2022.02.24
がん咳や痰が続くのは肺がんのサイン?症状の見分け方と対処法

咳や痰は、風邪や気管支炎などでもよくみられる症状ですが、2週間以上続く場合は注意が必要です。症状の変化や悪化を繰り返す場合、肺がんの可能性も否定できません。
この記事では、肺がんに特徴的な咳や痰の症状と、日常の症状との見分け方、医療機関を受診すべきタイミングなどについて解説します。
目次
肺がんにともないやすい咳と痰の特徴
参考:https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/cancer/basic/lung_1.html
肺がんは早期のうちは自覚症状が現れにくく、症状が見られたときにはがんが進行していて、場合によっては全身に転移していることもまれではありません。
比較的早期から症状が見られる肺がんの種類には、扁平上皮がんや小細胞がんなど、肺門部にできるがんです。 肺門部にがんができた際に生じやすい症状が咳や痰です。
一方で腺がんや大細胞がんなど、肺の末梢部分にできるがんでは太い気管支 がないために、がんが小さいうちは 症状が現れにくいという特徴があります。自覚症状が現れる前に 集団検診や定期検診などのレントゲン検査から偶発的に発見されることも少なくありません。
2週間以上続く咳・痰には注意
肺がんでよく見られる呼吸器症状は、咳(せき)と痰(たん)です。風邪でもないのに咳や痰が2週間以上続く場合や、血痰が見られた場合には一度専門医への受診を検討した方がよいでしょう。
咳や痰は、日常的にかかる風邪でも起こることがある症状のため、風邪が長引いていると思いながら放っておいて発見の遅れにつながることもあります。
とはいえ、一般的な感染症等で2週間以上咳と痰が続く疾患もあります。代表的なものには、マイコプラズマ肺炎やアレルギー性の疾患などがあります。
「たかが咳」と放置してしまいがちですが、咳が長引く背景には、肺がん以外にも慢性の肺疾患や感染症など、重大な病気がかくれていることもあります。いずれにしても治療が必要な状態になっていることも少なくないため、医療機関への受診を検討したいところです。
咳の特徴(乾いた咳・湿った咳)
肺がんにともなう咳でも初期の頃は 通常の風邪による咳と大きく変わりありません。肺がんによる咳には、いくつかの特徴があります。
- 乾いた咳(痰をともなわない咳):がんが気管支を刺激している場合に起こります。
- 湿った咳(痰をともなう咳):気道に炎症や感染があると、痰がからみやすくなります。
いずれにしても長く続くのが肺がんの咳の特徴の一つです。がんの症状が進むと、がんによる気道の圧迫や胸水がたまることが原因となり、咳が止まりにくくコントロールしにくくなるという傾向があります。
痰の色と量に注目(血が混じる、黄色や緑色の痰)
肺がんによって生じる痰の変化にも注意が必要です。
- 血が混じった痰(血痰):肺がんの重要なサインのひとつです。血の量はわずかでも、肺や気管から出血があるために痰に血が混ざります。特に肺の出口近くにがんができている症例ほど、痰に血が混ざりやすくなります。
- 黄色や緑色の痰:緑や黄色の痰や粘り気のある痰が増える場合は、肺の中でがんによる炎症が起きているかもしれません。
- 痰の量が増える:がんによる刺激により気道に影響を及ぼしている可能性があるため、痰の量が増えることがあります。
咳止めを服用しても効果がないのか?
