2021.10.04
がん前立腺がんの検査方法を医師が解説|PSA検査から生検・画像検査まで
前立腺がんは、日本の男性で罹患数が多いがんの1つです。しかし、初期にはほとんど症状がなく、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。前立腺がんの早期発見の鍵となるのが「PSA検査」を中心とした前立腺がんの検査です。
近年は人間ドックでPSA検査を受ける方が増えていますが、「PSAが高いといわれたけど、何を意味するの?」「次にどのような検査が必要なの?」と不安を抱える方も多いでしょう。
この記事では、PSA検査の仕組みや正常値、上昇する原因、精密検査の流れ、生検・画像検査の役割まで、前立腺がんの検査方法をわかりやすく解説します。検査を受けるべきタイミングの目安もまとめているので、前立腺がんが気になる方はぜひ参考にしてください。
目次
人間ドックで前立腺がんの疑いがあるかどうかの鑑別をする検査方法

(参照:前立腺がん検診ガイドライン2008年版|日本泌尿器科学会、https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/13_prostate_cancer_screening_2008.pdf)
現在、人間ドックなどで前立腺がんの早期発見に一役買っている検査法が、腫瘍マーカー」です。がんと呼ばれる、いわゆる悪性腫瘍からは、血液や尿の中に腫瘍から流れ出る成分が含まれています。この成分を測定する検査を腫瘍マーカーといい、前立腺がんの場合は「PSA」と呼ばれるマーカーを、前立腺がんであるかどうかの1つの指標としています。
PSA検査(血液検査)

(参照:PSAが高いと言われた|日本泌尿器科学会、https://www.urol.or.jp/public/symptom/08.html)
前立腺では「PSA(前立腺特異抗原)」と呼ばれるタンパク質が作られます。ゼリー状の精液のなかに混じって精液の流動性を増加させ、精子の運動性を高める役割があるとされています。
PSAは血液中にも放出されます。前立腺がんの指標としてPSAを測定するときは、血液検査をおこないます。他のがんとは異なり、PSAは前立腺のみで作られるタンパク質なので、PSAの測定により高値が確認できれば早い段階で前立腺がんの発見につなげることができるのです。
PSAの正常値

(参照:前立腺がんガイドブック|前立腺がん情報発信サイト、https://pros-can.net/01/01-2.html)
PSAの数値が高いと、前立腺に何かしらの異常が起きているというサインです。PSAが高く出る=前立腺がんであるということではありませんが、異常値が見つかればがんかどうか診断をするために精密検査へと進むのが一般的です。
PSA検査の正常範囲は4.0ng/mL以下ですが、年齢により少しずつ異なる基準値が定められています。
年齢により基準値は異なる

(参照:問診・PSA検査|武田薬品工業株式会社、https://www.takeda.co.jp/patients/p-cancer/medical/3_2.html)
二次検査に進む基準値は、PSA検査時の年齢によって異なります。年齢が若いほどリスクを重視して二次検査に進むこともあります。年齢別の基準値を超えている場合、泌尿器科へと受診を促し二次検査へと進むのが一般的です。
前立腺がんでなくてもPSAが上がる疾患・要因
PSAは前立腺がんだけで上昇するわけではありません。前立腺は加齢や炎症の影響も受けるので、さまざまな疾患・生活習慣によってPSAが高くなることがあります。
そのため、PSA高値=前立腺がんと即断することはできず、精密検査で原因を確認する必要があります。
前立腺がん以外にPSAが上がる疾患や要因として、次のものが挙げられます。
前立腺肥大症
加齢とともに前立腺が大きくなる良性疾患です。前立腺の体積が増えることで、PSAも上昇しやすくなります。
前立腺炎(急性・慢性)
細菌感染やストレスなどが原因で前立腺に炎症が起こると、PSAが急激に上昇することがあります。急性前立腺炎では10〜20ng/mL以上になることも珍しくありません。
尿路感染症
膀胱炎や尿道炎などの炎症反応でも高値が示されることがあります。
射精(48時間以内)
射精後はPSAが一時的に上昇するため、検査前は禁欲が必要です。
自転車・バイクの長時間乗車
会陰部への圧迫で数値が上昇することがあります。
医療行為による刺激
前立腺へ刺激の加わる直腸診、尿道カテーテル、膀胱鏡などは前立腺に対して刺激となることがあります。これらの直後はPSAが上昇するため、検査のタイミングには注意が必要です。
PSA検査で引っかかった場合の精密検査

