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胃がんのリスクを血液検査で判定する方法とは?ABC検査や腫瘍マーカーを徹底解説

胃がんのリスクを血液検査で判定する方法とは?ABC検査や腫瘍マーカーを徹底解説

胃がんは日本人に多いがんの一つで、早期発見がその後の治療や生活に大きく影響を与えます。近年、胃がんリスクを血液検査で調べる「ABC検査」が注目を集めています。

ABC検査は、採血のみで胃がんのリスクをある程度把握できるため、負担が少なくスクリーニング検査に最適とされています。

また、CEAやCA19-9などの血液検査で抽出できる腫瘍マーカーも胃がんの可能性を判断する一つとして用いられています。この記事では、胃がんリスクを把握するための血液検査について、具体的な検査内容やどのような人に適しているかを詳しく解説します。

日置医院長

この記事の監修者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

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ABC検査とは

ABC検査とは
(参照:https://www.mrso.jp/tokyo/ota/k-ckinic/plan/24121/

ABC検査とは、ピロリ菌感染の有無を調べるピロリ菌の抗体を見る検査、胃粘膜の萎縮の有無を調べるペプシノゲンという検査の2つの採血項目を組み合わせ、胃がんのリスクがどれぐらいあるかを判定するという検査方法です。

結果に応じて、リスクが低いA群からリスクが高いD群まで4つのグループに分けられます。胃がんを早期に発見するための一環として、ABC検査は簡便でかつ体に負担が少ないため、定期的なスクリーニングにも活用されています。

ヘリコバクターピロリ菌抗原検査

ヘリコバクターピロリ菌抗原検査は、胃がんのリスクを知るために受けておきたい検査の一つです。ピロリ菌は胃の粘膜に住みつき、慢性の胃炎や胃潰瘍を引き起こします。長期的に感染が続くと、胃がんのリスクを増加させることが知られています。

この検査では、ピロリ菌が体内にいるかどうかを、ピロリ菌の抗原の有無で判断します。検査は血液、尿、便などからおこなうことができ、特に便や尿の検査は簡便で負担が少ないのも特徴です。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。

>>ピロリ菌と胃がんリスク - 胃の健康を守るための知識と対策-

ペプシノゲン検査

ペプシノゲン検査は、胃の萎縮の程度を把握するためにおこなわれる検査です。ペプシノゲンとは胃の粘膜から分泌される消化酵素で、この値が低下していると、胃の粘膜が萎縮している可能性が考えられます。

胃の萎縮が進んでいる場合、胃がんの発生リスクが高くなるためペプシノゲン値の測定は重要な要素の一つです。この検査も血液検査で簡単におこなうことができ、ピロリ菌の有無を調べる抗原検査と併せてABC検査に含まれます。

ABC検査でのリスク診断がうまくいかないケース

ABC検査は、ピロリ菌の抗原やペプシノゲンを計測し、リスクを予測する検査ですが、うまくいかない例もあります。

まず、すでにピロリ菌の除菌治療を受けた方や、胃の一部を切除している方は検査結果が正確に胃がんリスクを反映しにくい傾向にあります。

また、過去に胃潰瘍や慢性胃炎の治療を受けた人も、検査の結果が正しく出ないことがあります。さらに、年齢が若く胃粘膜の萎縮が少ないと考えられる人や、既に胃がんを発症している可能性がある人にとってもABC検査は適していません。

このような経歴がある場合には、内視鏡検査など、より精密な方法での胃の健康状態の確認が必要といえるでしょう。

ABC検査の積極的な活用を検討したい人

ABC検査の積極的な活用を検討したい人
胃がんの家族歴がある方や家族にピロリ菌陽性の方がいれば、一度はABC検査で自分のリスクを把握しておきたいところです。

ABC検査は、胃がんリスクを早期に把握したい人にとって、積極的に活用したい検査方法の一つです。特に、胃がんの家族歴がある人や食生活や生活習慣に不安を感じる人、過去にピロリ菌に感染していた可能性がある人は、定期的な検査でリスクを把握することが重要です。

また、症状がなくても将来のリスクを知りたいと考える健康意識の高い人にも適しています。ABC検査は体への負担も少なく、比較的簡便なため、早期発見の手段として積極的な活用を検討するとよいでしょう。

胃がん検診との違いは?

