2024.05.29
がん膀胱がんの初期「ステージ0-1期」の症状・治療法・余命について解説。再発予防対策を知り予後に活かそう
膀胱がんの初期と言われている「ステージ0-1期」。早い段階で発見できたからこそ、適切な治療や対処法、予後に良好な生活を知っておきたいですよね。この記事では膀胱がん初期「ステージ0-1期」の症状や治療法、余命を伸ばすために知っておきたいことについて解説しています。
目次
膀胱がんとは
膀胱がんは50歳以降から発生し始める傾向にあります。ピークは60代から70代の比較的高齢者に多いです。そして男性のほうがかかりやすいのも膀胱がんの特徴です。
女性の罹患率と比べ、男性の患者さんは約3倍程度と言われています。男性のほうが罹患率が高い理由について、まだはっきりとわかってはいません。しかし、タバコなどの発がん性物質に触れ合う機会が、男性のほうが多い可能性も示唆されています。また、男性ホルモンの関与なども考えられている理由の一つです。
膀胱がん初期の主な症状とは
膀胱がんを早期に発見するための重要なサインが、「目に見える血尿」です。血尿といえば、尿の色が赤くなるイメージですが、尿が膀胱内に長時間溜まっていると黒っぽくなったり、茶色っぽい尿に変化することもあります。
膀胱がん以外にも血尿が出る症状として、膀胱炎や尿路結石なども血尿症状があります。しかし、膀胱炎や尿路結石の場合は痛みをともなうのが一般的です。
膀胱がんによる血尿は痛みをともないません。一方で膀胱がんでも頻尿や排尿痛が起こることもあるので、この辺りは膀胱炎などの症状と混同しやすいでしょう。
膀胱がんによる血尿は数日続くということは少なく、自然に収まってしまうこともあります。ですので、一時的なストレスや何らかの衝撃で血尿が出てしまったと思い込んでしまい、受診をせず、経過するうちに症状が進行してしまったということも少なくありません。
また、職場などの尿検査で血尿の指摘を受けることもあるでしょう。その場合に尿潜血が陽性という結果で早期発見につながるケースもあります。通常の生活で尿に血液が混じることはありません。尿潜血が陽性だった場合は、早い段階で泌尿器科の受診を検討しましょう
膀胱がんの特徴として、膀胱内に腫瘍の発生が多発していることがほとんどです。
親指から小指大程度の腫瘍が複数できることも少なくありません。膀胱を取り出すことがシンプルな解決策の一つではありますが、取り出したあとの機能障害を考えると膀胱がんの場合は非常に課題が多いのが難点です。
例えば、消化器官であれば腫瘍部分を含めた臓器の部分摘出が可能です。しかし、膀胱がんは膀胱の一部を切り取る「部分切除」というのはなかなか難しい実情があります。
膀胱内上皮のどこかでがんが発生した場合、膀胱内の別の場所でも腫瘍の発生が始まっていることが多いからです。同時に膀胱内にがんが複数発生することもあります。また、一度発生した腫瘍を内視鏡で切除しても、時間をおいてのちに腫瘍が発生することも少なくないのです。
浸潤度が浅く再発のリスクは低め
膀胱がんの特徴を理解するうえで理解しておきたいポイントは、腫瘍が膀胱の筋層に浸潤しているか、侵入していないかによって治療法が大きく異なることです。
膀胱の上皮のみにとどまっているうちは、比較的予後のよいがんと言えますが、この根が深くなっていくと予後の見通しは悪くなります。
膀胱がん初期に見られる症状
膀胱がんの自覚症状として見られる初期症状は「血尿」です。目で見てわかる赤い尿が出るのですが、膀胱炎のような痛みはないのが特徴。痛みのない血尿が出ると膀胱がんの可能性が高いと言われています。
頻尿などの膀胱炎のような症状が出るときもありますが、膀胱がん全体のなかでは比較的まれです。血尿が見られて痛みの自覚症状がない場合には、膀胱鏡を用いて膀胱内を直接観察します。さらに尿の細胞診の検査をして、がん細胞が見えたら次に内視鏡で組織を削って組織学的診断と浸潤度を診断します。
膀胱がんの初期0-1期の治療法
