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がん治療で起こる味覚障害とは?原因や症状、治療法やセルフケア対策を解説

がん治療の一環で起こり得る「味覚障害」。がん治療中の患者さんにとって、食事や栄養摂取に影響を与え、生活の質を低下させる一因です。そのため、症状を感じたらできるだけ早期に原因を見出し対策をすることが重要です。この記事ではがん治療に伴い起こる「味覚障害」ついて、原因や症状、医学的治療法やセルフケア対策までを解説しています。

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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がん治療における味覚障害とは

がん治療において、がん細胞を破壊するために抗がん剤や放射線療法などを用います。その治療の過程で正常細胞も破壊されてしまうことが原因で味覚障害が起こります。主な症状としては食べ物の味やにおいが変わってしまったり、口の中の違和感や不快感などです。

味覚障害の原因は?

がん治療による味覚障害の原因は「抗がん剤や頭部や頸部などへの放射線療法治療でがん細胞を攻撃」する際に、口内粘膜や味蕾(みらい)などがダメージを受けることで起こります。味を感じにくくなったり、逆に敏感になってしまうこともあり、個人差があるのも特徴です。 また、口腔粘膜の障害により口の中の違和感や不快感につながるケースも。中にはにおいを感じる細胞が障害を受け、嗅覚異常からの食欲不振につながることもあります。 がん治療によって身体が疲れたり、吐き気や下痢などの副作用が現れた場合、食欲不振になり、栄養バランスが乱れ味覚障害を引き起こすこともあります。 他にも、がんによる身体の免疫力低下や、がん細胞が放出する物質によって、味覚障害が起こるとする研究結果もあります。まだ明確な証拠は得られていませんが原因の解明と対策の一つとして近年注目されています。

がん治療における免疫力の低下と味覚障害

がん治療の一環として起こる味覚障害は、免疫力の低下も影響していると考えられています。 味蕾が障害されるメカニズムと同様に血液の免疫細胞も障害され免疫力が低下するケースも少なくありません。 免疫力が低下すると舌の上に「舌苔(ぜったい)」と言われる汚れが付着し、味を感じる味孔が覆われてしまうのです。結果として味を鈍く感じてしまい味覚障害につながるケースもあります。また口腔内の粘膜だけではなく鼻で臭いを感じる細胞が障害されることで、普段感じる味とは異なる感覚を覚え味覚障害につながるケースもあるようです。

味覚障害の症状

がん治療における味覚障害は、抗がん剤や放射線治療などの影響を受けた正常細胞の破壊により起こります。症状は、以下のようなものがあげられます。

味覚の変化

がん治療による味覚障害の最も一般的な症状は、食べ物の味の変化です。これは味を感じる細胞である「味蕾」が障害を受けることで起こります。症状により食べ物の味が薄くなったり、逆に強く感じたりすることもあります。また、甘味・塩味・苦味など、本来感じる味とは異なる味を感じることもあります。

食べ物の好みの変化

がん治療を受けた結果起こる味覚障害には、好きな食べ物の変化も見られます。以前は好んで食べていたものが急に食べられなくなったり、逆に新しい食べ物に興味を持つこともあります。例えば、普段はあまり好まなかった食べ物が、治療前に比べて食べやすかったりおいしく感じられることもあるためです。逆に好んでいた味が苦手になり食べられなくなるケースもあります。

食べ物のにおいへの敏感度の変化

がん治療を受け正常細胞がダメージを受けた場合、食べ物のにおいに対して過敏になったり、逆ににおいの感じ方が変わったり、鈍くなってしまうこともあります。例えば、普段好きな食べ物が、治療前に比べて臭く感じたり、逆に普段嫌いな食べ物がいいにおいに感じたりすることもあります。

食欲不振

がん治療により起こる味覚障害によって、食べ物がおいしく感じなくなり食欲が減退してしまうこともあります。食欲がわかないので食べること自体が億劫になってしまうケースも。結果として食事の摂取量が低下し、体重が減り栄養不足になることもあります。

