2021.07.04
がん前立腺がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・再発予防対策を解説。効果的な食べ物や気になる余命は?
前立腺がんの初期。おもにステージ1のことを指しています。 ステージ1の前立腺がんは多くの場合自覚症状がなく、職場の健康診断や他の疾患の診察中に偶発的に発見されるケースがほとんどです。この記事では、前立腺がん初期の症状や治療法・余命について解説しています。
※ 前立腺がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>前立腺がんとは?その症状と治療について
目次
前立腺がん初期の症状
前立腺がんを発症したとしても初期の段階で何らかの症状が出ることはほとんどありません。前立腺がんは尿道から離れた前立腺の辺縁部分にできやすいので、尿道まで及んで排尿障害を自覚したときにはがんが進行しているケースも少なくないのです。
(参照:https://wakita-clinic.jp/aboutcanser.html)
健康診断や人間ドックなどの血液検査でわかる「腫瘍マーカー:PSA」を検査すれば初期の前立腺がんでも疑わしい状況を発見することが可能です。また前立腺肥大症の検査を受けてみたら偶発的に前立腺がんを併発していたとして見つかることも珍しくありません。早い段階で前立腺がんを発見するには、定期的に検診を受けることが有効な方法の一つといえるでしょう。
前立腺がんになりやすい人の特徴
現在のところ、なぜ前立腺がんにかかってしまうのかという原因ははっきりとはわかっていません。しかし危険因子としてなりやすい人の特徴はわかっています。
1.年齢
前立腺がんは60歳以降から増え始め70歳以上が最も多くなる、高齢者に多いがんの一つです。
(出典:全国がん罹患データ(2016年~2019年)、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録))
こちらのグラフを参考にすると、60代以降から急激に右肩上がりに前立腺がんの患者数が増加します。早期発見のためには50代を目安に、症状がなくても定期的に血液検査などを含めて検診を受けることが理想的といえそうです。
2.遺伝
前立腺がんには遺伝的傾向があると考えられています。父親や兄弟祖父などを含めた2親等以内の親族に前立腺がん患者がいた場合、前立腺がんのリスクは2倍以上とされています。2親等以内に前立腺がんの病歴がある親族が2人以上いた場合は5から11倍になるともされています。
また遺伝的素因がある場合、40代など若い頃から発症するケースもあります。家族的なリスク因子がある場合は、40歳くらいから検診を受けることを検討してもよいかもしれません。
3.食生活の欧米化
前立腺がんに限らずですが、近年日本は魚や野菜を中心とした和食の生活から肉食を中心とした食の欧米化が顕著に起こっています。動物性脂肪の取り過ぎはがんのリスクを高めることもわかっています。
実際に昔の日本では前立腺がんの患者さんはほとんどいなかったこともわかっています。日本とアメリカの前立腺がんの死亡者数を見ると約2倍以上もあります。食生活の変化は、前立腺がん発症への影響もあるといえるでしょう。
前立腺がんのステージ
前立腺がんの治療方針を決める際に参考とされるのが病気ステージの分類です。
前立腺がんはおもにステージ1〜4期(ABCD分類)として分類されます。
前立腺の内部に留まっているがん。高分子化がんが1-1で、低分子化がんは1-2 | |
前立腺の片葉に病変が留まっているがん。前立腺のどちらか片方に発症しているがんが2-1、前立腺の片葉全体か両側にまたがっているがんがステージ2-2 | |
前立腺の被膜や被膜外に広がっているがん。被膜までの浸潤を3-1、膀胱頸部や尿管の閉塞が見られる状態を3-2 | |
前立腺以外に転移が見られる状態。骨盤内のリンパ節にがんの転移が見られる状態をステージ4-1、さらに広いリンパ節や骨・肺・肝臓などの遠隔転移が見られる場合を4-2 |
前立腺がんのステージはこのあと紹介する「TNM分類」を参照にして判別されます。
がんの広がりを見るTNM分類
がんの広がり具合に応じてステージを判断するのに活用されている指標の一つに「TNM分類」があります。膀胱がんに限らずですが、TNM分類はがんの広がりを示す指標の一つです。
<TNM分類一覧>
