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すい臓がんのステージ別生存率と余命|予後を左右する要因との向き合い方とは?

すい臓がんのステージ別生存率と余命|予後を左右する要因との向き合い方とは?

すい臓がんは「サイレントキャンサー」とも呼ばれ、初期症状が少なく、発見が遅れやすいことから、がんのなかでも予後が厳しいがんとされています。実際、ステージが進むほど治療の選択肢は限られ、生存率や余命にも大きな差が生じます。
しかし、近年では治療法の進歩や個別化医療の普及により、たとえ進行がんであっても希望が持てるケースも増えてきました。この記事では、すい臓がんの各ステージにおける生存率と余命の目安を中心に、予後に影響する要因や、診断後の向き合い方についても解説します。

※大腸がんの概要については以下の記事を参考にしてください。
>>大腸がんとは?その症状について

日置医院長

この記事の執筆者
日置クリニック 院長
日置 正人 医学博士

【経歴】
昭和56年3月 
大阪市立大学医学部卒業
昭和63年3月 
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
平成5年4月 
医療法人紘祥会 日置医院開設

詳しいプロフィールはこちら

ステージ別に見るすい臓がんの余命と生存率

ステージ別に見るすい臓がんの余命と生存率
(参照:膵臓がん | みんなの医療ガイド | 兵庫医科大学病院、https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/78

すい臓がんは、がんのなかでも「予後が悪い」とされるがんの一つです。診断時のステージによって余命や生存率が大きく異なります。ここでは、ステージごとの特徴と生存率・余命の目安、そして治療法や向き合い方についても簡単に解説します。

ステージ0の生存率・余命

ステージ0は、上皮内がん(すい管内乳頭粘液性腫瘍=IPMNなど)の段階で、まだ周囲の組織に広がっていない非常に初期の状態です。

この段階での発見は非常にまれですが、外科的切除により予後は良好で、5年生存率は90%以上と報告されています。
ただし無症状のことが多く、定期的な画像検査などで偶然見つかるケースが主です。

ステージ1の生存率・余命

ステージ1は、腫瘍がすい臓のなかにとどまっており、周囲のリンパ節や臓器に広がっていない段階です。

5年生存率:約40〜50%
推定余命:約5年以上(手術が成功した場合)

早期発見できれば手術による治療が可能で、術後の抗がん剤治療によって生存率の向上も期待できます。

ステージ2の生存率・余命

腫瘍がすい臓の外に広がり始め、近隣の臓器やリンパ節に転移しているが、手術が可能な状態です。

5年生存率:約30~40%
推定余命:1〜3年

術後に再発する可能性もあるため、化学療法(ゲムシタビン+S-1など)との併用が一般的な治療となっています。

ステージ3の生存率・余命

腫瘍が重要な血管(上腸間膜動脈など)に接しており、外科手術が困難な局所進行がんの状態です。

5年生存率:約10~20%
推定余命:6ヵ月〜1年

この段階では、FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法やナブパクリタキセル併用の化学療法が中心となり、一部では治療反応によって手術が可能になるケースもあります。

ステージ4の生存率・余命

ステージ4は、肝臓や肺など遠隔転移が認められる状態で、根治を目的とした治療は困難です。

5年生存率:3〜5%
平均余命:3~6ヵ月程度

治療の中心は化学療法や緩和ケアであり、症状の軽減や生活の質(QOL)の維持が目標になります。

生存率と余命の違い

生存率と余命の違い

「生存率」と「余命」は、がんの予後を示すために使われることのある用語ですが、意味や性質はまったく異なります。混同されやすいため、それぞれの定義と活用の仕方を明確に理解しておきましょう。

生存率とは

「生存率」とは、ある特定のがんと診断された人が、一定の期間内に生存している割合を示す統計的な指標です。一般的には「5年生存率」が使われていますが、例えば「5年生存率10%」とは、100人中10人が診断から5年後も生存していることを意味します。

【ポイント】
生存率は集団データに基づく平均値なので、患者さん一人ひとりの状況を反映した結果の数値ではありません。治療法の進歩や地域差、患者さん個々人の有意差や統計対象の時期によっても左右されます。

