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胃がんと胃潰瘍の違いを徹底解説|放置すると胃がんになるのか?

胃潰瘍と胃がんの違いを徹底解説|放置すると胃がんになるのか?

胃は、食物の消化や吸収において重要な役割を果たす臓器ですが、ストレスや生活習慣、感染症などによってさまざまな疾患が発生します。

そのなかでも「胃潰瘍」と「胃がん」は、どちらも胃に生じる代表的な病気として認知度が高いです。

胃潰瘍と胃がんは一見似ているようにも思えますが、発生メカニズムや進行過程、治療法など多くの点で異なります。

この記事では、胃潰瘍と胃がんの違いを詳しく解説するとともに、胃潰瘍が胃がんへと進行するリスクや、その判別方法についても掘り下げていきます。

>>胃がんとは?原因・治療法・予防法を分かりやすく解説

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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胃潰瘍とは

胃潰瘍とは、胃の内壁を覆う粘膜が傷つき、粘膜層を超えて胃壁が深くえぐれる状態を指します。

胃酸やペプシンといった消化液が過剰に分泌されることで胃粘膜が損傷を受けるほか、感染や薬剤の影響によっても発症します。

初期症状は軽度の痛みから始まりますが、進行すると出血や穿孔が生じることもあります。

胃潰瘍の症状

胃潰瘍の症状はいわゆる消化器系の症状が出現し、また、人により個人差があるのも特徴です。主な症状としては以下のようなものがあります。

  • 腹痛

潰瘍の初期段階では、食後にみぞおち周辺が痛むことが多いです。痛みは鈍痛から激痛までさまざまで、症状が進行するにつれて強まる傾向があります。潰瘍の状態がひどく悪化すれば、食後や空腹時問わず、痛みが発生します。

  • 胸やけや胃もたれ、嘔吐

胃酸の逆流による不快感や、消化不良が見られることがあります。

  • 吐血・下血

胃潰瘍が進行して胃壁の血管が損傷し、胃の中で出血すると、吐血(血を吐く)や黒色便(タール便)が現れることもあります。吐血や下血では、胃酸と混ざったり血液が酸化するため、赤黒いまたは黒っぽい便が排出されるのが特徴です。

  • 食欲不振と体重減少

食事をすると痛みが増すため、食欲が減退し、体重が減少することがあります。

胃潰瘍の原因

胃潰瘍の発症には、以下のようなさまざまな原因が関与しています。

①ピロリ菌感染

①ピロリ菌感染
胃粘膜に感染するヘリコバクターピロリ菌は、胃の防御機能を低下させ、胃潰瘍の主要な原因となります。

ピロリ菌により傷ついた胃の粘膜から潰瘍が形成され、胃潰瘍につながることがあります。

②NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用

鎮痛薬や解熱薬などのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、胃粘膜の保護機能を弱め、潰瘍を引き起こすことがあります。一般的にはNSAIDs潰瘍とも呼ばれていて、解熱鎮痛剤の継続使用により生じることもあります。

③ストレス

過剰なストレスは胃酸の分泌を増加させるとともに、胃粘膜のバリア機能を弱めるため、潰瘍を引き起こしやすくなります。しかしながら、いわゆる「ストレス性胃潰瘍」は大震災にあったなど、相当数のストレスがかからない限りは生じないという見解もあります。

胃潰瘍の治療

胃潰瘍の治療は、原因や症状の重症度に応じて以下の方法が選択されます。一般的には薬物療法が中心にすすめられます。

薬物療法

出血の有無や潰瘍の程度にもよりますが、胃潰瘍の治療は薬物療法が中心となります。主に以下の薬剤を用いて治療を試みます。
①プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカー:胃酸分泌を抑える薬で、粘膜の修復を助けます。
②抗ピロリ菌治療:ピロリ菌感染が確認された場合には、抗生物質と胃酸抑制剤を組み合わせた除菌療法をおこないます。
③制酸薬:胃酸を中和し、痛みを軽減、潰瘍の悪化を目指します。
④粘膜保護薬:胃粘膜をコーティングして保護します。

生活習慣の改善

食習慣や生活習慣などの影響が考えられる場合には、生活習慣の見直しも視野に入れます。
①食生活の見直し:脂っこい食べ物や刺激物を避ける。
③禁煙・節酒・カフェインの制限:胃粘膜への負担を軽減します。