おもな分類の目安として、前立腺やその周囲にどのくらい浸潤しているか「T:腫瘍」腫瘍の広がり具合によって1-3期までが決定し、「N:リンパ節」「M:転移」の指標が見つけられればいずれの場合も4期となります。
がんの悪性度を見るグリソンスコア
グリソンスコアとは、前立腺がんのがん細胞の悪性度を5段階に分類して点数化したものです。がん細胞の構造や増殖パターンが正常な組織と比較してどのぐらい異なっているかを参考にして判断します。正常な細胞と比較して異なる点が多ければ多いほど、悪性度の高いがんと判別できるのです。
(参照:https://cancer.qlife.jp/prostate/prostate_feature/article2731.html#:)
治療法選択時の参照となるリスク分類
前立腺がんの治療法は他のがんと比べて数多くあります。選択肢の幅が広い分だけ、どのように治療を選択するのかしっかりと指標を定めるのも重要です。
前立腺がんの治療を検討する際に指標となるものの一つに「リスク分類」というものがあります。リスク分類をする際に大きな指標の一つとなるのが血液検査で出されるPSAです。PSAとグリソンスコアを参照にしながらリスク群を出しつつ、ステージを加味して治療法の検討をします。
(参照:https://cancer.qlife.jp/prostate/prostate_feature/article2731.html#:)
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/print.html)
前立腺がん初期の治療法
前立腺がんの初期治療は、おもに監視療法・前立腺全摘除術・放射線療法などがあります。以下に詳細を解説します。
監視療法
監視療法とはその名のとおり「あえて治療をしないで経過を観察する」治療法です。前立腺がんに関してはPSAとして、腫瘍マーカー検査の精度の向上と普及により非常に早期に発見される頻度が高くなってきました。
前立腺がんに特徴的な治療法ではありますが、前立腺がんは無症状のまま経過し死亡の原因とならないこともあるのです。監視療法は一般的に定期的にPSAを測定しながら生検をおこない、進行具合をチェックします。
経過観察をしているうちにがん細胞の増大が認められれば治療を開始しますが、顕著な変化が見られない場合は経過観察を継続します。その結果、特に治療をしなくても天寿を全うできる患者さんもいるのです。
また前立腺がんの場合どのような治療でも排尿障害や勃起障害などの合併症に悩まされるリスクがあります。
ときとして尿失禁などの症状が強くなってしまえば生活の質が低下してしまい、豊かな人生を送るという意味では影響を及ぼしてしまうことも少なくありません。監視療法を選択するうえで一つの指標となるのが「期待余命」に対する考え方です。
期待余命10年以下の場合
期待余命というのは「このあとどれだけ生きる可能性があるか」を検討材料の一つにします。医療にはときとして寿命を加味して治療の選択をする場合があるのです。
特に前立腺がんの場合、高齢になればなるほど進行が遅いという傾向もあるため、進行が見られなければそのまま経過を見る監視療法を第一選択とする場合もあります。
例として、近年における男性の平均寿命は厚生労働省のホームページを参考にすると86歳。
仮に患者さんの年齢が77歳だとして、前立腺がんの症状が進行している様子が見られなければ監視療法を選択するケースもあります。定期的にPSAを測定しながら生検をおこない、進行具合をチェックしながら治療をしないで経過を追う方法です。
期待余命10年以上の場合
一方で期待される予定が10年以上の場合は、基本的に積極的な治療を選択するケースがほとんどです。前立腺がんの進行度やリスクにより取られる治療法はさまざまですが、監視療法の他にも手術や放射線療法、ホルモン療法などその時々や進行度、症状に応じて選択される治療は異なります。
フォーカルセラピー
「フォーカルセラピー」とは、前立腺の正常な組織をできるだけ残しながらがんの部分と今後再発などに影響しそうな部分をターゲットに治療する方法です。前立腺がんの治療に起こりやすい副作用の尿漏れや性機能をできる限り温存できるように配慮した、近年注目されている新しい前立腺がんの治療法です。
QOLをできるだけ高めながら治療を進める方法の一つに「高密度焦点式超音波療法(以下HIFU)」というものがあります。現状のところ健康保険は適用ではなく、高額ではあるものの、外科的な侵襲はなく治療できるのが魅力です。
