1. コラムTOP
  2. がん
  3. すい臓がんの痛みはどこに出る?腹痛・背部痛・腰痛の特徴と注意点
がん

すい臓がんの痛みはどこに出る?腹痛・背部痛・腰痛の特徴と注意点

すい臓がんの痛みはどこに出る?腹痛・背部痛・腰痛の特徴と注意点

すい臓がんは「沈黙のがん」とも呼ばれ、初期にはほとんど症状が現れないことで知られています。しかし、病気が進行していくと、腹部や背中、腰にかけての痛みなど、すい臓がんらしい症状が現れてきます。
すい臓がんのなかでもすい頭部にがんが発生した場合には、黄疸や腹痛などの自覚症状が比較的早い段階で出ることもあります。
一方で、すい体部やすい尾部にできるがんでは、かなり進行しないと痛みが出ないケースもあり、「気付いたときには手遅れだった」というケースもあるのです。
この記事では、すい臓がんにともなう痛みの出方や場所、進行との関係、また他疾患との見分け方などを、医学的な知見をもとに詳しく解説していきます。
※大腸がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>大腸がんとは?その症状について

日置医院長

この記事の執筆者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

すい臓がんになるとどこが痛くなるのか

すい臓がんのなかでも、比較的早く症状が現れるのが十二指腸に近い部分に生じるすい頭部のがんです。腹痛と黄疸が6割、体重減少が5割程度に見られます。

すい臓がんは、初期症状が乏しく“沈黙の臓器のがん”と呼ばれることもあります。しかし、がんの進行とともに、腹部・背部・腰部などに特有の痛みが現れてきます。特に十二指腸に近い「すい頭部」にがんができた場合は、すい臓がんのなかで考えると比較的早期から症状が出やすく、腹痛や黄疸、体重減少といった痛み以外の自覚症状も見られることがあります。

腹痛

すい臓がんによる腹部の痛みは、主にすい液の通り道であるすい管が、がんによって圧迫・閉塞され、内圧が高まることで発生します。なかでもすい頭がんは、胆管や十二指腸が圧迫されやすいためみぞおちの痛みとして自覚症状が出ることも少なくありません。また、胆汁の流れが悪くなることで黄疸が出たり、消化不良による腹部の不快感をともなうことがあります。

背部痛

背中の痛みは、すい体部やすい尾部にがんが発生し、後方にある神経や臓器を圧迫することで生じます。また、すい臓は背中側に位置するため腫瘍が大きくなると、脊椎周囲の神経を刺激したり、腰から背中にかけて鈍い痛みが放散するように感じられます。

背部痛は、夜間寝ているときに強くなるのが特徴です。鎮痛剤が効きにくい場合や、原因不明の背中の痛みが長期間続く場合は、すい臓疾患を疑うきっかけになることもあります。

腰痛

腰の痛みも、すい臓がんの進行によって現れることがあります。腰痛はがんが腹膜や神経叢(しんけいそう)へ浸潤したり、周囲組織に広がることで生じます。すい臓がんが後腹膜の神経や脊柱の近くに進展した場合、姿勢によって変化する腰の鈍痛として感じられることもあります。

すい臓の解剖学的位置

すい臓の解剖学的位置
(参照:膵臓の解剖学的特徴とは? | 山内メディカルクリニック、https://yamauchi-cl.net/%E8%86%B5%E8%87%93%E3%81%AE%E8%A7%A3%E5%89%96%E5%AD%A6%E7%9A%84%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F

すい臓は、みぞおちの少し下、体の中央から背中寄りの深部に位置する細長い臓器です。形状はブドウの房のように細く伸び、長さ約15cm、重さは60〜90g程度。胃の裏側に位置し、十二指腸や胆のう、肝臓などと接しています。

すい臓を解剖学的に分類すると大きく3つの部分に分けられています。

  • すい頭部(すいとうぶ):十二指腸に接しており、胆汁やすい液の出口に近い。消化機能に重要な役割を持ちます。
  • すい体部(すいたいぶ):中央に位置し、すい液の通り道である主すい管が通っています。
  • すい尾部(すいびぶ):脾臓に近接しており、免疫や血液の浄化にも関わる場所です。

 