(参照:前立腺がんの検査方法|南部徳洲会病院 泌尿器科、https://www.nantoku.org/section/urology/test/)
PSA検査に引っかかり、前立腺がんが疑われる場合には、泌尿器科で専門的な二次検査を進めます。
問診
問診では医師は患者さんに対して、頻尿や残尿感などの排尿トラブルの有無や気になる症状、家族に前立腺がんの患者さんがいたかどうかなどを確認します。
その他にも、これまでにかかったことのある病気や常用している薬の有無も問われます。体の疾患の改善のための治療目的ではない薬剤の使用の有無も、申告が必要です。特に、薄毛治療薬はPSA値に影響を及ぼすため、服用している場合は必ず申告しましょう。
また、がんの家族歴についても、診断の大切な情報の1つです。前立腺がん以外にも、膵臓がんや乳がん、卵巣がん、大腸がんなどの家族歴がある場合は、申告が必要です。
直腸診
直腸診とは、肛門から医師が指を挿入し、前立腺を直接触って調べる検査方法です。前立腺は膀胱の真下にあり、直腸の壁越しに指で触って様子を調べられます。前立腺の大きさや形、硬さ、表面の異常の有無などをその場ですぐにチェックできるため、今なお前立腺がんの二次検査として活用されている方法です。早期の前立腺がんであれば異変をキャッチできないこともありますが、受診してすぐにチェックできる有用な方法として用いられています。
エコー検査
前立腺がんの疑いがあり超音波検査をおこなう場合、肛門から器具を挿入し前立腺に向けて超音波を発信し検査する「経直腸的超音波検査法」が用いられます。エコー検査もその場ですぐにできる検査で、羞恥心はあるものの患者さんへの大きな負担がなく検査できます。
PSAの分析
より精密な情報を知るために、PSAの追加検査をすることもあります。PSAは前立腺肥大症や前立腺の炎症などでも上昇するため、PSA検査でも複数の鑑別方法を組み合わせて評価します。
人間ドックなどで一般的に出される指標は「総PSA(tPSA)」と呼ばれる値です。PSAには他にも参考できる情報があるため、がんの疑いの精度を上げるためにさらにPSAを分析する検査もおこなわれます。
遊離PSA(fPSA)
血液中のPSAには、タンパクと結合している「結合型」と、結合していない「遊離型」があります。遊離PSAは、遊離型の量を調べる検査です。前立腺がんでは、遊離PSAは低下しやすいことが知られています。
がん細胞はPSAを産生しても、周囲のタンパクと結合しやすく遊離型が減るためと考えられています。
f/t比(遊離PSA比)
総PSAに対する遊離PSAの割合を示す指標です。0.15未満だと結合型が多いとみなされ、前立腺がんの可能性が高いと判断されます。一方で0.25以上だと遊離型が多いので、前立腺肥大症などがん以外の可能性も疑います。総PSAが4〜10ng/mLのグレーゾーンの患者でも、f/t比により「がんの疑いがある」と判断することもあります。
前立腺がん確定診断のための検査
人間ドックなどの血液検査でPSAの値が引っかかり、二次検査でがんの疑いが高いと判断された場合、確定診断のための生理検査がおこなわれます。
生検(病理検査)