ABC検査と胃がん検診の違いは「ABC検査はあくまでも胃がんのリスクが高いか低いかを調べるだけ」であって、胃がん検診のようにその時点で胃がんの有無をチェックできるわけではないところです。

一方で胃がん検診では、万が一すでに胃がんが形成されていれば「がんがある」と確定的な診断をつけることが可能です。リスク診断の域を超えないのがABC検査の現状です。ABC検査の結果により、胃がん検診の受診ペースなどの参考にするとよいでしょう。

【検討したい胃カメラのペース】
ABC検査リスク判定「A」:積極的な検査は随時検討
ABC検査リスク判定「B」:3年に一度くらいのペース
ABC検査リスク判定「C」:2年に一度くらいのペース
ABC検査リスク判定「D」:1年に一度くらいのペース

一般健診に追加してできる腫瘍マーカー

体のなかにがんが生じると血液中に特定のたんぱく質や酵素、ホルモンなどが増加することがあります。これらはがん細胞が生じることによって作られる物質で、がんを見つける目印にもなります。

血液検査で腫瘍マーカーの血中濃度が基準値より高い場合は、陽性と見なされ、基本的にがんの発生を疑います。

しかしなかには、もともと特定の腫瘍マーカーの値が高い患者さんもいて、またがん以外の病気で腫瘍マーカーの数値が上昇することもあります。

反対にがんが存在していても数値が上がらない症例もあります。

腫瘍マーカーのネックとして、がんが大きくなるか転移が広がってがんが作り出す物質が血液中に相当量流れ込まないと数値が上昇しないほかに、患者さんの状態や他の疾患の発症によっては腫瘍マーカーだけではあてにできないという側面があります。

血液検査で観測できるがんの陽性反応の一つが腫瘍マーカーではあるのですが、不確定要素もあるため腫瘍マーカーの数値だけで「陽性」と判断することはできません。

腫瘍マーカーが陽性になった際は、画像検査なども含めいろいろな検査結果をもとに総合的に判断するのが重要です。

CEA(carcino-embrionicantigen)

CEA(癌胎児性抗原)は、主に大腸がんの腫瘍マーカーとして知られていますが、胃がんを含む消化器系のがんにおいても上昇することがあります。

正常な細胞ではほとんど産生されないため、がん細胞の増殖にともない血液中のCEA値が高くなることが多いです。

胃がんが進行するとCEA値が上昇しやすい傾向が見られるため、がんの進行度や治療効果のモニタリングにも役立ちます。ただし、CEAの上昇は胃がん特有のものではなく、喫煙者や他のがんでも上昇する場合があるため、他の腫瘍マーカーや検査と組み合わせた診断が必要です。

CA19-9

CA19-9は、主に膵臓がんの腫瘍マーカーとして用いられていますが、胃がんや胆道がん、肝臓がんなどの消化器がんにおいても上昇することがあります。

CA19-9はがん細胞の表面に存在する糖鎖抗原であり、胃がんが進行して転移がみられるケースで特に上昇することが多いです。ただし、CA19-9も胃がんに特異的なマーカーではないため単独での診断には使用せず、他の腫瘍マーカーや画像検査と併用するのが一般的です。また、膵炎などの良性疾患でも上昇することがあります。

AFP(Alpha-fetoprotein)

AFP(アルファフェトプロテイン)は主に肝細胞がんの腫瘍マーカーとして使用されますが、胃がんの一部、特に肝転移をともなう胃がんや、未分化型の特殊な胃がんにおいて上昇することがあります。

AFPは胎児期に分泌されるタンパク質で、通常の成人では低い値に保たれていますが、がん細胞によって産生される場合があります。AFPの上昇は稀なケースですが、特殊なタイプの胃がんにおいて診断の手助けになる場合もあります。

一般的な血液検査で、どこまで胃の不調はわかる?

胃潰瘍疑いのとき、血液検査で「炎症反応(白血球やCRP)や貧血(ヘモグロビンの数値)消化管からの出血を示唆するBun/Cre比」などを調べます。

一般的な血液検査では、胃がんの有無やがんの種類を特定することは難しいですが、胃の健康状態や不調のサインを間接的に把握することは可能です。

例えば貧血の有無を確認することで、慢性的な出血や胃潰瘍、がんの疑いがあるかどうかの参考になります。また、白血球数や炎症反応(CRP)などから炎症や感染の兆候を見つけることができます。

血液を採取すれば腫瘍マーカーも計測できるため、一般検診等を希望すれば腫瘍マーカー検査もおこなえます。一般的な血液検査だけで胃がんを確定診断することは難しいため、内視鏡検査や画像診断の併用がされます。

まとめ

まとめ
胃がんのリスクを評価するための血液検査は、ABC検査をはじめとする比較的簡単に受けられる予防法として多くの人に広まっています。特に家族歴や生活習慣にリスクがある方は定期的なABC検査や腫瘍マーカー検査を検討し、早期のリスク把握と定期的な胃がん検診につなげることが重要です。

血液検査だけでなく、必要に応じて内視鏡や画像診断を併用することで、精度の高い診断と早期治療が期待できます。健康な胃を保つために、定期的な検査を活用することを検討しましょう。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

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がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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