2023.10.10
がん慢性リンパ性白血病(CLL)の症状・検査・治療と予後を徹底解説

慢性リンパ性白血病(CLL)は、リンパ球の一種であるB細胞が異常増殖し、血液や骨髄に影響を及ぼす白血病の一種です。ほかの白血病と異なり、進行が非常に緩やかであり、診断後も長期間にわたり安定した生活を送る患者さんも少なくありません。
日本では白血病全体のなかでも稀な病型とされていますが、欧米では最も一般的な白血病の一つとして知られています。この記事では、CLLの症状や検査、診断、治療方法に加え、予後についても詳しく解説します。CLLの基礎知識を深め、患者さんや家族が適切な治療方針を選ぶ一助となれば幸いです。
>>【簡単理解】白血病とは?原因や症状、診断に伴う検査や最新の治療法を解説
目次
慢性リンパ性白血病とは
慢性リンパ性白血病(以下CLL)はリンパ球の中のB細胞と呼ばれる細胞が異常増殖し、血液中や骨髄で増える病気です。異常増殖とは正確にいうとがん化しているのと同義であるといえます。
急性リンパ性白血病と違って、成熟したリンパ球が白血病細胞として増加する病態です。ほかのタイプの白血病と同じく染色体の異常をともなうことも珍しくありません。慢性リンパ性白血病の原因は実際のところ詳しくはわかっていません。
日本では慢性リンパ性白血病に罹患するのは白血病全体の数パーセントに過ぎず非常に珍しいタイプといえますが、欧米諸国では白血病全体の30%も占めています。
欧米の日系人における頻度も低いことから、人種の違いによる遺伝的要因があるためではないかとも考えられています。
>>白血病の種類と特徴を徹底解説:タイプ別症状と治療法の違い
慢性リンパ性白血病の症状
慢性リンパ性白血病の症状は、初期段階ではほとんど現れ ません。まったく症状がない時期に、健康診断などをきっかけにその病気の予兆が発見されることも珍しくありません。しかし、なかには何らかの症状を自覚していたり、病気が進行するとともに症状が現れることもあります。
CLLの症状で異常がなかったとしても、比較的自覚されやすい症状の一つに「だるさ(倦怠感)」があります。その他、発熱や体重減少、汗をかきやすくなるなどの症状が出ることもあります。
さらに正常な赤血球の数が減ってくるとともに、貧血などの症状が現れ始めたり息切れや動機などが生じることもあります。免疫力も徐々に低下してくるため、肺炎や敗血症などの感染症をともなうことも出てきます。
また、リンパ節内に白血病細胞が増えることにより、体のリンパ節や脾臓に痛みのない無痛性の腫れが生じてくることもあります。
慢性リンパ性白血病の検査
慢性リンパ性白血病(CLL)の検査は、病気の診断や進行度を評価するためにおこなわれます。検査にはさまざまな方法がありますが、なかでも「血液検査」により血液像を把握することはCLLの診断と経過観察において重要な検査の一つであるといえるでしょう。
血液検査
血液像を把握するための検査では、血液中の白血球、赤血球、血小板の数や形態を詳しく調べます。CLLでは、成熟したリンパ球の著しい増加がみられるのが特徴の一つです。また、一部の患者さんでは貧血や白血板の減少を確認する例もあります。
骨髄検査
骨髄から採取した細胞を調べ、異常なリンパ球の割合や骨髄の機能を評価します。CLLの場合、異常なリンパ球が細胞全体の30%以上 を占め始めます。このリンパ球は表面抗原と呼ばれる細胞表面のタンパク質の種類に特徴があります。
骨髄検査は、白血病の病気の進行度や治療方針を決定するために非常に重要です。また、骨髄がどの程度病気に侵されているかを知ることで、予後の見通しを立てる場合もあります。
細胞表面マーカー(フローサイトメトリー)検査
リンパ球の表面にある特定のマーカーを調べる検査です。CLLの診断においては、異常なリンパ球に特定の分子(CD5・CD23)が発現しているかを確認します。フローサイトメトリー検査は単独で確定診断されるわけではありませんが、診断のための大事な検査です。
慢性リンパ性白血病の診断基準
CLLの診断は、血液検査や骨髄検査の結果をもとにおこなわれます。検査結果をもとにした診断基準には以下の項目が含まれます。患者さんの症状によっては、有訴症状を加味して診断されることもあります。
- 血液中のリンパ球数が5,000/μL以上
- CD5陽性やCD23のBリンパ球が確認される
- 骨髄やリンパ節で異常リンパ球の増殖がみられる
慢性リンパ性白血病のステージ
(参照:https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d090203/)
CLLの進行度は、一般的に以下の分類法をもとにステージわけされます。
【改訂Rai分類(米国)】
