療に移行する

一般的に末期がんの状態は病気を治すための治療が難しくなり、痛みを取り除いたりする患者さんのQOL(生活の質)を維持することが主な目的となります。

末期の治療の選択肢

白血病の末期段階では、標準的な治療が困難となる場合もあります。患者さんの状態に応じたケアが重要で、治療の目的は延命よりも症状の緩和にシフトし、生活の質(QOL)を維持することが優先されます。

白血病が進行し、積極的な抗がん剤治療が難しくなった場合、患者さんの希望や体力を考慮しながら以下の選択肢が検討されます。
① 低強度の化学療法

強力な治療が難しい場合でも、症状の軽減を目的として少量の抗がん剤を用いた治療がおこなわれることもあります。

② 輸血療法

赤血球や血小板の減少にともなう貧血や出血を防ぐため、輸血がおこなわれることがあります。

③ 分子標的薬

遺伝子異常に応じた治療薬を用いることで、一部の症状を抑えることができる場合もあります。

④緩和ケアの導入

病気の進行により治療が困難な場合、痛みや倦怠感、呼吸困難などの症状を緩和するケアが中心となります。

緩和ケアの重要性

緩和ケアの重要性
白血病末期では、身体的・精神的な苦痛を和らげるために緩和ケアが不可欠です。患者さんだけではなく、家族の意見も上手に取り入れながら、QOLの維持や向上に努めることが重要です。

緩和ケアは、体の苦痛を取り除くだけではなく、精神的なサポートの介入を検討し心穏やかに日々を過ごせるようなケアを提供することも大切です。

【身体的症状の緩和】

  • 痛みの緩和:モルヒネなどの鎮痛薬を使用し、骨痛や神経痛を和らげます。
  • 呼吸困難の緩和:酸素療法や薬剤の使用で、息苦しさを軽減します。
  • 倦怠感や食欲不振の対策:栄養補助やエネルギー摂取を調整し、少しでも体力を維持できるようにします。

【精神的・心理的サポート】

不安や抑うつを軽減するため、心理カウンセリングや家族のサポートが重要となります。
必要に応じて緩和ケア病棟やホスピスへの入院も検討されます。

【終末期の意思決定と家族の役割】

末期白血病の患者には、最期をどのように迎えるかについての意思決定の確認がなされます。延命治療をおこなうかどうかを医師と話し合い、患者の希望を尊重するのが一般的です。患者さんの意識がなくなってしまえば治療方針についての話し合いが難しくなります。末期の状態であると判断した際に、医師のほうから説明が入り、家族とともに話し合いの場がもたれることが一般的です。

白血病の進行速度と末期の生存率について

白血病の進行速度と末期の生存率について
(参照:https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2024_fig_J.pdf|P16
上記の表を参照すると白血病全体の5年相対生存率は44%ですが、白血病の予後と生存率は、白血病の種類や患者の年齢、治療法などによっても大きく異なります。

以下に、主な白血病のタイプごとの予後や生存率のデータをまとめます。

急性白血病の進行速度(AML・ALL)

急性白血病は進行が非常に早く、突然症状が現れるのが特徴です。数週間から数ヵ月の間に白血病細胞が急激に増殖し、正常な血液細胞の働きを妨げます。

週単位での病状の進行が顕著で、治療をしなければ短期間で命に関わる可能性もあります。初期の症状としては、貧血、発熱、感染症、出血しやすくなるといった症状が見られます。

急性骨髄性白血病(AML)の予後と生存率

急性骨髄性白血病(AML)は、年齢や遺伝的要因、治療方法によって生存率が大きく異なります。若年層では化学療法や移植によって良好な予後が期待できる一方、高齢者では治療が難しくなるケースが多くなります。

予後

急性骨髄性白血病(AML)の予後は、年齢や遺伝的異常の有無、治療の適応によって大きく異なります。一般的に、若年層や特定の遺伝子異常を持つAMLは比較的治療の反応性が良く、予後も良好とされています。

生存率

    • 65歳未満の患者: 約80%が完全寛解し、寛解後の治療により40%前後の患者が治癒するとされています。特に、特定の遺伝子異常が確認できるタイプでは、90%以上が完全寛解になり、完全寛解後の大量シタラビン療法などで70%以上の高い治癒率が得られるようになりました。