口腔内の違和感

がん治療において口腔粘膜に障害を受けると、口の中がゴワゴワしたり、舌がピリピリするなどの異常な感覚が生じることもあります。また、歯や歯茎の痛みや口内炎などが起こり、なかなか治癒せずに苦痛を感じる例もあります。これらの症状は、治療が進むにつれて改善することもありますが、なかなか改善しないケースもあり個人差が大きい症状の1つといえるでしょう。結果として食事を楽しむことが難しい状況になるかもしれません。

味覚障害を軽減するための食事の工夫や対策


がん治療において味覚障害が起こると、食事が苦痛になってしまい、十分な栄養が摂れなくなることもあります。そこで、味覚障害を軽減するための手段の一つとして、以下のような食事の工夫や対策を検討しましょう。

食べ物の温度を調整する

温かい食べ物は味を感じやすく、冷たい食べ物は味が薄く感じられます。味覚障害のある人は、食べ物の温度を調整することでおいしく食べられるケースもあります。例えば、スープやシチューは熱々で食べると味が濃く感じられますし、薄味にしたい場合には冷ましてから食べるとよいでしょう。 また、口腔内の違和感を感じている場合も温度調整によって和らぐことがあります。冷たいと刺激が強く感じるので、自分にとっての適温を維持することで食べやすくなることもあります。適温を見つけることで食事量UPにつなげられる事例もあるのです。

香辛料や調味料を使う

味覚障害のある人は味を薄く感じる傾向にあるため、香辛料や調味料を使い味を補うことも簡単にできる対策の1つです。例えば、にんにく、生姜、唐辛子、醤油、味噌、酢などで様々な味を引き出し好みの味付けを追加してみましょう。この時、食材に直接かけるのではなく、別皿に出しておいてつけながら食事を進めることで一口一口好みの濃さで食事を進められます。

柔らかい食材を選ぶ

味覚障害のある人は、食べ物の食感も感じにくくなることがあります。食感がわからないと適切な咀嚼もわかりにくく、消化不良からの食欲不振につながってしまう可能性もあるのです。そこで、柔らかい食材を選び噛む回数や力を減らし、口内の負担を軽減を試みましょう。例えば、豆腐、魚、卵料理、とろとろのおかゆやスープなどは食べやすく飲み込みやすい食材のひとつです。

酸味や甘味を活用する

味覚障害のある場合、辛味や苦味は感じにくくなり酸味や甘味を感じやすい傾向にあります。例えば、レモンやライム、グレープフルーツなどの柑橘類や、りんごやブドウなどのフルーツ、野菜のトマトやかぼちゃ、紅茶やハチミツなどで味覚を刺激できます。毎食の食事に添えるなどして、食事を楽しむための対策の一つとして取り入れてみましょう。

食事を細かく分けて食べる

がん治療中の患者さんは食欲が減退し、吐き気など生じることがあります。そのため、大量の食事を一度に食べることが難しい場合もあります。そこで、食事を小分けにして、こまめに摂取することが有効です。 例えば、1日3食を大量に食べるのではなく、1日6食程度に分けて、少量ずつ食べるように心がけます。
また、食事の時間帯を変える方法もあります。朝食を食べるのがつらい場合は、昼や夜に軽食を食べるといった調整も有効です。1日の摂取量として捉えることで食事量を減らさずに栄養をしっかりと摂取することができます。
さらに、食事をゆっくりと時間をかけて食べることも重要です。ゆっくり噛むことで唾液の分泌が増え、食べ物をよく咀嚼できます。これにより、消化吸収が促進され、胃腸の負担が軽減されます。また、ゆっくりと時間をかけて食べることで、味覚をより感じることができ、食事の満足感も高まります。

がん治療中の味覚障害に対する医療的なアプローチとセルフケア

がん治療中の味覚障害には、医療的なアプローチとセルフケアがあります。 それぞれ解説します。

がん治療中の味覚障害に対する医療的なアプローチ

味覚障害が起きた場合、食事や味覚に影響を与えないように調理された特殊な食品や栄養ドリンク、栄養剤などが処方されることもあります。がん治療中の味覚障害にアプローチできる医療的な対策を以下にまとめました。

