2023.09.01
老化の仕組みミトコンドリアこそがアンチエイジングの主役
【日置クリニック コラム編集部】
日置院長は、「ミトコンドリアこそが生命の進化の中心であり、アンチエイジングの主役である」と言います。
そもそも、ミトコンドリアとは何者なのでしょうか?
ここでは、日置院長の著書「アンチエイジングの仕組み」から一部を抜粋して、ミトコンドリアの仕組みや働きについて紹介します。
目次
体重の10%を占める”ミトコンドリア”
私たちの体を作っている最小単位の細胞の中には、核やゴルジ体、小胞体などのほかに、ミトコンドリアという小器官があります。一つの細胞の中には約100~3000個程度のミトコンドリアがあるといわれています。
私たちの体は約60兆個の細胞でできているので、私たちの体の中には、軽く見積もっても、兆の上の単位である京の数ほど存在することになります。
ミトコンドリアの総量は体重の10%を占めるともいわれているのです。
ミトコンドリアの役割は生命活動のためのエネルギー生産
その最も大きな役割は、生命活動を行うためのエネルギーを生産することです。個々の細胞ごとにエネルギーを生産し、生産した細胞で消費する地産地消のシステムです。
エネルギーは蓄えることができないため、生産したエネルギーはすべて使い切らなければなりません。そのエネルギーを使って、それぞれの細胞の役割を果たすべく仕事をし、余ったエネルギーは熱に変換され、体温を形成するのに費やされます。
エネルギーが枯渇してしまうと細胞は死滅してしまうわけですから、エネルギーは作り続けなければなりません。
たくさんのミトコンドリアが働いて、エネルギーが途絶えることのないようにしているのです。
エネルギーを作る2つのシステム「解糖系」と「呼吸系」
細胞の中のミトコンドリアがエネルギーを生産するとお話ししましたが、実は、ヒトにはエネルギーを作るシステムが二つあります。細胞質で行う解糖系とミトコンドリアで行う呼吸系です。この二つは完全に独立しているわけでなく、解糖系の延長線上に呼吸系があります。
解糖系は酸素を使わない状態で行われ、非常に速くエネルギーを作ることができますが、小さなエネルギーしか作ることができません。
これに対し、呼吸系は解糖系に比べて約100倍の時間がかかりますが、非常に大きなエネルギーを作ることができます。
ブドウ糖からエネルギーが作られる仕組み
それでは、ブドウ糖(グルコース)から、どのようにエネルギーが作られるのかを見ていきましょう。上図をご覧いただくとわかりやすいと思います。
ブドウ糖が細胞質の中に入ると、ブドウ糖を分解する過程でエネルギーを作る解糖系が働きます。1つのブドウ糖は解糖によって2つのピルビン酸に分解され、その間に2つのATP(※1)というエネルギーが作られます。
ピルビン酸は酸素がない場合は乳酸になり、酸素が豊富にある場合はミトコンドリアへと進みます。そして、ミトコンドリアでは、ピルビン酸と酸素から36個のATPと炭酸ガスと水が作られます。
※1 ATP(アデノシン三リン酸)…すべての植物、動物および微生物の細胞内に存在するエネルギー分子。
エネルギーを生み出すには酸素が必須
これをさらに簡略化して、上図のように表現してみました。解糖系から、この図の右側のミトコンドリアへ進めば、2ATPプラス36ATPで合計38ATPが作られますが、進まなければ2ATPのままです。
つまり、ミトコンドリアへ進めば解糖に比べ19倍もの大きなエネルギーを獲得することができるというわけです。
酸素がなければ生きていけない理由はミトコンドリアにあり
このように、私たちの体は解糖系と呼吸系という二つの異なった方法でエネルギーを獲得しています。そして実は、各々の細胞ごとに二つのシステムを自由自在に組み合わせて最適なエネルギーシステムを構築しているのです。
たとえば、心臓を動かす心筋細胞で、乳酸のたまる解糖系の比率が多ければ、細胞が酸性に傾いてしまいます。細胞の酸化は細胞死につながりますから、いつ心臓が止まってしまうかもしれない。そうならないように、ミトコンドリアの呼吸系が主体となってエネルギーを生産しているのです。
逆に、腕の筋肉細胞では瞬発力が必要なため、素早くエネルギーが作れる解糖系が発達していると考えられます。
また、簡単にエネルギーが途切れてしまわないように、二つのエネルギー生産システムが作られたともいえるでしょう。なにしろエネルギーが途絶えてしまうと、私たちの細胞は即、死を意味するからです。
しかし、私たちは酸素がなければ生きていけないことから、ほとんどのエネルギーはミトコンドリアで作られていると言っていいでしょう。
まとめ
ここまでで、ミトコンドリアの重要性についてお分かりいただいたかと思います。
本書では、ミトコンドリアの仕組みや働きをもとに日置院長が提唱する「エイジングスパイラル理論」が紹介されています。
「エイジングスパイラル理論」による老化の仕組み
まず、現在ミトコンドリア老化説のなかで最も一般的な「老化ミトコンドリア原因説」では、活性酸素がミトコンドリアのDNAを傷つけ、それが蓄積することでミトコンドリアの機能が低下し、様々な疾患や老化を引き起こすとされています。
日置院長が提唱する「エイジングスパイラル理論」は、そこに新たな視点が加わります。
ミトコンドリアの減少がエネルギー不足を引き起こし、さらなるミトコンドリアの減少に繋がっていく。この負のスパイラルは、血液の循環不全などによる低酸素や糖質の過剰摂取、栄養不足などによって加速するとされます。
本書では、負のスパイラルが形成される仕組みが、日置院長独自の考え方として斬新かつ説得力をもって述べられています。
また、「エイジングスパイラル理論」に基づきながら、日常に取り入れられる食事法や運動法についても紹介しているので、本書を手に取っていただいたタイミングからすぐに実践していただけます。
ご関心ありましたら、ぜひとも本書をご覧いただけますと幸いです。
書籍情報
タイトル:アンチエイジングの仕組み
発売:2023/4/25
定価:1,540円(本体1,400円+税)
ページ数:256ページ
購入ページ:https://amzn.to/3ow6pI5
がんの種類を知る
おすすめの関連記事
-
-
2023.04.25
老化の仕組み