外科的治療

穿孔や大規模な出血が見られる場合には、外科手術や内視鏡治療で止血が必要になることもあります。潰瘍が深くなり、胃粘膜の穿孔が起こった場合には腹腔内の洗浄と穿孔閉鎖術がおこなわれます。

胃がんと胃潰瘍の違い

胃がんと胃潰瘍はどちらも胃に生じる病気ですが、その性質や進行の仕方には大きな違いがあります。胃潰瘍は、胃の粘膜が損傷し炎症を起こす疾患であり、原因にはピロリ菌感染や過剰な胃酸分泌、ストレス、薬剤(NSAIDs)などがあります。一方、胃がんは胃粘膜の細胞ががん化し、無秩序に増殖する悪性腫瘍です。
胃潰瘍は初期の段階から自覚症状が生じますが、胃がんの場合には初期症状がほとんど見られないことも大きな違いといえるでしょう。
>>胃がんとは?原因・治療法・予防法を分かりやすく解説

胃潰瘍と胃がんを判別する検査方法

胃潰瘍と胃がんの判別には、内視鏡検査が重要です。胃潰瘍と胃がんは見た目が似ていることもありますが、以下の検査・特徴によって区別が可能です。

バリウム検査

X線を用いて胃の形状を観察します。はっきりとした潰瘍や腫瘍がある場合、病変部が明確に映りますが、小さな潰瘍やごく初期の腫瘍の詳細な診断には限界があるため補助的な役割として活用されるのが一般的です。

内視鏡検査

胃カメラを使用して胃内部を直接観察します。胃潰瘍の場合、境界が比較的滑らかで周囲の粘膜に明らかな異常が見られません。一方、胃がんは不規則な形状や色の変化、出血などの特徴が確認されます。一般的な健康診断では、バリウム検査で異常が認められれば、内視鏡検査に進み、胃がんか胃潰瘍かの判別をつけます。

組織生検

内視鏡検査中に疑わしい部位から組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を確認します。採取した細胞を顕微鏡で直接見て観察するので、がん細胞かどうかの確定診断には必要不可欠な検査です。

症状の持続性も参考にする

胃潰瘍の痛みは食事や制酸剤の使用で一時的に軽減される場合がありますが、胃がんの症状は進行とともに悪化する傾向があります。

胃潰瘍そのものが直接胃がんに進行するケースは、実際のところほとんどありません。胃がんと胃潰瘍は、病態像としてまったく異なるものだからです。
しかし、胃がんの間接的なリスクを高める要因として、胃潰瘍の発生要因がピロリ菌感染や慢性的な胃粘膜の炎症が関与している場合、放置することで胃がんの発生リスクが増加する可能性はあります。
胃潰瘍は、胃の粘膜が損傷し炎症を起こす状態ですが、原因として多くの場合ピロリ菌感染や過剰な胃酸分泌が挙げられます。
一方で、がんという病態像はなんらかの要因により慢性炎症などでダメージを受けた細胞ががん化し、増殖する疾患です。細胞へのダメージや慢性炎症があり、これが長期間持続することで細胞のがん化を引き起こすリスクは高まりやすくなるでしょう。

胃潰瘍を見つけたらしっかりと治療する

胃潰瘍そのものががん化するわけではありませんが、胃潰瘍が見つかった場合は、必ず適切な治療を受け胃の粘膜のダメージを治療するように意識しましょう。また、胃潰瘍の原因としてピロリ菌感染がある場合は除菌治療を検討しましょう。また、治療後も定期的な内視鏡検査を受け、胃がんの早期発見に努めることが重要です。

まとめ

胃潰瘍と胃がんは、それぞれ異なる病態を持つ疾患です。胃潰瘍は適切な治療で治癒可能ですが、放置すると慢性化してしまうため、細胞が継続したダメージを追うことによりがん化のリスクを高める要因にはなり得ます。

胃潰瘍そのものががんになるわけではありませんが、その原因がピロリ菌であった場合にはしっかりと治療を受けることも検討しましょう。

胃の健康を維持するためには、生活習慣の改善と定期的な検査を心がけ、早期発見と対処を目指しましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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