2024.04.04
がん前立腺がんの原因とは?初期症状・検査・治療・生存率まで医師監修で徹底解説
前立腺がんは、日本の高齢男性において年々増加傾向にあるがんの一つです。前立腺がんは、初期にはほとんど自覚症状がありません。病状の進行の度合いや悪性度によって治療方針も大きく異なり、監視療法から手術、放射線、ホルモン療法までさまざまな選択肢があります。
この記事では、前立腺がんの特徴からリスク要因、検査法、病期分類、治療法、さらには生存率や補完療法として注目されるフコイダン療法まで、最新の医療情報をもとにわかりやすく解説します。
目次
前立腺がんとは

(参照:疫学について|前立腺がんを知る|自分らしく暮らすために知ってほしい – 前立腺がん、https://betterl.bayer.jp/zenritsusengan/know/about/basic/epidemiology)
前立腺がんは、一昔前に比べると近年急激に上昇し始めた悪性腫瘍の一つです。60歳以降に徐々に増え始め、高齢者に多い疾患です。近年では40代以降の若い患者さんの罹患率も徐々に増えてきています。
前立腺がんが増え始めた背景の一つとして、生活習慣の影響が考えられます。またPSAと呼ばれる前立腺がんの腫瘍マーカーが血液検査により手軽にできるようになったため、早期発見が可能になったことも前立腺がんの罹患数が急上昇した背景の一つといえるでしょう。
前立腺がんのリスクと原因

(参照:疫学について|前立腺がんを知る|自分らしく暮らすために知ってほしい – 前立腺がん、https://betterl.bayer.jp/zenritsusengan/know/about/basic/epidemiology)
現在のところ前立腺がんがどうして生じてしまうのか、その原因自体ははっきりとわかっていません。しかし危険因子として、いくつかのリスク要因が考えられています。
加齢
前立腺がんは50歳頃から増え始め60〜70歳にかけて急上昇し、70歳以降にもっとも高くなります。グラフを参照しても加齢とともに発生率がぐっと高まり、罹患数が上昇しています。50歳を過ぎたら症状がなくても検診などを受けて、リスクを管理することが理想的といえるでしょう。
食生活
近年の日本人の前立腺がんの罹患人口を考えると、食生活の欧米化による影響との関連性は無視できません。近年さまざまな研究により、動物性脂肪の取り過ぎによる欧米型の食事の影響で高脂肪食になったことも、前立腺がん罹患率上昇の背景の一つと考えられています。実際に前立腺がんとの関連性を報告している論文が増えてきています。前立腺がんに限らず、高脂肪食などはさまざまながんとの関連性が示されています。
(参照:High adherence to Western dietary pattern and prostate cancer risk: findings from the EPIC‐Spain cohort – Castelló – 2023 – BJU International – Wiley Online Library、https://bjui-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bju.16001?utm_source
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27754328/)
男性ホルモン

(参照:前立腺癌 | 北海道大学大学院医学研究院 腎泌尿器外科学教室、https://toms.med.hokudai.ac.jp/clinic/patient/bladder02/)
前立腺がんの発症には、男性ホルモンが関係していると考えられています。前立腺が機能するために必要な男性ホルモンは、がん細胞を成長させてしまう側面もあります。前立腺がんの細胞の中にはアンドロゲン受容体というものがあり、この受容体にアンドロゲンが結合すると細胞のがん化も促されてしまいます。
俗説の一つとして「エネルギッシュな男性ほどと男性ホルモンの分泌量が多い」と考えられ、前立腺がんになりやすいなどといわれることもありますが、実は男性ホルモンの量と前立腺がんの因果関係についてははっきりとわかっていないのが現状です。
男性ホルモンががん化を促すこと自体はわかっていますが、分泌量が多いからがんになりやすいわけではないようです。
遺伝
父親や兄弟に前立腺がんになった人がいると、本人の発症リスクが高くなるという報告もあります。
家族性の前立腺がんであれば、比較的若い年代でも前立腺がんを発症することも少なくないので遺伝的関与に関しては否定できないでしょう。そのため、近親者に前立腺がんに罹患した人がいる場合は、40歳くらいから前立腺がんの検診を受けることを検討したいところです。
前立腺がんの症状