完治(=根治)とは別の概念であり、「5年生存した=がんが完全に治った」とは限りません。

余命とは

「余命」とは、ある病気や状態において、予測される寿命(残された時間)の目安を指します。医師が「余命は○年程度」と伝えるとき、それは診断時の病期(ステージ)、年齢、全身状態、合併症、治療内容など個別の要素を踏まえて導き出される予測値です。

【ポイント】
余命はあくまでも個人単位での医学的な推定値です。余命もまた、あくまで「目安」であり、前後する可能性があります。本人の体力、治療への反応、生活環境によっても変動します。

例えば「余命半年」といわれても、1年以上元気に過ごすケースも実際には存在します。

どちらも「絶対的な未来」を示すものではない

生存率は「集団の過去のデータ」に基づいた割合であり、余命は「現時点での個人の医学的状況」に基づいた推定期間です。
どちらも“予測値”であって、“確定的な未来”ではないことをしっかりと認識しましょう。

例えば、同じステージ4の診断を受けたとしても、「抗がん剤がよく効いた方」と「副作用で治療継続が難しかった方」では、余命が大きく異なります。

統計的には数ヵ月とされる余命でも、適切なケアや支援があり、同じ治療でも患者さん個々人の体質や生活習慣、予備体力などによっても薬の効果や治療への向き合い方はさまざまです。日々の過ごし方により、より長く、より穏やかに暮らすことも十分可能なのです。

なぜすい臓がんはデータ上では数値が悪いのか

なぜすい臓がんはデータ上では数値が悪いのか
(参照:なぜ膵がんは難治性のがんなのか?|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査、https://miyuki-cl.com/column/%e3%81%aa%e3%81%9c%e8%86%b5%e8%87%93%e3%81%8c%e3%82%93%e3%81%af%e9%9b%a3%e6%b2%bb%e6%80%a7%e3%81%ae%e3%81%8c%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%9f/

すい臓がんの5年生存率は10%未満と、がんのなかでも特に予後が悪いです。その背景には、すい臓という臓器の解剖学的特徴や、がんとしての性質が大きく関係しています。

初期症状が乏しく発見が遅れる

すい臓がんは発症初期に特有の症状がほとんどありません。腹部の違和感や背部痛、体重減少、黄疸などが現れる頃には、すでに進行しているケースも少なくないため、早期発見が難しいのが現状です。

解剖学的に「見つけにくい」場所にある

すい臓は胃の裏側、十二指腸や小腸、大血管などに囲まれた体の奥深い位置にある臓器です。このため、通常の腹部エコー検査やX線検査ではがんを見つけにくく、CTやMRI、PETなどの高度画像診断が必要になります。

しかし、がんが小さいうちは画像にも映らないことが多いため、定期的なスクリーニング検査の有効性も確実とはいえません。

進行スピードが速い

すい臓がんは進行スピードが速く、転移もしやすい「悪性度の高いがん」です。また、肝臓や腹膜、リンパ節への転移が早期から見られる傾向があり、診断時にはすでにステージⅢ~Ⅳであるケースが40%以上ともいわれています。

手術できる症例が限られている

すい臓がんを根治するための治療として「手術」は有力な方法なのですが、すい臓がんでは、切除可能な段階で見つかるのは全体の2割程度といわれています。

すい臓は周囲に大きな血管(門脈、上腸間膜動脈など)が集中していて、腫瘍がこれらに浸潤してしまうと、物理的に切除が困難となってしまうのです。

早期発見でも再発リスクが高い

仮に早期で手術ができたとしても、再発率が非常に高いのもすい臓がんの特徴です。がん細胞が早期から血管やリンパに入り込むこともあり、見えないレベルでの微小転移が術後に再燃するケースも見られます。

総合的に見ても「がんのなかでも特別に厳しい」

こうした理由から、すい臓がんの5年生存率は7~9%程度、ステージ4にいたっては平均余命が半年程度とされることもあります。がんのなかでも比較的厳しい成績ではありますが、近年は治療薬の進化や手術技術の向上により、生存期間の延長も報告されています。「進行=絶望」とは限らないことも覚えておきましょう。

