1. コラムTOP
  2. がん
  3. 白血病の検査方法とは?骨髄検査・血液検査・遺伝子検査まで詳しく解説
がん

白血病の検査方法とは?骨髄検査・血液検査・遺伝子検査まで詳しく解説

白血病の検査方法とは?骨髄検査・血液検査・遺伝子検査まで詳しく解説

白血病の診断には、さまざまな検査が必要です。特に、骨髄の状態を直接調べる骨髄検査や、血液中の細胞の異常を確認する血液検査、遺伝子や染色体の異常を調べる検査は白血病の診断や治療効果を確認するのに重要です。

白血病は進行のスピードや種類によって治療法が異なるため、正確な診断が求められます。そのため、各種検査の結果を総合的に判断し、病型の特定や治療方針を決定するのが一般的です。

本記事では、白血病の検査方法について詳しく解説し、どのような検査がおこなわれるのか、また、それぞれの検査で何がわかるのかを説明していきます。

>>白血病の症状とは?種類・原因・診断・治療法を解説

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

骨髄検査

骨髄検査は末梢血液検査で白血病が疑われた場合の次の検査として必須の検査です。

骨髄の中身は、残念ながらレントゲンや超音波などの画像診断で調べることはできません。骨髄の状態を確認するためには 、骨髄穿刺という方法で骨髄液を採取するのが必須になります。

骨髄穿刺の方法

骨髄穿刺とは、細い針を骨に刺して骨髄の中にある骨髄液を注射器で吸い取り検査をします。

骨盤を構成する骨の一つ、腸骨から骨髄を採取する方法が第1選択で、実際に日本骨髄バンク「骨髄採取マニュアル」(P11)に記載されています。

しかし高齢者の中には、老化により骨髄穿刺をしても脂肪組織しかできない「脂肪髄」となっているケースも見受けられ、そのような場合は胸骨から骨髄液を採取します。

具体的には皮膚と骨の表面の骨膜を麻酔して、穿刺用の針を骨の中に進め、注射器で約0.5〜1mlの骨髄液を直接吸引し採取します。

骨髄穿刺の実施時間

検査は大人の場合、局所麻酔でおこないます。小児の場合は安全のため、全身麻酔を使用することもあります。

骨の中は麻酔が効かない関係上、骨髄を吸引する際に痛みを伴いますが、数秒間程度で終了するため検査の際は患者さんの協力が必要です。

その後、30分ほど安静にして過ごし、止血が確認できると安静解除となります。

骨髄検査で調べること

骨髄検査では、血液細胞の数や形の変化、未熟な細胞の数、染色体異常の有無、細胞の表面の抗原のパターンや特定の遺伝子異常の有無などを検査します。

採取した骨髄液で白血病の診断のために参照となる大きな要素のひとつは、白血球の芽球です。 芽球の性質を調べることで、骨髄性かリンパ性かの判別をつけます。

骨髄検査における白血病の定義

通常白血球の芽球の割合は1~2%です。芽球が20%以上の場合は急性白血病と診断され 20%未満の場合は 骨髄異形成症候群に分類されます。

採取した骨髄液の検査方法

採取した骨髄液は一見血液のように見えますが、これを顕微鏡のスライドガラスのうえに乗せて血液細胞を染色し、顕微鏡で観察します。

採取した骨髄液の一部は、すぐに 顕微鏡検査に回され白血病であるかどうかだけの確認であれば数時間のうちに判明します。

骨髄液はその他にも、フローサイトメトリー検査や染色体検査 、遺伝子検査にも使用されます。これらの結果を総合的に判断し白血病のタイプや病期、治療方針などを含め最終診断をするのが一般的です。

骨髄穿刺と骨髄生検の違い

中には骨髄穿刺をしても、骨髄液が吸引できない症例もあります。その現象を「ドライタップ」と呼んでいます。

ドライタップであると、骨髄を観察して病気の診断をすることができません。

そのために骨髄を調べる次の手段として骨髄生検という検査をおこなうことがあります。

骨髄生検は、骨髄穿刺の針よりもやや太い、生検用の針を腸骨に刺しておこなう検査です。

骨の一部とともに数ミリの骨髄組織を切り取ってきます。

骨髄生検であれば、骨髄液が吸引できなかった場合でも、骨髄の状態を観察して病気の原因を探ることが可能です。

フローサイトメトリー検査

フローサイトメトリー検査は、血液や骨髄中の細胞を詳細に分析する高度な検査方法の一つです。特殊なレーザー装置を用いて、細胞の形状や表面マーカー(抗原)の特徴を識別し、細胞の種類や異常の有無を解析することができます。