(参照:前立腺とは?|前立腺がんについて|What’s? 前立腺がん、https://www.zenritsusen.jp/about/what/)
前立腺がんは一般的に初期の頃にはほとんど症状が現れません。前立腺がんが発症した際に生じる自覚症状には、排尿障害にともなうものが多いです。しかし前立腺がんは前立腺の外側にある辺縁領域に生ずることが多いため、ある程度進行しないと前立腺の中心部分を通る尿道に対して干渉せず、症状が現れにくいのです。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>“前立腺がんの初期症状は?原因・検査・最新の治療法まで徹底解説”
前立腺がんの検査
前立腺がんの検査で最も広く用いられているのが前立腺の腫瘍マーカーでもある「PSA検査(前立腺特異抗原検査)」です。PSAは血液中に含まれる前立腺由来のタンパク質の濃度を測定する検査で、前立腺がんのスクリーニングや経過観察にも活用されています。
PSAの値が高いからといってすぐにがんであるとは限りませんが、一定の基準を超えている場合は、前立腺がんの可能性を疑い、さらなる精密検査をおこないます。
PSAの値が高い場合、次の検査として「直腸診」や「経直腸的超音波検査(TRUS)」、確定診断をする目的で「前立腺針生検」が実施されます。前立腺生検では、前立腺組織を採取して顕微鏡で確認し、がんの有無や悪性度(グリソンスコア)を評価します。
検査は身体への負担が比較的少なく、PSA検査は健康診断にも取り入れられるので、50歳を超えた男性や家族歴のある方は定期的なチェックを心がけましょう。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>“前立腺がんの初期症状は?原因・検査・最新の治療法まで徹底解説”
前立腺がんの病期・グリソンスコア

(参照:前立腺がんのステージ分類 | 新松戸中央総合病院、https://www.shinmatsudo-hospital.jp/features/cancer-treatment/prostate/stage/)
前立腺がんの病状を把握する際の指標の一つに、病期(ステージ)というものがあります。悪性腫瘍の大きさや組織への浸潤具合、リンパ節への転移の有無やその他の組織に遠隔転移しているかどうかなどを参考にする「TMN分類」を活用するのが一般的です。前立腺がんの場合、病期だけで治療方針が決まるのではありませんが、進行の程度を知る参考とします。
前立腺がんのリスク分類

(参照:腺友ネット、https://pros-can.net/01/01-2.html)
前立腺内にとどまっている「限局がん」、前立腺の被膜から飛び出てはいるものの、転移のない「局所進行がん」、リンパ節や骨、前立腺から離れた臓器へ転移がある「転移がん」の主に3つに分類しています。
その中の限局がんでは「リスク分類」と呼ばれる方法でさらに細分化し、適切な治療方法を検討する際の参照としています。限局がんは、進行がゆっくりなのが一般的です。
しかしなかには、悪性度が高く進行しやすいタイプのがんもあります。限局がんだからといってすべて同じ対応を取っていると過剰治療になってしまうこともある一方で、治療の遅れにつながるケースもあるのです。
一般的に前立腺がんの限局がんは、リスク分類として低リスク・中間リスク・高リスクの3つのグループに分類されます。
グリソンスコア
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(参照:前立腺がんのステージ診断と推奨される治療法 PSA値、グリソンスコア、T分類を総合的に評価 – がんプラス、https://cancer.qlife.jp/prostate/prostate_feature/article2731.html(左)、
⑤-4-1-2.診断・治療の画一情報では語られていない視点の導入~事前再発リスク検討~、
https://miraiecosharing1.com/page-32325/(右))
前立腺がんは比較的進行が遅いがんですが、すべての症例が必ずしも進行が遅いとはいえません。なかには増殖しやすい性質が見られるものもあり、その場合「悪性度が高いがん」と判別されます。前立腺がんの悪性度を示す指標とされているのが「グリソンスコア」です。
グリソンスコアを出すには、前立腺生検で複数個所採取した組織の中の「何箇所からがん細胞か確認されされるか」と、その採取した細胞の状態を顕微鏡で確認し、がん細胞の形や並び方などで「正常細胞とどのくらいかけ離れているか(グレード)」により悪性度を判別します。
採取した組織の中から、がん細胞の発見箇所個数と細胞の悪性度を組み合わせて点数化してグリソンスコアとして算出しています。
前立腺がんの治療