抗悪性腫瘍剤(化学療法)の変更

味覚障害の原因となる化学物質が含まれる薬剤を変更することで、味覚障害を緩和することができます。ただし、副作用の程度や治療の効果を考慮して、薬剤の変更は医師によって判断されます。治療効果と味覚障害の状況により慎重に判断されるでしょう。

亜鉛の投与

亜鉛は味覚に関与する物質であり、味覚障害の改善が期待できるとされています。がん治療中には、体内の亜鉛が不足しがちであるため、血液検査の状況を加味しながら亜鉛の投与が検討されるでしょう。ただし、過剰摂取は体に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な量の投与を慎重に判断します。

経口栄養補助食品の使用

がん治療中には、食欲不振や吐き気、口内炎などの症状が現れることがあります。これらの症状がある場合には、栄養補助食品を使用することで、栄養バランスを保ちながら、味覚障害の軽減が期待できます

味覚訓練

症状により味覚訓練を行うことで、味覚の改善が期待できます。味覚訓練は、塩味、酸味、甘味、苦味、旨味などの基本的な味を判別するトレーニングから始まり、徐々に食べ物の種類を増やしていきます。 上記の医療的なアプローチは、症状の程度や患者の状態によって選択され、適切な治療が行われます。また、これらの治療は、患者自身の努力と協力が必要であるため、セルフケアも大切です。

がん治療中の味覚障害に対するセルフケア対策

一方セルフケアにおいては、食事や生活習慣の改善による味覚障害の軽減を試みます。具体的には食事中の刺激物の摂取を控えたり、逆に味が感じられない場合には追加することも。また味覚に悪影響のあるアルコールやタバコの摂取を控えたり、十分な睡眠や運動をすることで免疫力を高めることも大切です。

食事の工夫

前述したように、食事の工夫は味覚障害の軽減につながります。食べることが苦痛であれば、栄養補助食品を利用することも検討しましょう。また、食事の前に口をすすぐことで食べ物の味が変わりにくくなる手助けにもなります。

においに注意する

食べ物のにおいがきつく感じられる場合は、食事の前に換気や空気清浄機を利用しにおいを軽減することが重要です。また、食べ物を温めることでにおいが和らぐこともあります。

食材の色や形を工夫する

視覚からのアプローチも効果的です。色や形も食欲を刺激するため、意識して工夫することが大切です。例えば色鮮やかな野菜や果物を取り入れたり、切り方を変えることで見た目を美しくし、食欲増進につなげることができます。

ストレスを軽減する

がん治療中はストレスが多く、味覚障害を悪化させることもあります。ストレスを軽減するために、リラックスする時間を作りましょう。味覚だけではなく免疫力などにもアプローチできます。散歩や趣味に没頭するなど、自分に合った方法でリフレッシュすることが大切です。 以上のように、セルフケアの方法を工夫することで、がん治療中の味覚障害を軽減につながるアプローチができます。

悩んだ場合には医師や栄養士と相談を検討する

味覚障害が続く場合、医師や栄養士と相談することも検討しましょう。食事の内容や栄養補助食品の利用方法をアドバイスしてもらえる場合があります。一人で抱え込んでいても解決しないばかりかストレスをため込み症状が悪化してしまうことも。ムリせずに早い段階で専門家に相談してみてください。
味覚障害が強い場合には、医療的なアプローチとセルフケアを併用することも効果的です。患者さんの症状や生活環境に応じて、医療スタッフと相談しながら適切な対処法を選択していくことが大切です。