この検査は、骨髄穿刺や血液検査で採取した細胞を検体として用いて検査装置に通過させることで迅速に多くの情報を知ることができます。

フローサイトメトリー検査で調べること

フローサイトメトリー検査では、主に以下のような情報を調べます。

①細胞の種類と割合
白血病細胞がどの細胞から発生したものかを特定するために、細胞の種類(リンパ球・骨髄系細胞など)を分類します。また、正常な血液細胞と異常細胞の比率を確認し、白血病細胞の増殖状況を評価します。

②細胞表面マーカー(抗原)の発現
白血病細胞は、正常な血液細胞とは異なる特徴的なタンパク質(抗原)を持っています。詳しくは「表面抗原の検査」の項で解説します。

③異常細胞の検出と微小残存病変(MRD)の確認
フローサイトメトリー検査は、非常に微細な白血病細胞を検出する能力を持っています。治療後に「目に見えないレベルで残存する白血病細胞(MRD: 微小残存病変)」を調べることで、再発リスクの評価や治療方針の決定に役立ちます。

④治療に対する反応の評価
白血病治療の過程で、薬物療法や造血幹細胞移植の効果を確認するために使用されます。治療前後の細胞の変化を比較することで、寛解の程度や追加治療の必要性を判断することが可能です。

染色体検査

染色体検査
染色体検査や遺伝子診断は骨髄検査と同時におこなわれます。

検体の中からフィラデルフィア染色体というものが発見されれば、慢性骨髄性白血病の診断がつけられます。

フィラデルフィア染色体の検査で、細胞分裂を必要としない方法であれば「FISH法」を用いて末梢血での検査も可能です。

末梢血で検査する場合、軽い白血球の増加の状態で慢性骨髄性白血病の可能性がそれほど高くなく、念のために除外しておきたいという目的でおこないます。

FISH法は骨髄検査をするほどではない場合に、手軽に実施できる検査です。

染色体検査で調べること

染色体検査で調べること
(参照:https://www.jalsg.jp/leukemia/cause.html

染色体検査では、特定の染色体や染色体異常を調べます。

慢性骨髄性白血病の約95%にフィラデルフィア染色体と異常な融合遺伝子が認められます。

慢性リンパ性白血病では染色体の一部の欠損やいくつかの染色体異常、特に6番か11、12、13、17番 などの異常が見られることがあります。

また、急性白血病を細かく分類するときにも染色体異常の調査が重要です。

急性骨髄性白血病では、8番目の染色体と21番目の染色体が途中で切断されて、相手方の染色体と互いに結合する異常や16番の染色体異常などが見られることもあります。

>>慢性リンパ性白血病(CLL)の症状・検査・治療と予後を徹底解説

遺伝子検査

白血病ではさまざまな遺伝子の異常が認められます。その中には、白血病の種類を決める際の重要な手がかりとなるものの 治療に対する効果や再発の危険性と密接に関係している遺伝子もあります。

遺伝子検査は骨髄液や末梢血を用いて調査します。

遺伝子検査で調べること

遺伝子検査では、慢性骨髄性白血病で見られる「BCR-ABL融合遺伝子」などの有無を調べます。

異常な遺伝子から異常のタンパク質が生産され 白血病細胞を発生・増殖させる要因となることがわかっています。

慢性白血病の所見があり、この融合遺伝子が確認されれば慢性骨髄性白血病との診断が確定します。

細胞表面抗原の検査

骨髄液を採取した際には、表面抗原と呼ばれる細胞表面のタンパク質の種類についても調べます。白血病の骨髄性かリンパ性かの区別をつけるために、表面抗原のパターンも重要な判断材料です。

表面抗原検査で調べること

表面抗原検査では、採取した検体の中の白血病細胞の表面を検査します。

例えば、慢性リンパ性白血病では白血病細胞表面に見られるタンパク質表面抗原CD5、CD23が陽性になります。

また、このほかにもCDマーカー(例:CD19、CD20、CD34など)の発現パターンを調べることで、急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)などの病型の分類が可能になります。