膀胱がんの初期として分類されるのは、ステージの0-1期。0‐1期はいずれの場合でも膀胱内筋層までの浸潤は見受けられません。膀胱鏡で腫瘍の大きさや広がりを確認しつつ治療法を選択していきます。
(参照:https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html#depth)
TUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)
TUR-Btは、膀胱がんの初期治療の一つです。診断と治療を兼ねておこないます。腫瘍が小さく、腫瘍の根っこ部分が膀胱の筋層まで達していないこと、腫瘍の数が多すぎないことなどが適用条件です。膀胱がんの特性として、膀胱内に腫瘍が再発することも多く、一度手術したからといって安心できるわけではありません。
再発して同じ手術を受けることになるケースも多いので、術後は定期的に再発の有無を調べるため、膀胱鏡や尿細胞診をおこなって経過を追うことが重要です。また再発予防の目的で膀胱内注入法を用いることもあります。
薬物療法
膀胱がんの薬物療法は、主に化学療法と後述するBCG注入療法を含む免疫療法に分けられます。化学療法はいわゆる抗がん剤を使用した薬物療法ですが、0-1気の初期治療では膀胱内に直接抗がん剤を注入する「膀胱注入療法」を選択します。
膀胱注入療法とは、膀胱内に腫瘍にアプローチする薬を注入する治療法です。膀胱がんでは、腫瘍が筋層までは達しておらず、粘膜下層まで達している場合や浅くても広く広がっている場合などは再発率が比較的高めです。
膀胱がん初期である0-1期は、腫瘍が粘膜までにとどまっている状態。膀胱という袋状に液体を溜められる臓器なのでその特性を利用して治療します。
膀胱がん初期の場合、薬物療法は膀胱内に直接抗がん剤を注入しがん細胞の死滅を狙います。
BCG膀胱注入療法
膀胱がんは比較的再発率の高いがんです。再発予防のための膀胱注入療法としてBCG注入がおこなわれます。「BCG」とは、私たち日本人が小さな頃に予防接種として使用した結核予防としてのワクチンです。
BCGを注入し、膀胱の細胞壁に炎症を起こすことによって免疫の働きを高める作用があるとされています。
この作用を狙って膀胱がんの再発予防につなげる治療法です。BCG注入療法では、尿道口からカテーテルを挿入して、直接膀胱内に薬液を注入します。その後約1時間から2時間は排泄せずに、膀胱内に薬液を浸透させます。
BCG注入治療を週に1回、合計6回から8回おこなうのを1クールとして治療を進めます。通常2年間、膀胱炎などの症状が生じて悪化しないのを確認しながら、3から6ヵ月ごとを目安に2-3回、再発予防に向けた維持療法をおこないます。
膀胱がんの初期0-1期の再発リスク
膀胱がんは、再発が比較的多いがんとされています。膀胱がん0-1期の状態で目に見えるがんを切除できても安心はできません。再発のリスクを予想して、定期的に外来受診で経過を追い、早期発見・早期治療に努めることが大切です。0-1期であっても再発のリスクはあるものとして再発リスクの分類わけをしながら経過を追います。
再発リスクの判定
低リスク | 単発・初発・3cm 未満・Ta・low grade・併発 CIS 無しのすべてを満たすもの |
中リスク | Ta-1,low grade,併発 CIS 無し,多発性あるいはサイズが 3cm 以上 |
高リスク | T1,high grade,CIS(併発 CIS も含む),多発,再発,のいずれかを含むもの |
(参照:医学図書出版、日本泌尿器学会・編集、2015年
膀胱がん診療ガイドライン2015年版
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/01_bladder_cancer_2015.pdf)
0-1期の筋層に達していないがんの、予後リスク判定をする場合には、腫瘍の大きさや浸潤度のほかに「異型度(グレード)」と呼ばれる組織の構造や顕微鏡で見たときの細胞の形などをもとに割り出します。正常細胞と比較してどの程度変異があるかによって悪性度の基準とします。