余命の期間をどう過ごすか

すい臓がんと診断されたあと、余命の期間をどう過ごすかは非常に個別性が高く、患者ご本人とご家族にとって大切なテーマとなるでしょう。
近年では、治療の進歩により「延命」に加え「生活の質(QOL)を保つ」ことにも重きが置かれています。抗がん剤や緩和ケアをうまく併用することで、痛みや不快症状を和らげ、家庭で自分らしく過ごす時間を大切にできるように支援されます。
また、「余命の時間をどう生きたいか」を医療者と共有することも重要です。例えば、食事を楽しみたい、自宅で家族と過ごしたい、旅行にいきたいなど、具体的な希望がある場合は早めに伝えましょう。医療チームと協力しながら「自分らしい時間の使い方」を実現していくことが、残された時間の質を高めることにつながります。

すい臓がんの治療法

すい臓がんの治療法
すい臓がんの治療は、がんの進行度や体力・全身状態などに応じて選択されます。外科的な切除が可能な場合は手術が第一選択となりますが、進行がんに対しては化学療法や放射線療法、内視鏡的処置なども組み合わせておこなわれます。

手術

すい臓がんの治療において、早期で切除可能な場合の外科手術は、根治を目指すうえで非常に有効です。しかし、すい臓がんは発見時にすでに進行していることも少なくありません。

診療ガイドラインとは別に、「すいがん取扱い規約」では、がんの局所進行や遠隔転移の有無に応じて手術が可能かどうかの可能性が分類されています。一般的には「すいがん取扱い規約」に基づいて手術を含めた治療方針が決定されます。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>すい臓がんはなぜ進行が速い?見逃さないために知っておきたい知識と対策
>>すい臓がんステージ2・3の治療法は?原因や余命について解説!

抗がん剤

切除が困難な場合や再発リスクが高い症例では、化学療法が中心になります。主に使用される薬剤には、ゲムシタビンやナブパクリタキセル、FOLFIRINOX療法(フォルフィリノックス)などがあります。
近年では、S-1(エスワン)などの内服薬も登場し、生活の質(QOL)を保ちながら治療を継続しやすくなっています。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>すい臓がんステージ2・3の治療法は?原因や余命について解説!

内科的ドレナージ術

すい臓がんにより胆管や消化管が圧迫されると、黄疸や消化不良が生じることがあります。黄疸や消化不良に対処するためにおこなわれるのが内視鏡的ドレナージ術です。

内視鏡を用いて「ステント(管)」を胆管内に挿入し、胆汁の流れを改善することで、黄疸の軽減や消化吸収の正常化を図ります。食事を思うように食べれなくなると体力が低下してしまいます。ドレナージは治療中の体調維持にも重要なサポート治療の手段です。

フコイダン療法

フコイダンとは、昆布やモズクなどの海藻に含まれる多糖類で、がん細胞のアポトーシス誘導や免疫活性化作用が研究されています。近年では、補完代替療法の一環として注目されており、化学療法との併用例もあります。

フコイダンは食品由来の成分なので、食事やサプリメントとしてフコイダンを取り入れる患者さんも増えています。また、大きな副作用もなく日常生活に取り入れやすいのも期待できる治療法とされている理由の一つです。摂取を検討する際は、必ず主治医と相談のうえ、治療とのバランスを見ながら検討しましょう。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>フコイダンはがんに作用する?フコイダン療法と低分子・中分子・高分子の違い

まとめ

すい臓がんは、ステージによって生存率と余命に大きな開きがある難治性のがんです。ステージ0や1の早期に発見されれば5年生存率も大きく改善しますが、多くの症例は進行してから見つかるため、早期発見と予防的アプローチが極めて重要になります。
また、生存率や余命といった数値はあくまで「目安」に過ぎません。近年の治療技術の進歩や、個々の体力・治療への反応によって、予後は大きく変わる可能性があります。
重要なのは、数値に一喜一憂するのではなく、「自分にとって最善の治療と生活」を医療者とともに選び取っていく姿勢です。
希望を持ち、前向きに日々を重ねていくことこそが、有意義な“治療”につなげられるはずです。

近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。

なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。

フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。

それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。

「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果

>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ

がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。

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この記事の執筆者
日置クリニック コラム編集部

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