前立腺がんの治療法は、がんの進行度や悪性度、患者さんの年齢や健康状態によって大きく変わります。比較的進行の遅いがんであることをベースに、初期であるならば積極的な治療をせずに「監視療法」という経過観察が選択されることもあるのが前立腺がんの特徴の一つです。進行が遅いタイプで明らかな初期段階である場合、がんの進行よりも先に天寿を全うすることも少なくなく、がんと共生して過ごす方もいます。
いろいろと検査をして積極的な治療が不要と判断される場合には、すぐに治療を開始するのではなく定期的にPSA検査や画像検査をおこないながら、がんの動きを見守ります。
治療が必要と判断された場合には、前立腺全摘除術(開腹手術・腹腔鏡・ロボット支援手術)や放射線療法(外照射、密封小線源療法)などが実施されます。がんが局所にとどまっている場合には、根治を目指した治療をするのが一般的です。
一方で、転移がある場合や進行がんの場合には、ホルモン療法(内分泌療法)が中心です。ホルモン療法は前立腺がんの成長を促す男性ホルモンの作用を抑える治療で、薬剤によってテストステロンの分泌を抑制したり、アンドロゲン受容体の働きを遮断したりします。
最近ではホルモン療法と抗がん剤の併用や、分子標的薬の導入も進んでおり、進行例でも治療の選択肢は広がりを見せています。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>“前立腺がんの余命・生存率とは?ステージ別の特徴と進行スピード・治療法を解説”
フコイダン療法
前立腺がんの一般的な治療とは別に、補完代替療法として注目されているのがフコイダン療法です。フコイダンとは、モズクやコンブ、ワカメなどに含まれる海藻由来の多糖体で、免疫活性や抗腫瘍作用を持つ成分として注目されています。
フコイダンは海藻由来の成分であるにも関わらず、がん細胞の増殖を抑制したり、アポトーシス(自然死)を誘導したりすることがわかっています。がん治療の一助として活用する患者さんも増えてきました。
食品由来の成分のため、活用しても副作用が起こりにくく、普段の生活と変わりなく過ごせる点が、監視療法という独自の治療法を持つ前立腺がんのサブ治療として注目されています。
前立腺がんの生存率

(参照:がん情報サービス前立腺がん2015年5年生存率、https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph#h-title)
前立腺がんは他のがんと比べて、比較的生存率が高い傾向にあります。国立がん研究センターのデータによると、前立腺がんの5年生存率は全ステージ平均で90%前後をキープしていて、特に早期に発見され適切な治療を受けた場合の予後は極めて良好とされています。
がんが前立腺内にとどまっている限局がんでは、5年生存率はほぼ100%に近いとされます。一方で遠隔転移をともなう進行がんでは生存率は低下します。しかし近年では、ホルモン療法や新薬の進歩によって、進行がんでも数年以上の生存が可能になってきました。
前立腺がんは高齢の男性に多く発症します。前立腺がんの進行具合を気にする患者さんもいるのですが、他の病気によって寿命が決まるケースも少なくありません。
前立腺がんに特徴的な背景から、治療の目的や方針は単なる「完治」だけでなく、「生活の質(QOL)の維持」や「共存」に重きを置くケースも増えています。年齢や病状、本人の希望に合わせた治療が重要といえるでしょう。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
>>“前立腺がんの余命・生存率とは?ステージ別の特徴と進行スピード・治療法を解説”
まとめ

前立腺がんは、早期発見と適切な治療によって良好な予後が期待できるがんの一つです。近年ではPSA検査によるスクリーニングの普及や、治療選択肢の進歩によって進行がんであってもQOL(生活の質)を保ちながら長期的に共存することが可能になってきました。
高齢化が進むなかで、誰もが前立腺がんと向き合う可能性があります。年齢や家族歴、生活習慣などのリスク要因を理解し、自分に合った予防・検診・治療の選択をしていくことが、将来の健康を守る第一歩となるでしょう。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
がんの種類を知る
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