肺がんによる咳は、がんによる物理的な刺激や気道の炎症、胸水の貯留などが原因となっているため、一般的な咳止め薬では根本的な改善が見られないことがほとんどです。
一時的に咳が和らぐことがあっても、再び咳き込む・夜間に悪化するといった場合は、風邪以外の疾患が隠されている可能性があります。
「咳止めを飲んでいるのにずっと治らない」「市販薬を試しても変わらない」と感じたら、自己判断を避け、呼吸器内科などの専門医に相談することを検討しましょう。
肺がんで咳や痰が出る原因
腫瘍によって気道や肺組織に起る刺激や炎症が、「咳」と「痰」につながる要因です。
腫瘍の刺激で起こる
肺がんが気管や気管支といった「空気の通り道」にできると、咳が出やすくなります。これは、がんの腫瘍(しゅよう)が気道の内側を圧迫したり、刺激したりすることで、体が異物を外に出そうとする「咳反射」が起こるためです。安静にしていてもがんによる刺激で咳が続くこともあります。
炎症や感染をともなっている
肺がんが進行すると、がんの周囲に炎症が起きたり感染を引き起こしやすくなります。炎症や感染をともなっている状態になると、気道から粘液(痰)が分泌されやすくなります。
夜に咳が出るのは肺がんに限ったことではない
咳が夜に悪化する、あるいは就寝時に咳き込んで眠れないといった症状は、肺がんに限らず多くの呼吸器疾患で共通して見られます。
体位による影響(仰向け)
夜間、横になると気道に分泌物(痰)がたまりやすくなり、それが刺激となって咳が出ることがあります。これは健常人でも見られる反応ですが、肺がんによって気道が圧迫されていたり、分泌物が増えていたりすると顕著になることもあります。
副交感神経の優位による気道過敏性
夜間は自律神経のうち副交感神経が優位になりやすく、気道が収縮しやすくなります。そのため、喘息のように気道が敏感な状態や、肺がんによって炎症を起こしている場合には、咳が出やすくなることがあります。
夜に咳が悪化する呼吸器疾患
呼吸器疾患にはさまざまなものがありますが、以下の疾患は特に夜間の咳の症状が強くなります。
- 喘息:夜間から明け方にかけて咳が悪化することが多く、発作的な咳や呼吸困難をともなうことがあります。
- 咳喘息:喘鳴(ゼーゼー音)をともなわずに咳だけが続くタイプで、夜間や明け方に悪化しやすいのが特徴です。
- 後鼻漏(こうびろう):鼻水が喉の奥に流れ込むことで刺激になり、就寝中に咳が出やすくなります。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):喫煙歴のある人に多く、痰をともなう咳が夜間や朝方に悪化する傾向があります。
- 感染後咳嗽:風邪やウイルス感染の後に長引く咳が続き、夜間に強くなるケースが見られます。
夜間の咳だけで肺がんを断定することはできませんが、数週間以上続く咳や、血痰・息苦しさ・声のかすれなどの症状も含めて現状を把握することが大切です。
肺がんが進行すると現れる症状
肺がんがある程度進行すると、咳や痰だけでなく全身にさまざまな症状が現れるようになります。がんの広がり方や場所によって異なりますが、以下のような症状が現れた場合は、肺がんの可能性があります。
呼吸困難・息切れ
がんが肺の広い範囲に広がったり気道をふさいだりすると、空気の通り道が狭くなって息苦しさを感じるようになります。歩いたり、階段をのぼったりするだけで息切れすることもあり、日常生活に支障が出てくることもあります。
また、がんによって「肺に水がたまる(胸水)」状態になると、肺が十分にふくらまず、呼吸がしづらくなります。胸水がたまると、安静にしていても息苦しさを感じることもあります。
胸痛・肩の痛み
肺がんが肺の膜(胸膜)や、周囲の神経、骨にまで広がると胸の痛みや肩の痛みを引き起こすことがあります。
特に、肺のうえの方にできるがん(パンコースト腫瘍)は、肩から腕、指先にかけて痛みやしびれが出ることもあります。このような神経に関係する症状は、整形外科的な問題と見分けがつきにくいため、診断が遅れやすい傾向があります。
血痰や体重減少、全身のだるさ
肺がんが進行すると、以下のような「全身症状」も現れるようになります。
- 体重の減少:食欲が落ちたり、がんの進行そのものによって体重が減っていくことがあります。
- 全身のだるさ(倦怠感):悪性腫瘍増大によりエネルギーが消耗され、慢性的な疲れを感じるようになります。
肺がんステージ4になると咳が止まらなくなる?
