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すい臓と食事の関係|すい臓がん予防・治療中に意識すべき食生活とは?

すい臓と食事の関係|すい臓がん予防・治療中に意識すべき食生活とは?

すい臓は、消化と血糖コントロールという生命活動に欠かせない2つの役割を担う重要な臓器です。
しかし近年、日本でもすい臓がんの罹患率が上昇しており、その背景には「食生活の欧米化」や「脂質の過剰摂取」といった食事習慣の変化があるとされています。
すい臓がんは、初期症状に乏しく気付きにくいため、日頃からすい臓に優しい食事を心がけることが予防の一助につながります。また、すい臓がんの治療中の栄養管理も体力の維持・回復に直結する重要な要素です。
この記事では、すい臓の機能と食事との深い関係性を明らかにしながら、避けたい食品・おすすめの栄養素・治療中の食事の工夫まで、実践的な情報を解説します。
※大腸がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>大腸がんとは?その症状について

日置医院長

この記事の執筆者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

すい臓と食事の関係

すい臓と食事の関係
(参照:増加する膵がん-危険因子を意識してください-|京都済生会病院、https://www.kyoto.saiseikai.or.jp/pickup/2020/05/post.html

近年、日本においてもすい臓がんの罹患率は増加傾向にあります。その要因の一つとして挙げられるのが、食生活の欧米化による野菜不足や高脂質食、肉類の過剰摂取などの生活習慣の変化です。

すい臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、異常があったとしても初期にはほとんど症状が現れません。がんがある程度進行して、「お腹や背中の痛み」「食欲の低下」「体重の減少」「黄疸」などの症状が出始め、そこで初めて異変に気付くケースもあります。

すい臓は食べ物の消化吸収に密接に関わっているため、食生活とすい臓がんの発症には深い関連があるといえるでしょう。すい臓がんの予防や治療中の食事内容を見直すことは、すい臓を労わることを考えたときにとても重要なのです。

すい臓の2つの機能は食事と密接につながっている

すい臓の2つの機能は食事と密接につながっている
(参照:大地、https://www.daichi-hmc.com/vo38/watahiki/

すい臓は、私たちの健康維持に欠かせない2つの重要な働きを担う臓器です。すい臓の主な働きは消化酵素を分泌する「外分泌機能」と血糖値を調整するホルモンを分泌する「内分泌機能」があります。

①外分泌機能:消化液「すい液」の分泌

1つ目は「外分泌機能」です。すい臓から分泌されるすい液は、食べ物の消化に欠かせない消化酵素を含んでおり、十二指腸へ送り込まれます。

このすい液には、三大栄養素である糖質・脂質・タンパク質を分解する消化酵素がすべて含まれています。

すい液の代表的な酵素は以下です。

  • アミラーゼ:糖質を分解
  • リパーゼ、フォスフォリパーゼA2:脂質を分解
  • トリプシン、エラスターゼ:タンパク質を分解

 

これらの消化酵素は、食べた物を体内でしっかり吸収するために必要不可欠です。つまり、食事内容によりすい臓の負担に直結することになります。

②内分泌機能:血糖値を調節するホルモンの分泌

もう1つの働きが「内分泌機能」です。すい臓内にある「ランゲルハンス島」と呼ばれる小さな細胞の集まりから、以下のようなホルモンが分泌されます。

  • インスリン(β細胞から):血糖値が上がると分泌され、筋肉や肝臓にブドウ糖を取り込ませて血糖値を下げる
  • グルカゴン(α細胞から):血糖値が下がると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に分解して血中に送り出す
  • ソマトスタチン(δ細胞から):インスリンやグルカゴンの分泌を抑える役割

 

このように、すい臓は「消化の要」であると同時に、「血糖の調整役」という2つの機能を持っていて、食事と全身の代謝バランスに深く関わっている重要な臓器です。がんなどでこの働きが損なわれると、糖尿病・栄養不良・消化不良といった多様な消化機能の低下にともなう症状が現れやすくなります。