(参照:前立腺がん|岐阜大学大学院 医学系研究科 泌尿器科、https://www.med.gifu-u.ac.jp/gifuuro/sinryou/pc.html)
がんが疑われる組織の一部を、専用の「生検針」と呼ばれる器具で採取し、顕微鏡で観察してがん細胞の有無を確認する検査が生理検査です。
二次検査でさまざまながんの疑いがある所見でも、最終的に「がん」と診断を下すためには生理検査が必須です。生理検査では、一般的に前立腺の10カ所以上から組織を採取し、前立腺の中のどこに悪性腫瘍ができているかを確認します。
生検針を複数箇所に穿刺し、痛みがともなうので麻酔をしながら検査をします。下半身部分にのみ効く麻酔を使用するのが一般的なので、日帰りで検査が終えられることがほとんどです。出血しやすい作用のある内服薬を飲んでいる患者さんや、検査中に出血してしまった場合などは、1泊〜2泊の入院で検査をすることもあります。
生検には、直腸から組織を採取する「経直腸生検」と、会陰部から組織を採取する「経会陰生検」の2つの方法があります。
採取した細胞は、がん細胞の有無を確認するだけではなく、どのような形のがん細胞が多く見られるか、どのような性質増殖スピードを持つかなども含めて判断する「グリソンスコア」も同時に評価します。
従来は生理検査で確実に悪性腫瘍の発生部分をとらえるために、事前にMRI検査を実施するか、超音波画像を見ながら針を刺す方法が一般的でした。近年ではできるだけ確実に悪性腫瘍を発見するために、MRIで検査をしながら穿刺箇所を決める「フュージョン生検」という方法をおこなう施設も増えてきました。
確定診断後の病状診断
前立腺生検で前立腺がんの確定診断がつくと、治療方針を決めるためにがんの広がり方や転移の有無を確認していく検査に入ります。前立腺がんではCTやMRI、骨シンチグラフィーなどの画像検査が一般的です。
MRI
前立腺生検と合わせて、MRI検査がおこなわれる場合もあります。MRIはより詳細な画像として検出できるので、がんの浸潤の程度も確認できます。近年用いられている「マルチパラメトリックMRI」と呼ばれる方法は、MRIを3mmの厚みで特別な方法で撮影します。とはいえMRI検査も、前立腺がんの病状を把握するには完璧な検査とはいえません。一般的にはその他の検査も組み合わせて、治療方針決定のための参照情報とします。
CT
CT検査は放射線を使って全身を調べる検査です。短時間で広い範囲を撮影できるため、リンパ節や前立腺から離れた臓器への遠隔転移の有無を調べるのに適しています。
骨シンチグラフィー

(参照:MRI・骨シンチグラフィー|武田薬品工業株式会社、https://www.takeda.co.jp/patients/p-cancer/medical/3_8.html)
骨シンチグラフィーは、全身の骨転移の有無を確認するための検査です。骨に集まりやすい「放射性同位元素」と呼ばれる物質を含んだ薬剤を注射したあと、3〜4時間ほど経ってから全身を撮影します。骨転移があれば、黒く見える箇所が画像として検出されます。骨転移のある部分は代謝が活発になるため、より多くの放射性物質が集まり黒く写し出されるのです。
前立腺がんの検査を受けたほうがよいケース
前立腺がんは初期症状がほとんどなく、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。以下のような症状がある場合や、家族歴がある方は積極的にPSA検査を受けることを検討しましょう。
排尿障害がある
前立腺がんは前立腺の外側(辺縁領域)に発生することが多く、初期は症状が出にくいのが特徴です。しかし、がんが大きくなると尿道を圧迫し、以下のような排尿症状が現れることがあります。
- 尿が出にくい
- 尿の勢いが弱い
- 夜間頻尿
- 残尿感
- 排尿に時間がかかる
これらは前立腺肥大症でも起こる症状ですが、がんとの鑑別が必要なため、PSA検査などで病状の鑑別がおこなわれます。
家族が前立腺がんになったことがある
前立腺がんは遺伝的要因が強いがんの1つです。
特に以下のケースではリスクが高まることが知られています。
- 父親・兄弟が前立腺がん
- 50歳未満で発症した家族がいる
- 家族に乳がん・卵巣がん・膵がんが多い(BRCA遺伝子関連)
家族歴がある場合、一般の男性より40〜45歳頃から前倒しで検査を開始することが望ましいです。
前立腺がんのステージ