すい臓の働きには「外分泌」と「内分泌」の機能があります。外分泌機能は主に消化酵素を作り出しています。すい液と呼ばれる消化液は、1日約1.5リットル分泌し、食物中の炭水化物・タンパク質・脂質を分解する働きを持ちます。内分泌機能は、インスリンやグルカゴンといった血糖値を調節するホルモンを産生しています。

すい臓は、食物の消化と血糖調整という重要な役割を担っています。また、体の奥深くにあるため、腫瘍ができても症状が出にくい構造的特徴を持っています。そのため、がんの早期発見が難しく、進行してから見つかることが少なくないのです。

すい臓がんがどのくらい進行したら痛みが出るのか

すい臓がんは、初期には自覚症状がほとんどなく、病状がある程度進行するまで痛みを感じにくい病気です。これは、すい臓の位置が体の奥深くにあるため、がんがある程度の大きさに成長して周囲の神経や臓器を圧迫するようになるまで、痛みのサインが出にくいという特徴があります。
すい臓がんでもすい臓の頭部(十二指腸に近い側)にできるがんは、比較的早い段階で胆道を圧迫することがあるため、腹部の鈍痛や黄疸といった症状として現れることがあります。
痛みが出現するタイミングは個人差がありますが、一般的にステージII〜III以降で見られる傾向にあります。なかには、腹部から背中にかけての放散痛(別の部位に感じる痛み)が持続的に起きることもあり、「慢性的な背中の痛みが続くために受診したところ、すい臓がんが見つかった」というケースもあるのです。

すい臓がんの痛みと似たような症状が起きる疾患

すい臓がんにともなう痛みは、お腹の上部や背中にかけて感じることが多く、放散痛として現れることもあります。しかし、こうした痛みの特徴は、すい臓がんに限らず、他の消化器疾患や胆道系疾患などでも共通した症状もあるため、自己判断は禁物です。

例えば、次のような病気はすい臓がんと似た痛みを引き起こすことがあります。

胆石症や胆嚢炎

胆石が胆道をふさいだり、胆嚢に炎症が生じたりすると、みぞおちや右上腹部に激しい痛みが生じることがあります。胆石症や胆のう炎で生じる痛みは背中や右肩に放散することもあり、すい臓がんによる痛みとの区別が難しいこともあります。

急性・慢性すい炎

すい臓がんと同じすい臓に生じる病気で、すい炎もまた強い腹痛や背部痛を引き起こします。急性すい炎では発症が突然で、食後に激しい痛みが現れることが多く、ひどければ吐き気や発熱をともなうこともあります。慢性すい炎では、持続的な鈍い痛みが主で、日常生活にじわじわと影響するケースも見られます。

消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)

潰瘍による痛みもみぞおち周辺に集中し、空腹時や食後に痛むことが特徴です。すい臓に近い部位にあるため、放散する痛み方によっては、すい臓がんと混同されることもあります。

胃がん・大腸がんの一部

進行した消化管のがん場合、他のがんでも似たような腹部の痛みが現れることがあります。胃がんでは胃の不快感やみぞおちの痛み、大腸がんでは下腹部の痛みや便通異常が目立ちますが、腫瘍の位置によってはすい臓がんと症状が似通うケースもあります。

すい臓がんの痛み以外の症状

すい臓がんの痛み以外の症状
すい臓がんは早期発見が難しいがんの一つであり、その理由の一つが「痛み以外の症状があいまいで目立たないこと」にあります。痛みが現れる前に見逃されがちなサインを把握することは、早期発見の可能性を高めるうえで非常に重要です。

以下に、すい臓がんで比較的多く見られる痛み以外の症状を解説します。

1.体重減少

はっきりとした理由もないのに体重が減少していくのは、すい臓がんに限らず多くの悪性腫瘍に共通する症状です。なかでもすい臓がんでは、比較的見られやすい症状であるため注意が必要です。消化機能の低下や栄養吸収の障害が原因とされています。

2.黄疸(皮膚や白目の黄ばみ)

特にすい頭部(すい臓の十二指腸側)にがんができた場合、胆管を圧迫して胆汁の流れが妨げられることで黄疸が起こります。皮膚や眼球が黄色くなるだけでなく、尿が濃くなったり、便が白っぽくなるなどの変化がともなうこともあります。