すい臓への負担を考えたときに避けたい食品

すい臓への負担を考えたときに避けたい食品
すい臓がんのリスクを軽減するためには、負担軽減につながる食生活の見直しが非常に重要です。

すい臓は消化酵素の分泌を担う臓器であるため、日常的に摂取する食品がすい臓への負担に関わってくるといえるでしょう。

ここでは、すい臓の健康を守るために注意したい食品を紹介します。

アルコール

アルコールはすい臓に対する刺激が強く、急性すい炎・慢性すい炎の原因のひとつです。すい炎を繰り返すことが、結果としてすい臓がんのリスクを高める可能性もあります。

また、飲酒によってすい液の分泌が過剰になり、すい管がつまるなどの異常が起こると、すい臓の自己消化が進み、慢性的な炎症を引き起こすこともあります。

がんの予防や再発防止を考えるうえでは、飲酒量を控える、または禁酒することが望ましいといえるでしょう。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>すい臓がんのリスクと原因とは?家族歴・糖尿病・生活習慣病などから見る発症のメカニズムや初期症状について

高脂肪食

すい臓がんの治療中は、脂質の多い食事がすい液の分泌を促進し、すい臓への負担を増加させやすくなります。動物性脂肪を多く含むバターやラード、脂身の多い肉、揚げ物、ファストフード、クリーム系料理などはできるだけ避けるのが望ましいとされています。

また、消化に必要な酵素が十分に分泌されない状態では、脂質の消化・吸収がうまくできず、消化不良や脂肪便、栄養吸収の阻害といった二次的な問題を引き起こす可能性もあります。

脂質の摂取量が多くなると、小腸から分泌されるコレシストキニンや十二指腸から分泌されるセクレチンといったホルモンも過剰に刺激されることもあり、すい液や胃酸の分泌過多につながるリスクもあるのです。

発がんリスクの高い食品(加工肉・赤肉)

発がんリスクの高い食品(加工肉・赤肉)
(参照:国際がん研究機関(IARC)が“おそらく発がん性がある”グループ2Aに分類しています。やはり安全とは言えないのではないですか? | AGRI FACT 農と食の科学的情報サイト、https://agrifact.jp/iarc-group2a/

ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉や、牛肉・豚肉といった赤肉の多量摂取は、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性があると分類されています。

これらの食品に含まれる発色剤や保存料、また高温調理で発生する化学物質が、すい臓がんを含む消化器系がんのリスクを高めると報告されています。

赤肉や加工肉を完全に避けるのは難しいかもしれませんが、摂取頻度や量を意識して減らす工夫は大切です。

その他(甘いもの・高カフェイン)

砂糖を多く含むスイーツや清涼飲料水、また過剰なコーヒー摂取にも注意が必要です。血糖値の急激な上昇を繰り返す生活習慣は、すい臓の内分泌機能に負担をかけ、糖尿病やすい疾患のリスク要因となります。

なかでもカフェインの過剰摂取については注意が必要です。コーヒーの摂取に関しては研究報告が分かれており、

1日3杯程度の摂取ですい臓がんのリスクが低下する可能性があるという研究もある一方で、

1日4杯以上の過剰摂取ですい臓がんの死亡リスクが上昇するという報告もあります。

現時点では明確なエビデンスは確立されておらず、過剰摂取による有害事象のリスクは否定できません。カフェインを含む飲料の摂取量は1日2~3杯程度に抑え、甘い飲み物はできるだけ控えることも意識したいところです。

すい臓がんの予防や治療をサポートする食品

すい臓がんの予防や、治療中の体力維持・回復を助けるうえで、積極的に取り入れたい食品もあります。以下の栄養素を意識的に摂ることが、すい臓への負担を軽減し、全身の健康維持にも役立ちます。

  • 果物・野菜:ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、抗酸化作用が期待できます。
  • 全粒穀物:白米や白パンよりも、食物繊維が多く血糖値の上昇が緩やかです。すい臓の負担を減らす助けになります。
  • オメガ3脂肪酸:青魚や亜麻仁油、えごま油に含まれ、抗炎症作用があるとされる脂質です。

 

すい臓がんの予防・再発防止の観点からは、「食べないこと」よりも「どう食べるか・何を選ぶか」が重要です。偏りのないバランスの取れた食生活を心がけることを意識しましょう。

フコイダンの対がん作用とフコイダン療法への期待

フコイダンは、昆布やモズクなどの海藻に含まれる多糖類で、免疫活性化作用やアポトーシス(がん細胞の自然死)誘導作用が報告されています。すい臓がんに対しても、抗腫瘍効果や転移抑制の可能性が期待されているので、補完療法としてフコイダンを取り入れる患者さんも増えています。
モズクやメカブなどの海藻類の食事から摂取するだけでなく、より効率のよいフコイダンの吸収や治療レベルの効果を期待したい患者さんは、サプリメントなどで活用しているケースもあります。
これらは、治療中の生活の質(QOL)向上につながる可能性もあります。サプリメントなどの活用を試みる場合、医師と相談のうえ適切に活用することを検討しましょう。