このうえで、悪性度が高いと判定された場合にはTUR-Bt後にBCG注入療法などの後療法をおこない、再発防止に努めます。
膀胱がんの初期0-1期の余命
(参照:https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c15#h-title)
膀胱がんの初期でもある0-1期。5年生存率を見ると70%以上と比較的良好です。しかし、膀胱がんは再発しやすいがんでもあります。「すべて取り切ったから安心」と思わずに、定期的に受診をして、慎重に経過を追うことが大切です。
また、再発につながりやすい生活習慣なども把握して、できるだけ不安要素を取り除く生活も意識したいですね。
再発リスクを優位に上げる喫煙
タバコは総じて体に悪いというのは有名ですが、喫煙は食道がんや咽頭がん、肺がんなど、呼吸器系にばかり影響を及ぼすわけではありません。膀胱も実はタバコの毒素に影響を受ける臓器のひとつです。タバコの発がん性物質が肺から血液に入り、その後血中から尿中に排泄されて、その尿が膀胱に溜まるからだと考えられています。膀胱がんと喫煙習慣は大いに関係があるという研究結果もあります。
膀胱がんの再発リスクを考えるなら、喫煙をやめるようにしましょう。
膀胱がんの予防
膀胱がん初期の段階だからこそ、意識して予防につなげられる行動はしたいものです。ここでは、膀胱がんの再発予防に役立つ食習慣について紹介します。
膀胱がん再発を予防するのに意識したい食べ物は?
膀胱がんに関連する因子として、喫煙は確実な要因の一つとされています。喫煙以外にも、膀胱に溜まる尿内の発がん性物質なども関連する要素の一つと考えられているのです。
(参照:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/339.html)
食習慣に関連する因子としては、コーヒーや緑茶に含まれている「カフェイン」もリスク因子になるのでは?と言われています。しかし、いまだ研究段階であり、明確な関係性の示唆はなされていません。膀胱がんはいずれにしても再発の見られやすいがんです。禁煙を遵守しつつ、念のためカフェインの摂取量に意識を配る程度に認識しておくとよいでしょう。
また、膀胱がんに限ったことではありませんが、ハムやベーコンなどの食肉加工品を好んで食べる西洋式の食事を好む方は、がんのリスクが高くなるという研究結果も出ています。世界保健機関(WHO)からも、加工肉の発がん性リスクは示唆されています。好んで加工肉を食べている人は控えるなどの意識付けも大切です。※1 ※2
※1 がんの先進医療、2023年
宮西ナオ子のがんの生存率・再発率に関連する食事・栄養や、サプリメント成分の研究比較 第6回 膀胱がん
https://gan-senshiniryo.jp/research_cancer/post_5998
※2 BBC NEWS JAPAN、2015年
加工肉に発がん性あるとWHO
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-34645057
まとめ
膀胱がん初期「ステージ0-1期」の膀胱がん。症状として目に見える血尿が主なサインであり、痛みのない血尿が継続する場合は膀胱がんの可能性が高まります。
膀胱がんの初期の段階では、TUR-Btや薬物療法が一般的であり、再発予防のためにBCG膀胱注入療法なども検討されます。
初期の浸潤度が浅い場合は比較的再発リスクは低めですが、定期的な経過観察が必要です。
また、喫煙は再発リスクを高める要因であるため、禁煙することが望ましいでしょう。
早い段階で発見できたからこそ、早めの治療で根治が期待できる「膀胱がん初期」。油断せずに定期的に受診をして、再発の早期発見・早期治療に努めましょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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