 

  • 65歳以上の患者:完全寛解率は60%台であり、いったん寛解しても多くは再発し、治癒は期待できないことが多いです。

 

急性リンパ性白血病(ALL)の予後と生存率

急性リンパ性白血病(ALL)は、小児と成人で生存率が大きく異なります。特に小児ALLでは治療成績が向上し、高い治癒率が期待できます

予後

急性リンパ性白血病(ALL)の予後は、患者の年齢や遺伝的要因、治療への反応によって変わります。小児ALLは治療成績が非常に良く、現代の標準治療によって高い治癒率が得られています

一方、成人ALLでは、寛解導入療法に反応しないケースや、再発のリスクが高い患者が一定数存在します。特に、フィラデルフィア染色体(Ph染色体)陽性ALLの患者は予後不良とされていましたが、近年では分子標的薬の導入により改善が期待されています。

生存率

 

    • 小児の場合: 最良の化学療法を受けた場合、95%以上が完全寛解に達し、最終的に80%以上が治癒するとのデータがあります。小児ALLの治療成績は近年さらに向上しており、早期診断と適切な治療によって長期生存の可能性が高くなっています。

 

  • 成人の場合: 約80%の患者が完全寛解に達しますが、化学療法のみでは長期生存率が低く、治癒が期待できるのは寛解後の30%程度です。近年では、成人ALLの約30%を占めるフィラデルフィア染色体陽性のタイプに対しては、分子標的薬(イマチニブやダサチニブ)が著効し、治療成績が向上しています。

 

慢性白血病の進行速度(CML・CLL)

一方で、慢性白血病は進行が比較的ゆっくりで、初期の段階ではほとんど症状が出ないこともあります。慢性骨髄性白血病(CML)の場合、初期には自覚症状がほとんどなく、血液検査で偶然発見されるケースもあります。なかには、時間が経つにつれて白血病細胞が徐々に増えていき、やがて急性転化と呼ばれる急速に進行する段階に至ると、急性白血病と同じような症状が現れます。

慢性骨髄性白血病(CML)の予後と生存率

慢性骨髄性白血病(CML)は、分子標的薬の登場により治療成績が大幅に向上しています。慢性期のうちに適切な治療を受けることで長期生存が期待できる病気となりました。

予後

CMLは、初期の段階で診断され、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を継続的に服用することで、病状の進行を抑えられるケースが多くなっています。治療を続けることで慢性期を維持でき、急性転化(急性白血病への移行)を防ぐことが可能です。

生存率

TKIの使用により、CML患者の5年生存率は約89%と報告されています。特に早期から治療を開始した場合、10年以上の長期生存も十分に可能です。ただし、治療を中断すると再発のリスクがあるため、継続的な服薬が重要になります。

慢性リンパ性白血病(CLL)の予後と生存率

慢性リンパ性白血病(CLL)は進行が非常に緩やかで、長期間無症状のまま経過することが多い病気です。日本では比較的まれな白血病ですが、治療法の進歩により、適切な治療をおこなうことで予後は改善されています

予後

CLLの予後は、病状の進行具合や遺伝子異常の有無によって異なります。初期の段階では治療をせず、経過観察のみで過ごせるケースが多いです。進行しても新たな分子標的薬の登場により治療の選択肢が広がっています。

生存率

日本人における罹患率が少ないためか、国内の生存率のデータは確認できませんでした。しかし、欧米諸国における報告をみるとCLLの生存率は比較的高く、初期段階で症状が軽い場合には10〜20年以上の生存も可能とされています。治療が必要になった場合でも、分子標的薬の進歩により、予後の改善が期待でき、「CLL=予後不良」とは一概にいえません。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。

>>慢性リンパ性白血病(CLL)の症状・検査・治療と予後を徹底解説

まとめ

白血病の生存率や余命は、病型や年齢、治療の有無によって大きく異なります。急性白血病は未治療では数ヵ月以内に急速に進行することが多いですが、一方、慢性白血病は進行が緩やかで、早期発見・治療により長期生存が可能なケースもあります。

末期の段階では、緩和ケアを重視し、患者のQOL(生活の質)を維持することが重要です。現在、分子標的薬や造血幹細胞移植の進歩により、治療の選択肢が広がっており、今後さらなる生存率の向上が期待されています

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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