亜鉛の補給

がん治療中の味覚障害に対して、亜鉛の摂取が有効であるとされています。亜鉛は味覚の感覚を伝える神経細胞や味蕾の形成に必要な栄養素であり、亜鉛不足によって味覚障害が引き起こされることが知られています。 特に化学療法や放射線治療を受けるがん患者さんは、治療によって亜鉛を含む細胞も破壊されるため亜鉛不足に陥りやすくなります。そのため、亜鉛を補充することで味覚障害を軽減を試みることもあるのです。
また亜鉛は味覚障害の改善だけでなく、免疫機能の強化の一助にも。がん治療によって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなることもあるため亜鉛の摂取は治療中の患者さんにとって重要です。 亜鉛を含む食品としては、貝類、レバー、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、大豆製品、ナッツ類、全粒穀物などがあげられます。また、亜鉛を含むサプリメントも市販されていますが、過剰摂取や治療中の薬との相性もあるので自己判断での摂取には注意が必要です。 亜鉛が味覚障害に有効であるとされる根拠としては、医学的な研究結果もあります。2015年に発表された研究では、化学療法による味覚障害を抱える患者に対して、亜鉛のサプリメントを4週間摂取することで味覚障害が改善されたという報告があります。 (参考文献:U.S. National Library of Medicine. Zinc in diet. |https://medlineplus.gov/ency/article/002416.htm)

味覚障害の改善に向けたサポート資源の活用方法

味覚障害に苦しむがん患者には、以下のようなサポート資源があります。「食事を楽しめるかどうか」は生活の質に直結する要因の一つです。がん治療を苦痛だらけのものにしないよう、使える資源を上手に活用することを検討しましょう。

栄養士の支援を受ける

がん治療中には、栄養療法が必要となる場合があります。栄養士に相談することで、味覚障害に合わせた食事のアドバイスや栄養補助食品の選択などが行われます。また、味覚障害に対する食事の工夫もアドバイスしてもらえるでしょう。

情報提供サイトなどを活用する

味覚障害に関する情報提供サイトもあります。がん治療中の味覚障害について、最新の情報やセルフケアの方法が紹介されています。しかし、情報の真偽性や根拠に欠ける場合もあるので、実践する際は担当医師や栄養士への相談を含めて検討しましょう。

患者会に所属してみる

味覚障害に苦しむ患者が集まる患者会があります。患者同士が情報交換をすることで、気持ちの支えやアドバイスをもらえることも。また、過去に味覚障害で苦しんだ方の体験談なども聞けます。同じ境遇の人がどのように乗り越えたかという生の声は非常に参考になるでしょう。

精神的なサポートとしてカウンセリングなどを受けてみる

味覚障害は、がん闘病中の心理的な負担になることもあります。がんセンターや精神科などでの相談やカウンセリングなど、精神的なサポートを受けることでストレスや悩みが軽減し、状況が改善することも。話を聞いてもらうだけでも気持ちが前向きになったりと様々な側面からのメリットも期待できます。 これらのサポート資源を活用することで、味覚障害に苦しむがん患者のQOLの向上につながります。

味覚障害に関する注意点とアドバイス


がん治療中の味覚障害に関する注意点とアドバイスを以下にまとめました。

  • 食事を楽しむことができない場合は、栄養価の高いドリンクやスープを飲むことで、栄養摂取補給を検討しましょう
  • 味覚障害があり、からい、酸っぱい、苦い、甘いなどの味覚刺激が少なくなる場合には、調味料を使って味を補うことを検討しましょう
  • 食べ物のにおいが気になる場合は、換気をして食事の前に口腔ケアをすることで、においを軽減することができます
  • 味覚障害によって好みが変わることがあるため、普段食べないような新しい食べ物に挑戦してみることも大切です
  • 味覚障害が治療後も持続する場合は、専門医に相談し適切な治療や支援を受けることを検討しましょう
  • 必要に応じて栄養士やがんサポートセンターなどの専門家のサポートを受けることも視野に入れましょう
  • 味覚障害が精神的ストレスにつながることもあります。そのため、家族や友人に話を聞いてもらったり、趣味やリラックスするための時間を作ることで、ストレスの軽減を試みましょう

まとめ

がん治療における味覚障害。治療薬の向上により徐々に少なくなりつつありますが、それでもまだまだよく見られる副作用の1つです。食事を楽しめれば栄養バランスも整い身体の免疫力やストレス軽減の要因にもつなげられます。味覚障害が出てしまった場合、はやめにアプローチして生活の質をきちんとキープできる環境を整え、苦痛の少ない闘病生活を目指しましょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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