血液検査

白血病の検査のうちの1つ、ここで言う血液検査は末梢血液検査のことを指しています。

医師の診察で白血病が疑われたら、最初に採血をして末梢血液検査をおこないます。

末梢血液の中に異常細胞(芽球=白血病細胞)の有無を確認します。この血液検査で異常があれば、さらに骨髄検査へと進むのが一般的です。

かっこ骨髄線維症をおこない白血病細胞を確認します。 白血球 赤血球 血小板の数と形の異常を知ることができます。

末梢血液検査で調べること

末梢血液検査で調べる一般的なことは、白血病、赤血球、血小板の数や形の異常、成熟具合を調べます。

血液中の白血球数の正常値は、血液1μlあたり4000〜8000個程度です。

赤血球の正常値は、一般的に直径約8μmほどの小さな細胞で、白血球の半分程度の大きさです。

赤血球はその中にヘモグロビンと呼ばれる酸素と結合する赤い色素を含んでいます。ヘモグロビン濃度は男性15g/dl、女性は 13g/dl程度が一般的な平均値です。

血小板は直径2μm程度の小さな細胞で、赤血球よりさらに小さいです。血液1μlあたり10万〜40万個程度が正常値です。

急性白血病の場合の異常

急性白血病の場合、発症すると白血球の数は数万と増加しますが、逆に正常な数よりも低下することもあります。

特に急性前骨髄球性白血病と言われる特徴のある白血病では、白血球が減少した状態で発見されることもあります。

白血病では白血球の形にも異常が生じます。通常全身を循環する白血球は細菌と戦う準備のできた成熟した細胞で作られていますが、白血病では芽球と呼ばれる、未成熟で細菌と戦う力のない白血球が増えていきます。

顕微鏡検査でこの芽球を見つけると、白血球を白血病と疑うことができます。

赤血球の異常は白血病が発症すると、ほとんどの場合赤血球やヘモグロビン濃度も低下し貧血が起こりやすくなります。

血小板の異常は多くの場合、10万個以下に低下し、ときには1万個程度まで低下することもあります。

慢性白血病の場合の異常

一方で慢性白血病の場合、白血球が増加し貧血が進み、血小板は増加する状態が見られます。

白血球の検査では未熟な白血球から成熟した白血球までさまざまな分化段階のものが確認できます。

また、血液検査の検査項目の一つ、生化学検査では白血球の増加を反映してLDHや尿酸値の上昇なども見られます。

さらに慢性リンパ性白血病の場合は、リンパ球の増加も確認できることもあります。

髄液検査

ここで言う髄液検査とは、骨髄液のことではなく脳脊髄液検査のことを指しています。 腰に針を刺して脳脊髄液を採取し白血病細胞が脳神経組織に浸潤していないかどうかを調べるための検査です。

急性リンパ性白血病は脳神経系に浸潤しやすいという特徴があります。

必須の検査ではありませんが、医師の判断により実施します。

超音波(エコー)検査・CT検査などの画像診断

画像診断で白血病の確定診断はできませんが、CT検査や超音波検査などの画像検査でリンパ節の腫れや肝臓や脾臓の腫れ 、合併症の有無その他の臓器の異常などを調べる補足的な検査として用いられます。

慢性白血病と診断がついた場合、脾臓や肝臓、リンパ節の腫れがしばしば見られるため、腫れの有無や大きさなどを調べるためにおこなわれます。

また、治療中も治療の効果を確認するためにおこなわれることもあります。

医師の診察を受ける前に整理しておきたい情報

医師の診察を受ける前に整理しておきたい情報

医師は白血病と疑いを持つ際に、病歴や患者さんの自覚症状などを参考にして判断します。

一般的な見た目としての診察は、顔色や歯茎、鼻、歯肉からの出血、リンパ節や腹部などの腫れをチェックします。

もし自覚症状として、これらの状態やいつもと違った状態があれば、いつ頃からどのような状態に変化していったかなどを整理しておくと良いでしょう。

診察の際に医師に共有することで、診察の一助とすることも可能です。

白血病治療に関する費用について

白血病の治療では、治療費が高額になることも少なくありません。

血液のがんと診断された場合、医療機関との付き合いは年単位になるのが一般的です。また、患者さんの白血病のタイプや症状、医療機関により保険診療だとしてもかかる医療費には差がある実情もあるため、「白血病になったからこのくらいお金がかかる」と、一概にはいえません。

しかし近年では、高額の医療費がかかったとしても「高額療養費制度」を用いることによって、医療費の自己負担を軽くすることが可能です。

高額療養費制度は、同じ月に支払う保険診療の自己負担額の条件が定められています。

医療費の支払い方法や、マイナンバーカードの使用の有無により制度の活用方法は異なりますが、1ヵ月にかかる医療費の最大値の予測をつけることはできるでしょう。

まとめ

白血病の診断には、骨髄検査や血液検査、遺伝子・染色体検査などの複数の検査が組み合わされます。これらの検査を通じて、白血病の種類や進行度を正確に把握し、適切な治療方針を決定します。
特に、フローサイトメトリー検査や遺伝子検査は、より詳細な情報をえるために欠かせない検査です。
白血病の検査は、早期発見・早期治療において非常に重要です。
万が一、健康診断などで異常を指摘された場合は、速やかに医師の診察を受け、必要な検査を進めることを検討しましょう。
検査についての理解を深めることで、安心して適切な診断・治療を受けられるようにしたいですね。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

1

この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

がんの種類を知る

おすすめの関連記事

スマホ用のフローティングバナー