HIFUは、1点に超音波を集中照射してがん細胞を焼き殺してしまおうという治療法です。がん細胞は正常な細胞よりも熱に弱いとされているため、超音波を焦点集中させ照射することによりがん細胞のみを狙って焼灼できます。
HIFUのメリットは、体を切開することがないので負担が少なく繰り返しの治療が可能であるところです。また、治療後はすぐに社会復帰ができ、切開する必要もないので抗凝固剤などを服用している持病がある方でも治療の適用になるのが魅力です。
手術療法
前立腺がんの初期で悪性腫瘍が前立腺内にとどまっている場合、前立腺すべてを摘出することで完治の可能性は非常に高くなります。一般的に手術で切除するのは前立腺のほか、精嚢や精管の一部、膀胱頸部の一部やそれらに関連したリンパ節(リンパ郭清)も対象です。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>前立腺がん2-3期ステージの症状・治療法・余命を解説
放射線療法
放射線療法は目に見えない高エネルギー体をがん細胞に向けて収束照射し、がん細胞の死滅を狙う治療法です。X線やガンマ線、粒子線などさまざまな種類があり、これらを使って治療を進めます。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>【前立腺がんステージ4】症状・治療法、骨の転移は?余命についても解説
前立腺がん初期の余命と再発リスクに向けての対策
グラフ | 性別 | 病期 | 年齢階級 | 手術の有無 | 対象数 | 実測生存率 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 男性 | Ⅰ期 | 全年齢 | 全体 | 29,438 | 89.60% |
B | 男性 | Ⅱ期 | 全年齢 | 全体 | 22,329 | 91.10% |
C | 男性 | Ⅲ期 | 全年齢 | 全体 | 11,587 | 86.40% |
D | 男性 | Ⅳ期 | 全年齢 | 全体 | 10,319 | 51.10% |
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c12#h-title)
近年、主要マーカーであるPSA値の測定を健康診断などで手軽に出せるようになったため、前立腺がん初期である1期の生存率を見ると89%と非常に良好な数値を示しています。早い段階で見つけられると根治治療が可能なので、遺伝性のリスク因子や食生活などを考えながら定期的に検診を受けることを検討しましょう。前立腺がんそのものからくる余命への影響を懸念せずに過ごすことも期待できるはずです。
前立腺がん再発を予防するのに意識したい食べ物は?
高い生存率を示している前立腺がんですが、必ずしも再発しないというわけではありません。前立腺がんに影響を及ぼす因子として「食の欧米化」が挙げられています。基本的に前立腺がんの場合、食べてはいけない食品はありませんが赤身肉や加工肉を多く食べるとさまざまながんの発生率を高めているという調査結果もあります。
また前立腺がんは男性ホルモンの影響を少なからず受けていると考えられています。ですので前立腺がんのリスクを下げる可能性もあると考えられている食品は「大豆製品」です。大豆に含まれているイソフラボンは女性ホルモン用の働きをすると考えられているため、男性ホルモンの働きを抑えるサポートにつながると考えられています。
味噌汁や納豆、お豆腐などは昔から日本人の食卓になじみ深い食材です。上手に活用しながら前立腺がんへの影響を考え、日常の食卓に活用するとよいでしょう。
まとめ
前立腺がんは初期には症状が現れにくく、おもに健康診断や血液検査で偶発的に発見されるケースがほとんどです。早期発見には腫瘍マーカーであるPSA検査が有効で、特に高齢者や家族歴がある人ほど罹患率は高くなっています。
そのため、50代以降になると定期検診が重要です。治療法は手術療法や放射線療法があり、リスク分類や悪性度の評価が選択の基準となります。初期治療には前立腺がんの特徴である進行が遅い状況と余命を加味して監視療法も検討されます。手術療法で根治が可能なステージでもあります。再発を予防し健やかな余生を送るためには、定期的な検診も意識しながら食生活にも気をつけたいですね。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
がんの種類を知る
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