肺がんがステージ4に進行すると、がんが気道や肺全体に広がり、慢性的な咳が続くことがあります。増大したがんによる気道の圧迫や炎症、胸水の貯留などが原因で、咳が強く、長引きやすくなります。夜間や横になると咳が悪化し、睡眠を妨げることも少なくありません。継続的な咳は、身体の消耗や不眠などの二次的な影響を引き起こすこともあるため、早めに相談して対応するのが重要です。
進行した肺がんの詳細についてはこちらの記事も参考にしてください。
>>肺がんステージ4とは?症状・転移先・治療法と向き合い方を解説
肺がんと似た症状が出る病気
肺がんの代表的な症状である「咳」や「痰」、「息切れ」は、他の呼吸器疾患でもよく見られます。ここでは、肺がんと似た症状をともなう代表的な病気について紹介します。
ぜんそく:ヒューヒュー音と発作的な咳
ぜんそくは、気道が慢性的に炎症を起こすことで、空気の通り道が狭くなり、咳や息苦しさが生じる病気です。特徴的なのは、呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音(喘鳴)が出ることです。
また、夜間や明け方に発作的な咳が繰り返されるのも特徴で、運動や気温差などでも症状が悪化します。
肺炎:発熱と急な症状
肺炎は細菌やウイルスなどの感染によって肺に炎症が起こる病気です。急な発熱、悪寒、咳、黄色や緑色の痰といった症状が特徴的です。
肺がんとは違い、症状が急速に進行するのと抗菌薬(抗生物質)によって症状が改善しやすいです。ただし、高齢者や慢性疾患を持つ人では、症状がはっきりとでないこともあります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患):喫煙歴と慢性的な咳
COPDは、長年の喫煙などが原因で肺がゆっくりと傷害されていく病気です。慢性的な咳や痰、運動時の息切れが代表的な症状です。
肺がんとの共通点も多く、特に喫煙歴がある方に多いという点でも似ています。実際、COPDの人は肺がんを併発するリスクも高いため、両者を区別するには画像検査などが必要です。
間質性肺炎:息切れが目立つ・進行が早い
間質性肺炎は、肺の「間質」と呼ばれる組織に炎症や線維化(硬くなる変化)が起こる病気です。深い呼吸がしにくくなる息切れが特徴で、進行が早いタイプでは急激に呼吸が悪化することもあります。
乾いた咳(痰が出ない咳)が続くという点で肺がんと似ていますが、発熱をともなうことがあること、また肺全体にわたってびまん性に変化が起こる点が異なります。
肺がんの検査方法
咳や痰が2週間以上続く、あるいは痰に血が混じるといった症状があるときは、肺の病気を調べるための検査がすすめられます。肺がんを含めた疾患の鑑別には、以下のような検査がよく用いられます。
胸部X線検査
一般的に肺がんを疑う場合に最初におこなわれるのが「胸部X線検査(レントゲン)」です。肺に影がないか、腫瘍がないかなどを画像で確認します。
簡便で患者さんの体への負担が少ないことから、健診などでも広く使用されています。しかし、小さな腫瘍や肺の奥にできたがんは写りにくい場合もあるため、異常が見つからない場合でも、症状が続いていれば次の検査に進むこともあります。
CT検査
CT(コンピューター断層撮影)は、X線よりも詳しく肺の内部を調べる検査です。断面画像を何層にも分けて撮影できるため、小さな異常も発見しやすくなります。
肺がんの位置や大きさ、広がりの確認に優れているため、精密検査の一つとして用いられることもあります。造影剤を使用することで、血管との関係性なども詳細に評価できます。
喀痰(かくたん)検査
痰の中にがん細胞が含まれていないかを調べる検査です。顕微鏡を使って、痰に混じった細胞の形などを確認します。
特に肺門部(肺の中心に近い部位)にできるがんでは、痰にがん細胞が出やすいため、有用な検査の一つとされます。とはいえ、肺の末梢部分に腫瘍ができている症例の場合、がん細胞が痰に出てこない場合もあるため、結果が陰性でも安心せず、ほかの検査と組み合わせて診断されます。
気管支鏡検査など
より詳しい診断が必要なときには、気管支鏡(きかんしきょう)検査が実施されることがあります。これは、鼻や口から細いカメラを気管支の中に入れ、実際に肺の内部を観察したり、組織を採取したりする検査です。
局所麻酔でおこなうことがあり、患者さんにやや負担はありますが、確定診断のためには重要な検査です。最近では、より精度の高い「超音波気管支鏡(EBUS)」なども使われています。
肺がんの検査についてはこちらの記事も参考にしてください。
>>肺がん初期症状とは?見逃しやすい兆候と進行時の変化を徹底解説
肺がんの治療法
肺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)やがんの種類(小細胞肺がん・非小細胞肺がん)、患者さんの全身状態などによって選択されます。複数の治療法を組み合わせることもあり、患者さんの肺がんのステージやタイプによって個別性に合わせた治療が検討されます。