3.食欲不振・胃の不快感

がんの進行によってすい液の分泌が低下し、消化機能がうまく働かなくなることで、胃の不快感や膨満感が現れ、食欲が低下します。満腹感がすぐに生じたり、吐き気をともなうこともあります。

4.糖尿病の悪化・新たな糖尿病の発症

すい臓が血糖値を調整するインスリンを分泌する役割を持つ臓器であることから、すい臓がんによって糖代謝に異常が起こることもあります。急に血糖コントロールが悪化したり、新たに糖尿病と診断された場合、すい臓がんの影響を疑うケースもあります。

5.倦怠感やだるさ

がんにより体全体の代謝バランスが崩れることで、全身の倦怠感を感じることがあります。痛みがはっきり出ていない段階でも、体調が優れず慢性的に疲れを感じることが多くなる症例もあります。

これらの症状は、すい臓がんに特有というわけではありませんが、複数が重なっている場合や、長期間続く場合は一度検査を受けることを考えてもよいでしょう。「黄疸+体重減少+腹部の違和感」などが揃っている場合は、精密検査の対象になるケースもあります。

すい臓がんの治療法

すい臓がんの治療法
すい臓がんの治療は、がんの進行度や全身状態によって異なります。ここでは、代表的な治療法とともに、注目されている補完的な療法についてもご紹介します。

手術療法(切除可能な場合)

早期に発見され、がんが限局している場合は、手術による切除が最も根治が期待できる治療法です。すい臓がんの代表的な術式には「すい頭十二指腸切除術」などがあり、病巣部とその周囲を大きく切除します。

化学療法(切除不能または術後補助)

がんが切除できない場合や、手術後の再発予防目的でおこなわれる薬物療法です。代表的な薬剤にはゲムシタビン(ジェムザール)やナブパクリタキセル(アブラキサン)などがあり、単剤または併用療法として用いられます。

放射線療法

局所進行がんに対して、腫瘍の縮小や痛みの緩和を目的としておこなわれます。近年では、化学療法との併用(化学放射線療法)により、治療効果を高めるアプローチも取られています。

フコイダン療法

近年、注目を集めている補完的なアプローチのひとつにフコイダン療法があります。フコイダンとは、昆布やもずく、メカブなどの褐藻類に多く含まれる硫酸化多糖体で、抗がん作用や免疫調整作用、抗炎症作用などがあるとされている成分です。
フコイダンが注目されているのは以下の作用です。

  • アポトーシス誘導作用:がん細胞を自滅に導く「アポトーシス」を促す働きが報告されています。
  • 血管新生抑制作用:がん細胞の増殖に必要な新たな血管の形成を抑える可能性があります。
  • 免疫力サポート:がん治療中に低下しがちな免疫機能を補うことで、体全体の防御力を維持。
  • 副作用の軽減:化学療法や放射線療法と併用した際に、副作用軽減に寄与する可能性も指摘されています。

 

現在のところフコイダンは医療用医薬品ではなく、健康食品・サプリメントとして提供されております。とはいえ、フコイダンを効率的に摂取できれば、がんに対して効果を発揮する可能性があると私は期待しています。がんに対する新たな選択肢の一つとなり得る、有望な成分だと考えています。ご興味のある方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
>>なぜ、フコイダンはがんに効くのか?

まとめ

すい臓がんによる痛みは、がんの部位や進行度によって症状が異なります。すい頭部のがんでは右上腹部の痛みや黄疸が比較的早期に出やすく、すい体部・すい尾部では背中や腰の痛みとして出るケースが多いのが特徴です。
とはいえ、こうした痛みはがんがある程度進行した段階で現れやすく、初期段階ではほとんど無症状ということも少なくありません。また、すい炎や胆石症など、他の疾患と症状が似ているため、自己判断は禁物です。
慢性的な背部痛や原因不明の腹痛、体重減少や黄疸といった症状が重なったときには、早期に医療機関を受診することが、命を守る第一歩となります。身体の異変に敏感になることが、すい臓がんの早期発見と対処につながります。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

1

この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

がんの種類を知る

おすすめの関連記事

スマホ用のフローティングバナー