(参照:前立腺がんのステージ分類|新松戸中央総合病院、https://www.shinmatsudo-hospital.jp/features/cancer-treatment/prostate/stage/)
前立腺がんのステージは、がんの広がり方(局所・リンパ節・遠隔転移)によって分類されます。
- ステージI:がんが前立腺内に小さくとどまり、検診で偶然見つかることが多い段階。
- ステージII:がんは前立腺内に限局しているが広がりがあり、治療選択肢が多い段階。
- ステージIII:がんが前立腺の被膜を超えて周囲へ浸潤し、精嚢に及ぶこともある段階。
- ステージIV:リンパ節や骨など遠隔転移がみられ、全身治療が中心となる段階。
グリソンスコア

(参照:前立腺がんのステージ別生存率と平均余命|がんメディ、https://ganmedi.jp/prostate/stage-lifeexpectancy/)
生検で採取したがん細胞の「悪性度」を示す指標です。スコアが高いほど進行しやすく、悪性度が高いと判断されます。
- スコア6以下:分化度が高く進行が遅い“低リスク”のがん。
- スコア7:中間リスクで、3+4と4+3では予後が異なる重要な分類。
- スコア8〜10:悪性度が高く進行しやすい“高リスク”のがん。
>>前立腺がんの原因とは?初期症状・検査・治療・生存率まで医師監修で徹底解説
前立腺がんの治療
前立腺がんの治療はステージ・年齢・合併症・生活背景により大きく異なります。手術・放射線治療・ホルモン療法・監視療法など、いろいろな選択肢があり、病状によってはいくつかの方法を組み合わせて治療を進めます。
>>前立腺がんの余命・生存率とは?ステージ別の特徴と進行スピード・治療法を解説
フコイダン療法
前立腺がんの標準治療とは別に、別のアプローチとしてフコイダン療法が注目されています。フコイダンは海藻由来の多糖類で、以下のような作用が報告されています。
- 免疫調整作用
- 抗炎症作用
- アポトーシス誘導作用
- 抗腫瘍作用の可能性
食品由来の成分なので、副作用を気にせずに治療のサポートとして活用できます。前立腺がんの補完治療として活用されることも少なくありません。
まとめ
前立腺がんは、検査によって早期発見できるがんです。PSA検査は血液だけで調べられる簡便な検査で、異常が見つかった場合も、直腸診・エコー・生検・画像検査などを組み合わせ、正確な診断につなげることができます。
前立腺がんはステージや悪性度(グリソンスコア)によって治療方針が大きく変わるため、早い段階で病状を把握することが非常に重要です。排尿症状がある方や家族歴がある方は、早めにPSA検査を受けることでリスク低減につなげられます。
治療には手術・放射線・ホルモン療法・監視療法など多くの選択肢があり、近年ではフコイダン療法のような補完的アプローチも注目されています。前立腺がんの早期発見は、治療や対処法の選択肢を大きく広げます。気になる症状がある方は、ぜひ一度検査を検討してみてください。
近年のがん治療には統合医療もおこなわれるようになっています。
なかでも注目を集めているのがフコイダン療法。中分子フコイダンが持つ作用に着目した療法で、がん治療によい効果をもたらすと期待されています。
フコイダン療法は、抗がん剤との併用が可能です。
それだけではなく、抗がん剤と併用することでその効果を高め、副作用の軽減も見込めると言われています。
「中分子フコイダン」を用いた臨床結果の一例を紹介しています。どういった症状に効果があるか具体的に知りたい方は臨床ページをご覧ください。
>>「中分子フコイダン」を用いた臨床結果
>>フコイダンとがん治療についてもっと詳しく知りたい方はこちらへ
がん治療における選択肢の1つとしてフコイダン療法があることを念頭に置き、医師と相談したうえでベストな治療方法を考えていきましょう。
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