すい臓がんの治療中の食事

すい臓がんの治療中の食事
すい臓がんの治療中は、薬物療法や手術の影響で消化機能が低下することもあり、食事からの栄養摂取が体調維持のポイントとなります。

すい臓は消化酵素を分泌する臓器であるため、食べるものやその調理方法が直接的にすい臓の負担に影響します。ここでは、すい臓がん治療中に心がけたい食事の基本的な考え方と栄養素別の注意点をご紹介します。

脂肪の取り方について

脂質はビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割もあります。すい臓のためとはいえ、完全に排除すべきではありません。体力や体重の維持が求められる治療中においては、質のよい脂質を適量摂ることを意識しましょう。

健康的な脂質源とされているのは、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸で、抗炎症作用を持つとされています。すい臓に負担をかけにくい脂質ともいえるでしょう。例えば、オリーブオイルやアボカド、ナッツ・種子類、サーモンやイワシなどの脂ののった青魚が代表的な食材です。

調理法としては「茹でる」「蒸す」「煮る」など脂を使わない方法が理想的です。調理法の工夫で消化にやさしく、必要で良質な脂質を摂取する意識を持ちましょう。

タンパク質の必要性

すい臓がん治療中は、体力の消耗や筋肉量の減少が起こりやすいため、良質なタンパク質を適度に摂取することも重要です。消化に負担の少ない形で、無理のない範囲で摂取することを心がけましょう。

おすすめは、白身魚・鶏むね肉・豆腐・卵・乳製品(低脂肪)など。これらは比較的消化がよく、脂質も少ないためすい臓への刺激が少ない食品です。

一方で、脂の多い赤身肉や加工肉(ハム、ソーセージなど)は消化に時間がかかり、すい臓への負担も大きいため、できるだけ控えましょう。

ビタミンの必要性

すい液の分泌が低下すると、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収が悪くなることがあります。脂溶性ビタミンは脂質と一緒に吸収されるため、脂肪制限をしている場合は不足しやすくなります。

そのため、少量でも良質な脂質(オリーブオイル、青魚の脂など)と一緒に摂取し、必要に応じて医師の指導のもとサプリメントの利用を検討することもあります。

また、ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性ビタミンは、野菜・果物・全粒穀物・豆類からバランスよく摂ることが大切です。加熱によって損なわれやすいビタミンCは、生野菜や果物、または短時間加熱の調理法を活用するとよいでしょう。

食事に関する考え方は「消化によい低脂肪食で効率のよい栄養補給」

すい臓は、消化酵素を分泌することで食事の消化を助ける重要な臓器です。しかし、すい臓がんを初めとしたすい臓の疾患では、この消化機能が大きく損なわれることがあります。

すい臓に負担をかけず、栄養をしっかりと補給するためには、「消化によい低脂肪食」を意識することが大切です。

規則正しい食習慣もすい臓ケアに重要

食事の時間帯や回数もすい臓の健康に影響します。1日3食を規則正しく摂ることは、すい臓の消化リズムを整え、無理のない酵素分泌を促すうえで非常に大切です。食事を抜いてしまうと、次の食事で過剰に食べてしまう可能性があり、その結果、すい液の分泌が一気に高まり、すい臓に大きな負担がかかる可能性があります。

まとめ

すい臓は、食べ物を消化し、血糖を調整するという2つの機能を支える臓器です。すい臓がんの予防や治療においては、「すい臓に負担をかけない食生活」を送ることが非常に重要です。
脂肪の摂りすぎ・アルコール・加工肉の多用などはすい臓の健康を損なうリスクがあり、反対に、野菜・果物・良質なタンパク質・オメガ3脂肪酸を意識的に取り入れることで、すい臓の機能を支える食事につなげられます。
さらに、治療中は「消化によく、栄養をしっかりとれる工夫」も必要です。食事内容に加えて、食べ方や時間の過ごし方にも配慮することが、治療効果や生活の質(QOL)を高めるポイントとなるでしょう。
毎日の食事こそが、すい臓の健康を守る第一歩です。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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