手術
早期の肺がんで転移が見られない場合には、がんのある肺の一部または全体を切除する手術を実施します。根治を目指す治療法のひとつです。
放射線療法
切除が難しいケースや手術ができない場合に用いられます。局所のがん細胞を破壊するために、体外から放射線を照射します。
化学療法
がん細胞の増殖を抑える抗がん剤を用いた治療法です。特に小細胞肺がんでは重要な治療の選択肢の一つです。
分子標的治療
がん細胞に特有の遺伝子変異を狙って作用する薬を使う治療法で、特定の遺伝子変異が確認された非小細胞肺がんに有効です。
免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬を用いて、患者自身の免疫ががん細胞を攻撃できるように働きかける新しい治療法です。進行がんに対しても効果が期待されています。
フコイダン療法
肺がんによる咳や痰の症状を抱えるなかで、補完代替医療のひとつとして注目されているのが「フコイダン療法」です。フコイダンは、昆布やもずくなどの海藻に含まれる多糖類の一種で、免疫機能の調整作用やアポトーシス(がん細胞の自然死)を誘導する働きが報告されています。標準治療と併用しながら取り入れるケースも見られます。
以下記事では長年にわたりがん治療に携わってきた医師が、自身の臨床経験と科学的知見に
基づき、フコイダンががん治療にどう役立つのか、そのメカニズムと期待される理由を分かりやすく解説しています。
肺がんの原因と予防法
肺がんは、他のがんと比べても進行が早く、発見が遅れると治療が難しくなることがあります。そのため、「原因を知り、できる限りの予防をすること」「早期発見のために定期的な検査を受けること」が非常に重要です。
喫煙が最大のリスク
参考:https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/cancer/basic/lung_1.html
肺がんのもっとも大きな原因として因果関係がわかっているのが喫煙です。タバコに含まれる有害物質は、肺の細胞に長年ダメージを与え続け、がん細胞が生まれるきっかけになります。
肺がん全体のうち、およそ7割は喫煙が関係しているといわれており、特に「扁平上皮がん」や「小細胞がん」などは喫煙との関連が深いタイプです。
喫煙者は、非喫煙者に比べて肺がんのリスクが約5倍に高まることがわかっています。禁煙を始めることで、年齢にかかわらずリスクを下げることができます。
受動喫煙や大気汚染も関与
本人がタバコを吸っていなくても、周囲の人のタバコの煙(受動喫煙)に長期間さらされることで、肺がんのリスクが高まることが知られています。
また、ディーゼル排気ガス、工場の排煙、PM2.5(微小粒子状物質)など、大気汚染も発がん性が指摘されており、特に都市部では注意が必要です。
その他、アスベスト(石綿)やラドンガスなど、職業や住環境に関連したリスクも報告されています。
早期発見のための定期的な検診のすすめ
肺がんの予防には「禁煙」と「環境への配慮」が大切ですが、すべてのリスクを完全に避けることは困難です。そのため、もうひとつ重要なのが定期的な検診による早期発見です。
特に以下のような方は、毎年1回は検診を受けることがすすめられます。
- 喫煙している、または過去に長期間喫煙していた
- 40歳以上で慢性的な咳・痰がある
- 家族に肺がんを患った人がいる
- 大気汚染が深刻な地域に住んでいる、環境にいる
検診では、胸部X線検査を基本に、必要に応じてCT検査などが追加されます。早期の肺がんは無症状であることが多いため、自覚症状がなくても「念のため」の検査が命を守るきっかけになることもあるでしょう。
まとめ
肺がんの特徴の一つでもある咳や痰は、日常的に誰にでも起こる症状であるため、「風邪かな」「疲れているだけ」と見過ごしてしまいがちです。しかし、2週間以上続く咳や、痰の色や性状の変化は、体からの大切なサインかもしれません。
肺がんは初期には症状がほとんど現れず、気づかないまま進行してしまうことがあります。その一方で、日ごろから「いつもと違う」「ちょっと気になる」といった変化に目を向けることで、早期発見につながる可能性があります。
自分の体調に対する小さな違和感を軽視せず、記録したり医療機関に相談したりする習慣が、健康を守る第一歩となるでしょう。
長引く咳や痰、これまでと違う呼吸の違和感を感じたときには、放置せず、早めに医師の診察を受けることを検討しましょう。自分の健康を守るのは、自分自身の「気づき」と「行動」です。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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