低リスク(ステージ0):リンパ球増加のみ
中リスク(ステージI-II):リンパ節、脾臓、肝臓の腫大
高リスク(ステージIII-IV):貧血や血小板減少がともなう
【Binet分類(欧州)】
ステージA:3カ所未満のリンパ組織が腫大
ステージB:3カ所以上のリンパ組織が腫大
ステージC:貧血または血小板減少をともなう
これらの分類は、治療開始時期や方針を決める際の基準となります。改訂Rai分類の高リスクおよびBinet分類のC期では治療開始が検討されます。
慢性リンパ性白血病の治療
(参照:https://venclexta.jp/cll/disease/treatment.html)
CLLの治療は、患者の症状や病状の進行度に応じて異なります。以下の治療法が一般的に用いられます。
①経過観察
症状がない場合や進行が緩やかな場合は治療をおこなわず、定期的に病状を観察します。リンパ球の急速な増加がみられず無症状の場合は経過観察をするのが一般的です。
②薬物 療法
発熱や体重減少だるさなど、何かしらの症状が現れた場合や観察したB細胞に活動性が確認できた場合には、抗がん剤による化学療法を始めます。
貧血症状が出現したり、血小板などの正常な血球成分量が低下しリンパ球の急速な増加などが見受けられた場合、ときとして脾臓やリンパ節の腫れによる症状が現れます。
従来CLLの場合、病状の勢いをコントロールすることを目的として化学療法をスタートさせていました。しかし近年優秀な分子標的薬も登場し、再発や難治性の症状があったとしても治療が可能になりつつあります。
③造血幹細胞移植
(参照:https://www.rinpasyu.jp/inspection05/)
若年患者さんや治療の抵抗性が高いケースでは、造血幹細胞移植が検討されます。特にCLLの場合、17番染色体の一部がかけていると通常の化学療法では治療成績が悪い実態もあります。
そのため染色体異常の症例によっては、骨髄移植が考慮されるケースもあります。また染色体の欠損以外にも、通常の化学療法に対する反応性が悪い場合や再発例に対しては造血幹細胞移植が治療の選択肢の一つとなります。
>>白血病の治療法とは?:効果的な治療法とアプローチについて徹底解説
慢性リンパ性白血病の原因と患者数
(参照:https://www.cll-life.jp/cll/epidemiology/)
日本ではCLLは白血病のなかでは少なく、全白血病の約3%とされ 、非常に稀なタイプです。一方で欧米諸国では最も一般的な白血病の一種とされています。この地域差は、遺伝的要因や環境的要因が影響しているとも考えられていますが、現在のところはっきりとした原因はわかっていないため、今なお研究が続けられています。
慢性リンパ性白血病の予後、寿命
慢性リンパ性白血病(CLL)は、進行が非常に緩やかなタイプの白血病です。CLLに罹患したとしても、長期間にわたって安定した生活を送ることができる患者さんも少なくありません。データによってはCLLの早期患者さんは、診断後にも10〜20年以上生存 している例もみられています。
そのため、診断を受けても「寿命が短くなる」「予後が悪い」といったイメージに直結するのも実は稀なケースといえます。特に症状が軽い場合や初期段階では、治療をおこなわず経過観察のみで何年も過ごせるケースもあります。
特に高齢者で発症する場合には、CLLが直接寿命を左右するケースは稀です。どちらかというと、合併症やほかの健康問題の管理のほうが重要になる症例も少なくありません。
予後に対する配慮だけでなく、患者が「寿命に対する不安」や「病気への恐怖」を抱かないよう、心理的サポートを含めた包括的なケアが必要といえるでしょう。CLL患者は適切な医療ケアとライフスタイルの見直しによって、病気と共存しながら充実した生活を送ることが期待できます。
まとめ
慢性リンパ性白血病(CLL)は、進行が緩やかであることから、患者の寿命や生活の質に直結しないケースが多い疾患です。適切な医療ケアを受けることで、患者は診断後も長期間にわたって日常生活を維持することが可能です。
病状の進行に合わせた段階的な治療や、心理的サポートを含む包括的なケアが重要です。また、早期発見と適切な診断が良好な予後の鍵となるため、定期的な検査や経過観察が重要です。CLL患者さんがより安心して生活を送れるよう、医療の進歩と患者支援の拡充がますます期待されています。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
がんの種類を知る
おすすめの関連記事
-
2021.08.31
がん -
2021.08.31
がん -
2023.11.01
がん -
2021.08.31
がん -
2024.06.27
がん